60分以内で読める牧野信一の中編作品

青空文庫で公開されている牧野信一の作品の中で、おおよその読了目安時間が「60分以内」の中編作品を、おすすめ人気順で表示しています。

1–50件 / 全54件

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
ゼーロン牧野信一60分以内14,546

更に私は新しい原始生活に向うために、一切の書籍、家具、負債その他の整理を終ったが、最後に、売却することの能わぬ一個のブロンズ製の胸像の始末に迷った。

更に私は新しい原始生活に向うために、一切の書籍、家具、負債その他の整理を終ったが、最後に、売却することの能わぬ一個のブロンズ製の胸像の始末に迷った。

鬼涙村牧野信一60分以内14,376

一  鵙の声が鋭くけたたましい。

一  鵙の声が鋭くけたたましい。

痴日牧野信一60分以内14,352

一  頭の惡いときには、むしろ極めて難解な文字ばかりが羅列された古典的な哲學書の上に眼を曝すに如くはない――隱岐はいつも左う胸一杯に力んで、決して自分の部屋から外へ現れなかつた。

一  頭の惡いときには、むしろ極めて難解な文字ばかりが羅列された古典的な哲學書の上に眼を曝すに如くはない――隱岐はいつも左う胸一杯に力んで、決して自分の部屋から外へ現れなかつた。

吊籠と月光と牧野信一60分以内13,248

僕は、哲学と芸術の分岐点に衝突して自由を欠いた頭を持てあました。

僕は、哲学と芸術の分岐点に衝突して自由を欠いた頭を持てあました。

熱海線私語牧野信一60分以内16,212

一  一九三四年、秋――伊豆、丹那トンネルが開通して、それまでの「熱海線」といふ名称が抹殺された。

一  一九三四年、秋――伊豆、丹那トンネルが開通して、それまでの「熱海線」といふ名称が抹殺された。

鱗雲牧野信一60分以内21,120

一  百足凧――これは私達の幼時には毎年見物させられた珍らしくもなかつた凧である。

一  百足凧――これは私達の幼時には毎年見物させられた珍らしくもなかつた凧である。

創作生活にて牧野信一60分以内12,211

窓下の溝川に蛙を釣に来る子供たちが、 「今日は目マルは居ねえのか。」 「居ないらしいぞ。」  などと、ささやき合つてゐるのを聴いた。

窓下の溝川に蛙を釣に来る子供たちが、 「今日は目マルは居ねえのか。」 「居ないらしいぞ。」  などと、ささやき合つてゐるのを聴いた。

村のストア派牧野信一60分以内18,701

一  沢山な落葉が浮んでゐる泉水の傍で樽野は、籐椅子に凭つて日向ぼつこをしてゐた。

一  沢山な落葉が浮んでゐる泉水の傍で樽野は、籐椅子に凭つて日向ぼつこをしてゐた。

バラルダ物語牧野信一60分以内20,451

俺は見た 痛手を負へる一頭の野鹿が オリオーンの槍に追はれて 薄明の山頂を走れるを ――あゝ されど 古人の嘆きのまゝに 影の猟人なり 影の野獣なり  日照りつゞきで小川の水嵩が――その夕暮時に、この二三日来の水車の空回りを憂へたあまり、蝋燭のやうにめつきりと耄碌してしまつた私と此の水車小屋の主人であるところの雪太郎と、ふるへる腕を堪えて水底深く水深計を立てゝ見ると、朝に比べて更に五寸強の減水

俺は見た 痛手を負へる一頭の野鹿が オリオーンの槍に追はれて 薄明の山頂を走れるを ――あゝ されど 古人の嘆きのまゝに 影の猟人なり 影の野獣なり  日照りつゞきで小川の水嵩が――その夕暮時に、この二三日来の水車の空回りを憂へたあまり、蝋燭のやうにめつきりと耄碌してしまつた私と此の水車小屋の主人であるところの雪太郎と、ふるへる腕を堪えて水底深く水深計を立てゝ見ると、朝に比べて更に五寸強の減水

