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今野大力の全作品

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1-50件 / 全119件
作品名著者読了時間人気
少女受胎今野大力
5分以内
少女 子を孕めるという 太りたる腹はみにくくかわいらし 少女 子を孕めるという 十月なる日を算えては頬笑める 孕めるは何の摂理ぞ 夜深く何を悩める 人の世に明日あり 今日あり さて遠く夢想の国に 青き花咲くとも聞けり 孕めるは何の摂理ぞ 少女 子を孕めるという
写真(北満の土産)その一今野大力
5分以内
どれもこれも貧しくけだもののように虐げられふけた表情をもった北満の農民の ズラリと並んだ十人の子供達 五つ位の女の子はハデなよごれた花模様のズボンと上衣をきて 支那曲芸に出てくるような格巧 八つ位の女の子は労働者のオーバオールのようなやつを着て両口尻にカサを出しキリッと睨み、 七つばかりの男の子は 困惑したオジサンのようにふけてズボンの紐を ダラリと下げまゆをひそめて立っている 六つ位の男の子は一
白光礼讃今野大力
5分以内
明るい北国の十二月 終日雪は降っていた 一尺、二尺、それは容易な大空の変化のページェント 又軽やかに香う土へのプレゼント     * 或日その前夜を名残に、吹雪は綺麗に止んでいた、そして北国のヌタプカムシペ連峯と上川平野の野原とに それは雪国の特有な白光を輝かせて 天への一大讃歌をあげていた
墓場が用意された!今野大力
5分以内
歴史! 「歴史がこうであったから  これはこうであるべきだ」 てめい等はまるでブルジョア学者と同じように そこからどんな論理や哲学を引ずり出そうというのだ 歴史がたとえどうあろうと 俺達の現実にとって 俺達がこれから築いて行こうとしている 仕事のために 役になんか立ちそうもない 役に立つどころか、てめい等も御存知のない位 立派に反動を働こうなんて おお、そんなぐちッぽい歴史の講義なんて持ち出しては
未婚婦人今野大力
5分以内
1 未婚婦人の魅惑に対して私は今日本の未婚婦人へ散文を書送る。
馬を愛す今野大力
5分以内
馬を愛す 地表を走らせて競馬という 桜のすぐる頃 葉桜の蔭に 人々 金を懸て馬をひょろひょろと走らす 競馬という そして 人間 『馬を愛す』という
丘陵風景今野大力
5分以内
傾斜の丘に 菜の花黄ろく咲けば 軍団兵士の頭二個ばかり 丘陵の蔭に並び出で 銃先を見せすぐる
今野大力
5分以内
お前は俺の子供 おれはお前の父親 おれはお前の親となって六月だ お前は生れた時 この頭がおれの握り拳位だった ずい分と大きくなったな お前の顔がおれに似て居るようだし 今添寝して居る母にも似て居る 誰彼がそう云った それはほんとうだろうか ねむったお前 お前は今ずい分よくねて居る さっきはあんなにおれに困らせたんだが 母の乳房に乳がなくなりゃ お前にとっては全く一大事だから 泣いて泣いて の
徒弟今野大力
5分以内
いち早く冬の来る北方の街頭に 寒い空ッ風が吹きまくる 或る朝 理髪師の徒弟は店先を掃いていた 店先に一本の街路樹があった 落葉は風になぶられてあちこちに吹きたまる 正直な徒弟は幾度もそれを掃いていた 時が過ぎる 徒弟は街路樹に登った 木葉はもう一枚も街路樹に残っていなかった 徒弟は街路樹をゆすぶり 箒ですっかり叩き落していた 五・一八
学校今野大力
5分以内
教壇もない 机もない 椅子もない 教師の握る鞭もない この学校には粗末なベットがあり ベットは二十幾つも並んで ベットの上には 自分の肺をくさらせた青年がねている 一九三四年の日本の東京で 貧窮に 過労に 困苦に 生身の肺を病菌に喰わせて 遂に いく月も いく年も ここのベットにねたきりとなる。
醜面女人今野大力
5分以内
