青空文庫の全作品
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| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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| 労働者大会 | 根岸正吉 | 5分以内 | |
青年会館の正門へ※ 要求は簡単である。 | |||
| 我は労働者よ | 根岸正吉 | 5分以内 | |
廻せ! 廻せ! 廻したくば何程でも廻せ。 | |||
| 赤い腕章 | 波立一 | 5分以内 | |
赤い集会を護り 赤いデモを導く 若さの誇りに輝く 真赤な腕章 党旗の下から 組合旗の蔭から 俺らの演壇には 燃ゆる 燃ゆる 俺らの胸は早鐘 俺らは血走る眼を注ぐ 「真赤な腕章」へ 「真赤な腕章」はビクともしない 細心に 大胆に 俺らの感情を護る 「真赤な腕章」の役目は重い 番犬共が耳打ち始める ゆるんだ帽子の紐を締める ――弁士中止! 瞬間 「真赤な腕章」がグイと動く ――官憲横暴! ――横暴! | |||
| 檻の中 | 波立一 | 5分以内 | |
昨日は重い空に湿っぽい風だった。 | |||
| 五月一日 | 波立一 | 5分以内 | |
ええ、癪だな、畜生! 間抜けた汽笛なんか気にすることあねい。 | |||
| 動員令 | 波立一 | 5分以内 | |
耳の奥底に唐人笛飴屋の幼い想出 連隊の奴隷達は夢の中で枕を外した 激しい夜風とあれ狂う喇叭の号音 ――非常呼集だ 丘の黒い建物は真夜中に眼ざめた 丘の兵隊屋敷は点々と燈火を燦めてゆく 不寝番は雀躍してバタバタ駆けまわった 息をきらしても叩き起すのは愉快だ 態あみろ 起きろ! 起きろさ 起きるよ…… うるせい! 週番司令あ誰奴だ? 俺あ 不服だぞお…… 周章てて起きた初年兵の寝台の上に | |||
| 再生の日の海を眺めて | 松本淳三 | 5分以内 | |
俺は再び海を見るのだ! ひろいひろい海を見るのだ! それは、絵より詩より もっと大きい、もっと美しい 動いている海、輝いている海! ああはっきりと映って来る海! 俺は岩に腰をおろした やせた両手を胸に抱いた 「貴方の御出をどんなに待ったか知れません、 よくも貴方は、生きて再び私の姿を見て呉れます……」 海は大きい胸をたたいて まず何よりもにっこりした そして 鮮な潮の香りを たえず――俺の体に | |||
| 血を越えてゆく | 松本淳三 | 5分以内 | |
われら 血を越えてゆく はらからが流したる くろき血をぞ 越えて尚ゆく おそろしき権力は ゆくてをふさぎ するどき刃は たえず頭上にひらめけども あらしの如く 泉のごとく 石をおしわけ 春 芽をふく草の 力に似て 彼岸を遠く たのみ且つ信じ ああ われら血を越え たゆまずゆく はらからに続き また はらからを後に率いて―― (『種蒔く人』一九二一年十月号に発表) | |||
| 労働祭歌(Ⅰ) | 松本淳三 | 5分以内 | |
序曲 メーデー! われわれはすでに広場に集合している 幾千、万! 黒い旗、赤い旗、するどい槍 光り! われわれはすでに広場に集合している 集合! 確乎たる同僚精神 彼方ほうはいたる都会をのぞんで 決意! われわれはすでに広場に集合している しかも、あとからあとから集まる ああ、この偉大なる黒い群集 今日を待っていたこの群集 裂けたまなじり、鳴る肩瘤 額に浮き上り輝く汗 汗、汗、汗、汗 この素 | |||
| ガンジよ | 松本淳三 | 5分以内 | |
捕らわれた、君よ ガンジよ 苦しい心で、一途な心で 祈る私の――見知らぬ私の 心を素直に受けてくれるか 私はいま 空を抱きしめて祈っているのだ 地に跪いて祈っているのだ 魂からなる、涙でもって祈っているのだ 生きんとするもの 飛ばんとするもの そうした者の道はいつでも 暗い牢獄へつづいているとは 知りながら おお、捕らわれた君よ ガンジよ 私は苦しい一途な心で 今宵君の「生命」をしみじみ 祈ら | |||
| 君達に送る――新しい民衆の精神 | 百田宗治 | 5分以内 | |
いま僕は君達に書く、 最も新しい名で君達をよび、 僕のあらゆる精神をこめて。 | |||
| 五月祭の朝 | 百田宗治 | 5分以内 | |
