5分以内で読める青空文庫の短編作品
青空文庫で公開されているすべての著者の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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落葉 | 木村好子 | 5分以内 | |
落葉よ、落葉よ、秋風に吹かれて、お前がカラカラと鳴り乍ら井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、舞いこんでくると、おお、私は胸ふたがれる!何一つもたらすことなく、過ぎ去った日の一日一日をただ、えいえいとつづれつくろい、米かしぎ凡ての希みも、よろこびも、かなしみさえもおき去りにして生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、ああ、お前は散ってゆく、秋風になぶられて、舞い乍ら…... | |||
極めて家庭的に | 木村好子 | 5分以内 | |
すそを吹き上げる北風は凍りおおいのない、野天の井戸洗い物をしぼる手はまっ赤お前は温順お前は過去の女ぱっと冷いしぶきがとびかかる私は空を仰いだくらくらと瞼をおおうおもい冬空生活はつづく新しいものと古いものがごっちゃになってどんでんがえり新しいモラルの前では或る女たちが特権を以て針を折りひしゃくを投げすて昨日のくびきをふりほどくそこには... | |||
洗濯デー | 木村好子 | 5分以内 | |
ぷんとにおって来る力強い体臭!おおこの汚れ物のにおいこそ獄内の闘いのはげしさを語るあの人達の生々しいいぶき――さあみんな元気で初めようあたしはポンプ押し千代ちゃんはすすぎ役みんなそろってごしごしざあざあうらみをこめて洗い流す奴等のテロルに汚された垢を油汗を空は秋晴れあつらえ向きの洗濯日和なかでがんばる同志達にせめて小ざっぱりした物を着せるため妾(わたし)... | |||
兄ちゃん | 木村好子 | 5分以内 | |
吹きっさらしの田圃にはもう、村の誰も出ていないだのに、私の家では麦蒔きがすまない取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されてあとに残った女手二つ私とおっ母とであくせくと麦蒔き毎日、朝早くから晩おそくまでかたい刈株をうちかえし、うねをつくりせっせと蒔きつけを急ぐ私達――かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくるおお兄ちゃんが満州へ引ったてられて行ってから... | |||
メーデーを待つ | 木村好子 | 5分以内 | |
うす暗い長屋のすみで、毎日、私と坊やは糊まみれ、糊にまみれてせっせと渋団扇を張るけれど戦争にあなたを奪われた私の生活張っても張っても追っつかない苦しい暮しの真ただ中で――おお早や五月闘いのメーデーが来る!おお戦争と白テロの渦巻く中今年のメーデーはどんなにすごかろうそれにつけても忘れられぬあなた!去年、あのだらしない葬式行列に組合の人達と一緒に割り込みの先陣をうけもったあなた、あなたは今は何処... | |||
身体検査日 | 倉橋潤一郎 | 5分以内 | |
その日学校では不安なざわめきが感ぜられ私はいくつかのあわれなささやきに耳をいためたつと立ち寄りじっとその子の瞳をみているとうちしずみものかなしいうったえるような色を浮べてじっとみかえすお前もか!お前もか!私はうったえる瞳の奥にひろがる貧しい生活を思い浮べ黙って生きてゆかねばならない曇った運命をかなしんだ先生!蓄膿病ってなおるでしょうか?淋巴腺、アデノイド、扁桃... | |||
みんな悲しげにそう思う | 倉橋潤一郎 | 5分以内 | |
胡瓜つくってもいいトマトつくってもいい南瓜も西瓜も茄子も高い肥料代や小作米にくわれる二番稲をつくるより野菜をつくって市へだすのがなんぼいいかも知れない山の向うの村からはこんで来るリヤカーの群をみるとみんな悲しげにそう思う今朝もおっかあ達はここ町の入口でがやがやとかけひきに余念がない家の側を流れる溝で夜になって月にぬれて野菜や果物を洗ってみたい自分で... | |||
世はさながらに | 三好達治 | 5分以内 | |
月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして業平かなたなる海にむかひてかしらあげさへづる鳥はこぞの春この木の枝にきて啼きし青鵐のとりかかぐはしきこのくれなゐの梅の花さけるしたかげこれやこのこぞの長椅子古りしままなほくちずしてこぞありしほとりに咲けるはしきやしたんぽぽの花宿をでてもの思ひつつゆくりなくわが來しをかべあづさゆみ春の... | |||
海から昇る太陽 | 三好達治 | 5分以内 | |
