萩原朔太郎の全作品
青空文庫で公開されている萩原朔太郎の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|
青空文庫で公開されている萩原朔太郎の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|---|---|---|
絶句四章 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
色白の姉に具されて。 | |||
秋の日 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
眼を惱(なや)む山雀の愁を分けて、秋の日乳母の里、梨寺に稚日想をなやみぬ花びら地に落つる音芥子ちるか秋なるにはた山なるにいと淋しや宵、また籠をいだいて憂ひぬ、鳥の病にああ疑ふ死せざらんや、いかでさて風ふかば、いかで聞かざらんや豆の葉の鳴る日を野面、雪に埋れし木枯あらばいかに淋しとて泣くこころ、鳥にかあらまし人... | |||
宿酔 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
堪へがたき惡寒おぼえてふとめざむれば室内の壁わたる鈍き光や障子を照らす光線のやや色づきて言ひ知らずものうきけしき物の香のただよふ宿醉の胸苦し腦は鉛の重たさにえたへず喉はひしひしとかわき迫り口内のねばり酒の香くるめくにがき嘔(ゑ)づく思そぞろにもけだもののかつゑし心獰惡のふるまひを思ひでて怖れわななく下卑たる女の物言ひざまはた酌人の低き鼻... | |||
なにか知らねど | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
なにか知らねど泣きたさにわれはゆくゆく汽車の窓はるばるときやべつ畑に日は光り風見ぐるまきりやきりりとめぐる日にわれはゆくゆく汽車の窓なにか知らねど泣きたさに。 | |||
秋 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
白雲のゆききもしげき山の端に旅びとの群はせはしなくその脚もとの流水もしんしんめんめんと流れたりひそかに草に手をあててすぎ去るものをうれひいづわがつむ花は時無草の白きなれども花びらに光なく見よや空には銀いろのつめたさひろごれりあはれはるかなる湖うみのこころもて燕雀のうたごゑも消えゆくころほひわが身を草木の影によこたへしにさやかなる野分吹き來りてやさしくも、かの高きよりくすぐれり(大... | |||
ものごころ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ものごころ覺えそめたるわが性のうすらあかりは春の夜の雪のごとくにしめやかにしてふきあげのほとりに咲けるなでしこの花にも似たりああこのうるほひをもておん身の髮を濡らすべきかしからずはその手をこそふくらかなる白きお指にくちをあてやみがたき情愁の海にひたりつくさむおん身よなになればかくもわが肩によりすがりいつもいつもくさばなの吐息もてささやき給ふやこのごろは涙しげく流れ出でてひるもゆふべもやむことなし... | |||
ふぶき | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
くち惜しきふるまひをしたる朝あららんらんと降りしきる雪を冒して一目散にひたばしるこのとき雨もそひきたりすべてはくやしきそら涙あの顏にちらりと落ちたそら涙けんめいになりて走れよひたばしるきちがひの涙にぬれてあららんらんと吹きつけるなんのふぶきぞ青き雨ぞや。 | |||
鳥 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
夕ぐれてほの痒くなる指のさき坂をくだれば一群の鳥は高きをすぎ行けり。 | |||
小曲集 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
×ほほづきよひとつ思ひに泣けよかし女のくちにふくまれて男ごころのさびしさをさも忍び音に泣けよかし×ほんのふとした一言から人が憎うてならぬぞえほんのその日の出來ごころつい張りつめた男氣がしんぞ可愛ゆてならぬぞえ。 | |||
小曲集 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
×千鳥あしやつこらさと來て見ればにくい伯母御にしめ出され泣くに泣かれずちんちろり柳の下でひとくさり×隣きんじよのお根ん性に打たれ抓められくすぐられじつと涙をかみしめる青い毛糸の指ざはり。 | |||
放蕩の虫 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
