青空文庫の全作品
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| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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| 竹の根の先を掘るひと | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
病氣はげしくなり いよいよ哀しくなり 三日月空にくもり 病人の患部に竹が生え 肩にも生え 手にも生え 腰からしたにもそれが生え ゆびのさきから根がけぶり 根には纖毛がもえいで 血管の巣は身體いちめんなり ああ巣がしめやかにかすみかけ しぜんに哀しみふかくなりて憔悴れさせ 絹糸のごとく毛が光り ますます鋭どくして耐へられず つひにすつぱだかとなつてしまひ 竹の根にすがりつき、すがりつき かなしみ心頭 | |||
| 夜景 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
高い家根の上で猫が寢てゐる 猫の尻尾から月が顏を出し 月が青白い眼鏡をかけて見てゐる だが泥棒はそれを知らないから 近所の家根へひよつこりとび出し なにかまつくろの衣裝をきこんで 煙突の窓から忍びこまうとするところ。 | |||
| たびよりかへれる巡礼のうた | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いすらへるよりかへり われはゆきのうへにたちぬ | |||
| 祈祷 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください、 あなたのふしぎをもて牢獄の窓をあけてください、 あなたのおほみこころのみまへに、 わたくしの懺悔をささげまつる。 | |||
| 小春 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
やはらかい、土壤の上に、 じつと私が坐つて居る、 涙ぐましい日だまりに、 白い羽蟲のちらちらもえ、 遠い春日のちらちらもえ。 | |||
| 芽 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いたましき芽は伸びゆけり、 春まだあさき土壤より、 いとけなき草の芽生はうまれいで、 そのこゑごゑはかしましく、 はるる日中の、 大空ふかくかがやけり。 | |||
| 三人目の患者 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
三人目の患者は、 いかにもつかれきつた風をして、 べろりと舌をたらした、 お醫者が小鼻をとんがらして、 『氣分はどうです』 『よろしい』 『食物は』 『おいしい』 『それから……』 『それからすべてよろしい』 そして患者は椅子からとびあがつた、 みろ、歪んだ脊髓のへんから、 ひものやうにぶらさがつた、 なめくじの神經だの、くさつたくらげの手くびだの……。 | |||
| 敍情小曲 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
きみがやへばのうす情け ほのかににほふたそがれに 遠見の松を光らしめ 遠見の櫻を光らしめ 浪は浪浪きみがかたへと。 | |||
| もみぢ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
霜つききたり 木ぬれをそむると おもひしものを 庭にあづまやの 遠見をそめ うすべにさせる 魚をそめ わかるるきみの くちをそめ | |||
| 春日詠嘆調 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああいかなればこそ、 きのふにかはるわが身の上とはなりもはてしぞ、 けふしもさくら芽をつのぐみ、 利根川のながれぼうぼうたれども、 あすは逢はれず、 あすのあすとてもいかであはれむ、 あなあはれむかしの春の、 みちゆきの夢もありやなし、 おとろへすぎし白雀の、 わがゆびさきにきてしみじみとついばむものを。 | |||
| 吹雪 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
わが故郷前橋の町は赤城山の麓にあり、その家竝は低くして甚だ暗し。 | |||
| 諷詩 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
