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槙村浩の全作品

青空文庫で公開されている槙村浩の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。

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作品名著者読了時間人気
明日はメーデー槙村浩
5分以内
古ぼけたぜんまいがぜいぜいと音を立てて軋(きし)るもう十二時になるのにあなたはまだ帰ってこないくすぶった電球の下で私はもう一度紙きれを拡げてみる―――八時までにはかならず帰る待っていてくださいT前の道路を行くヘッドライトが急に大きくぽっかりと障子にうつる私はぎっくりして寒い下着の襟をかき合わすあなたはもう帰ってこないあなたはセンイのオルグ朝の四時氷柱を踏んで私...
生ける銃架槙村浩
10分以内
高粱[#「高粱」は底本では「高梁」]の畠(はたけ)を分けて銃架の影はけふも続いて行く銃架よ、お前はおれの心臓に異様な戦慄を与へる――血のやうな夕日を浴びてお前が黙々と進むときお前の影は人間の形を失ひ、お前の姿[#ルビの「すがれ」はママ]は背嚢に隠れお前は思想を持たぬたゞ一箇の生ける銃架だきのふもけふもおれは進んで行く銃架を見た列の先頭に立つ日章旗、揚々として肥馬に跨(またが)る将軍たち、色蒼ざめ[#「色蒼ざめ」はママ]疲れ果てた兵士の群―おゝ...
間島パルチザンの歌槙村浩
30分以内
思ひ出はおれを故郷へ運ぶ白頭の嶺を越え、落葉松の林を越え蘆の根の黒く凍る沼のかなた赭ちゃけた地肌に黝ずんだ小舎の続くところ高麗雉子が谷に啼く咸鏡の村よ雪溶けの小径を踏んでチゲを負ひ、枯葉を集めに姉と登った裏山の楢林よ山番に追はれて石ころ道を駆け下りるふたりの肩に背負繩はいかにきびしく食ひ入ったかひゞわれたふたりの足に吹く風はいかに血ごりを凍らせたか雲は南にちぎれ熱風は田のくろに流...
出征槙村浩
10分以内
今宵電車は進行を止め、バスは傾いたまゝ動かうともせぬ沿道の両側は雪崩れうつ群衆、提灯と小旗は濤のように蜒り歓呼の声が怒濤のように跳ね返るなかをおれたちは次々にアーチを潜り、舗道を踏んでいま駅前の広場に急ぐおゝ、不思議ではないかかくも万歳の声がおれたちを包みおれたちの旅がかくも民衆の怒雷の歓呼に送られるとは!春の街は人いきれにむれ返り銃を持つ手に熱気さへ伝はる火の海のやうな市街を見詰めながら、おれはふと思...
一九三二・二・二六槙村浩
5分以内
営舎の高窓ががた/\と揺れるばったのやうに塀の下にくつゝいてゐる俺達の上を風は横なぐりに吹き芝草は頬(ほゝ)を、背筋を、針のやうに刺す兵営の窓に往き来する黒い影と時どき営庭の燈(ひ)に反射する銃剣を見詰めながらおれは思ふ、斃(たふ)されたふたりの同志を同志よおれは君を知らない君の経歴も、兵営へもぐり込んで君が何をしたかも兵営の高塀と歩哨の銃剣とはお互の連絡を断ってしまったおれは君たちがお...
小熊秀雄と藤原運槙村浩
5分以内
サガレン。
森山啓に槙村浩
5分以内
漠冥たる成層が旋律を地上で引き裂く私はあなたの健康がそれに耐え得るかを気遣ったこんな場合、あなたは物狂わしくなるにはあまりに古典的だそしてあなたのE線はひとりでに鳴ることを止め朽ちるまで鳴ることを止めようとした―――それは単に私の杞憂だったか困難な、漠冥たる成層の中で、あなたはまたE線を繋ぎ直した赤外や紫外や緑外を超えたその他一切の地下の光線をこだわりなく貫く無絃の琴をわれ/\は自らの内に奏でることを宣言するのに、あんなにも模索し合っ...