今日は五月一日だ、 五月祭の朝だ、 空はほがらかに晴れ、 大気はおだやかな海のように澄んでいる、 飛び散る一片の雲もない、 ――近くの小学校で生徒達の唄う声がきこえる。 | |||
| 騒擾の上に | 百田宗治 | 5分以内 | |
(見えない一人の指揮者が 彼等の上を飛び越え、 狂奔し、 埃と騒擾と錯乱の上を飛躍する、 一物も纏わない裸身、 その肩をかざる鮮かな二つの翼、 剣の鞘は開かれ 彼は先頭に立って走る……) 叫喚と怒号、 暗黒の大津波が あらゆる細微物から、広汎な大運動を通じて いま、一切の群集を煽り、 先立たせ、狂奔せしめる、 肩から肩、手から手、 心魂から心魂へ、 見えざる旋風が 一切の熱狂を高く捲き上げる…… | |||
| 地を掘る人達に | 百田宗治 | 5分以内 | |
地を掘る君等 重い大きい鶴嘴を地面のなかに打込む君等、 汗する君等、 満身の力を一本の鶴嘴に籠める君等、 おお君等の足下に何と地面が掘り下げられてゆくよ。 | |||
| 労働の精神 | 百田宗治 | 5分以内 | |
工場の隅でぐったりしている人よ、 君は疲れているか、 君の腕は最早力を失ったか、 君の息は苦しそうだ。 | |||
| 露西亜よ汝は飛ぶ | 百田宗治 | 5分以内 | |
露西亜は地上のあらゆるものを乗越えて飛ぶ。 | |||
| みみず先生の歌 | 村山籌子 | 5分以内 | |
僕の名前はみみず、 決してメメズなんて名前じゃない。 | |||
| おふくろへ | 槙本楠郎 | 5分以内 | |
おふくろよ おれは おまえまで そう かわっていようとは おもわなかった まえば が 一ぽんしか のこっていなかったというのではない あたま が まっしろになっていたからというのでもない また こし が ひんまがっていたからというのでも むろん ない おふくろよ おれは あのばん おまえが もりあげて だしてくれる むぎめしの しみて ざくろのみのように ポツポツするやつを やぶれしょうじ の な | |||
| ある日 | 陀田勘助 | 5分以内 | |
砂糖のような安逸が おれの感覚をにぶらしている 鍋底で倦怠だ! 憂鬱だ! と小声でつぶやいている 若い熱情が下駄の歯のようにすりへりそうだ 残火が火消壺で喘いでいる 短気な意志が放心した心臓をつかんでいる そいつは滓だ おれの食慾がめしを喰ってる おれの性慾が女を恋しようとしている オブロモフ! オブロモフ! オブロモフ! 倦怠をつぶやきながらも安逸は砂糖のように甘い 憂鬱の霧を逃れようともしない | |||
| 断片 | 陀田勘助 | 5分以内 | |
ノスケ万歳! プロレタリアは武装を解かれた ――ゲオルグ・グロッス―― むくれあがった傷口から白い蛆虫は這い出した 蠅は飛び出した小腸を喰べている 風が吹く 転がっている銃殺死体! ほんとうに射撃された心臓は歪んでいた 兵隊の靴の音は飢えた群衆の中から ピストル! 奴らの銃剣は! 切断された太陽の注ぐ光の下にひかり おれらの脳髄を 心臓を指さしている 掘立小屋から瘠 | |||
| 一疋の昆虫 | 今野大力 | 5分以内 | |
一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた 昆虫の目指すは北 薄暗い北 病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、 この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い 昆虫は北方へ出口を見出そうとする 天井と北側の壁の白堊を叩いて ああ幾度往復しても見出されぬ出口 もう三尺下ってドアーの開いている時だけが 昆虫が北へぬける唯一の機会だが、 昆虫には機会がわからず 三尺下ればというこ | |||
| 凍土を噛む | 今野大力 | 5分以内 | |
土に噛りついても故国は遠い 負いつ 負われつ おれもおまえも負傷した兵士 おまえが先か おれが先か おれもおまえも知らない おれたちは故国へ帰ろう おれたちは同じ仲間のものだ お前を助けるのは俺 俺を助けるのはお前だ おれたちは故国へ帰ろう この北満の凍土の上に おれとお前の血は流れて凍る おお赤い血 真紅のおれたちの血の氷柱 おれたちは千里のこなたに凍土を噛む 故国はおれたちをバンザイと見送り | |||
| ねむの花咲く家 | 今野大力 | 5分以内 | |
俺は病室にいる 暗室のような部屋だ。 | |||