ああ海から昇る太陽太陽今しののめの藍と薔薇との混沌を蹴破つて昇る太陽かの紅のかのまるく大きなるかの重たげなるもの虚空のうちを押渡るかのまぶしきものかの團々たる黄金光の聖母胎ああかの今わが涙にまでそのほのかなる暖かみもてもの言ひかくるもの太陽おお太陽海から昇る太陽われ永くおん身の朝ごとにそこに在りてかくまるく大きく赤くわれらが遊星の空... | |||
かつてわが悲しみは | 三好達治 | 5分以内 | |
かつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへりかつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへり五月またみどりはふかく見よかなたに白き鳥のとぶありおのが身ははやく老いしかこの日また何にいそぐやあてどなき旅のひと日の夕ぐれの汽車のまどべにかの丘はしづかに來りかの丘は來りぬかづく見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐりたり見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐり... | |||
呪咀 | 土谷麓 | 5分以内 | |
私の行手に横たわっていた白い墓が今度は起き上ってじっと私の顔を見ている私にはそこにゆくより路がない。 | |||
海よ | 三好達治 | 5分以内 | |
門を閉ぢよ心を開け……それで私は表を閉めて裏の垣根を越えてきた蜜柑畠の間を拔けて海よお前の渚にかうして私は一人できたああ陽炎のもえる初夏の小徑眩(めくる)めく砂の上で海よ私は何を考へよう思出のやうにうすぐもつて藍鼠色にぼんやりした遙かなお前の水平線私はお前に向きあつて私は世間に背中を向ける門を閉ぢよ心を開け……それで私は表を閉めて裏の垣根を越えてきた海... | |||
日まはり | 三好達治 | 5分以内 | |
橋の袂の日まはり床屋の裏の日まはり水車小屋の日まはり交番の陰の日まはり頽(くづ)れた築地の上に聳える路ばたの墓地の日まはり丘の上の洒落た一つ家そのまた上の女學校の寄宿舍の庭の日まはりああ日まはり日まはりそれは旺んな季節の洪水七月この海邊の町を不意打してこの小さな町をとりかこみ占領し彼らの眞晝の凱歌をうたふ日まはり日まはり彼方町はづれの踏切にも... | |||
秋日口占 | 三好達治 | 5分以内 | |
われながく憂ひに栖みてはやく身は老いんとすらんふたつなきいのちをかくて愚かにもうしなひつるよ秋の日の高きにたちてこしかたをおもへばかなしすぎし日の憂ひならねばあまからぬこの歎きかな見よ彼方日は眞晝藍ふかき海のはるかに眞白なる鴎どりはも一羽ゐてなに思ふらん波の穗にうかびただよふ願はくばわが老いらくの日もかかれ世の外にしてつたなかる心... | |||
老いらくの身をはるばると | 三好達治 | 5分以内 | |
老いらくの身をはるばるとこのあしたわがふるさとゆははそはの母はきたまふおんくるまうまやにつかせたまふにはいとまありけりわれひとりなぎさにいでて冬の日のほのかほのかにあたたかき濱のおほなみひるがへる見つつたのしも眞鶴の崎の巖が根大島のはるけき烟見はるかしゐつつたのしもあはれよないつかその子も皺だたみ老いんとすらんまづしかる旅のすみかにははそはの母はおとな... | |||
「地球図」序 | 太宰治 | 5分以内 | |
「新潮」編輯者楢崎勤氏、私に命ずるに、「ちかごろ何か感想云々」を以てす。 | |||
『姥捨』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「葉」「列車」「I can speak」「姥捨」「東京八景」「みみづく通信」「佐渡」「たづねびと」「千代女」この短篇集を通讀なさつたら、私の過去の生活が、どんなものであつたか、だいたい御推察できるやうな、そのやうな意圖を以て編んでみた。 | |||
『思ひ出』序 | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「思ひ出」「ダス・ゲマイネ」「二十世紀旗手」「新樹の言葉」「富嶽百景」「餘瀝近事片々」「思ひ出」けふまで創作集が五册出てゐるから、それぞれの出版主にお願ひして、一册から一篇づつ拔き取ることを許してもらつた。 | |||
『風の便り』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「風の便り」「新郎」「誰」「畜犬談」「鴎」「猿面冠者」「律子と貞子」「地球圖」昨年の夏に出版せられた創作集「千代女」の以後の作品を集めて、ただいま讀者にお贈りする。 | |||
『玩具』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「玩具」「魚服記」「地球圖」「猿ヶ島」「めくら草紙」「皮膚と心」「きりぎりす」「畜犬談」「玩具」から「めくら草紙」に到る五篇は、私の第一創作集「晩年」から選び出した作品である。 | |||