ダッタン海峡槙村浩
5分以内
春の銀鼠色が朝の黒樺を南からさしのばした腕のように一直線に引っつかんで行く凍った褐色の堀割が、白いドローキの地平を一面に埋める―――ダッタン海峡!ふいに一匹の迷い栗鼠が雪林から海氷の割れ目え転げ落ちるとたん、半分浮絵になった銅チョコレート色の靄の中から、だ、だ、ただーんと大砲を打っ発した峡瀬をはさんで、一つの流れと海面からふき出した一つの島がある土人は黒龍江を平和の河と呼び、サハリンを平和の岩と呼んだかつて南北の帝国主義の凝岩がいがみ合...
大江満雄に槙村浩
5分以内
こゝに機械の哲学者がある―――彼は思考し、血潮の中に機械のどよめきをでなく、血潮と共に脈動する機械のリズムを感ずる彼ははつらつたる工場の諧調を背負うて、齟齬しながら鈍重に歩いて行くこゝに機械の哲学者がある―――彼は技師を宣言し、一切に正面照明を送る照明はゆかいに大大阪を漫歩する機械にまで虚偽を造る資本の虚偽と、百万の労働の精神とを透過し浮揚する二重性をもって、飢えた子供の胃のレントゲン絵にまで照入するこゝに機械の哲学者...
人民詩人への戯詩槙村浩
10分以内
中野重治「ここは穴だ黒くて臭い」これは中野重治の生涯のスローガンだった彼は帝国ホテルのまん中で立停り鼻をいじりながらこう呟いたそれから機関車の後姿を見送ってうや/\しく敬礼しながらだがこの偉大な「大男」の煤臭いにおいにへきえきしてまたこう呟いた列車が雨のふる品川駅につくと彼は前衛の乗客を見送りながら大きく息をついて「さようなら」と言った中野はいつも「さようなら」と言いたが...
毛利孟夫に槙村浩
5分以内
これやこの毛利孟夫山間の獄にペンを撫し戦いに病める君が身を養わんと函数を釣り積分にゆあみしひねもす土地と資本の数字と符号の時空における不統一の空隙を逍遥する君のマルキシズムはかゝる隙間を埋むるに足れりどなお詩もて愛すべき膠着剤とせよ。
餅の歌槙村浩
10分以内
餅とは何と鋤き返された幼い南の郊外の野の思い出のように甘いものだろう!高岡のひとりぼっちの叩き廻っても後の沼地一ぱいがらんどうな響きしかはね返してこぬ豚箱の中で僕はしみじみと生のうどんの皮をひっぺかしながらそう思ったそれは青い蚊帖が雨上りの甘酸っぱい臭いをたてながら差入れの風鈴と一しよにゆさ/\揺れていた時だった!背の低い長髪のいつも怒ったような顔をしたそれで...
誤って健康を伝えられた同志たちに槙村浩
5分以内
健康(1)の一語をかる/″\しく口にするな!健康(1)の錯誤は健康の犠牲よりいたましいこれほどわたしら共同の仕事の大きな邪魔者があろうか!どちらがより多く仕事が出来るか?獄内で坐っているわたしらにか、獄外で迫害に耐えているきみらにか?わたしらはいつもきみらの過誤と素朴と情熱とを愛したわたしらは出獄した時のきみらの仕事の成果をまじめに期待したその後をわたしらが引きついでやりぬくために!だが仕事をせぬために過誤せぬ...