| 花に送られる | 今野大力 | 5分以内 | |
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづく もうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりは きれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は 花見客を待ちこがれているよう 私の寝台自動車はその堤に添うて走る 春めく四月、花の四月 私は生死をかけて、むしろ死を覚悟して療養所へゆく すでに重症の患者となった私は これから先の判断を持たない 恐らく絶望であろうとは医師数人の言ったところ 農民の家が | |||
| 百姓仁平 | 今野大力 | 5分以内 | |
何つう病気だか知らねいが、 俺家のたけ子奴病気だどって帰って来た 何でも片足だけは血が通わねえんだって そしてくさりこんでさ うみが出て うみが出て、 血の通うところまでぶった切って 生れにもない片輪になりやがって 二十一の働き盛り 嫁盛りに 何つうこった 俺あ口惜しくて涙も出ねい たけ子の野郎奴は ロクすっぽ金も持たずにおんだされて来やがった どうすべか いい考えもありやしねい ああ俺は口惜し | |||
| 胸に手を当てて | 今野大力 | 5分以内 | |
かつて私は 悪事をやった立場に立たされた時 こう憎々しげに吐きつけられたものだ、 「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」 私は今、胸に手を当てて 静かに激しく想っている。 | |||
| 私の母 | 今野大力 | 5分以内 | |
そこにこうかつな野郎がいる そこにあいつの縄工場がある 縄工場で私の母は働いていた 私の母はその工場で 十三年 漆黒い髪を真白にし 真赤な血潮を枯らしちまった 私の母はそれでも子供を生んだ 私達の兄弟は肉付が悪くって蒼白い 私達は神経質でよく喧嘩をした 私達は小心者でよく睦み合った 私達の兄弟は痩せこけた母を中心に鬼ごっこをした 母は私達を決して追わない 母はいつでもぴったりと押えられた 私達 | |||
| 山上の歌 | 今村恒夫 | 5分以内 | |
同志等よ 素晴らしい眺めではないか 君達の胸はぶるぶると打ちふるえないか 脚下の街に林立する煙突と空を蔽う煤煙と るるるるっと打ちふるえている工場の建築物 おお そして其処で搾りぬかれた仲間等が吹き荒ぶ産業合理化の嵐の前に怯え 恐れ 資本への無意識的な憤懣の血をたぎらせているのだ 街は鬱積した憤懣で瓦斯タンクのようになっている 街は燐寸の一本で爆発へ導く事が出来るのだ そして俺達は厳重なパイや工場 | |||
| 死ぬる迄土地を守るのだ | 今村恒夫 | 5分以内 | |
会場にはぎっしり聴衆がつめていた。 | |||
| 手 | 今村恒夫 | 5分以内 | |
俺達の手を見てくれ給え ごつごつで無細工で荒れて頽れて生活の如に殺風景だが 矍鑠とした姿を見てくれ給え 頑健なシャベルだ 伝統と因習の殻を踏み摧き 時代の扉を打ち開く巨大な手だ りゅうりゅうと筋骨はもくれ上り 俺達の如く底力を秘めている どきっどきっ脈打つ血管には 火よりも赤い革命の血が流れ すべっすべっ皮膚は砲身の如く燿いている ペシャンコにひしゃげた爪は兄弟達の顔面の如に醜いが 頑固で硬質で | |||
| 鋼鉄 | 今村恒夫 | 5分以内 | |
俺達は貧困と窮乏の底で生れた 俺達は圧迫と不如意の中で生長した 俺達は鋼鉄になった 俺達は現代が要求する 共産主義者になった 俺達は地下から生み出された 光りを持たない暗黒と放浪と死に瀕した現実であった 堪え難い生活の溶鉱炉の中へ投げ込まれた 旋風と熱気と断末魔の苦悶と没自我の中で生れた儘の俺達は俺達を失った残滓を捨てた洗練された 鉱石は銑鉄になった俺達は戦線に召集された そこで益々鍛われて行っ | |||
| アンチの闘士 | 今村恒夫 | 5分以内 | |
彼は勇敢な反帝同盟の闘士! 奴はもぐって地球の外にでもいるようだが 時々姿を見せては叫ぶ! 「帝国主義戦争絶対反対だ! ソヴェート同盟を守れ! 支那革命を守れ!」と 一太郎やーい親子がおれたちの村にやって来た時や 桜井肉弾大佐の講演会があった時 奴はみんなの前でおっぴらに云った 電柱や壁に貼られた伝単も、時々ばらまかれるアンチのビラも奴の仕事だ カーキ服の憲兵もサーベルも奴を血眼に探しているが…… | |||