『猿面冠者』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「猿面冠者」「ダス・ゲマイネ」「二十世紀旗手」「新ハムレツト」このたびの選集には、大戰中に再版できなかつた作品だけを收録した。 | |||
『女性』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「十二月八日」「女生徒」「葉櫻と魔笛」「きりぎりす」「燈籠」「誰も知らぬ」「皮膚と心」「恥」「待つ」昭和十二年頃から、時々、女の獨り言の形式で小説を書いてみて、もう十篇くらゐ發表した。 | |||
『東京八景』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「東京八景」「HUMAN LOST」「きりぎりす」「短篇集―一燈・失敗園・リイズ」「盲人濁笑」「ロマネスク」「乞食學生」作者が、作品に説明を附けると、讀者は、その説明文に頼り過ぎていけない。 | |||
『富嶽百景』序 | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「富嶽百景」「女生徒」「滿願」「駈込み訴へ」「女の決鬪」「走れメロス」「彼は昔の彼ならず」「ロマネスク」明治四十二年の初夏に、本州の北端で生れた氣の弱い男の子が、それでも、人の手本にならなければならぬと氣取つて、さうして躓いて、躓いて、けれども、生きて在る限りは、一すぢの誇を持つてゐようと馬鹿な苦勞をしてゐるその事を、いちいち書きしたためて殘して置かうといふのが、私の仕事の全部のテエマであります。 | |||
『女神』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「美少女」「春の盜賊」「誰も知らぬ」「善藏を思ふ」「盲人獨笑」「服裝について」「令孃アユ」「女神」久しく絶版になつてゐた創作集の中から、割に輕いタツチの小説を集めてみた。 | |||
『ろまん灯籠』序 | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「懶惰の歌留多」「古典風」「ろまん燈籠」「貨幣」「隨筆―海・津輕地方とチエホフ・返事」この集には、あまい、ロマンチツクとでもいつたやうな匂ひの作品を選んでみた。 | |||
『老ハイデルベルヒ』序 | 太宰治 | 5分以内 | |
所收――「兄たち」「愛と美について」「新樹の言葉」「老ハイデルベルヒ」「おしやれ童子」「八十八夜」「秋風記」「短篇集―ア、秋・女人訓戒・座興に非ず・デカダン抗議」「俗天使」「花燭」昭和十四年五月に「愛と美について」さうして、昭和十五年四月には「皮膚と心」が共に竹村書房より出版せられ、おのおの初版二千部くらゐを市場に送り、間もなく品切れとなつた樣子であるが、用紙不足の爲、竹村書房に於いても再版かなはず、この二つの創作集はしばらく、絶版同樣になつてゐたのである。 | |||
『パンドラの匣』あとがき | 太宰治 | 5分以内 | |
この小説は、終戰後に仙臺の河北新報社から出版せられたものであるが、河北新報社が或る印刷技術の支障に依り、再版に手まどる樣子で、讀者の要望もある樣子だし、河北新報社出版部の宮崎泰二郎氏の好意ある了承のもとに、その再版を、岩月英男君にゆだねた。 | |||
黒石の人たち | 太宰治 | 5分以内 | |
津輕に疎開中、黒石町にいちど遊びに行つた事があります。 | |||
田中君に就いて | 太宰治 | 5分以内 | |
田中君の作品に就いてよりも、まづ田中君の人間に就いてお知らせして置いたはうが、いまは、必要なやうに思ひますから、そのはうだけを、少し書きます。 | |||
文庫版「芸術の円光」覚書 | 北原白秋 | 5分以内 | |
「芸術の円光」は昭和二年三月、アルスより刊行された。 | |||
板垣先生の銅像を拝して | 槙村浩 | 5分以内 | |
(一)たそがれ告ぐる鐘の音に誘はれて散る木々の葉の雪は夕日に照りはへてげに厳めしの銅像や(二)自由の祖先高知市の偉人を偲ぶ銅像の其の勇ましき姿こそ永き偉人のかたみなれ(大正十三・一・六)。 | |||
英雄ナポレオン | 槙村浩 | 5分以内 | |
南欧の夜の更け行けば空には清き星の数銀河の影もたなびきて風は香りて薫ばしき月は折しも青く冴え波も静けき海原に俄に殺気みなぎりてなびく異国の旗の影沖の鴎も怪みて水の上遠く飛び行けば羽ばたきに散る水煙銀月ゆらぐ春の海東雲の空月落ちて残星光失へば彼方に霞む紅の雲を破って朝の風天気に響く万歳に馬に鞭あて英雄の後に残すや砂煙パリをさして急ぎ行く... | |||
世界大戦の後 | 槙村浩 | 5分以内 | |
