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今野大力の全作品

青空文庫で公開されている今野大力の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。

1-50件 / 全119件
作品名著者読了時間人気
トンカトントンカッタカッタ今野大力
5分以内
トンカトンカトントンカトンカトンこれは隣りのシャフトから樋を通って来るベルトが樋板を叩いている音だ。
組織された力今野大力
5分以内
どこからか捲き起された風渦になり、平になり、縦になり吹きまくってゆく、突風!疾風!屋根柾が矢のように走ってゆく塗炭板がぐうおうと引ぺがされて空をうなりながら飛んでゆくぐう、おう、ひゅうひゅう、おう、ぐう物凄い力となって粉々と雪を掻(か)っ飛ばして平原を十数丈の高さでぐんぐんと押よせる風陣!街の中も、原っぱも、村の街道も猛火のような怒りと憎しみに燃え立って前面に押し出し流され...
一疋の昆虫今野大力
5分以内
一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた昆虫の目指すは北薄暗い北病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い昆虫は北方へ出口を見出そうとする天井と北側の壁の白堊を叩いてああ幾度往復しても見出されぬ出口もう三尺下ってドアーの開いている時だけが昆虫が北へぬける唯一の機会だが、昆虫には機会がわからず三尺下ればということもわからぬ一日、二日、...
奪われてなるものか今野大力
5分以内
君はおれの肩を叩いてきいてくれる君は親しげなまざしでおれを見るおお君はいつもおれの同志おれたちの力強い同志しかしおれには今君の呼びかけたらしい言葉がきこえない君はどんなにかあの懐かしい声で留置場からここへ帰って来たおれに久方ぶりで語ってくれたであろうにおれには君の唇の動くのが見えるだけだパクパクとただパクパクと忙しげな静けさ、全く静けさイライラする静けさ扉の外に佇(た)っていたパイの跫音も聞...
金属女工の彼女今野大力
5分以内
小がらで元気がみちみち眼と口と顔の据えられた位置がやや水平の彼方の空に向い希望の、言葉ではなし、文章ではなし、絵でもなしただ五尺たらずのからだにみちみてる熱意ある要求の表情。
屈辱今野大力
5分以内
この一本のレールこの一本のリベットこの一本の枕木この掘割、この盛り土このコンクリートその上を平穏に走って行く機関車機関車は一つの鋲から一つのネジ一つの管から、一つの安全弁その機関車に焚く一塊の石炭までも何から何まで、ピンからキリまでおおこれが誰の仕事の成果であるかすべてはタコだらけの手のひらでなで俺たちの仲間の労働がつくった機関車はレールを辷る機関車は今運転されてい...
凍土を噛む今野大力
5分以内
土に噛りついても故国は遠い負いつ負われつおれもおまえも負傷した兵士おまえが先かおれが先かおれもおまえも知らないおれたちは故国へ帰ろうおれたちは同じ仲間のものだお前を助けるのは俺俺を助けるのはお前だおれたちは故国へ帰ろうこの北満の凍土の上におれとお前の血は流れて凍るおお赤い血真紅のおれたちの血の氷柱おれたちは千里のこなたに凍土を噛む故国はおれたちをバンザイと見...
ねむの花咲く家今野大力
5分以内
俺は病室にいる暗室のような部屋だ。
花に送られる今野大力
5分以内
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづくもうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりはきれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は花見客を待ちこがれているよう私の寝台自動車はその堤に添うて走る春めく四月、花の四月私は生死をかけて、むしろ死を覚悟して療養所へゆくすでに重症の患者となった私はこれから先の判断を持たない恐らく絶望であろうとは医師数人の言ったところ農民の家がつづく古い建物が多く...
