牧野信一の全作品
青空文庫で公開されている牧野信一の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。
51-100件 / 全307件
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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肉桂樹 | 牧野信一 | 30分以内 | |
枳殻の生垣に、烏瓜の赤い実が鮮やかであつた。 | |||
馬車の歌 | 牧野信一 | 30分以内 | |
佗しい村住ひの僕等が、ある日、隣り町の食糧品店に急用が出来て、半日がかりで様々な切端詰つた用事を済せた後に、漸く村を指して引きあげることになつた夕暮時の途すがらであつた。 | |||
病状 | 牧野信一 | 60分以内 | |
凍てついた寒い夜がつゞいてゐた。 | |||
二日間のこと | 牧野信一 | 10分以内 | |
八月×日――蜂雀の真実なる概念を単に言葉の絵具をもつて描かんと努むるも、それは恰も南アメリカの生ける日光を瓶詰となして、大西洋を越え、イギリスの空に輝く雨と降り灑がうとするが如き不可能事に他ならぬ――。 | |||
冬物語 | 牧野信一 | 30分以内 | |
その田舎の、K家といふ閑静な屋敷を訪れて、私は四五年振りでそこの古風な庭を眺めることを沁々と期待してゐたが、折悪しく激しい旋風がこゝを先途と吹きまくつて止め度もなく、遥かの野面から砲煙のやうに襲来する竜巻の津波で目もあけられぬ有様だつた。 | |||
幽霊の出る宮殿 | 牧野信一 | 30分以内 | |
わたしはこの四五年来、少くとも一年のうちに二回以上は、全く天涯の孤独者であるかのやうな、そして深い寧ろ憂ひに閉ぢこめられたやうな姿で独り、登山袋に杖を突いて、遠方の景色にばかり見惚れてゐるかのやうな眼を挙げながら、すたすたとその山峡の村へ赴くのが慣ひである。 | |||
るい | 牧野信一 | 5分以内 | |
竹藪の蔭の井戸端に木蓮とコヾメ桜の老樹が枝を張り、野天風呂の火が、風呂番の娘の横顔を照してゐた。 | |||
老猾抄 | 牧野信一 | 10分以内 | |
「もう私は一切酒は飲まない。 | |||
サロメと体操 | 牧野信一 | 30分以内 | |
学生であつた私は春の休暇で故郷の町に帰つてゐたが、うちでは勉強が出来ないと称して二三駅離れた海辺の村へ逃れてたつた独りで暮してゐた。 | |||
パンアテナイア祭の夢 | 牧野信一 | 30分以内 | |
堤の白明野菜を積んだ馬車を駆つて、朝毎に遠い町の市場へ通ふのが若者の仕事だつた。 | |||
フアウスト | 牧野信一 | 5分以内 | |
博士フアウストは、哲学、医学、法律、神学その他あらゆる学問といふ学問を研究し尽してしまつて、もうその他には何もないのか?とおもふと、急にがつかりして、死んでしまはうと決心しました。 | |||
ベツコウ蜂 | 牧野信一 | 30分以内 | |
ひとりのスパルタの旅人が述べてゐた。 | |||
茜蜻蛉 | 牧野信一 | 60分以内 | |
白いらつぱ草の花が、涌水の傍らに、薄闇に浮んで居り、水の音が静かであつた。 | |||
淡雪 | 牧野信一 | 60分以内 | |
病弱者、遊蕩児、その他でも行末に戦人としての望みが持てさうもない子息達は凡て離籍して近隣の漁家や農家へ養子とするのが、昔その城下町の風習だつた。 | |||
歌へる日まで | 牧野信一 | 60分以内 | |
蝉――テテツクス――ミユーズの下僕――アポロの使者――白昼の夢想家――地上に於ける諸々の人間の行状をオリムパスのアポロに報告するためにこの世につかはされた観光客――客の名前をテテツクスといふ――蝉。 | |||
鬼の門 | 牧野信一 | 60分以内 | |
『ヒストリイ・オヴ・デビルズ』『デビルズ・デイクシヨナリイ』『クラシカル・マヂシアンズ・ボキアブラリイ・ブツク』私は、その頃右の如き表題の辞書を繙きながら、「クリステンダム物語」「ドクトル・フアウスタスの巡遊記」「ジークフリード遠征録」「セント・ジヨージ快挙録」その他の、これに類する種々の物語を耽読した。 | |||