放蕩の蟲は玉蟲そつと來て心の底で泣く蟲夜としなればすずろにもリキユールグラスの端を這ふ蟲放蕩の蟲はいとほしや放蕩の蟲は玉蟲青いこころでひんやりと色街の薄らあかりに鳴く蟲三味線の撥(ばち)にきて光る蟲放蕩の蟲はせんなや。 | |||
暮春詠嘆調 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
×年ひさしくなりぬればすべてのことを忘れはてたりむざんなる哉かばかりのもよほしにさへ涙も今はみなもとをば忘れたり×人目を忍びて何處に行かん感ずれば我が身も老いたりさんさんと柳の葉は落ち來る駒下駄の鼻緒の上に落日は白くつめたし。 | |||
ありや二曲 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
×えこそ忘れめやそのくちづけのあとやさき流るる水をせき止めしわかれの際の青き月の出×雨落し來らんとして沖につばなの花咲き海月は渚にきて青く光れり砂丘に登りて遠きを望むいま我が身の上に好しと思ふことのありけり。 | |||
ふるさと | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
赤城山の雪流れ出でかなづる如くこの古き町に走り出づひとびとはその四つ辻に集まり哀しげに犬のつるむを眺め居たりひるさがり床屋の庭に石竹の花咲きて我はいつもの如く本町裏の河岸を行くうなだれて歩むわが背後にかすかなる市人のささやききこえ人なき電車はがたこんと狹き街を走り行けり我が故郷の前橋。 | |||
秋日行語 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ちまた、ちまたを歩むともちまた、ちまたに散らばへる秋の光をいかにせむたそがれどきのさしぐめる我が愁をばいかにせむ捨身に思ふ我が身こそびいどろ造りと成りてましうすき女の移り香も今朝の野分に吹き散りて水は涼しく流れたり薄荷に似たるうす涙。 | |||
虫 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いとしやいとしやこの身の影に鳴く蟲のねんねんころりと鳴きにけりたれに抱かれて寢る[#「寢る」は底本では「寝る」]身ぞや眞實我身は獨りもの三十になるといふその事の寂しさよ勘平さんにはあらねどもせつぷくしても果つべきかても因業なくつわ蟲。 | |||
便なき幼児のうたへる歌 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
うすらさびしき我が身こそ利根の河原の石ひろひひとり岸邊をさまよひて今日も小石をひろふほど七つ八つとなりにけり。 | |||
くさばな | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
君はそれとも知らざれど我が手に持てる草ばなの薄くにじめる涙にも男ごころのやるせなき愁の節はこもりたり。 | |||
うすやみ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
うすやみに光れる皿あり皿の底に蟲かくれ居て啜り鳴く晝はさびしく居間にひそみて鉛筆の心をけづるに疲れ夜は酒場の椅子にもたれて想ひにひたせる我が身の上こそ悲しけれ。 | |||
神に捧ぐる歌 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
あしきおこなひをする勿れわれはやさしきひとなればよるも楊柳の木影にうち伏しひとり居てダビテの詩をうたひなむわれは巡禮悲しき旅路にあるともわが身にそへる星をたのみてよこしまの道をな歩みそたとしへなく寂しけれどもよきひとはみなかくある者ぞかしわれはいとし子み神よ、めぐみをたれさせ給へ。 | |||
爪 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
青くしなへる我が指のリキユールグラスにふるるとき生れつきとは思へども侘しく見ゆる爪形をさしも憎しと思ふなり。 | |||
歓魚夜曲 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
光り蟲しげく跳びかへる夜の海の青き面をや眺むらむあてなき瞳遠く放たれ息らひたまふ君が側へに寄りそへるに浪はやさしくさしきたりまたひき去る浪遠き渚に海月のひもはうちふるへ月しらみわたる夜なれや言葉なくふたりさしより涙ぐましき露臺の椅子にうち向ふこのにほふ潮風にしばなく鴎鱗光の青きに水流れ散りてやまずせかれぬ戀魚の身ともなりぬれば今こそわが手ひらかれ手はかたくあふるるものを押へたり。 | |||
秋日行語 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