心象風景牧野信一60分以内14,873

一  槌で打たなければ、切り崩せない堅さの土塊であつた。

一  槌で打たなければ、切り崩せない堅さの土塊であつた。

素書牧野信一60分以内16,688

一 「マダムの御気嫌はどう? 今日は?」  山崎の顔を見るなり私は、部屋の入口に突立つたまゝ凝つと、訊ねた。

一 「マダムの御気嫌はどう? 今日は?」  山崎の顔を見るなり私は、部屋の入口に突立つたまゝ凝つと、訊ねた。

月あかり牧野信一60分以内15,217

このごろ私は、ときどき音取かくからの手紙(代筆)を貰ふので、はぢめてその音取といふ苗字を知つた次第でありますが、それまではその人の姓名は怒山かく――かとばかりおもふて居りました。

このごろ私は、ときどき音取かくからの手紙(代筆)を貰ふので、はぢめてその音取といふ苗字を知つた次第でありますが、それまではその人の姓名は怒山かく――かとばかりおもふて居りました。

茜蜻蛉牧野信一60分以内14,883

一  白いらつぱ草の花が、涌水の傍らに、薄闇に浮んで居り、水の音が静かであつた。

一  白いらつぱ草の花が、涌水の傍らに、薄闇に浮んで居り、水の音が静かであつた。

淡雪牧野信一60分以内14,915

病弱者、遊蕩児、その他でも行末に戦人としての望みが持てさうもない子息達は凡て離籍して近隣の漁家や農家へ養子とするのが、昔その城下町の風習だつた。

病弱者、遊蕩児、その他でも行末に戦人としての望みが持てさうもない子息達は凡て離籍して近隣の漁家や農家へ養子とするのが、昔その城下町の風習だつた。

歌へる日まで牧野信一60分以内18,011

一  蝉――テテツクス――ミユーズの下僕――アポロの使者――白昼の夢想家――地上に於ける諸々の人間の行状をオリムパスのアポロに報告するためにこの世につかはされた観光客――客の名前をテテツクスといふ――蝉。

一  蝉――テテツクス――ミユーズの下僕――アポロの使者――白昼の夢想家――地上に於ける諸々の人間の行状をオリムパスのアポロに報告するためにこの世につかはされた観光客――客の名前をテテツクスといふ――蝉。

鬼の門牧野信一60分以内16,033

『ヒストリイ・オヴ・デビルズ』 『デビルズ・デイクシヨナリイ』 『クラシカル・マヂシアンズ・ボキアブラリイ・ブツク』  私は、その頃右の如き表題の辞書を繙きながら、 「クリステンダム物語」 「ドクトル・フアウスタスの巡遊記」 「ジークフリード遠征録」 「セント・ジヨージ快挙録」  その他の、これに類する種々の物語を耽読した。

『ヒストリイ・オヴ・デビルズ』 『デビルズ・デイクシヨナリイ』 『クラシカル・マヂシアンズ・ボキアブラリイ・ブツク』  私は、その頃右の如き表題の辞書を繙きながら、 「クリステンダム物語」 「ドクトル・フアウスタスの巡遊記」 「ジークフリード遠征録」 「セント・ジヨージ快挙録」  その他の、これに類する種々の物語を耽読した。

女に臆病な男牧野信一60分以内12,676

一  務めの帰途、村瀬は銀座へ廻つて、この間うちから目星をつけておいた濃緑地に虹色の模様で唐草風を織り出したネクタイを一本購つた。

一  務めの帰途、村瀬は銀座へ廻つて、この間うちから目星をつけておいた濃緑地に虹色の模様で唐草風を織り出したネクタイを一本購つた。

酒盗人牧野信一60分以内12,631

私は、マールの花模様を唐草風に浮彫りにした銀の横笛を吹きずさみながら、 ……………… おゝ これはこれ ノルマンデイの草原から 長蛇船の櫂をそろへて 勇ましく 波を越え また波と闘ひ 月を呪ふ国に到着した ガスコンの後裔 ………………  と歌つた。