異郷なる中国の詩人たちに槙村浩
5分以内
わたしらはあなたの国では、正しい詩人は舌をひっこぬかれると聞いたわたしらはなお聞いた―――資本をつなぐ軍部と軍閥の鉄道の上にひっこぬかれた詩人らの舌がわたしらの故郷の海のさん/\たる珊瑚珠のように、串刺しにしてさらされてあるのを荒らされた珠は、海の青さの海で真紅に燃えていたその一粒々々は揺れ合い折れ重なり、嵐の中で彼自身の地肌を完全に保存したわたしらえの侵害をあなたらの禦いだのには及ばなかったが根限りあなたらえの侵害を守ろうとし...
京都帝国大学(十四行詩)槙村浩
5分以内
十二の仮面のような頭蓋時計。
獄中のコンミューンの戦士の詩を憶って槙村浩
5分以内
コンミューンの戦士をして墓の中より起たしめよ、よし東方の墓堀り人夫らが釘づけ、磐石の錘を据え置こうとわが森山啓氏が肩をすくめ、全身の力もて突立ち上る時あなたはアトラスのように地球の屈辱を荷わぬだろうかわたしは獄中で若い憂愁が瞼を襲うときいつもあなたのコンミューンの詩を想い出したそれはわたしらにとって無上の刺激剤だった苦難の時代をわりあい間違なく進みえたことについてわたしらは心からの感謝をあなたに捧げる...
詩諷槙村浩
5分以内
「われ/\は諷射しよう!」と詩人大江鉄麿は、幅広いこめかみを引きつけて吃りながら言った「保留と伏字の泥沼で、編輯者が自分で自分の評判を悪くしたとき犬の詩を書く代りに書かすことが、ジャーナリズムの紹介業者たちの仕事となっているときわれ/\がみんな真面目な吃りであることを強いられているときわれ/\は正確に、そして効果的に吃ろう!刺すことは、敵の一卒を倒すだろうだが散兵壕はいま大量屠殺のまっさいちゅうだわれ/\が射程を拡大しなけ...
獄内にてドイツの同志を思う歌槙村浩
10分以内
鎌と槌をうちぬくひろ/″\とした美くしい自由の花園をへだてゝ砲口をそなえた二つの牢獄がそゝり立つ!―――日本!東方の突端この蜜房のようなじめ/\した数千の牢獄の一画におれらが住み―――潮が南方のたぎりたつ褐色の急潮が夜の銃架のように、おし静まった独房のはての島々の礎石を噛み残虐な奴隷労働の、憂愁と反逆を箭のような熔熱にのせて北流し―――化石した憂愁を、大陸の凍岸に崩折れしめあ...
青春槙村浩
30分以内
(若き日の孤独を灼きつくす情熱をわれらに与えよわれらをして戦いに凍えたる手と疲れたる唇に友を亨けしめよ銀の鉛屋根の上に朽葉色の標燈の照らす夜をわれらの老いたる母のひとり眠る時明るき原と自由なる槌を、こゝに赤きプラカードのごとくわれらと共に擁する友を亨けしめよ牢獄!崩れた喜びと愛と思い出の蘇る日友と生活の悦びを金盞花えの雑りけなき接吻と共に鉄色の電気の溶流の瞬間の衝撃のごとく...
長詩槙村浩
30分以内
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた格子が僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた看守はわざ/\低くつくりつけた窓からのぞきこむために朝々うやうやしく僕にお辞儀し僕はまだ脱獄してゐない証拠としてちびつけのブハーリンのような不精髯の間から朝々はったと看守をにらみつけたこれが僕らの挨拶だった朝になると、窓が右からかげって来た夜になると、窓が左からかげって来たそのたびにアスファルトのどす黒い影が...
同志下司順吉槙村浩
5分以内
―――同志よ固く結べ生死を共にせん―――いかなる迫害にもあくまで屈せずに―――われら若き兵士プロレタリアのそれは牢獄の散歩の時間だった独房の前で彼のトランクを小脇に抱えているむかしの友同志下司と彼の口笛に七年ぶりで出あったのは!彼は勇敢な、おとなしい、口笛の上手な少年だっただが夏の朝の澄明さに似たあわたゞしい生活が流れてから境遇と政治の過流が私たちを異った都市と都市との地下に埋めたそして今日――...
