ブンゴウサーチ

三好達治の全作品

青空文庫で公開されている三好達治の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。

1-50件 / 全52件
作品名著者読了時間人気
草舎にて三好達治
5分以内
めじろめじろめじろ冬の端山を渡りくるめじろの群れのおしやべりは……それはまるで夏の日の日の暮れ方、とある街角をくる風鈴賣りの、あの毀れ易い硝子の器を百も吊るした、人の肩に擔はれてくる小さな輕い華やかな店さきの、音樂!その商品の一つ一つが互に囁きあつてゐる、ひそやかなれども騷がしい、いつも一つのものでありながら、けれども單調といふのでない、即興歌のより集り。
『春の岬』序詩三好達治
5分以内
わが古きまづしきうたのたぐひここにとり集へてひと卷のふみをばなしつ、名づけて春の岬といふ、ふみのはじめに感をしるして序を添へよとは人の命ずるところなり、あな蛇足をしひたまふものかな、よしやつたなかるともわがうたのかずかずうちかへしわが感をのべたるものを、とてその夜わびしらに率然とおのれつぶやけるつぶやきわが若き十とせあまりのとしつきのいつしかにはやすぎゆきてあとこそなけれそこばくのうたはのこりつそのなかばいまここにあり...
世はさながらに三好達治
5分以内
月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして業平かなたなる海にむかひてかしらあげさへづる鳥はこぞの春この木の枝にきて啼きし青鵐のとりかかぐはしきこのくれなゐの梅の花さけるしたかげこれやこのこぞの長椅子古りしままなほくちずしてこぞありしほとりに咲けるはしきやしたんぽぽの花宿をでてもの思ひつつゆくりなくわが來しをかべあづさゆみ春の...
海から昇る太陽三好達治
5分以内
ああ海から昇る太陽太陽今しののめの藍と薔薇との混沌を蹴破つて昇る太陽かの紅のかのまるく大きなるかの重たげなるもの虚空のうちを押渡るかのまぶしきものかの團々たる黄金光の聖母胎ああかの今わが涙にまでそのほのかなる暖かみもてもの言ひかくるもの太陽おお太陽海から昇る太陽われ永くおん身の朝ごとにそこに在りてかくまるく大きく赤くわれらが遊星の空...
かつてわが悲しみは三好達治
5分以内
かつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへりかつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへり五月またみどりはふかく見よかなたに白き鳥のとぶありおのが身ははやく老いしかこの日また何にいそぐやあてどなき旅のひと日の夕ぐれの汽車のまどべにかの丘はしづかに來りかの丘は來りぬかづく見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐりたり見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐり...
海よ三好達治
5分以内
門を閉ぢよ心を開け……それで私は表を閉めて裏の垣根を越えてきた蜜柑畠の間を拔けて海よお前の渚にかうして私は一人できたああ陽炎のもえる初夏の小徑眩(めくる)めく砂の上で海よ私は何を考へよう思出のやうにうすぐもつて藍鼠色にぼんやりした遙かなお前の水平線私はお前に向きあつて私は世間に背中を向ける門を閉ぢよ心を開け……それで私は表を閉めて裏の垣根を越えてきた海...
日まはり三好達治
5分以内
橋の袂の日まはり床屋の裏の日まはり水車小屋の日まはり交番の陰の日まはり頽(くづ)れた築地の上に聳える路ばたの墓地の日まはり丘の上の洒落た一つ家そのまた上の女學校の寄宿舍の庭の日まはりああ日まはり日まはりそれは旺んな季節の洪水七月この海邊の町を不意打してこの小さな町をとりかこみ占領し彼らの眞晝の凱歌をうたふ日まはり日まはり彼方町はづれの踏切にも...
秋日口占三好達治
5分以内
われながく憂ひに栖みてはやく身は老いんとすらんふたつなきいのちをかくて愚かにもうしなひつるよ秋の日の高きにたちてこしかたをおもへばかなしすぎし日の憂ひならねばあまからぬこの歎きかな見よ彼方日は眞晝藍ふかき海のはるかに眞白なる鴎どりはも一羽ゐてなに思ふらん波の穗にうかびただよふ願はくばわが老いらくの日もかかれ世の外にしてつたなかる心...
老いらくの身をはるばると三好達治
5分以内
老いらくの身をはるばるとこのあしたわがふるさとゆははそはの母はきたまふおんくるまうまやにつかせたまふにはいとまありけりわれひとりなぎさにいでて冬の日のほのかほのかにあたたかき濱のおほなみひるがへる見つつたのしも眞鶴の崎の巖が根大島のはるけき烟見はるかしゐつつたのしもあはれよないつかその子も皺だたみ老いんとすらんまづしかる旅のすみかにははそはの母はおとな...