私は、マールの花模様を唐草風に浮彫りにした銀の横笛を吹きずさみながら、 ……………… おゝ これはこれ ノルマンデイの草原から 長蛇船の櫂をそろへて 勇ましく 波を越え また波と闘ひ 月を呪ふ国に到着した ガスコンの後裔 ………………  と歌つた。

早春のひところ牧野信一60分以内12,017

一  そのころ私は、文科の学生でありましたが、小説といふものにいさゝかの興味もなく――といふよりも小説の類ひを読んだことがなかつたので――主に西洋の哲学や科学の書に親しみ、興味と云へば星の観測ぐらゐのものでした。

一  そのころ私は、文科の学生でありましたが、小説といふものにいさゝかの興味もなく――といふよりも小説の類ひを読んだことがなかつたので――主に西洋の哲学や科学の書に親しみ、興味と云へば星の観測ぐらゐのものでした。

天狗洞食客記牧野信一60分以内19,710

今更申すまでもないことだが、まつたく人には夫々様々な癖があるではないか、貧棒ゆすりだとか爪を噛むとか、手の平をこするとか、決して相手の顔を見ないで内ふところに向つてはなしをするとか、無闇に莨を喫すとか――とそれこそ枚挙に遑はない。

今更申すまでもないことだが、まつたく人には夫々様々な癖があるではないか、貧棒ゆすりだとか爪を噛むとか、手の平をこするとか、決して相手の顔を見ないで内ふところに向つてはなしをするとか、無闇に莨を喫すとか――とそれこそ枚挙に遑はない。

沼辺より牧野信一60分以内13,066

こんな沼には名前などは無いのかと思つてゐたところが、このごろになつてこれが鬼涙沼といふのだといふことを知つた。

こんな沼には名前などは無いのかと思つてゐたところが、このごろになつてこれが鬼涙沼といふのだといふことを知つた。

剥製牧野信一60分以内16,389

一 “I chatter, chatter, as I flow    To join the brimming river,  For men may come and men may go,    But I go on for ever”  ………………  うたでもうたつてゐないと絶え入りさうなので、私はあたりの物音を怕れながら、聴心器のゴム管で耳をおさへ、自分で自分の鼓動に注意す

一 “I chatter, chatter, as I flow    To join the brimming river,  For men may come and men may go,    But I go on for ever”  ………………  うたでもうたつてゐないと絶え入りさうなので、私はあたりの物音を怕れながら、聴心器のゴム管で耳をおさへ、自分で自分の鼓動に注意す

変装綺譚牧野信一60分以内12,793

一  図書館を出て来たところであつた、たゞひとりの私は――。

一  図書館を出て来たところであつた、たゞひとりの私は――。

まぼろし牧野信一60分以内12,878

一  和やかな初夏の海辺には微風の気合ひも感ぜられなかつた。

一  和やかな初夏の海辺には微風の気合ひも感ぜられなかつた。

武者窓日記牧野信一60分以内16,473

たとへこの身は千里の山河を隔てようとも魂は離れはせぬぞよ。

たとへこの身は千里の山河を隔てようとも魂は離れはせぬぞよ。

山男と男装の美女牧野信一60分以内12,605

一  糧食庫に狐や鼬が現れるので、事務所の壁には空弾を込めた大型の短銃が三つばかり何時でも用意してあつたが、事務員の僕と、タイピストのミツキイは、狐や鼬に備へるためではなく、夫々一挺宛の短銃を腰帯の間に備へるのを忘れたことはなかつた。

一  糧食庫に狐や鼬が現れるので、事務所の壁には空弾を込めた大型の短銃が三つばかり何時でも用意してあつたが、事務員の僕と、タイピストのミツキイは、狐や鼬に備へるためではなく、夫々一挺宛の短銃を腰帯の間に備へるのを忘れたことはなかつた。