百姓仁平今野大力
5分以内
何つう病気だか知らねいが、俺家のたけ子奴病気だどって帰って来た何でも片足だけは血が通わねえんだってそしてくさりこんでさうみが出てうみが出て、血の通うところまでぶった切って生れにもない片輪になりやがって二十一の働き盛り嫁盛りに何つうこった俺あ口惜しくて涙も出ねいたけ子の野郎奴はロクすっぽ金も持たずにおんだされて来やがったどうすべかいい考えもありやしねいああ俺は口惜しくてなんねい。
胸に手を当てて今野大力
5分以内
かつて私は悪事をやった立場に立たされた時こう憎々しげに吐きつけられたものだ、「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」私は今、胸に手を当てて静かに激しく想っている。
私の母今野大力
5分以内
そこにこうかつな野郎がいるそこにあいつの縄工場がある縄工場で私の母は働いていた私の母はその工場で十三年漆黒い髪を真白にし真赤な血潮を枯らしちまった私の母はそれでも子供を生んだ私達の兄弟は肉付が悪くって蒼白い私達は神経質でよく喧嘩をした私達は小心者でよく睦み合った私達の兄弟は痩せこけた母を中心に鬼ごっこをした母は私達を決して追わない母はいつでもぴったりと押えられた私達は結局母の枯...
亜米利加今野大力
5分以内
アメリカは正義人道を看板にして非道な国際を売ってしまった排日は夢の日本に対するしくみだ、あなどりだ夢も幻ももたないトラウベル、ホイットマンを理想の詩人に祭りあげたアメリカ人資産の外にはのぞみもない彼等は貧しい夢の日本なぞ用もないあたり前の成行きだああ、ただ悲しい事実があるそれは偽られた同胞のクリスチャンだアメリカが偉そうにするもんだからそうかしらと思って信じたそれが一枚看板をはいで終えば...
ある歴史に就て今野大力
5分以内
星が一つ森林の中の忘れられた静かな湖水へ降りて来て暫く思案にくれていた(それを知っていたものは誰もいない天空にいる星達さえも存じなかった)星にも厭世があるのかしら?星は湖水へ沈んで行った。
童話今野大力
5分以内
ある魂は玩具を抱きて眠ると言うしかも玩具とは、せるろいど。
生る今野大力
5分以内
父あり母あり病児生る父あり母あり白痴生る父あり母あり天才生る父あり母あり盲児生る父あり母あり死児生る。
馬を愛す今野大力
5分以内
馬を愛す地表を走らせて競馬という桜のすぐる頃葉桜の蔭に人々金を懸て馬をひょろひょろと走らす競馬というそして人間『馬を愛す』という。
丘陵風景今野大力
5分以内
傾斜の丘に菜の花黄ろく咲けば軍団兵士の頭二個ばかり丘陵の蔭に並び出で銃先を見せすぐる。
楔を打つ男今野大力
5分以内
久しくして土を見ざる男なり男、地に楔を打ちよろこべり歌うたう。
三角の赤色旗今野大力
5分以内
赤色の三角旗風びうびうと飜し共産主義の一兵士三角地型に佇立する。
所有今野大力
5分以内
あらゆる所有の王国に呪いあれ*万民平等なる母体の胎児たりし時卿等に所有の観念の兆せしや否や我古代より現代に至る社会の変遷による人々の苦悩は個人があやまれる自由の曲訳により所有の観念のあやまれる故なりと断ずるなり*自由とは何ぞや*あらゆる個人の所有を許さざる万民平等の時神人等が私慾の一点も加えられざる処これあるのみ*我ここに按ずるに所...
土の上で今野大力
5分以内
おまえはまだ立っているか力強く立っていようとするか風は吹いても地はゆらいでもおまえはまだ立っていようと願い((ママ))るか*久し振りで地に親しむ事の出来た土へのおまえの愛はまことに美しいものだけれども今はおまえの執着はおそろしいものだ*あくまで地に立っている事はあくまで反逆の意味がふくまれている、真実に地を愛し慕うならばおまえは立つ事をやめねばならないおと...