今より凡そ八年前大正三年の六月も将にくれんとする時、突如天の一方より来った飛電は全欧否全世界の人民を驚倒せしめ、わづか九日の間で英仏独墺露の五強国は戈をふるって立った。 | |||
入所時感想録 | 槙村浩 | 5分以内 | |
六三五番氏名吉田豊道犯罪するに至った筋道を記せ自分ハ最初世上ノ俗論ニ迷ハサレテ、マルクス主義ハ一箇ノユートピアニ過ギナイト信ジテ居タ。 | |||
我々は牢獄で何をなすべきか | 槙村浩 | 5分以内 | |
現在ほど、国家機構に直面する牢獄におけるわれ/\の態度の乱れ勝ちな、しかも現在ほど、その統一を必要とする時代はない。 | |||
幸福 | 加藤一夫 | 5分以内 | |
ほんの僅かな時でよい生活のわずらいから脱れ静な時をもつ事は――おお何と云う仕合せだろう昨日私は書斎でたった一人ッきりの私の世界で海を越えた遠い国の心の友の著書を読み今日も亦(また)別の友のを読んだが私は私のこころにふれ私の一番懐しい私を彼処にそして一人はもう此の世を去った過ぎし日に時と処とを越えて見出したああその歓びその深い歓び永遠の自分を感じた霊の潤... | |||
あるひとに | 森川義信 | 5分以内 | |
もうとどかない花の日よりもさびしかつたつかれのやうに羞んで古い折返しの向ふへかくれたひとよもうとどかない花の日のやうにいつまでもぼくは考へてゐる。 | |||
海 | 森川義信 | 5分以内 | |
貝がらのなかに五月の陽がたまつてゐる砂の枕がくづれるとぼくはもはや海の上へいたんだ心臓は波にさらはれ青絹の野原をきのふの玩具がうごいてゆく。 | |||
季節 | 森川義信 | 5分以内 | |
葉ざくらの蔭が青い硝子の花になりアメシストの鏡から水も流れてゐたな若い従妹たちの髪を歌のやうに洗つてゐたな。 | |||
漁村 | 森川義信 | 5分以内 | |
波がものを言ふやうになつてから誰も姿を見せない砂浜に抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が私生児を抱いて立つてゐたそれは――生きる為には、生きる為には泥蟹をまで食べなければならぬ悲しい漁村の一つの姿である夢を見ることのゆるされない漁村の娘は今日泥蟹の殻ばかりを捨てに行くのだつた。 | |||
冬・断章 | 森川義信 | 5分以内 | |
鴉は――異教徒だ2誰だ――坂の上で笛を鳴らして逃げたのは母よ、もうラムプを消そう。 | |||
冬 | 森川義信 | 5分以内 | |
花の咲かない樹があつた樹の下には小鳥の死んでゐる鳥籠が鳥籠の揺れる窓はひらく日もなく硝子は曇つてゐた。 | |||
うし | 濤音 | 5分以内 | |
お冠船に帆をおろすさわぎはやんで、はやお主加那志前お迎へか。 | |||
かめ | 濤音 | 5分以内 | |
まがどりのやうな冠船が翼をひろげて那覇港内にしやんで居るうちは薩摩の殿にはあへまいわなあ。 | |||
親父の言葉 | 長沢佑 | 5分以内 | |
この頃の寒さに足腰の痛みにわしは憶い出すんだ忰のことがやっぱり親子のつながりだわい「お前等にもわかる時が来る」今になって彼奴の言葉が身に滲みてくる彼奴の云ったこと彼奴のやって来たことやっぱり貧乏人のやらねばならんことだったのだ憶い出すと身震いがする彼奴の入営した翌年春の大争議にわしら四百の小作は××川の土堤で警官と軍隊に取り巻かれた鍬が飛んだ、石が飛んだ剣が抜かれ... | |||
白い魔の手 | 長沢佑 | 5分以内 | |
七月――焼けただれた太陽が地を射す幽明の地をめざして行進する華やかな一群臨時列車は、――海へ――山へ……………………誰だッ?汗を吝(お)しむ奴等は?土堤の上にはわんわんと燃えるかげろう、じりじりと焼きつける田の底頭上には、太陽がありったけの元気で踊ってる。 | |||
母へ | 長沢佑 | 5分以内 | |
一九二九年四月十六日未明、同志吉田君はやられた。 | |||
貧農のうたえる詩 | 長沢佑 | 5分以内 | |
春――三月――薄氷をくだいておらあ田んぼを打っためっぽー冷こい水だ足が紫色に死んで居やがる今日は初田打晩には一杯飲めるべーと気付いたのでおらあ勇気を出したベッー※手に唾をひっかけて鍬の柄をにぎっただがやっぱりだめ手がかじかんで動かないちきしょうおらあやっぱり小作人なんだそれから夏が来た煮えかかるような田の中で俺達は除草機の役をする十日も続く指の先か... | |||
蕗のとうを摘む子供等 | 長沢佑 | 5分以内 | |
三月の午後雪解けの土堤っ原で子供らが蕗のとうを摘んでいるやせこけたくびすじ血の気のない頬の色ざるの中を覗き込んで淋しそうに微笑んだ少女の横顔のいたいたしさおお、飢えと寒さの中に今も凶作地の子供達は熱心に蕗のとうを摘んでいる子供等よ!お前らの兄んちゃんは何をして警官に縛られたのか何の為に満洲へ送られて行ったのか姉さん達はどうして都会から帰って来たのかお前らは知っ... |