R漁場と都の酒場で牧野信一60分以内16,503

一  停車場へ小包を出しに行き、私は帰りを、裏山へ向ふ野良路をたどり、待ち構へてゐた者のやうにふところから「シノン物語」といふ作者不明の絵本をとり出すと、それらの壮烈な戦争絵を見て吾を忘れ、誰はゞかることも要らぬ大きな声を張りあげて朗読しながら歩いてゐた。

一  停車場へ小包を出しに行き、私は帰りを、裏山へ向ふ野良路をたどり、待ち構へてゐた者のやうにふところから「シノン物語」といふ作者不明の絵本をとり出すと、それらの壮烈な戦争絵を見て吾を忘れ、誰はゞかることも要らぬ大きな声を張りあげて朗読しながら歩いてゐた。

ゾイラス牧野信一60分以内12,916

海の遠鳴りをきゝながら私は、手風琴を弾いてゐた。

海の遠鳴りをきゝながら私は、手風琴を弾いてゐた。

ダイアナの馬牧野信一60分以内14,673

一  二度つゞけて土曜日が雨だつた。

一  二度つゞけて土曜日が雨だつた。

ダニューヴの花嫁牧野信一60分以内12,332

一  白雲は尽くる時無からん、白雲は尽くる時無からん……白雲は――。

一  白雲は尽くる時無からん、白雲は尽くる時無からん……白雲は――。

スプリングコート牧野信一60分以内14,519

一  丘を隔てた海の上から、汽船の笛が鳴り渡つて来た。

一  丘を隔てた海の上から、汽船の笛が鳴り渡つて来た。

F村での春牧野信一60分以内14,542

夜、眠れないと云つても樽野のは、それだけ昼間熟睡するからなので、神経衰弱といふわけではなかつた。

夜、眠れないと云つても樽野のは、それだけ昼間熟睡するからなので、神経衰弱といふわけではなかつた。

山を越えて牧野信一60分以内13,833

一  彼女等の夫々の父親からの依頼で二人の娘をそちらへおくることになつたから、彼女等を夫々オフイスの一員に加へて貰ひたい、詳しいことは当人達からきいての上で、山の見学を望んでゐる二人の幼い学生達に能ふだけの満足を与へて欲しい――。

一  彼女等の夫々の父親からの依頼で二人の娘をそちらへおくることになつたから、彼女等を夫々オフイスの一員に加へて貰ひたい、詳しいことは当人達からきいての上で、山の見学を望んでゐる二人の幼い学生達に能ふだけの満足を与へて欲しい――。

山彦の街牧野信一60分以内16,539

一  哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ! とか、つまみ出してしまへ! とか、そんな凄まじい声がして、 「あゝ、痛いツ!」 「御免だ……」 「救けて呉れ!」  そんな悲鳴が挙つたりするので、これは容易ならぬ事件が起つたのか! と思つて誰しもちよいと立止つ

一  哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ! とか、つまみ出してしまへ! とか、そんな凄まじい声がして、 「あゝ、痛いツ!」 「御免だ……」 「救けて呉れ!」  そんな悲鳴が挙つたりするので、これは容易ならぬ事件が起つたのか! と思つて誰しもちよいと立止つ

籔のほとり牧野信一60分以内15,658

一  どうして此処の座敷の欄間にはあのやうな扇があんな風に五つも六つもかゝげてあるんだらう! 装飾の意味にしてはあくどすぎる! 何となくわけあり気に見えるではないか?  それにしてもあれは一体何に使ふものなのだらうか? 扇子には違ひないが、あれを扇子に使ふ者は仁王より他にはあるまい!  樽野は祖母の家に来る毎によくそんなことを思つたことがあるが、別段誰に訊ねようともしなかつた。

一  どうして此処の座敷の欄間にはあのやうな扇があんな風に五つも六つもかゝげてあるんだらう! 装飾の意味にしてはあくどすぎる! 何となくわけあり気に見えるではないか?  それにしてもあれは一体何に使ふものなのだらうか? 扇子には違ひないが、あれを扇子に使ふ者は仁王より他にはあるまい!  樽野は祖母の家に来る毎によくそんなことを思つたことがあるが、別段誰に訊ねようともしなかつた。