測量船三好達治
60分以内
春の岬春の岬旅のをはりの鴎どり浮きつつ遠くなりにけるかも[#改ページ]乳母車母よ――淡くかなしきもののふるなり紫陽花いろのもののふるなりはてしなき並樹のかげをそうそうと風のふくなり時はたそがれ母よ私の乳母車を押せ泣きぬれる夕陽にむかつて※々(りんりん)と私の乳母車を押せ赤い総ある天鵞絨の帽子をつめたき額にかむらせよ旅いそぐ鳥の列に...
測量船拾遺三好達治
60分以内
玻璃盤の胎児生れないのに死んでしまつた玻璃盤の胎児は酒精のとばりの中に昼もなほ昏々と睡る昼もなほ昏々と睡るやるせない胎児の睡眠は酒精の銀の夢にどんよりと曇る亜剌比亜数字の3だ生れないのに死んでしまつた胎児よお前の瞑想は今日もなほ玻璃を破らず青白い花の形に咲いてゐる[#改ページ]祖母祖母は蛍をかきあつめて桃の実のやうに合せた掌の中から...
一点鐘三好達治
60分以内
いく年かものにまぎれて筐底にひそみゐし舊詩二章、その心あわただしくその詞もとより拙きのみか、遠き日の情懷ははた囘顧するにものうけれども、この集の著者がなほけふの日の境涯をいささかまた歌ひえたるに肖たるを覺ゆ、すてがたければとどめて序にかへんとす――一點鐘二點鐘靜かだつた靜かな夜だつた時折りにはかに風が吹いたその風はそのまま遠くへ吹きすぎた一二瞬の後いつそう靜かになつたさうして夜が更けたそん...
暮春嘆息三好達治
5分以内
人が詩人として生涯ををはるためには君のやうに聰明に清純に純潔に生きなければならなかつたさうして君のやうにまた早く死ななければ!。
閒花集三好達治
30分以内
[#ページの左右中央]この小詩集を梶井基次郎君の墓前に捧ぐ[#改丁]砂上海海よお前を私の思ひ出と呼ばう私の思ひ出よお前の渚に私は砂の上に臥よう海鹹からい水……水の音よお前は遠くからやつてくる私の思ひ出の縁飾り波よ鹹からい水の起き伏しよさうして渚を噛むがいいさうして渚を走るがいいお前の飛沫で私の睫(まつげ)を濡らすがいい鶯「籠の中にも季節は移る私は歌ふ私...
艸千里三好達治
30分以内
枕上口占もとおのれがさえのつたなければぞ、集ならんとする夜半……私の詩は一つの着手であればいい私の家は毀れやすい家でいいひと日ひと日に失はれるああこの旅のつれづれの私の詩は三日の間もてばいい昨日と今日と明日とただその片見であればいい又私の詩は明け方西の空にある昨日の月やがて地平の向ふに沈む昨...
山果集三好達治
30分以内
仔羊海の青さに耳をたて圍ひの柵を跳び越える仔羊砂丘の上に馳けのぼり己れの影にとび上る仔羊よ私の歌は今朝生れたばかりの仔羊潮の薫りに眼を瞬き飛び去る雲の後を追ふ雷蝶雷の後かみなり蝶が村へくる村長邸の裏庭の百合の花粉にまみれてくる交番のある四辻で彼女はちよいと路に迷ふさうして彼女は風に揚る椎の木よりもなほ高く火ノ見櫓の半鐘よりもなほ高く海邊雨後の横雲...
短歌集 日まはり三好達治
30分以内
[#ページの左右中央]短歌集日まはりわが跫音路をうつわが杖の音われは聴くわが生の音づれ[#改ページ][#ページの左右中央]日まはりや床屋しづけき菜園に[#改ページ]やま鳥草生ふる電車線路をあしびきのやま鳥はつと走り越えにき白骨温泉にてうら山に銃の音せり時をへずまたも...
南窗集三好達治
10分以内
鴉靜かな村の街道を筧が横に越えてゐるそれに一羽の鴉がとまつて木洩れ陽の中に空を仰ぎ地を眺め私がその下を通るときある微妙な均衡の上に翼を※(をさ)めて秤(はかり)のやうに搖れてゐた湯沸したぎり初めた湯沸し……それはお晝休みの小學校の校庭だ藤棚がある池がある僕らはそこでじやんけんする僕は走る僕は走る……かうして肱をついたまま夜の中にたぎり初めた湯沸し……靜夜柱時...
