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5分以内で読める萩原朔太郎の短編作品

青空文庫で公開されている萩原朔太郎の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。

51-100件 / 全132件
作品名著者読了時間人気
浮名萩原朔太郎
5分以内
浮名をいとはば舟にのれ、舟はながれゆく、いま櫓櫂(ろかい)の音を絶え、風も雨も晴れしあけぼのに、よしあしぐさのみだるる渚をすぎ、舟はすいすいと流れゆくなり。
利根川の岸辺より萩原朔太郎
5分以内
こころにひまなく詠嘆は流れいづ、その流れいづる日のせきがたく、やよひも櫻の芽をふくみ、土によめなはさけびたり。
幼き妹に萩原朔太郎
5分以内
いもうとよ、そのいぢらしき顏をあげ。
初夏の祈祷萩原朔太郎
5分以内
主よ、いんよくの聖なる神よ。
交歓記誌萩原朔太郎
5分以内
みどりに深き手を泳がせ涼しきところに齒をかくせいま風ながれ風景は白き帆をはらむきみはふんすゐのほとりに家畜を先導しきみは舞妓たちを配列しきみはあづまやに銀のタクトをとれ夫人よ、おんみらはまたとく水色の籐椅子に酒をそそぎてよみよ、ひとびときたる遠方より魚を光らし淫樂の戲奴は靴先に鈴を鳴らせり。
供養萩原朔太郎
5分以内
女は光る魚介のたぐひみなそこ深くひそめる聖像われ手を伸ぶれど浮ばせ給はずしきりにみどりの血を流しわれはおんまへに禮拜す遠くよりしも歩ませ給へばたちまち路上に震動し息絶ゆるまでも合掌すにちにち都に巡禮しもの喰(は)まざればみじめに青ざめおん前にかたく瞳をとづる。
受難日萩原朔太郎
5分以内
受難の日はいたる主は遠き水上にありて氷のうへよりあまた光る十字すべらせ女はみな街路に裸形となりその素肌は黄金の林立する柱と化せり。
萩原朔太郎
5分以内
みどりをつらぬきはしる蛇、瀬川ながれをはやみゆき、ゆめと流れて瀧はおつ、たうたうたる瀧の水音、音なみさえ、主も遠きより視たまへば、銀の十字をかけまつる、我しもひとり瀧水の、若葉に靴を泳がして、念願せちに涙たる、念願せちに涙たる。
立秋萩原朔太郎
5分以内
遠く行く君が手に、胡弓の箱はおもからむ。
偏狂萩原朔太郎
5分以内
あさましき性のおとろへ、あなうらに薫風ながれ、額に緑金の蛇住めり、ああ我のみのものまにや、夏ふかみ山路をこゆる。
若き尼たちの歩む路萩原朔太郎
5分以内
この列をなす少女らのため、うるはしき都會の窓ぞひらかるる、みよいまし遠望の海は鳴りいで、なめいしを皿はすべりて、さかづきは歩道にこぼれふんすゐす。
萩原朔太郎
5分以内
ああきみは情慾のにほふ月ぐさ、われははた憂愁の瀬川の螢、いきづかふ舟ばたの光をみれば、ゆふぐれのおめがの瞳にて、たれかまたあるはをしらむ、さざなみさやぎ、くちびるはそらをながるる。
立秋萩原朔太郎
5分以内
洞窟の壁にふんすゐあり、さかづきをあぐる一聯(れん)のひと、秋ちかければ玻璃ながれ、空氣は谷間をくだる。
岩魚萩原朔太郎
5分以内
瀬川ながれを早み、しんしんと魚らくだる、ああ岩魚ぞはしる、谷あひふかに、秋の風光り、紫苑はなしぼみ、木末にうれひをかく、えれなよ、信仰は空に影さす、かならずみよ、おんみが靜けき額にあり、よしやここは遠くとも、わが巡禮は鈴ならしつつ君にいたらむ、いまうれひは瀧をとどめず、かなしみ山路をくだり、せちにせちにおんみをしたひ、ひさしく手を岩魚のうへにおく。
旅上萩原朔太郎
5分以内
けぶれる空に麥ながれ、麥ながれ、うれひをのせて汽車は行く。
萩原朔太郎
5分以内
しよんぼり立つた麥畑、われのせつなさやるせなき、みぎむきや穗が光る、ひだりむきや穗が光る、しんじつわが身をどうせうぞ。
決闘萩原朔太郎
5分以内
空と地とに緑はうまる、緑をふみてわが行くところ、靴は光る魚ともなり、よろこび樹蔭におよぎ、手に輕き薄刃はさげられたり。
感傷の塔萩原朔太郎
5分以内
塔は額にきづかる、螢をもつて窓をあかるくし、塔はするどく青らみ空に立つ、ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、肉やぶれいたみふんすゐすれども、なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、いやさらに伸長し、その愁も青空にとがりたり。
光る風景萩原朔太郎