| プチロフ工場 | 今村恒夫 | 5分以内 | |
プチロフ工場の兄弟と 蹶起した罷工の勇壮を讃えよ。 | |||
| 横顔 | 上田進 | 5分以内 | |
1 壊滅した――と言う そうかも知れないと思う 健在だ――と言う そうかも知れないと思う 地下に追込められたものは 益々深く地下に潜り込んだのだ 俺達にはてんで見当がつかなくなったのだ 2 汽笛の白い蒸気が 灰色の空にちぎれ飛んだ 午前六時の川風が 雪交りの雨を赤煉瓦に叩きつけ 脂染みた硝子窓をゆすぶった 肩をすぼめた俺達の行列が 鉄門の外にまだ長くつづいていた 3 泥んこの通路がやけに | |||
| 農村から | 榎南謙一 | 5分以内 | |
――よう戻って来た 娘の手を握りながら 両親は娘一人ふえたこれからの生活を考える 正月だと言って 餅を鱈腹食うて寝ては居れなかった 地主の塀からきこえる 景気のいい餅搗きの音に 餓鬼どもは咽喉をグウグウいわせて駄々をこねた お父うが鍬をかついで 裏口からコッソリ出かけようとしたとき お母あはどう言って泣いたか ――三ヵ日にようもまあ、仕事をするだ フウが悪うて……… 米の有り余る豊年に 百姓の納 | |||
| 河の上の職場 | 大江鉄麿 | 5分以内 | |
黒い水面が時々石炭の切れ口のように、ギラギラと河波の照りかえし、 中ひざまでせきとめられ、八本のミキサコンクリトがけの鉄骨に、 歯をむきだし、 カプリと、 背筋をひきちぎる音波をうって、揺れてゆく河―― 脳味噌をぶち砕くような、のたうつ肚の底までピリピリと震動さす響。 | |||
| 職場の歌 | 大江鉄麿 | 5分以内 | |
ダンダンダンダン…… 歯車がかちかちとわめいている モートルの野郎はブーンとうなっていやがらあ ベルトが二百五十の回転速力できざむ様に…… ダンダンダンダン…… 源兄いお前そのベルトの奴に右手を半分取られたな 近所の義もそのベルトの奴に指を三本喰われちまったぞ ダンダンダンダン…… 畜生ベルトの奴 貴様まで俺達の血をしぼると云うのか 源兄いが右手を取られた時の姿 近所の義が指を喰われた時の姿 血潮 | |||
| 馬鈴薯階級の詩 | 中島葉那子 | 5分以内 | |
馬鈴薯階級の詩 (一) カマドガヤシの白い穂が 雪の様に飛ぶ十一月の野良で 仁平はおっかあや娘と仕事着の尻、枯っ風にひったくられ乍ら 馬鈴薯選別して俵につめていた。 | |||
| 拡大されゆく国道前線 | 広海大治 | 5分以内 | |
(1) 視野一面 連る山脈の彼方に 朝やけの赤い太陽―― ペダルを力一杯 地下足袋で踏んづけて 工事場へ走る俺達 爽涼たる朝霧の中に 曲りくねった山峡の白い路 杉と雑木と 山の背の彼方に 見えては かくれ かくれては現われる相棒の姿 俺は呼びかける ――おうい待てよう ――ほーい 山萩の垂れ下った曲路の向う側に あいつの自転車は消えて ベルの音とこだまだけが深い谷間に残る ――早う来んと歩が切 | |||
| 章魚人夫 | 広海大治 | 5分以内 | |
北方の海には氷が張りつめた 食物がなくなった章魚は おのれの足を食いつくした 春四月 まだ雪は南樺太の野を埋めている 人夫は前借金二十五円にしばられて 鉄道工事現場へ追い込まれた へばりついた大雪の残りが消えた ドロ柳があおい芽をふいた 流氷が去った海岸に鰊が群来た けれど オホーツク嵐は氷の肌の様に寒いや 伐材だ 切取りだ 低地へは土を盛れ 岩石はハッパで砕け さあ、ツルだスコップだ トロ | |||
| サガレンの浮浪者 | 広海大治 | 10分以内 | |
ただようてくる温ったかい三平汁の香 堪え兼ねて牧草の束に顔を埋める しのびよる背筋の冷さ 浅い眠りの夢は破れる ああ! 一杯の飯を食いたい 赤い毛布を巻きつけた むくんだ足 寒気は骨の中まで突き通す 伸び放題の鼻ひげに 呼吸は霜をたくわえ 鼻孔はきんきんとひからびる 破目板の隙間から躍り込む風 小屋に舞う雪神楽 やがて粉雪はうず高く層を重ねる 辛うじて乾草の小屋に宿り 打ち震え闇の中に聞く 猛 | |||
| 保護職工 | 森竹夫 | 5分以内 | |