人間美学の深奥に いときらびやかなる女人の像は久遠である されど 醜面 白日のうちにさらけし 卑しき女人の相を見る こはこれけもののみにくさにあらず みにくしとも 蛇の如き呪いも見えず 人間のみの具有せる 暗愚なるものの像である
俺達の農民組合今野大力
5分以内
たとえ豊作であろうとなかろうと たとえ凶作であろうとなかろうと 彼達の為めに 地主達が共謀してこさえているブルジョア政府には どれだけのどんな対策があるか。
童話今野大力
5分以内
ある魂は玩具を抱きて眠ると言う しかも玩具とは、    せるろいど。
泣きながら眠った子今野大力
5分以内
何て騒々しい声だろう この場合の人間の泣声は決して同情に価しない あれはちいちゃい四つの女の子の泣声だが可愛そうにも考えられない ただうるさい 騒々しい 泣かないでくれればいい もう沢山だ 心の中でいくら 願ってみたって何にもならぬ 子供は少し熱があって からだがだるくって 消化不良のせいでもあるし 気分が悪いんだ、 どれを見てもきいてもいまいましいのだ、 よっぽどよっぽど 気分が変らない限り
亜米利加今野大力
5分以内
アメリカは正義人道を看板にして 非道な国際を売ってしまった 排日は夢の日本に対するしくみだ、あなどりだ 夢も幻ももたない トラウベル、ホイットマンを理想の詩人に祭りあげたアメリカ人 資産の外にはのぞみもない彼等は 貧しい夢の日本なぞ用もない あたり前の成行きだ ああ、ただ悲しい事実がある それは偽られた同胞のクリスチャンだ アメリカが偉そうにするもんだから そうかしらと思って信じた それが一枚看板
東方の窓辺にて今野大力
5分以内
私のいる家の東方に窓があった 私は農家の二階に間借りして幾十日かを過す身であった 私は自分の起居に不自由の身をそこに運び、 ひたすら、健康の日を恋していたのである、 かがやく健康の美しさは私の希望であった 私は東方に追憶の瞬間を持つ 私の室の東方の窓はそこへの視野を展開している ハコネの連山は眺望の彼方にある 山脈の起伏は無言に昨日も今日も変りはないが ただ風に送られる雲の往来と空色の変化とを発
もうおそい今野大力
5分以内
生かさせたいがもうおそい 両肺が全部やられている 猛烈な腸結核で 一日の膿の排出は多量で ちっとも消化力ない胃腸 痔が悪くって腎臓も悪くて 耳が悪くてもう全身 あますところなく悪化している これは医者が言うのだ、そしてあと 一月かどうかとすら公言する 熱が四十度をこえる 味覚は破壊されて 食慾が全くない 食慾がなく 熱を出して 毎日肉をけずっていれば やがてけずる肉のなくなった時 お前は死だ、
楔を打つ男今野大力
5分以内
久しくして 土を見ざる男なり 男、地に 楔を打ち よろこべり 歌うたう
新らしいスローガンについて今野大力
5分以内
太平洋の島国へ一つの智恵が送られてきた 智恵をあふるるばかりにくまなく抱く本が送られてきた 智恵はまもなく人々のものとなりかけた しかしこの国の人々はその智恵をいろいろに受けとった 誰がこんなことをしたのか ある頁が破かれていた ある頁に加筆されていた ある頁は抹殺された、 ある頁は巧妙に張りかえられた 真実は 偉大なる真実は 遂に万人のものとなり得なかった 多くの人々のもとへは 片ちんばの智恵
こころ今野大力
5分以内
こころ こころ くるしいこころ 痛みては傷つくこころ 何人とものを語るも 何人に慰められても 扉ひらかずわがこころ
金属女工の彼女今野大力
5分以内
小がらで元気がみちみち 眼と口と顔の据えられた位置が やや水平の彼方の空に向い 希望の、言葉ではなし、文章ではなし、絵でもなし ただ五尺たらずのからだに みちみてる熱意ある要求の表情。
幼な子チビコ今野大力
5分以内
チビコは今年三つになりました、 チビコのお父さんは肺病でねています、 チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、 稼がなければ喰べられないから チビコはある晩ばあちゃんに抱かれてねながら 「メメが痛いメメが痛い」とパッチリ目あけたまま 泣いて泣いて眠りませんでした、 そして翌日、ゲッゲッと食べ物を吐き出しました、 メメは目ではなく腹のようでした、 「チビコお父っちゃんあるかい」 「ある」 「チ