菊もうららに咲きいでたれど我身は砂丘に寄りて悲しめりさびしや海邊のおくつきに路傍の草を手向くることこのわびしきたはむれにひとり樹木にすがりつきたましひも消えよとむせびなく。 | |||
郊外 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
かしこに煙の流るる空はつめたくして草はあたたかに萌えたり手はくみて歩めどもよそゆきの着物のにほひ侘しきに秋はうららに落ち來り日向に幹木の愁ちらばふ晝餉どき停車場のほとりに出でわづかなる水をたうべしに工人の居て遠き麥畑を指させり(一九一三、九、二四)。 | |||
麦 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
麥はさ青に延び行けり遠き畑の田作りの白き襦袢にえんえんと眞晝の光ふりそそぐ九月はじめの旅立ちに汽車の窓より眺むれば麥の青きに驚きて疲れし心が泣き出せり。 | |||
雨の降る日 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
雨の降る日の縁端にわが弟はめんこ打つめんこの繪具うす青くいつもにじめる指のさき兄も哀しくなりにけり雨の降る日のつれづれに客間の隅でひそひそとわが妹のひとり言なにが悲しく羽根ぶとん力いつぱい抱きしめる兄も泣きたくなりにけり。 | |||
晩秋哀語 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああ秋も暮れゆくこのままに故郷にて朽つる我にてはよもあらじ草の根を噛みつつゆくものどの渇きをこらへんためぞ畠より疲れて歸り停車場の裏手なる便所のほとりにたたずめり日はシグナルにうす赤く今日の晝餉に何をたうべむ(故郷前橋にて)。 | |||
からたちの垣根 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
からたちの垣根の中に女のはしやぐ聲のする夕餉の葱のにほひする灯ともしごろからたちの垣根を過ぐる侘しさよ。 | |||
街道 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
俥にゆられつつ夕ぐれ時の街道を新町街道を急ぐ女よ眞赤な夕日は山の上白粉のゑりがさむしかろ今宵おん身の上に幸あれかし(一九一三・一〇・二〇)。 | |||
春の来る頃 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
なじかは春の歩み遲くわが故郷は消え殘る雪の光れるわが眼になじむ遠き山山その山脈もれんめんと煙の見えざる淺間は哀し今朝より家を逃れいで木ぬれに石をかくして遊べるをみな來りて問ふにあらずばなんとて家路を教ふべきはやも晝餉になりぬれどひとり木立にかくれつつ母もにくしや父もにくしやとこそ唄ふなる。 | |||
早春 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
なたねなの花は川邊にさけど遠望の雪午後の日に消えやらず寂しく麥の芽をふみて高き煉瓦の下を行くひとり路上に坐りつつ怒りに燃えこの故郷をのがれいでむと土に小石を投げあつる監獄署裏の林より鶫ひねもす鳴き鳴けり(滯郷哀語篇より)。 | |||
鉄橋橋下 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
人のにくしといふことばわれの哀しといふことばきのふ始めておぼえけりこの市の人なになればわれを指さしあざけるか生れしものはてんねんにそのさびしさを守るのみ母のいかりの烈しき日あやしくさけび哀しみて鐵橋の下を歩むなり夕日にそむきわれひとり(滯郷哀語篇より)。 | |||
春日 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
戀魚の身こそ哀しけれ、いちにちいよすにもたれつつ、ひくくかなづるまんどりん、夕ぐれどきにかみいづる、柴草の根はうす甘く、せんなや出窓の菫さへ、光り光りてたへがたし。 | |||
黎明と樹木 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
この青くしなへる指をくみ合せ、夜あけぬ前に祈るなる、いのちの寂しさきはまりなく、あたりにむらがる友を求む。 | |||
遠望 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
さばかり悲しみたまふとや、わが長く叫べること、煉瓦の門に入りしこと、路上に草をかみしこと、なべてその日を忘れえず、いはむや君が來し方を指さし、かの遠望をしたたむる、あはれ、あはれ、わが古き街の午後の風見よ。 | |||