三好達治
30分以内
霾冬の初めの霽れた空に、淺間山が肩を搖すつて哄笑する、ロンロンロン・※ッハッハ・※ッハッハ。
池のほとりに柿の木あり三好達治
10分以内
旅行に出て汽車の窓からつと見かける小学校の建もの、その校庭や体操器械など、小さな花壇や鳩小舎など、いつ見かけても心をひかれるもののあるのを覚える。
海辺の窓三好達治
10分以内
破風をもる煙かすかに水をくむ音はをりふしこの庵に人はすめども日もすがら窓をとざせり自らかう歌つた私の家の海にむかつた窓はその前に藤棚のたふれたのがいつまでもたふれたままで、それが新らしく芽をふき蔓をのばし、白き花房が気ままに咲き乱れる時分になつても、めつたに雨戸を繰つて開け放たれたことがない。
棋家の文章など三好達治
5分以内
棋客の前田陳爾さんに近づきはないが、その囲碁批評はいつも面白く拝見してゐる。
銀座街頭三好達治
30分以内
この三月いつぱいで東京都の露店はいよいよ姿を消すことに結着した。
万葉集の恋歌に就て三好達治
30分以内
課題に従つて以下万葉集の恋歌に就て少し卑見を記してみる。
オルゴール三好達治
30分以内
人形のをぢさん守屋三郎さんは、支那文学の奥野信太郎さんと漫画家の横山隆一さんとの丁度中間位の恰幅であつて、容貌はどこやらそのお二人に似てゐる。
ケシの花三好達治
5分以内
ケシの花はマリー・ロランサンの絵を思はしめる。
柘榴の花三好達治
10分以内
万物の蒼々たる中に柘榴の花のかつと赤く咲きでたのを見ると、毎年のことだが、私はいつも一種名状のしがたい感銘を覚える。
立秋三好達治
5分以内
この一隅に秋立つ日楓の幹を蟻が上る急げ急げ夕立がくる鳴神は隈取りをして灰色の兩手を擴げて――軒端を蜂が飛んでゐる。
三色旗三好達治
5分以内
微風晴れ雪の窓に葡萄酒を飮む。
三好達治
5分以内
十一月の夜をこめて雪はふる雪はふる黄色なランプの灯の洩れる私の窗にたづね寄る雪の子供ら小さな手が玻璃戸を敲く玻璃戸を敲く敲くさうしてそこに息絶える私は聽く彼らの歌の靜謐靜謐靜謐。
三好達治
5分以内
拔足差足忍び寄つた野兎は蓆圍ひの隙間から野菜畑に跳びこんだとたんに係蹄に引かかる南無三とんぼがへりを二つ三つ力まかせに空を蹴る月を蹴る月は山の端に入いるやがて兎は寢てしまふ白菜たちが眼を醒す。
三好達治
5分以内
鷲が二羽降りようとして舞つてゐる巖のあらはな巓を私は仰ぎ私はたちどまるその山の肩のあたり林の盡きた笹原に私は籠手を翳し私は逡巡するさてまづ晝餉をしたためる。
憩ひ三好達治
5分以内
ふつくらとした雪の面の疎林の影の美しさここに私は彳ちどまる聖なる正午この丘のほとりにあつて歩み去る時を感ずる旅人の年老いて疲れた心の沈默の憩ひ。
黄昏三好達治
5分以内
どこかで鳥の聲がする雪の山の黄昏時私は一つの尾根に彳つ谿間の宿のランプの灯私の部屋の小さな窗窗に映つた帽子の影あはれあはれそれは思出のやうに見える微かな谿の水の聲。
空林三好達治
5分以内
山毛欅の林楢の林白樺の林ひと年私は山に住ひ彼らの春の粧ひと彼らの秋の凋落を見たけれども彼らの裸の姿雪の上のたたずまひこそわけても私の心にしみる何故だらうそのことわけを問ひながら今日もまた林に憩ふやうやく私のものとなつたこの手足この老年が珍らしく。
かいつぶり三好達治
5分以内
かいつぶりかいつぶりそうれ頭に火がついた私たちの歌に應へてかいつぶりは水に沈むそれは旱魃の夏だつたただそれだけのことだつたかいつぶりかいつぶりかいつぶりのゐない日もあつた。
檸檬忌三好達治
5分以内
友よ友よ四年も君に會はずにゐる……さうしてやつと君がこの世を去つたのだとこの頃私は納得したもはや私は悲しみもなく愕きもなく(それが少しもの足りない)君の手紙を讀みかへす――昔のレコードをかけてみる。
鴨 一三好達治
5分以内