野兎の歌槙村浩
5分以内
(ふん、芸術家ってものは、獄中ですらきれ/″\ながら守りたてゝいる組織を、あまり勝手に外で、解散しすぎるぢゃないか。
同志古味峯次郎槙村浩
30分以内
誰がこの困難無比の時代に労働者の利益のために最も正しい道を選んだか―――壁に頭を打ちあてるようなこの時代にその一つの例をおれは示そう―――確かに正しく!古味峯次郎君彼は鋼の中から打ち出され、飢餓の闘いが彼をボルセヴィキにまで鍛え上げた(1)彼は越知の狭い町はづれの小作兼自作農の家に生れたそしてこんな南国の山麓の息子たちがそうであるように十八の彼は嶺を越え花崗岩のはすに削られた灰青色の...
シュレジェンの織工によせて槙村浩
5分以内
おなじみの古調でハイネはしみじみとシュレジェンの織工の歌をぼくに告げた無慈悲な神々、王と、不実な祖国とえ三重の呪咀を織りこんだむかしの労働者の歌をその后ぼくは皇帝の監獄部屋で皇帝の親衛兵たちのボロを解きながら皇帝の緋色の衣装を拝受したこのマンチュリアの婦人服に似た着衣は皇帝の女囚によって織られた三重の呪咀は、高貴な織物の一片々々にしみわたっていた僕は毎朝監守の前で、わざとおどけた小供のような情熱をもってこの筒っぽの着更...
田木繁に槙村浩
5分以内
(前半紛失)このエピソードを思い出すたびに、わたしらはなぜか最近のあなたの詩を思い出さずにはいられない昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている同志田木繁、こんな猫が、あなたの地区の工場の行きすがりに、ふっと道を横ぎりはせぬだろうか自分自身に限界性をくぎるたびに、何かしらこんなものかと思い出してくるものだ昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている世の中にあの記録的な「松ヶ鼻の渡し」の闘いを、なぜまた精悍に開始し...
板垣先生の銅像を拝して槙村浩
5分以内
(一)たそがれ告ぐる鐘の音に誘はれて散る木々の葉の雪は夕日に照りはへてげに厳めしの銅像や(二)自由の祖先高知市の偉人を偲ぶ銅像の其の勇ましき姿こそ永き偉人のかたみなれ(大正十三・一・六)。
英雄ナポレオン槙村浩
5分以内
南欧の夜の更け行けば空には清き星の数銀河の影もたなびきて風は香りて薫ばしき月は折しも青く冴え波も静けき海原に俄に殺気みなぎりてなびく異国の旗の影沖の鴎も怪みて水の上遠く飛び行けば羽ばたきに散る水煙銀月ゆらぐ春の海東雲の空月落ちて残星光失へば彼方に霞む紅の雲を破って朝の風天気に響く万歳に馬に鞭あて英雄の後に残すや砂煙パリをさして急ぎ行く...
華厳経と法華経槙村浩
10分以内
華厳経と法華経は古来仏教の二大聖典として、併称された。
世界大戦の後槙村浩
5分以内
今より凡そ八年前大正三年の六月も将にくれんとする時、突如天の一方より来った飛電は全欧否全世界の人民を驚倒せしめ、わづか九日の間で英仏独墺露の五強国は戈をふるって立った。
入所時感想録槙村浩
5分以内
六三五番氏名吉田豊道犯罪するに至った筋道を記せ自分ハ最初世上ノ俗論ニ迷ハサレテ、マルクス主義ハ一箇ノユートピアニ過ギナイト信ジテ居タ。
我々は牢獄で何をなすべきか槙村浩
5分以内
現在ほど、国家機構に直面する牢獄におけるわれ/\の態度の乱れ勝ちな、しかも現在ほど、その統一を必要とする時代はない。
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