虐殺の記念日今野大力
5分以内
砂時計はさらさらと流れる 民衆の赤き血は流された 到る処に銃火と剣戟がひらめいた 到る処に窮乏と犯罪が増加した 新聞紙はもっと恐しい話を捏造する 伯林ではパリーの革命を報道する フランスの都ではリーブクネヒトの死が印刷される ……アンリ、ギルボウ 「自分を免職し得るものは民衆のみ」と独逸独立社会党員アルヒホルンは拒絶した。
ある歴史に就て今野大力
5分以内
星が一つ 森林の中の 忘れられた静かな湖水へ降りて来て 暫く思案にくれていた (それを知っていたものは誰もいない天空にいる星達さえも存じなかった) 星にも厭世があるのかしら? 星は湖水へ沈んで行った
音響今野大力
5分以内
一切宇宙の音響を失わしめよ 吾をして無韻の国土の王たらしめよ かくて孤りの声の響きあらしめよ
郷土今野大力
5分以内
1 草深い放牧地よ 北海の高原に群がれる人々を養える郷土よ 北海道よ 未開地よ ここには名もなき小花も咲くであろう 未だ人手に触れない谷間の姫百合も咲くであろう 春ともなれば黄金の福寿草も咲くであろう かくてアイヌ古典の物語も想い出されるであろう 2 おお郷土の人々よ 昔は 卿等が渡道の頃は 何処にも熊は住んでいた 時として卿等よ 憶い起してはならない あの殺伐な熊狩のあたりのことを 又若き人々よ
秋吹く風今野大力
5分以内
カラカラカラ 風が吹く ポプラのはっぱが吹かれてる 風は面白そうに走ってく 四辻に風は迷ってぐるぐるまわり あの人をそよと尋ぬてためしして ぷっと口吻け逃げてゆく
友と二人の夜今野大力
5分以内
遠い野中の家より 私を慕うて呉れる友は 今夜も十時がなって帰った 夜露を分けて来て呉れても あたたかいもてなしさえ 貧しい私達にはゆるされず ひとえの着物のはじを 幾度か合せ乍ら 語りても聞いてもほほえみ乍ら 何程のへだてた思いもなく ありのままの事を語らいて お互に解け合うよろこび 本箱からは 勝手なものをとり出して 入れ様ともせず 一ぱいに机の上につまされる 傍にも又誰ひとり じゃまになる人も
姉へ今野大力
5分以内
蒔付時に子を生んで あせって起きて働いて 足腰立たなくなったという 姉よ 何たる不幸ぞや 病気をした時 神主に拝んでもらって 紙っ切れを水でのまされて それでなおらば、 お安いけれど 去年□死んだ妹を 姉よまさかに忘れまい あの妹が死んだ時 足は青んぶくれ 顔はまんまるお盆のよう 眼が見えなくなったきり、 最後には わけのわからぬあれこれを 大声でわめいたっけ あのおとなしかった妹が いまも
たたかいの中に今野大力
5分以内
母を飢えさせ 妻子を飢えさせ 幼き弟を稼がせて どうやら俺のいない家が保たれている 「飢死の自由」は九尺二間の長屋を占領し 共同井戸の水さえくさってまずい 芋を煮て 仏壇に捧げようとも 心から、真に生命の極から 諦めぬうらみをこめて手向けとなり 俺が死なないように むざむざとうらみの手に殺されないように 無言のいのりがひそんでいる 平和な家庭――生活、 平和な生存、 おしゃべりなしの真剣な愛、
小林虐殺一周忌 二月二十日今野大力
5分以内
小樽から来た小林が 殺されたんだと 親に教えた俺だった やられたか やりやがったか 一日も二日も三日もねむられぬ 憎っくい下手人 ××の手先 小林が元気な頃は 又逢えるつもりでいたのに 殺されて 二度と逢いない 二度と逢いない 小林をとらえた刑事 抜けがけをやろうとしたか 全身の皮下溢血が無残な姿 犬や猫や豚を 殴って殺しても こんなに無惨に 殺せるものか 残忍、野蕃 鬼畜の如く 同志を
夢と幻を見る家今野大力
5分以内