二羽三羽霧のかかつた水際に黒い小鴨が游いでゐる私は林の小徑を出る――それとなし彼らはくるりと向きをかへるやがて一羽は空に揚る一羽は水の面を飛ぶ一羽はあとに殘される彼は周章てて水を打つ水を打つやつとからだが宙に浮く仲間と違つた方角へ。
鴨 二三好達治
5分以内
夕暮の池に鴨が點々風が彼らを片寄せる林の方へ岡の方へ風がやむ彼らは呼んでゐる應へてゐる風の聲よりひそやかに。
鴨 三三好達治
5分以内
その顏が重くなる睡くなる鴨はそれを翼の下にしまひこむその上に雪がふる夢の國への小包。
雪夜 一三好達治
5分以内
雪はふる雪はふる聲もなくふる雪は私の窗の半ばを埋める私の胸を波だてたそれらの希望はどこへ行つたか――また今宵それらの思出もとび去りゆく夜空のかぎり雪はふる雪はふる雪は思出のやうにふる雪は思出のやうにふるまた忘却のやうにもふる。
雪夜 二三好達治
5分以内
思出思出いつまでも心に住むと誓ひをたてた思出その思出も年をふれば塵となる煙となるああそのかの裏切りの片見なら捉へがたない思出の性も是非ない行くがいい行くがいい私を殘して歸る日もなく行くがいい思出よ。
雪夜 三三好達治
5分以内
夜更けて油の盡きた暗いランプ低い焔煤けた笠既に私の生涯も剩すところはもうわづかああ今しばしものを思はう今しばし私の仕事に精を出さうやがて睡りの時がくる悲しみもなく私の眠る時がくる。
旅人三好達治
5分以内
雪どけの峽の小徑を行く行く照らしいだすわが手の燈火黄色なる火影のうちを疲れて歩むあはれわが脚の影重い靴濡れた帽子冷めたい耳空腹――旅人と身をなして思ふことさへうつつないああこのひととき。
山果集に寄す三好達治
5分以内
行くがいい既に門出の時である行け太陽のもと喧噪のさなかに行け風塵霜露の衢々に行つてお前の運命を試みるべき時である行け片意地な兜蟲か弱い仔雀跛この驢馬憐れなるわが詩の一卷。
詩四章三好達治
5分以内
春の計畫粉雪の中で四十雀が啼いてゐる春が眞近にせまつてきた谿間で風が鳴つてゐる楢山毛欅櫟それらの枯葉が雪の上を走つてゐる山山よ裸の木木よ樂しい冬も間もなく冬も終るだらう懷かしい私の友垣風よ雲よ山山よ私達の友情のさて春の計畫を考へようその昔その昔その山のその旅籠へは米も野菜も新聞も煙草も手紙も電報も牛の背中で運んできた谿に臨んだ細路にのつと牝牛が顏を出す午後二時三時山で...
扁舟三好達治
5分以内
扁舟を湖心に泛べ手艪を放ち箕坐してしばしもの思ふ――願くばかくてあれかしわが詩の境。
駱駝の瘤にまたがつて三好達治
1時間〜
間人斷章秋風にわれはうたふ越路のはての艸の戸にまたこの秋の蟲のこゑ波の音落日かくてわれ秋風にただ一つわが身の影をうながすよ馬おひむし馬おひむしは馬をおふうたのあはれやものの端にさるすべりさるすべりくさのいほりの戸に咲きてふたつなき日のはるかなるながたまづさも灰となる...
梶井君三好達治
5分以内
なにがしの書物を持ちて君を訪ふ慣ひなりしを花をもて訪ふ垂乳根の君の母とし語へどこの秋の日に君はあらなくすずろかに鐘うち鳴らししまらくは君のみ靈に香をまつらむ病いゆと昔淋しき旅をせし山の小徑を夢に見しかなやうやくに岫(くき)をめぐりて海を見るこの街道に憩ふ巡禮蝶一つ二つ三ついま下りゆく溪間に見...
白根山三好達治
5分以内
白根山寥落として草もなし煙たつ見ゆ白土尾根にほのかなる硫黄のかをり吹きかよへ芳が平の秋風のうち行き行きてかへるときなき心地すれ鳥さへ飛ばぬ白根山路草もなし木もなしされば路もなし湯鳴りさみしき白埴の山ここすぎて人かなしみの國にいる地獄の門ににたる山かなうかりける身に杖つきていまははやもの...
※©マークのついた作品は著作権が存続しています。 詳細は青空文庫公式サイトの取り扱い基準をご確認のうえ、取り扱いの際は十分注意してください。
Next