拾った詩今野大力
5分以内
なぜか知らそぞろ歩みに誘われて私もお祭りに加わります誰ひとり街はずれのお宮へなぞゆくものですかみんなはこうして涼しい夏の夜の風を浴びながら当どもなく華やかな灯の下をさまよいます。
星と過去今野大力
5分以内
星はある夜緑の灯を輝やかし仲よく円座で評議する星はある夜右手を長くさし伸べて神秘な事件を信号する星はある夜さやさやさや清水の流れにたわむれる星はある夜森林の小枝に小さな首を吊していた。
鱒の話今野大力
5分以内
濃緑のあかだもの木の下にて三十を越えた四十あまりの人の話をきく二十余年北国の地に流浪して絶えず山水に親しみながら生活を続けて来た人の話である面は陽に赫(や)けているひげはおとなしくあご一面にぼうぼうと生えているアイヌとも妥協して或は独木舟に乗り激流をさか上った事もあると言う熊狩りに魚捕りに野に山に宿した事もあると言う長い半生にありし物語のさも面白そうな話ぶりち...
未婚婦人今野大力
5分以内
未婚婦人の魅惑に対して私は今日本の未婚婦人へ散文を書送る。
郷土今野大力
5分以内
草深い放牧地よ北海の高原に群がれる人々を養える郷土よ北海道よ未開地よここには名もなき小花も咲くであろう未だ人手に触れない谷間の姫百合も咲くであろう春ともなれば黄金の福寿草も咲くであろうかくてアイヌ古典の物語も想い出されるであろう2おお郷土の人々よ昔は卿等が渡道の頃は何処にも熊は住んでいた時として卿等よ憶い起してはならないあの殺伐な熊狩のあたりのことを又若き人々よあまりに華やかさを粧...
ある時今野大力
5分以内
「未曾有のキキン」「大水害」「餓死の年」遠いほんとうに遠い父と息子の住んで居る土地は時代をとりちがえて生きて居るようにほんとうに遠い手紙の封筒はほご紙を飯粒のりでこさえておくる切手はどこかのすみからさがして来たようにすすけてしわくちゃだ父と息子のたよりは三銭の切手もめったに送らない父は「死んでしまおうか」と訴えてくる白髪のお母よ丈夫で居てくれ小さい弟妹よ、丈夫に育ってくれ。
農奴の要求今野大力
5分以内
雪に埋れ吹雪に殴られ山脈の此方に俺達の部落がある俺達は侯爵農場の小作人俺達は真実の水呑百姓俺達の生活は農奴だ!俺達はその日隊伍を組んで堅雪を渡り氷橋を蹴って農場事務所を取巻いた俺達はその日の出来事を知っているその日俺達の歩哨は喇叭(らっぱ)を吹いた喇叭の合図で俺達はみんな見分の家につんばり棒をおっかって家を出た俺達の申し合せは不在同盟!...
街の乞食今野大力
5分以内
銀座の通りに畑が出来て緑青々とした麦畑が出来ようと空想していた友よ一きれのパンをむしって乞食の子に与え慈善をしたつもりの青年があった。
夢と幻を見る家今野大力
5分以内
寝室とも書斎とも名附け難い私の室ここで私は私の好きな事をする私の家は小さな家である北国のヌタプカムシペ山脈の畔である上川平野の隅であるチュウベツを言うアイヌ人種が五十年の昔鹿を追い熊を追い狐を追った処である今まだ太古の伝説鮮やかなる殖民地の一小邑である私はここに住んでいるそして小さな安らかな新しい材木の香のする家に父母があたえた、ささやかな幸福をひたぶるに恋してゆっくりと味わ...
我等の春今野大力
5分以内
春の丘を超えて歩んで来た息子の母は慈愛にみち春の大地のようにふくふくとめぐみにみちていた。
今野大力
5分以内
お前は俺の子供おれはお前の父親おれはお前の親となって六月だお前は生れた時この頭がおれの握り拳位だったずい分と大きくなったなお前の顔がおれに似て居るようだし今添寝して居る母にも似て居る誰彼がそう云ったそれはほんとうだろうかねむったお前お前は今ずい分よくねて居るさっきはあんなにおれに困らせたんだが母の乳房に乳がなくなりゃお前にとっては全く一大事だから泣いて泣いて...