貧しき日録牧野信一60分以内19,550

こゝは首都の郊外である。

こゝは首都の郊外である。

夏ちかきころ牧野信一60分以内16,704

一  あいつの本箱には、黒い背中を縦に此方向きにした何十冊とも数知れない学生時代のノート・ブツクが未だに、何年も前から麗々と詰つてゐる。

一  あいつの本箱には、黒い背中を縦に此方向きにした何十冊とも数知れない学生時代のノート・ブツクが未だに、何年も前から麗々と詰つてゐる。

鶴がゐた家牧野信一60分以内20,084

一  母がゐる町の近くに帰つたが母と同じ家に住む要もなく、何処にゐても自由であり、それなのに、何故自分は今までの都にとゞまらなかつたのか? でなければ、何故、常々憧れてゐる妻を伴つての長い旅路にたゝなかつたのか、それにも何の妨げもなかつたのに――? 何故、初めての眼新しい刺激のある何処かの地に住はうとはしなかつたのか、何か仄かな明るさを感じさせるのはそのことだけだつたが――?  樽野は稍ともすれ

一  母がゐる町の近くに帰つたが母と同じ家に住む要もなく、何処にゐても自由であり、それなのに、何故自分は今までの都にとゞまらなかつたのか? でなければ、何故、常々憧れてゐる妻を伴つての長い旅路にたゝなかつたのか、それにも何の妨げもなかつたのに――? 何故、初めての眼新しい刺激のある何処かの地に住はうとはしなかつたのか、何か仄かな明るさを感じさせるのはそのことだけだつたが――?  樽野は稍ともすれ

蝉牧野信一60分以内16,964

「あたしは酔ツぱらひには慣れてゐるから夜がどんなに遅くならうと、どんなにあなたが騒がうと今更何とも思はないが――」  周子は、そんな前置きをした後に夫の滝野に詰つた。

「あたしは酔ツぱらひには慣れてゐるから夜がどんなに遅くならうと、どんなにあなたが騒がうと今更何とも思はないが――」  周子は、そんな前置きをした後に夫の滝野に詰つた。

西瓜喰ふ人牧野信一60分以内13,747

滝が仕事を口にしはじめて、余等の交際に少なからぬ変化が現れて以来、思へば最早大分の月日が経つてゐる。

滝が仕事を口にしはじめて、余等の交際に少なからぬ変化が現れて以来、思へば最早大分の月日が経つてゐる。

環魚洞風景牧野信一60分以内15,728

一 「まつたく、ひどい音響だね! あれは――もう僕は、大抵慣れたつもりなんだが、だがさつぱり駄目だよ。――これほど突拍子もないものになると、一日に何辺繰り反されても、その度にひどく驚かされるんだ、その余韻が消えるまでには、相当の時間を要するほどに――だ。……で、ね、もう起る時分だな、と、さう思つて、時にはね、いたづらな反抗心といふやつをもつてさ、つまり――何の、さアやるんならやつて見ろ、といふほ

一 「まつたく、ひどい音響だね! あれは――もう僕は、大抵慣れたつもりなんだが、だがさつぱり駄目だよ。――これほど突拍子もないものになると、一日に何辺繰り反されても、その度にひどく驚かされるんだ、その余韻が消えるまでには、相当の時間を要するほどに――だ。……で、ね、もう起る時分だな、と、さう思つて、時にはね、いたづらな反抗心といふやつをもつてさ、つまり――何の、さアやるんならやつて見ろ、といふほ

蔭ひなた牧野信一60分以内16,191

或る朝、私が朝飯を済ませて煙草を喫してゐるとAが来て、あがらないで、 「君、直ぐ散歩へ行かう、早く早く、直ぐ仕度をして呉れ。君は斯ういふ服装は持つてゐないか? あゝ、さうか、無ければたゞの洋服でよろしい、大急ぎで着換へないか。」と、大変勢急に口走ると私の返事も待たずに玄関を出て、そこの露路を気忙し気に口笛を吹きながらあちこちと往復してゐるのです。

