山彦の街
牧野信一
『山彦の街』は青空文庫で公開されている牧野信一の中編作品。17,525文字で、おおよそ60分以内で読むことができます。
文字数 | 60分以内 17,525文字 |
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書き出し書出 | 哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ!とか、つまみ出してしまへ!とか、そんな凄まじい声がして、「あゝ、痛いツ!」「御免だ……」「救けて呉れ!」そんな悲鳴が挙つたりするので、これは容易ならぬ事件が起つたのか!と思つて誰しもちよいと立止つて様子を窺つたが、同時に軽い苦笑を浮べて行き過ぎてしまふのであつた。 |
初出 | 「文藝春秋 第七巻第六号」文藝春秋社、1929(昭和4)年6月1日 |
底本 | 牧野信一全集第三巻 |
表記 | 新字旧仮名 |
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