南の海へ行きます

萩原朔太郎

『南の海へ行きます』は青空文庫で公開されている萩原朔太郎の短編作品。564文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。

文字数
5分以内564文字
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書き出し

ながい疾患のいたみも消えさり、 淺間の山の雪も消え、 みんなお客さまたちは都におかへり、 酒はせんすゐにふきあげ、 ちらちら緋鯉もおよぎそめしが、 私はひとりぽつちとなり、 なにか知らねど泣きたくなり、 せんちめんたるの夕ぐれとなり、 しくしくとものをおもへば、 仲よしの友だちうちつれきたり、 卵のごときもの、 菓子のごときもの、 林檎のごときものを捧げてまくらべにもたらせり、 ああ、けれども私は

初出
底本萩原朔太郎全集 第三卷
表記
旧字旧仮名