或る朝、私が朝飯を済ませて煙草を喫してゐるとAが来て、あがらないで、 「君、直ぐ散歩へ行かう、早く早く、直ぐ仕度をして呉れ。君は斯ういふ服装は持つてゐないか? あゝ、さうか、無ければたゞの洋服でよろしい、大急ぎで着換へないか。」と、大変勢急に口走ると私の返事も待たずに玄関を出て、そこの露路を気忙し気に口笛を吹きながらあちこちと往復してゐるのです。

小川の流れ牧野信一60分以内23,886

一  或日彼は、過去の作品を一まとめにして、書物にすることで、読みはじめると、大変に情けなくなつて、恥で、火になつた。

一  或日彼は、過去の作品を一まとめにして、書物にすることで、読みはじめると、大変に情けなくなつて、恥で、火になつた。

或る日の運動牧野信一60分以内15,174

「妾のところにも、Fさんを遊びに連れてお出でな。」  さうしないことが自分に対して無礼だ、友達甲斐がない――といふ意味を含めて、照子は、傲慢を衒ひ、高飛車に云ひ放つた。

「妾のところにも、Fさんを遊びに連れてお出でな。」  さうしないことが自分に対して無礼だ、友達甲斐がない――といふ意味を含めて、照子は、傲慢を衒ひ、高飛車に云ひ放つた。

熱い風牧野信一60分以内22,495

一  強ひては生活のかたちに何んな類ひの理想をも持たない、止め度もなく愚かに唯心的な私であつた。

一  強ひては生活のかたちに何んな類ひの理想をも持たない、止め度もなく愚かに唯心的な私であつた。

秋晴れの日牧野信一60分以内14,196

一  彼は、飲酒があまり体質に適してゐないためか、毎朝うがひをする時に、腹の中から多量の酒臭い不快な水を吐き出した。

一  彼は、飲酒があまり体質に適してゐないためか、毎朝うがひをする時に、腹の中から多量の酒臭い不快な水を吐き出した。

明るく・暗く牧野信一60分以内14,173

一  天井の隅に、小さい四角な陽がひとつ、炎ゆるやうにキラキラと光つてゐた。

一  天井の隅に、小さい四角な陽がひとつ、炎ゆるやうにキラキラと光つてゐた。

〔編輯余話〕牧野信一60分以内13,577

入社の辞〔『少女』〕  私はこの七月から入社いたし皆様のために働くことゝなりました。

入社の辞〔『少女』〕  私はこの七月から入社いたし皆様のために働くことゝなりました。

浪曼的月評牧野信一60分以内19,335

一  今月、雑誌を手にとるがいなや、自分が評家の立場であるなしにかゝはらず、待ちかまへて読んだものが、三つもあつたことは大変に愉快でした。

一  今月、雑誌を手にとるがいなや、自分が評家の立場であるなしにかゝはらず、待ちかまへて読んだものが、三つもあつたことは大変に愉快でした。

闘戦勝仏牧野信一60分以内14,280

一  玄奘三蔵法師が或日、孫悟空に向つて、 「汝の勇と智は天上天下に許されてゐる、天の魔も地の鬼も、汝の黒一毛にも及ばない。かゝる大智大勇と非凡な妖術とを有しながら、何故天下を領せんとせず、仏門に帰つて、それも余が如き力量もなく妖術も弁へぬ小法師に従うてゐるのか、その理由がきゝ度いのだ。」と問うた。

一  玄奘三蔵法師が或日、孫悟空に向つて、 「汝の勇と智は天上天下に許されてゐる、天の魔も地の鬼も、汝の黒一毛にも及ばない。かゝる大智大勇と非凡な妖術とを有しながら、何故天下を領せんとせず、仏門に帰つて、それも余が如き力量もなく妖術も弁へぬ小法師に従うてゐるのか、その理由がきゝ度いのだ。」と問うた。