浮名 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
浮名をいとはば舟にのれ、舟はながれゆく、いま櫓櫂(ろかい)の音を絶え、風も雨も晴れしあけぼのに、よしあしぐさのみだるる渚をすぎ、舟はすいすいと流れゆくなり。 | |||
利根川の岸辺より | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
こころにひまなく詠嘆は流れいづ、その流れいづる日のせきがたく、やよひも櫻の芽をふくみ、土によめなはさけびたり。 | |||
幼き妹に | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いもうとよ、そのいぢらしき顏をあげ。 | |||
初夏の祈祷 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
主よ、いんよくの聖なる神よ。 | |||
交歓記誌 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
みどりに深き手を泳がせ涼しきところに齒をかくせいま風ながれ風景は白き帆をはらむきみはふんすゐのほとりに家畜を先導しきみは舞妓たちを配列しきみはあづまやに銀のタクトをとれ夫人よ、おんみらはまたとく水色の籐椅子に酒をそそぎてよみよ、ひとびときたる遠方より魚を光らし淫樂の戲奴は靴先に鈴を鳴らせり。 | |||
供養 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
女は光る魚介のたぐひみなそこ深くひそめる聖像われ手を伸ぶれど浮ばせ給はずしきりにみどりの血を流しわれはおんまへに禮拜す遠くよりしも歩ませ給へばたちまち路上に震動し息絶ゆるまでも合掌すにちにち都に巡禮しもの喰(は)まざればみじめに青ざめおん前にかたく瞳をとづる。 | |||
受難日 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
受難の日はいたる主は遠き水上にありて氷のうへよりあまた光る十字すべらせ女はみな街路に裸形となりその素肌は黄金の林立する柱と化せり。 | |||
滝 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
みどりをつらぬきはしる蛇、瀬川ながれをはやみゆき、ゆめと流れて瀧はおつ、たうたうたる瀧の水音、音なみさえ、主も遠きより視たまへば、銀の十字をかけまつる、我しもひとり瀧水の、若葉に靴を泳がして、念願せちに涙たる、念願せちに涙たる。 | |||
立秋 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
遠く行く君が手に、胡弓の箱はおもからむ。 | |||
偏狂 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
あさましき性のおとろへ、あなうらに薫風ながれ、額に緑金の蛇住めり、ああ我のみのものまにや、夏ふかみ山路をこゆる。 | |||
若き尼たちの歩む路 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
この列をなす少女らのため、うるはしき都會の窓ぞひらかるる、みよいまし遠望の海は鳴りいで、なめいしを皿はすべりて、さかづきは歩道にこぼれふんすゐす。 | |||
蛍 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああきみは情慾のにほふ月ぐさ、われははた憂愁の瀬川の螢、いきづかふ舟ばたの光をみれば、ゆふぐれのおめがの瞳にて、たれかまたあるはをしらむ、さざなみさやぎ、くちびるはそらをながるる。 | |||
立秋 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
洞窟の壁にふんすゐあり、さかづきをあぐる一聯(れん)のひと、秋ちかければ玻璃ながれ、空氣は谷間をくだる。 | |||
岩魚 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
瀬川ながれを早み、しんしんと魚らくだる、ああ岩魚ぞはしる、谷あひふかに、秋の風光り、紫苑はなしぼみ、木末にうれひをかく、えれなよ、信仰は空に影さす、かならずみよ、おんみが靜けき額にあり、よしやここは遠くとも、わが巡禮は鈴ならしつつ君にいたらむ、いまうれひは瀧をとどめず、かなしみ山路をくだり、せちにせちにおんみをしたひ、ひさしく手を岩魚のうへにおく。 | |||
旅上 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
けぶれる空に麥ながれ、麥ながれ、うれひをのせて汽車は行く。 |