友だちはひどく歪んだ顏をしながら、 虱に向つて話をした。 | |||
| 絶望の足 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
魚のやうに空氣をもとめて、 よつぱらつて町をあるいてゐる私の足です、 東京市中の掘割から浮びあがるところの足です、 さびしき足、 さびしき足、 よろよろと道に倒れる人足の足、 それよりももつと甚だしくよごれた絶望の足、 あらゆるものをうしなひ、 あらゆる幸福のまぼろしをたづねて、 東京市中を徘徊するよひどれの足、 よごれはてたる病氣の足、 さびしい人格の足、 ひとりものの異性に飢ゑたる足、 よつぱ | |||
| 都会と田舎 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ひとり私のかんがへてゐることは、 もえあがるやうな大東京の夜景です、 かかるすばらしい都會に住んでゐる人たちは、 さかんなもりあがる群集をして、 いつも磨かれたる大街道で押しあひ、 入りこみたる建築と建築との家竝のあひだにすべりこむ、 そこにはさびしい裏町の通りがあり、 ゆがんだ酒場の軒がごたごたと混みあつてゐる、 だぶだぶとながれる不潔な掘割、 煤煙ですすぼけたその附近の悲しい空氣、 そしてせま | |||
| 酒場にあつまる | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
酒をのんでゐるのはたのしいことだ、 すべての善良な心をもつひとびとのために、 酒場の卓はみがかれてゐる、 酒場の女たちの愛らしく見えることは、 どんなに君たちの心を正直にし、 君たちの良心をはつきりさせるか、 すでにさくらの咲くころとなり、 わがよき心の友等は、多く街頭の酒場にあつまる。 | |||
| よき祖母上に | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
かの家の庭にさく柘榴の花、 あかるい日光の中にふるへる空氣のさびしみ、 年老いたる祖母上よ。 | |||
| 紫色の感情にて | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああその燃えあがる熱を感じてゐる この熱の皮膚を しばしば貴女にささげる憂鬱の情熱を ただ可愛ゆきひとつの菫の花を 貴女の白く柔らかな肌に押しあてたまへ ここにはまた物言はぬ憂愁の浪 紫をもて染めぬいた夢の草原 ああ耐へがたい病熱の戀びとよ 戀びとよ 今日の日もはや暮れるとき 私は貴女の家を音づれその黒い扉の影に接吻しよう しほしほと泣く心の奧深く 貴女はその惠をたれ 慈愛をもて久遠の道を聽かせ | |||
| 我れ何所へ行かん | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
情緒よ ながい憂鬱のながれを視てゐると あまりに私の眺望もさびしくなる この日もすでにくれがた 人生の影ながき厭生哲學の書物をひらけば ああはや いみじくも芽ぐみきたる感情の昂進よ さばかり情愁のみどりをふくめば さびしき思想の倉庫をひらき 重たき黒の冥想の頭巾をとりて歩まん いざや歩み行かな。 | |||
| 眺望する | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
すべては黒く凍つてゐる さびしくかたまる岩の上に みじめに歪んだ松の幹に 景色は凍え、飢ゑ、まづしく光つて叫ぶばかり。 | |||
| 別れ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
友よ 安らかに眠れ。 | |||
| 春昼 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
うぐひすは 金屬をもてつくられし そは畔の暗きに鳴き 菫は病鬱の醫者のやうに 野に遠く手に劇藥の 鞄をさげて訪づれくる。 | |||
| 祈祷 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
黄菊はすでに散つてしまつた 漕手よ 船路を遠くかへつてくる時 さびしい海鳥はますとに飛びかひ 日は憂鬱の浪にただよふ。 | |||
| 記憶 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
記憶をたとへてみれば 記憶は雪のふるやうなもので しづかに生活の過去につもるうれしさ。 | |||
| 敵 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。 | |||
