青空文庫の全作品

この一冊の本は、わたしたちに何を告げ、何を教えているだろう。

ゆたかに、より能力のある人生を、というこころもちから、このごろの十代の人たちはどう生きているか、そして、どう生きようと欲しているか、という問題について注目されはじめている。

だいぶ古いことですが、イギリスの『タイムズ』という一流新聞の文芸附録に『乞食から国王まで』という本の紹介がのっていました。

婦人デーといえば、三月八日と誰でも知っていることではあるが、そのおこりは、どういうところからはじまったのだろう。

新しい日本が始ろうとしています。

朝の太陽が、一刻一刻と地平線の上にさしのぼって来るように、日本には人民が自身の幸福建設のために支配者として生活し得る可能がましています。

柚子柚の木の梢高く柚子の実のかかっているのを見るときほど、秋のわびしさをしみじみと身に感ずるものはない。

私は今年三十九になる。

遺言状余死せば朝日新聞社より多少の涙金渡るべし此金を受取りたる時は年齢に拘らず平均に六人の家族に頭割りにすべし例せば社より六百円渡りたる時は頭割にして一人の所得百円となる計算也此分配法ニ異議ありとも変更を許さず右之通明治四十二年三月二十二日露都病院にて長谷川辰之助長谷川静子殿長谷川柳子殿遺族善後策これは遺言ではなけれど余死したる跡にて家族の者差当...

日光掩蔽地上清涼靉靆垂布如可承攬其雨普等四方倶下流樹無量率土充洽山川険谷幽邃所生卉木薬艸大小諸樹「もし憚（はばかり）ながらお布施申しましょう。

雨を含んだ風がさっと吹いて、磯（いそ）の香が満ちている――今日は二時頃から、ずッぷりと、一降り降ったあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に沁（し）みるほどに薄寒い。

雛（ひな）の節句の晩に男の子を挙げてまだ産屋に籠っている私は医師から筆執る事も物を読む事も許されておりません。

陸軍軍医正の藤井氏と東京音楽学校助教授の環女史との離婚が、新聞紙の上で趣味の相違から生じた離婚だとか、陸軍と芸術との衝突だとか大袈裟に報道せられ、これについて諸先生方の御批評なども見えております。

従来は貞操という事を感情ばかりで取扱っていた。

或会社の技師をしている工学士某氏の妻が自分に対する苛酷を極めた処置に堪えかねて姑を刺したという故殺未遂犯が近頃公判に附せられたので、その事件の真相が諸新聞に現れた。

トルストイ翁に従えば、女は自身の上に必然に置かれている使命、即ち労働に適した子供を出来るだけ沢山生んでこれを哺育しかつ教育することの天賦の使命に自己を捧（ささ）げねばならぬと教えられ、またエレン・ケイ女史に従っても女の生活の中心要素は母となることであると説かれる。

私たちは個人として、国民として、世界人としてという三つの面を持ちながら、それが一体であるという生活を意識的に実現したい。

私は女子の生活が精神的にも経済的にも独立することの理想に対して、若い婦人の中の識者から反対説が出ようとは想像しませんでした。

女史の経済的独立と母性保護問題とについて、平塚雷鳥さんと私との間に端なくも意見の相異を見たのに対して、平塚さんからは、再び辛辣な反駁を寄せられ、山川菊栄さんと山田わか子さんのお二人からは、鄭重な批評を書いてくださいました。

日本人は早く仏教に由って「無常迅速の世の中」と教えられ、儒教に由って「日に新たにしてまた日に新たなり」ということを学びながら、それを小乗的悲観の意味にばかり解釈して来たために、「万法流転」が人生の「常住の相」であるという大乗的楽観に立つことが出来ず、現代に入って、舶載の学問芸術のお蔭で「流動進化」の思想と触れるに到っても、動もすれば、新しい現代の生活を呪詛して、黴（かび）の生えた因習思想を維持しようとする人たちを見受けます。

日本人の上に今や一つの大問題が起っております。

私の記憶は私の四歳頃のことまでさかのぼることができる。

碁の手直り表菊地寛我々の倶楽部と云うものが、木挽町八丁目にある。

棊は支那に起る。

あはれなる廿日鼠倉田百三お手紙を有難う御座いました。

天誅組がいよいよ勃発したのは、その年の八月のことでありました。

内宮と外宮の間にあるから間の山というのであって、その山を切り拓いて道を作ったのは天正年間のことだそうであります。

これらの連中がみんな東を指して去ってから後、十日ほどして、一人の虚無僧が大湊を朝の早立ちにして、やがて東を指して歩いて行きます。

机竜之助は昨夜、お絹の口から島田虎之助の最期を聞いた時に、「ああ、惜しいことをした」という一語を、思わず口の端から洩らしました。

高い塔が夕の空に聳（そび）えている。

天運は循環するか、意ふに其の循る所の環は、完全なる圓環にあらずして、寧ろ無窮なる螺旋形を爲す者たらんか、何となれば一個の中心點より開展して三のダイメンシヨンある空間を填充すべき一條線は、須らく無限に支派して螺形に纏繞する所の者たらざるべからざれば也。

我國の繪畫が主として支那に起原せる事は勿論にして、支那の繪畫が時代によりて變遷ある毎に我國にも影響せし事は疑なし。

寧樂浪華三十日の旅寢、このたびは二度目の觀風なれば、さまでに目新らしくも思へず、東とはかはれる風俗など前よりは委しく知れる節もあれど、六十年の前に人の物せる「浪華の風」といふ一書、温知叢書の中に收められしといたく異なれりと見えざるは、世の移りかはり、疾しといへば、疾きが若きものから、又遲しといへば遲くもあるかな、面白かりしは此の間兩度の寧樂行なり。

平安朝の前半期には專ら漢文學が行はれ、後半期には國文學が興つたが、此の國文學が興つたのは漢文學の刺激に依るのである。

魔都上海に、夏が来た。

およそ新兵器の発明にかけては、今日世界に及ぶものなしと称せられる金博士が、とつぜん謎の失踪をとげた。

なにがさて、例の金博士の存在は、現代に於ける最大奇蹟だ。

蒸し暑い或る夜のこと、発明王金博士は、袖のながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓をのぞきこんでいた。

大上海の地下を二百メートル下った地底に、宇宙線をさけて生活している例の変り者の大科学者金博士のことは、かねて読者もお聞き及びであろう。

倉庫ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。

作者より読者へうれしい皇軍の赫々（かっかく）たる大戦果により、なんだかちかごろこの地球というものが急に狭くなって、鼻が悶（つか）えるようでいけない。

英蘭西岸の名港リバプールの北郊に、ブルートという町がある。

青い器械「これでいい。

（×月×日、スカパフロー発）余は本日正午、無事ロイヤル・オーク号に乗艦せるをもって、御安心あれ。

怪貨物船あらわる！北緯二十度、東経百十五度。

新宇宙艇月世界探険の新宇宙艇は、いまやすべての出発準備がととのった。

南方航路そのころ太平洋には、眼に見えない妖しい力がうごいているのが感じられた。

これからわたくしの述べようとする身の上話を、ばかばかしいと思う人は、即座に、後を読むのをやめてもらいたい。

私は今夕暮近い一室のなかにひとり坐ってゐる。

すべての草木が冬枯れはてた後園の片隅に、水仙が五つ六つ花をつけてゐる。