働いているこの機械は家庭用シンガーミシン台ではない 旧式な製本の安機械 彼女は磨き歯車に油を注す 埃をうかべた日光が漸くさぐりあてるくらがりで だまりやさん だまりやさん だけどわたしはお前がじっと何をこらえているのか知ってるの 十六歳未満だから保護職工 何てかがやかしい名だ美しい名だ 残業はたっぷり四時間 活動小屋のはねる頃になって 半分眠ったこの保護職工は縄のようなからだで露路から電車道にた | |||
| 落葉 | 木村好子 | 5分以内 | |
落葉よ、落葉よ、 秋風に吹かれて、 お前がカラカラと鳴り乍ら 井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、 舞いこんでくると、 おお、私は胸ふたがれる! 何一つもたらすことなく、 過ぎ去った日の一日一日を ただ、えいえいと つづれつくろい、米かしぎ 凡ての希みも、よろこびも、 かなしみさえもおき去りにして 生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、 ああ、お前は散ってゆく、 秋風になぶられて、舞 | |||
| 兄ちゃん | 木村好子 | 5分以内 | |
吹きっさらしの田圃には もう、村の誰も出ていない だのに、私の家では麦蒔きがすまない 取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されて あとに残った女手二つ 私とおっ母とであくせくと麦蒔き 毎日、朝早くから晩おそくまで かたい刈株をうちかえし、うねをつくり せっせと蒔きつけを急ぐ私達―― かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば 地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくる おお兄ちゃんが満州へ引っ | |||
| メーデーを待つ | 木村好子 | 5分以内 | |
うす暗い長屋のすみで、毎日、 私と坊やは糊まみれ、 糊にまみれてせっせと渋団扇を張るけれど 戦争にあなたを奪われた私の生活 張っても張っても追っつかない 苦しい暮しの真ただ中で――おお早や五月 闘いのメーデーが来る! おお戦争と白テロの渦巻く中 今年のメーデーはどんなにすごかろう それにつけても忘れられぬあなた! 去年、あのだらしない葬式行列に 組合の人達と一緒に割り込みの先陣をうけもったあなた | |||
| みんな悲しげにそう思う | 倉橋潤一郎 | 5分以内 | |
胡瓜つくってもいい トマトつくってもいい 南瓜も西瓜も茄子も 高い肥料代や小作米にくわれる 二番稲をつくるより 野菜をつくって市へだすのが なんぼいいかも知れない 山の向うの村から はこんで来るリヤカーの群をみると みんな悲しげにそう思う 今朝も おっかあ達は ここ 町の入口で がやがやとかけひきに余念がない 家の側を流れる溝で 夜になって 月にぬれて 野菜や果物を洗ってみたい 自分で手入れて | |||
| 『姥捨』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「葉」「列車」「I can speak」「姥捨」「東京八景」「みみづく通信」「佐渡」「たづねびと」「千代女」 この短篇集を通讀なさつたら、私の過去の生活が、どんなものであつたか、だいたい御推察できるやうな、そのやうな意圖を以て編んでみた。 | |||
| 『思ひ出』序 | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「思ひ出」「ダス・ゲマイネ」「二十世紀旗手」「新樹の言葉」「富嶽百景」「餘瀝 近事片々」 「思ひ出」 けふまで創作集が五册出てゐるから、それぞれの出版主にお願ひして、一册から一篇づつ拔き取ることを許してもらつた。 | |||
| 『風の便り』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「風の便り」「新郎」「誰」「畜犬談」「鴎」「猿面冠者」「律子と貞子」「地球圖」 昨年の夏に出版せられた創作集「千代女」の以後の作品を集めて、ただいま讀者にお贈りする。 | |||
| 『玩具』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「玩具」「魚服記」「地球圖」「猿ヶ島」「めくら草紙」「皮膚と心」「きりぎりす」「畜犬談」 「玩具」から「めくら草紙」に到る五篇は、私の第一創作集「晩年」から選び出した作品である。 | |||