寝室とも書斎とも名附け難い私の室 ここで私は私の好きな事をする 私の家は小さな家である 北国のヌタプカムシペ山脈の畔である 上川平野の隅であるチュウベツを言う アイヌ人種が五十年の昔 鹿を追い熊を追い 狐を追った処である 今まだ太古の伝説鮮やかなる 殖民地の一小邑である 私はここに住んでいる そして小さな安らかな新しい材木の香のする家に 父母があたえた、ささやかな幸福を ひたぶるに恋して ゆっく
狂人と鏡今野大力
5分以内
友よ わが一人の愚かなる人間の為めに 秘かに鏡を用意して呉れ給い そこに一人の狂人がいる 彼は真紅の夢を胎むことによって 恋をする愚かな狂おしい男である 彼の室は赤 壁の地図も赤 彼の思想も赤 赤 赤 赤  点々 点々 ベタベタ 赤色の中に芽ぐむ一人の生 友よ 彼は横臥することを好む 今こそ 彼に鏡を与えよ おお そして 見ろ! 彼の狂態が初まるのだ! 殺せ! (殺さねばこそ!) 狂人 狂態 
写真(北満の土産)その二今野大力
5分以内
貴族の表情をこさえるために ハルピンの白系露人の女は ジーッと物を見すえてうっかり動揺の見にくさを見せまえとし、古い宝石の腕輪や首かざりやピンに品物以上を物語らせようとし、 窮屈なほど口元をすぼめて上品さを見せんとしている。
東郷大将と彼今野大力
5分以内
彼のアジトには 東郷大将の肖像が壁にはられていた それからあの 「皇国の興廃此一戦に在り 各員一層奮励努力せよ」 という同じ東郷大将の筆蹟もあった 彼の家に二度三度 サーベルがやってきてこれを見て行ったし 近所のおしゃべり女房が窓の外から この平凡な風景を見て行ったし どうやら東郷大将は彼のために 煙幕作業をやっている 日露戦争の折には 人民の敵ツァーの艦隊を全滅させて ロシアに革命を早くさせ
やるせなさ今野大力
5分以内
〔一〕 単の着物を羽織りたい ま夏の時季が訪れた けれども私の白い単は 恰も乞食の着物の様によごれている     * やるせない心は、私の生立ちの 大切な、又、辛い負いめである 私は荷われた運命の様に 灯の下へも、川へも、丘へも ともなわねばならない これこそ私の友であるのだ     * 私はこれまで、商人達、友達、 ああ私よりはたしかに裕福な人達にどんなにか いやな思いをさせたろう けれども私
屈辱今野大力
5分以内
この一本のレール この一本のリベット この一本の枕木 この掘割、この盛り土 このコンクリート その上を平穏に走って行く機関車 機関車は一つの鋲から 一つのネジ 一つの管から、一つの安全弁 その機関車に焚く一塊の石炭までも 何から何まで、ピンからキリまで おお これが誰の仕事の成果であるか すべてはタコだらけの手のひらでなで 俺たちの仲間の労働がつくった 機関車はレールを辷る 機関車は今運転されて
農奴の要求今野大力
5分以内
雪に埋れ 吹雪に殴られ 山脈の此方に 俺達の部落がある 俺達は侯爵農場の小作人 俺達は真実の水呑百姓 俺達の生活は農奴だ! 俺達はその日 隊伍を組んで 堅雪を渡り 氷橋を蹴って 農場事務所を取巻いた 俺達はその日の出来事を知っている その日俺達の歩哨は喇叭を吹いた 喇叭の合図で 俺達はみんな 見分の家につんばり棒をおっかって 家を出た 俺達の申し合せは不在同盟! 俺達は侯爵の秘密を知り 俺
今日もまた今野大力
5分以内
我いのち今日もまた その一つをば切りつめぬ 弱きもの何故ぞ 虐げられて 今日もまた泣いて過しき
奪われてなるものか今野大力
5分以内
君はおれの肩を叩いてきいてくれる 君は親しげなまざしでおれを見る おお君はいつもおれの同志 おれたちの力強い同志 しかしおれには今 君の呼びかけたらしい言葉がきこえない 君はどんなにかあの懐かしい声で 留置場からここへ帰って来たおれに 久方ぶりで語ってくれたであろうに おれには君の唇の動くのが見えるだけだ パクパクとただパクパクと忙しげな 静けさ、全く静けさイライラする静けさ 扉の外に佇っていた
鱒の話今野大力
5分以内