麦やきの日今野大力
5分以内
人手なき独り者治兵衛の麦はせに飛火して燃えうつり泡を喰った治兵衛は麦束もて火を叩く風つのり火はさかり麦はせは凡て燃え治兵衛は大火傷やけどした六十男治兵衛はわめきつつこげのこる麦の穂をかき集めかき集めかなしさと痛さとに大声で泣きわめく一九三四・六。
碇泊船今野大力
5分以内
船腹の色のはげ落ちた惨さは遠く波濤とたたかって来た今は疲労になやんでぐったりと体を伸べたようないたわりの心を感ずる廃船のようではないか英蘭の旗を船尾に立てて見れば船員が二三人甲板に出て立っているあの船員の眼は碧く頭髪は褐色に染み彼ら異邦を航海する人々雪降り暮るる港にあり。
本土の港を指して今野大力
5分以内
津軽の海風は暮れ行く夕日の彼方へと連絡船を冷たく吹き送る桟橋に立ち去り兼ねて見送る人々とも別れて身をマントに包み頬をうずめて物蔭甲板に佇めば防波堤に点る明滅の灯火も見えずなり巍然たる函館山の容姿も次第に海をへだてて水夫の投げこんだ速度計の速めらるるままに闇の中に失われゆくかくて海峡の海は次第に荒く空よりは白き贈り物音もなく真闇の中に降り来り、海に消えマストに積る船は船底にひびくエンジ...
兵士の綱今野大力
5分以内
「引け!」イチニ、イチニ、イチニ雨が降る秋に降る冷たい雨、落葉を叩く頬を打つ流してはならぬ涙の様イチニ、イチニ、イチニ中途でぐうんと引かかる、よろ、よろ、よろ、重たいゆるがぬ万億の重量「止まれ!」班長、ちっとあおそすぎないか六人の肩に絨衣を通して肩に割り込む兵士の綱グレンの代りに使われる架橋工事の兵士達雨の中、川をこいで綱を引く「初め!」イチニ、イチニ、イチニする...
高窓に見える青空今野大力
5分以内
小さな高窓高窓に見える青空この青空に走っている無数のラジオの声ブル共はそのラジオで相場の上下を語り奴隷の歌をうたわせながら満洲パルチザンの活動に驚愕のニュースを飛ばし国際聯盟の脱退を問題にしているだろう、だが、それよりおれたちのこの小さな高窓に見る青空にはすべての日にあのモスクワのコミンターン(国際共産党)の大放送塔からおれたちプロレタリアのために闘う世界中の同志の耳へ輝きにみちた勝利のニュース...
立待岬にいたりて今野大力
5分以内
露西亜の船の沈んだ片身に残したと聞く石を抱いてわれは又ある日のざんげをするか函館山は高く要塞地として秘密を冠るおごそかな壮大なる岩礁の牢たる屹立は東方に面して何をひそかに語りつつあるか黒鳥のあまた岩に群がり波に浮び魚を捕うかつてここら立待岬のアイヌ達は魚群の来るを銛(もり)を携えて立ち待てりと伝う東海の波濤のすさまじく寄せ打つ処崖上の草地にマントを着たる四五人の少女等寝そべり...
航海今野大力
5分以内
大いなる家鴨の姿に似たる連絡船の三等船室にて不愉快な動揺を感じ軽い頭痛に悩まされ渡り行く島の奥地に痛み悩む母への哀切に泣きつつひとりし寝転べば出稼人夫等の行く先々の未だ見知らざる地への憧れに満ちたる足に触れ最初は驚き縮んだ私ではあるが夢を持たない旅人のあらぬことをしみじみ我ながら感じては貧しき出稼労働人の心にもろくも兄弟達の涙を感じ足を伸べ組み添え瞳を交し微笑さえ見せて無言の...
軍服を着た百姓源造の除隊今野大力
5分以内
「おお源造よ帰って来たか」つまごをはき、雪路を踏んで、馬橇の上で別れて行ったあの日、「俺あクジ逃れだ、俺には只一人のお母がいる、お母はおいぼれ……」「でも源造よ、お上はお前や俺等のために、どうにもなんめいぞ、誰ぞと代って下されと、あれ程ねがったんだに仕方のねい世の中だ諦められない世の中よそんだば、元気で行ってこう源造よ、元気でだぞお!」戦争におびやかされ戦争は明日にもあるらしい『戦争が初まったら…...