| 南京陥落の日に | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
歳まさに暮れんとして 兵士の銃劍は白く光れり。 | |||
| 広瀬河畔を逍遥しつつ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
物みなは歳日と共に亡び行く。 | |||
| 父の墓に詣でて | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
わが草木とならん日に たれかは知らむ敗亡の 歴史を墓に刻むべき。 | |||
| 昔の小出新道にて | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
兵士の行軍の後に捨てられ 破れたる軍靴のごとくに 汝は路傍に渇けるかな。 | |||
| 月産五百台が我社の根本方針 | 豊田喜一郎 | 5分以内 | |
わが社の第一回販賣店協議會は去る四月廿七日午前十時半から刈谷の工場で開催されたが、同日午後の會議の席上常務豐田喜一郎氏は大要左の如き挨拶を爲し當工場の方針を明かにしたことは頗る注目を惹いた。 | |||
| 誤って健康を伝えられた同志たちに | 槙村浩 | 5分以内 | |
健康(1)の一語をかる/″\しく口にするな! 健康(1)の錯誤は健康の犠牲よりいたましい これほどわたしら共同の仕事の大きな邪魔者があろうか! どちらがより多く仕事が出来るか? 獄内で坐っているわたしらにか、獄外で迫害に耐えているきみらにか? わたしらはいつもきみらの過誤と素朴と情熱とを愛した わたしらは出獄した時のきみらの仕事の成果をまじめに期待した その後をわたしらが引きついでやりぬくために | |||
| 異郷なる中国の詩人たちに | 槙村浩 | 5分以内 | |
わたしらはあなたの国では、正しい詩人は舌をひっこぬかれると聞いた わたしらはなお聞いた―――資本をつなぐ軍部と軍閥の鉄道の上に ひっこぬかれた詩人らの舌が わたしらの故郷の海のさん/\たる珊瑚珠のように、串刺しにしてさらされてあるのを 荒らされた珠は、海の青さの海で真紅に燃えていた その一粒々々は揺れ合い折れ重なり、嵐の中で彼自身の地肌を完全に保存した わたしらえの侵害をあなたらの禦いだのには及 | |||
| 京都帝国大学(十四行詩) | 槙村浩 | 5分以内 | |
十二の仮面のような頭蓋時計。 | |||
| 獄中のコンミューンの戦士の詩を憶って | 槙村浩 | 5分以内 | |
コンミューンの戦士をして墓の中より起たしめよ、よし東方の墓堀り人夫らが 釘づけ、磐石の錘を据え置こうと わが森山啓氏が肩をすくめ、全身の力もて突立ち上る時 あなたはアトラスのように地球の屈辱を荷わぬだろうか わたしは獄中で 若い憂愁が瞼を襲うとき いつもあなたのコンミューンの詩を想い出した それはわたしらにとって無上の刺激剤だった 苦難の時代をわりあい間違なく進みえたことについて わたしらは心 | |||
| 詩諷 | 槙村浩 | 5分以内 | |
「われ/\は諷射しよう!」 と詩人大江鉄麿は、幅広いこめかみを引きつけて吃りながら言った 「保留と伏字の泥沼で、編輯者が自分で自分の評判を悪くしたとき 犬の詩を書く代りに書かすことが、ジャーナリズムの紹介業者たちの仕事となっているとき われ/\がみんな真面目な吃りであることを強いられているとき われ/\は正確に、そして効果的に吃ろう! 刺すことは、敵の一卒を倒すだろう だが散兵壕はいま大量屠殺の | |||
| 青春 | 槙村浩 | 30分以内 | |
(若き日の孤独を灼きつくす情熱を われらに与えよ われらをして戦いに凍えたる手と疲れたる唇に 友を亨けしめよ 銀の鉛屋根の上に 朽葉色の標燈の照らす夜を われらの老いたる母のひとり眠る時 明るき原と自由なる槌を、こゝに 赤きプラカードのごとく われらと共に擁する友を亨けしめよ 牢獄! 崩れた喜びと愛と思い出の蘇る日 友と生活の悦びを 金盞花えの雑りけなき接吻と共に 鉄色の電気の溶流の瞬間の衝撃の | |||
| 長詩 | 槙村浩 | 30分以内 | |
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた 格子が 僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた 看守は わざ/\低くつくりつけた窓からのぞきこむために 朝々うやうやしく僕にお辞儀し 僕は まだ脱獄してゐない証拠として ちびつけのブハーリンのような不精髯の間から 朝々はったと看守をにらみつけた これが僕らの挨拶だった 朝になると、窓が右からかげって来た 夜になると、窓が左からかげって来た そのたびにアスファルト | |||