濃緑のあかだもの木の下にて 三十を越えた 四十あまりの人の話をきく 二十余年北国の地に流浪して 絶えず山水に親しみながら 生活を続けて来た人の話である 面は陽に赫けている ひげはおとなしくあご一面に ぼうぼうと生えている アイヌとも妥協して 或は独木舟に乗り激流をさか上った 事もあると言う 熊狩りに魚捕りに 野に山に宿した事もあると言う 長い半生にありし物語の さも面白そうな話ぶり ちょうど今頃
組織された力今野大力
5分以内
どこからか捲き起された風 渦になり、平になり、縦になり 吹きまくってゆく、突風! 疾風! 屋根柾が矢のように走ってゆく 塗炭板がぐうおうと引ぺがされて 空をうなりながら飛んでゆく ぐう、おう、ひゅう ひゅう、おう、ぐう 物凄い力となって 粉々と雪を掻っ飛ばして 平原を十数丈の高さで ぐんぐんと押よせる風陣! 街の中も、原っぱも、村の街道も 猛火のような怒りと憎しみに燃え立って 前面に押し出し流さ
高窓に見える青空今野大力
5分以内
小さな高窓 高窓に見える青空 この青空に走っている無数のラジオの声 ブル共はそのラジオで 相場の上下を語り 奴隷の歌をうたわせながら 満洲パルチザンの活動に驚愕のニュースを飛ばし 国際聯盟の脱退を問題にしているだろう、だが、それより おれたちのこの小さな高窓に見る青空にはすべての日に あのモスクワのコミンターン(国際共産党)の大放送塔から おれたちプロレタリアのために闘う世界中の同志の耳へ 輝きに
星と過去今野大力
5分以内
星はある夜 緑の灯を輝やかし 仲よく円座で評議する 星はある夜 右手を長くさし伸べて 神秘な事件を信号する 星はある夜 さやさやさや 清水の流れにたわむれる 星はある夜 森林の小枝に 小さな首を吊していた
寺院の右にて今野大力
5分以内
古典の縁起を語れる大楼門の右にて感ずるは 極めてあわれなる庶民等が心中ぞ土に生くるものの幸を忘れて自己等が建つるこの寺院に拠り魂のざんげをせん人々のかなしさぞ     * 鳥けものの屍土に在りて 此処は人の香もせざりし頃より 未だ幾年を経しか 魂は未だに限りもなく 深山幽谷の彼方に憧れあるに 愚かなる望郷の者達は ここにあり往かんとせじ せめては古典のめぐしみに 会せんとのみ願えるか 我等北国の叢
立すくむ今野大力
5分以内
私はいろいろな過去の日記や書きちらしや、あちこちの新聞雑誌へ発表したものや、その折々の切抜や、自分を育ててゆくための材料を古い家に置きっきりだった、転々と私は歩いた、私はそれらに目を通さなかった、私の過去は忘れ去られつつあった 私は常にぽっかりと新らしい場所へ新らしい考えの中へ出て、そこから短かいものだけを、しかも又その場その場へ置いて歩いた、だから私は何年かぶりで病にたおれて古い家へかえりその古
街の乞食今野大力
5分以内
銀座の通りに畑が出来て 緑青々とした麦畑が出来ようと 空想していた友よ 一きれのパンをむしって乞食の子に与え 慈善をしたつもりの青年があった。
祈願今野大力
5分以内
吾をして生命の本道に歩ましめ 吾をして美しき言葉あらしめよ 神よ 呼ばず 語らず 黙として 吾は殉情の勇士となる
トンカトントンカッタカッタ今野大力
5分以内
トンカトンカトン トンカトンカトン  これは隣りのシャフトから樋を通って来るベルトが樋板を叩いている音だ。
一疋の昆虫今野大力
5分以内
一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた 昆虫の目指すは北 薄暗い北 病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、 この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い 昆虫は北方へ出口を見出そうとする 天井と北側の壁の白堊を叩いて ああ幾度往復しても見出されぬ出口 もう三尺下ってドアーの開いている時だけが 昆虫が北へぬける唯一の機会だが、 昆虫には機会がわからず 三尺下ればというこ
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