5分以内
青ざめしわれの淫樂われの肉、感傷の指の銀のするどさよ、それ、ひるも偏狂の谷に涙をながし、よるは裸形に螢を點じ、しきりに哀しみいたみて、をみなをさいなみきずつくのわれ、ああ、われの肉われをして、かくもかくも炎天にいぢらしく泳がしむるの日。
純銀の賽萩原朔太郎
5分以内
みよわが賽(さい)は空にあり、空は透青、白鳥はこてえぢのまどべに泳ぎ、卓は一列、同志の瞳は愛にもゆ。
鉱夫の歌萩原朔太郎
5分以内
めざめよ、み空の金鑛、かなしくうたうたひ、なみだたれ、われのみ土地を掘らんとす、土地は黥青、なやましきしやべるぞ光る。
萩原朔太郎
5分以内
高原の空に風光り、秋はやふかみて、鑛脈のしづくのごとく、ひねもす銀針の落つるをおぼえ、ゆびにとげいたみ、せちにひそかに、いまわれの瞳の閉づるを欲す。
感傷品萩原朔太郎
5分以内
ほつねんなれば魚にとへしんじつなれば耶蘇にとへ。
真如萩原朔太郎
5分以内
金のみ佛金の足一列流涕なしたまふ光る白日のうなべりにとをのおゆびを血はながれいたみてほそき瀧ながれしたたるものは血のしづくわれの戀魚の血のしづく光る眞如のうなべりに金のみ佛金の足一列流涕なしたまふ。
和讃類纂萩原朔太郎
5分以内
一詠ゆきはふるまなつまひるのやまみちに光るこなゆきさんらんたりやわが道心のたなごころうすら侘しきたなごころ二詠ひじりのみあしつめたきみあしおんかたへやるせなくかけまつるさうぞくのしののめのこゆむらさきいろのあさがほ三詠なみぢのうへをとほくよりあゆませたまふわが主いえすよふなべりになみだをながしいちねん祈願したてまつる...
月蝕皆既萩原朔太郎
5分以内
みなそこに魚の哀傷、われに涙のいちじるく、きみはきみとて、ましろき乳房をぬらさむとする。
情慾萩原朔太郎
5分以内
手に釘うて、足に釘うて、十字にはりつけ、邪淫のいましめ、齒がみをなして我こたふ。
磨かれたる金属の手萩原朔太郎
5分以内
手はえれき、手はぷらちな、手はらうまちずむのいたみ、手は樹心に光り、魚に光り、墓石に光り、手はあきらかに光る、ゆくところ、すでに肢體をはなれ、炎炎灼熱し狂氣し、指ひらき啓示さるるところの、手は宙宇にありて光る、光る金屬の我れの手くび、するどく磨かれ、われの瞳をめしひ、われの肉をやぶり、われの骨をきずつくにより、恐るべし恐るべし、手は白き疾患のらぢう...
青いゆき萩原朔太郎
5分以内
青いぞ、ゆきはまつさを、もも、さくらぎに花咲かず、青いこなゆき、光る山路に泣きくらす。
蒼天萩原朔太郎
5分以内
いつしんなれば、あふむけに屍體ともなる、つめたく合掌し、いんよくいちねん、きりぎりす青らみ、もはら、雀みそらに殺さる。
霊智萩原朔太郎
5分以内
ふるへる、微光のよるに、いつぱつ、ぴすとるを撃つ、遠方に、金の山脈、かすかな、黒曜石の發光。
秘仏萩原朔太郎
5分以内
つゆしものうれひはきえず、わづかなるつちをふむとて、あなうらをやぶらせたまふ。
永日和讃萩原朔太郎
5分以内
ひとのいのりはみなみをむき、むぎはいつしん、うをはいつしん、われはしんじつ、そらにうかびて、ゆびとゆびと哀しみつれ、たましひはねもごろにほとけをしたふ。
ぎたる弾くひと萩原朔太郎
5分以内
ぎたる彈く、ぎたる彈く、ひとりしおもへば、たそがれは音なくあゆみ、石造の都會、またその上を走る汽車、電車のたぐひ、それら音なくして過ぎゆくごとし、わが愛のごときも永遠の歩行をやめず、ゆくもかへるも、やさしくなみだにうるみ、ひとびとの瞳は街路にとぢらる。
巡礼紀行萩原朔太郎
5分以内
きびしく凍りて、指ちぎれむとすれども、杖は絶頂にするどく光る、七重の氷雪、山路ふかみ、わがともがらは一列に、いためる心山峽たどる。
蛍狩萩原朔太郎
5分以内
愛妹のえりくびから一疋、瘋癲病院の窓から一疋、血えんのつかあなから一疋、いえすの素足から一疋、魚の背筋から一疋、殺人者の心臟から一疋、おれの磨いた手から一疋、遠い夜の世界で螢を一疋。
孝子実伝萩原朔太郎
5分以内
ちちのみの父を負ふもの、ひとのみの肉と骨とを負ふもの、ああ、なんぢの精氣をもて、この師走中旬を超え、ゆくゆく靈魚を獲んとはするか、みよ水底にひそめるものら、その瞳はひらかれ、そのいろこは凍り、しきりに靈徳の孝子を待てるにより、きみはゆくゆく涙をながし、そのあつき氷を蹈み、そのあつき氷を喰み、そのあつき氷をやぶらんとして、いたみ切齒なし、ゆくゆくちちのみの骨を負へるもの、光...