| 同志下司順吉 | 槙村浩 | 5分以内 | |
―――同志よ固く結べ 生死を共にせん ―――いかなる迫害にも あくまで屈せずに ―――われら若き兵士プロレタリアの それは牢獄の散歩の時間だった 独房の前で彼のトランクを小脇に抱えているむかしの友 同志下司と彼の口笛に七年ぶりで出あったのは! 彼は勇敢な、おとなしい、口笛の上手な少年だった だが夏の朝の澄明さに似たあわたゞしい生活が流れてから 境遇と政治の過流が 私たちを異った都市と都市と | |||
| 同志古味峯次郎 | 槙村浩 | 10分以内 | |
誰がこの困難無比の時代に 労働者の利益のために最も正しい道を選んだか ―――壁に頭を打ちあてるようなこの時代に その一つの例をおれは示そう―――確かに正しく! 古味峯次郎君 彼は鋼の中から打ち出され、飢餓の闘いが彼をボルセヴィキにまで鍛え上げた (1) 彼は越知の狭い町はづれの 小作兼自作農の家に生れた そしてこんな南国の山麓の息子たちがそうであるように 十八の彼は 嶺を越え 花崗岩のはすに削ら | |||
| 単純な詩形を思う | 小川未明 | 5分以内 | |
極めて単調子な、意味のシンプルな子守唄が私の心を魅し去ってしまう。 | |||
| 童話の詩的価値 | 小川未明 | 10分以内 | |
籠の中で産まれた小鳥は、曾て広い世界を知らず、森の中や、林の中に、自分等の友達の住んでいることを知りませんから、外を恋しがらないかというに、そうでありません。 | |||
| 田木繁に | 槙村浩 | 5分以内 | |
(前半紛失) このエピソードを思い出すたびに、わたしらはなぜか最近のあなたの詩を思い出さずにはいられない 昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている 同志田木繁、こんな猫が、あなたの地区の工場の行きすがりに、ふっと道を横ぎりはせぬだろうか 自分自身に限界性をくぎるたびに、何かしらこんなものかと思い出してくるものだ 昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている世の中に あ | |||
| 線に関する覚書2 | 李箱 | 5分以内 | |
1+3 3+1 3+1 1+3 1+3 3+1 1+3 1+3 3+1 3+1 3+1 1+3 線上の一点 A 線上の一点 B 線上の一点 C A+B+C=A A+B+C=B A+B+C=C 二線の交点 A 三線の交点 B 数線の交点 C 3+1 1+3 1+3 3+1 3+1 1+3 3+1 3+1 1+3 1+3 1+3 3+1 (太陽光線は、凸レンズのために収斂光線となり一点におい | |||
| 線に関する覚書4 | 李箱 | 5分以内 | |
弾丸が一円※を走つた(弾丸が一直線に走つたにおける誤謬らの修正) 正六砂糖(角砂糖のこと) 瀑筒の海綿質填充(瀑布の文学的解説)一九三一、九、一二 | |||
| 二人‥‥1‥‥ | 李箱 | 5分以内 | |
キリストは見窄らしい着物で説教を始めた。 | |||
| 二人‥‥2‥‥ | 李箱 | 5分以内 | |
アアルカアボネの貨幣は迚も光沢がよくメダルにしていゝ位だがキリストの貨幣は見られぬ程貧弱で何しろカネと云ふ資格からは一歩も出ていない。 | |||
| 学究生活五十年 | 津田左右吉 | 60分以内 | |
学問上の閲歴のようなものを書けという『思想』の編輯部からの話があった。 | |||
| 偶言 | 津田左右吉 | 30分以内 | |
一 日本人の趣味は淡泊である、清楚である、または軽快である、濃艶な、重くるしい、はでやかな、または宏大なものは好まない、だから、――というような話が今でもまだ或る程度まで真実らしく、いわれもし聞かれもしている。 | |||
| 芸術と国民性 | 津田左右吉 | 10分以内 | |
芸術史家、または芸術の批評家が或る個人の作品を観てそこにその作家の属している国民全体の趣味なりまたは物の見かたなり現わし方なりの或る傾向が見えるというのは尤な話である。 | |||
| 芸術と社会 | 津田左右吉 | 10分以内 | |
芸術のための芸術と一口にいってしまえば、社会との関係などは初から論にならないかも知れぬ。 | |||
| 神代史の研究法 | 津田左右吉 | 30分以内 | |
一 今日に伝わっている我が国の最古の史籍たる『古事記』と『日本書紀』との巻頭にはいわゆる神代の巻という部分がある。 | |||