虐殺の記念日今野大力
5分以内
砂時計はさらさらと流れる民衆の赤き血は流された到る処に銃火と剣戟がひらめいた到る処に窮乏と犯罪が増加した新聞紙はもっと恐しい話を捏造する伯林ではパリーの革命を報道するフランスの都ではリーブ((ママ))クネヒトの死が印刷される……アンリ、ギルボウ「自分を免職し得るものは民衆のみ」と独逸独立社会党員アルヒホルンは拒絶した。
俺達の農民組合今野大力
5分以内
たとえ豊作であろうとなかろうとたとえ凶作であろうとなかろうと彼達の為めに地主達が共謀してこさえているブルジョア政府にはどれだけのどんな対策があるか。
飢えたる百姓達今野大力
10分以内
稲の穂先へ米が幾粒実ったとてもそれが生活への打撃の少ないものはいい一粒の種から一粒の穂先が首を天上へ――野は早くも荒涼寒冷に夜はあける稲ハセは痩せて鳥の飢えたる鳴き声に不吉な暗示を、百姓達はああどうしようもない組合もないいや増しに来る寒さは吹雪となって腿引の破れへ首を釣り穀物の尠い土地に雑草の種は蒔かれる。
伊豆の伊東へ今野大力
5分以内
地図を見ればここは伊豆伊豆の温泉、伊東の町熱海より五里余汽車もなければそびえ立つ岩肌を穿(うが)ち堀りけずり辛くも自動車の往来するこれこそ羊腸の道怪異の岩礁出でて緑の松腰を折ればそこは眺望絶佳といわれてラムネ、レモンを売る腰掛茶屋も並びあり異人の女一人遠き伊豆の山肌を写しており伊豆の山の美しさはわれをして故郷にある貧しけれど情みつる母の心情のうるおいを憶しめ病児を...
S療養所点景今野大力
5分以内
療養所の看護婦はいつも廊下をみがいているドアーのハンドルをみがいているいくらみがいてもピカピカ光る程この療養所の建物は新らしくないそれでも毎日看護婦は廊下をみがきハンドルをみがく主任が真先に立ってやって見せるし主任の命令がきびしいので看護婦は今日もみがきやになってる病室に入って病室のうすきたなさはちっともきれいにされない病室には廊下など歩くはおろか半身を起せぬ患者が呻吟して居...
秋吹く風今野大力
5分以内
カラカラカラ風が吹くポプラのはっぱが吹かれてる風は面白そうに走ってく四辻に風は迷ってぐるぐるまわりあの人をそよと尋ぬ((ママ))てためしし((ママ))てぷっと口吻け逃げてゆく。
新らしいスローガンについて今野大力
5分以内
太平洋の島国へ一つの智恵が送られてきた智恵をあふるるばかりにくまなく抱く本が送られてきた智恵はまもなく人々のものとなりかけたしかしこの国の人々はその智恵をいろいろに受けとった誰がこんなことをしたのかある頁が破かれていたある頁に加筆されていたある頁は抹殺された、ある頁は巧妙に張りかえられた真実は偉大なる真実は遂に万人のものとなり得なかった多くの人々のもとへは片ちんばの智恵が走りこみ眼っかち...
幼な子チビコ今野大力
5分以内
チビコは今年三つになりました、チビコのお父さんは肺病でねています、チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、稼がなければ喰べられないからチビコはある晩ばあちゃんに抱かれてねながら「メメが痛いメメが痛い」とパッチリ目あけたまま泣いて泣いて眠りませんでした、そして翌日、ゲッゲッと食べ物を吐き出しました、メメは目ではなく腹のようでした、「チビコお父っちゃんあるかい」「ある」「チビコのお母ちゃんバカだね」...
形象の献辞今野大力
5分以内
生命形象の末路にこそわれは華やかなる讃美を贈らんかな生長に太りゆく肉体と自然それら皆空々無色の透明体となり精霊のみあれよ而して無用なる形態一切は生れ出でし日の永劫記念に神前の土深く埋葬し献ぜんかな。
※©マークのついた作品は著作権が存続しています。 詳細は青空文庫公式サイトの取り扱い基準をご確認のうえ、取り扱いの際は十分注意してください。
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