玩具箱萩原朔太郎
5分以内
朝青い服をきた獵人が、釣竿のやうなてつぽうをかついで、わん、つう、わん、つう、このへんにそつくりかへつた主人のうしろから、木製のしなびきつた犬が、尻尾のさきをひよこつかせ、わん、つう、わん、つう。
冬を待つひと萩原朔太郎
5分以内
こほれる利根のみなかみに、ひねもす銀の針を垂れ、しづかに水に針を垂れ、さしぐみきたる冬を待つ。
疾患光路萩原朔太郎
5分以内
我れのゆく路、菊を捧げてあゆむ路、いつしん供養、にくしんに血をしたたらすの路、肉さかな、きやべつの路、邪淫の路、電車軌道のみちもせに、犬、畜生をして純銀たらしむる、疾患せんちめんたる夕ぐれの路、ああ、素つぱだかの聖者の路。
合唱萩原朔太郎
5分以内
にくしん、にくしん、たれか肉身をおとろへしむ、既にうぐひす落ちてやぶれ、石やぶれ、地はするどき白金なるに、にくしん、にくしん、にくしんは蒼天にいぢらしき涙をながす、ああ、なんぢの肉身。
岩清水萩原朔太郎
5分以内
いろ青ざめて谷間をはしり、夕ぐれかけてただひとり、岩をよぢのぼれるの手は鋼鐵なり、ときすべて液體空氣の觸覺に、山山は茜(あかね)さし、遠樹に光る、わが偏狂の銀の魚、したたるいたみ、谷間を走りひたばしる、わが哀傷の岩清水、そのうすやみのつめたさに、やぶるるごとく齒をぬらす、やぶるるごとく齒をぬらす。
山頂萩原朔太郎
5分以内
かなしければぞ、眺め一時にひらかれ、あがつまの山なみ青く、いただきは額に光る。
南の海へ行きます萩原朔太郎
5分以内
ながい疾患のいたみも消えさり、淺間の山の雪も消え、みんなお客さまたちは都におかへり、酒はせんすゐにふきあげ、ちらちら緋鯉もおよぎそめしが、私はひとりぽつちとなり、なにか知らねど泣きたくなり、せんちめんたるの夕ぐれとなり、しくしくとものをおもへば、仲よしの友だちうちつれきたり、卵のごときもの、菓子のごときもの、林檎のごときものを捧げてまくらべにもたらせり、ああ、けれども私はさびしく、...
萩原朔太郎
5分以内
竹は直角、人のくびより根が生え、根がうすくひろごり、ほのかにけぶる。
竹の根の先を掘るひと萩原朔太郎
5分以内
病氣はげしくなりいよいよ哀しくなり三日月空にくもり病人の患部に竹が生え肩にも生え手にも生え腰からしたにもそれが生えゆびのさきから根がけぶり根には纖毛がもえいで血管の巣は身體いちめんなりああ巣がしめやかにかすみかけしぜんに哀しみふかくなりて憔悴れさせ絹糸のごとく毛が光りますます鋭どくして耐へられずつひにすつぱだかとなつてしまひ竹の根にすがりつき、すがりつきかなしみ心...
夜景萩原朔太郎
5分以内
高い家根の上で猫が寢てゐる猫の尻尾から月が顏を出し月が青白い眼鏡をかけて見てゐるだが泥棒はそれを知らないから近所の家根へひよつこりとび出しなにかまつくろの衣裝をきこんで煙突の窓から忍びこまうとするところ。
たびよりかへれる巡礼のうた萩原朔太郎
5分以内
いすらへるよりかへりわれはゆきのうへにたちぬ。
祈祷萩原朔太郎
5分以内
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください、あなたのふしぎをもて牢獄の窓をあけてください、あなたのおほみこころのみまへに、わたくしの懺悔をささげまつる。
小春萩原朔太郎
5分以内
やはらかい、土壤の上に、じつと私が坐つて居る、涙ぐましい日だまりに、白い羽蟲のちらちらもえ、遠い春日のちらちらもえ。
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