女に臆病な男 | 牧野信一 | 60分以内 | |
務めの帰途、村瀬は銀座へ廻つて、この間うちから目星をつけておいた濃緑地に虹色の模様で唐草風を織り出したネクタイを一本購つた。 | |||
鵞鳥の家 | 牧野信一 | 30分以内 | |
(満里子の手帳から――)冬のお休みになつたら今年もまた兄さん達といつしよに赤倉のスキーへ行くことを、あんなに楽しみにしてゐたのに、いざとなつたら母さんが何うしてもあたしだけを許して下さらないのだ。 | |||
奇友往来 | 牧野信一 | 30分以内 | |
いつも私はひとりで、教室の一番うしろの席について、うつらうつらと窓の外を眺めてゐる文科の学生であつたが、毎時間毎時間そんな風にして居眠りをしたり、屋根を見あげたりしてゐるうちに、恰度私の窓と真向ひにあたる政治部の教室で、やはり私と同じやうにぼんやりとして此方の窓を眺めたり、空を見あげたりしてゐる眼の据つた何処となく鷲を想像させるかのやうな精悍な容貌の学生と顔なじみになつてしまつた。 | |||
木枯の吹くころ | 牧野信一 | 30分以内 | |
そとは光りに洗はれた月夜である。 | |||
酒盗人 | 牧野信一 | 60分以内 | |
私は、マールの花模様を唐草風に浮彫りにした銀の横笛を吹きずさみながら、………………おゝこれはこれノルマンデイの草原から長蛇船の櫂をそろへて勇ましく波を越えまた波と闘ひ月を呪ふ国に到着したガスコンの後裔………………と歌つた。 | |||
心象風景(続篇) | 牧野信一 | 1時間〜 | |
岡といふ彫刻家のモデルを務めて私がそのアトリヱへ通ひ、日が延びる程の遅々たるおもむきで、その等身胸像の原型が造られてゆくありさまを緯となし、その間に巻き起る多様なる人事を経として、そしてその胸像が完成される日までを同時に本篇の完結と目指して、これには凡そ四五十枚の前篇がありますが、それはそれとして、新たに稿をすゝめます。 | |||
女優 | 牧野信一 | 30分以内 | |
文科大学生の戸田の神経衰弱症が日増に亢進してゐる模様だつたので、私は彼を百合子に紹介した。 | |||
泉岳寺附近 | 牧野信一 | 30分以内 | |
泉岳寺前の居酒屋の隅で私が、こつぷ酒を睨めながら瞑想に耽つてゐると、奥で亭主と守吉の激しい口論であつた。 | |||
早春のひところ | 牧野信一 | 60分以内 | |
そのころ私は、文科の学生でありましたが、小説といふものにいさゝかの興味もなく――といふよりも小説の類ひを読んだことがなかつたので――主に西洋の哲学や科学の書に親しみ、興味と云へば星の観測ぐらゐのものでした。 | |||
天狗洞食客記 | 牧野信一 | 60分以内 | |
今更申すまでもないことだが、まつたく人には夫々様々な癖があるではないか、貧棒ゆすりだとか爪を噛むとか、手の平をこするとか、決して相手の顔を見ないで内ふところに向つてはなしをするとか、無闇に莨を喫すとか――とそれこそ枚挙に遑はない。 | |||
南風譜 | 牧野信一 | 1時間〜 | |
卓子に頬杖をして滝本が、置額に容れたローラの写真を眺めながら、ぼんやりと物思ひに耽つてゐた時、「守夫さん、いらつしやるの?」と、稍激した調子の声が、窓の外から聞えてきた。 | |||
日本橋 | 牧野信一 | 30分以内 | |
(第一日)快晴――私は八時に起床して、いでたちをとゝのへ、首途の乾杯を挙げ、靴を光らせ、そして妻の腕を執り、口笛の、お江戸日本橋――の吹奏に歩調を合せながら、この武者修業のテープを切つた。 | |||
沼辺より | 牧野信一 | 60分以内 | |
こんな沼には名前などは無いのかと思つてゐたところが、このごろになつてこれが鬼涙沼といふのだといふことを知つた。 | |||
剥製 | 牧野信一 | 60分以内 | |
“I chatter, chatter, as I flowTo join the brimming river,For men may come and men may go,But I go on for ever”………………うたでもうたつてゐないと絶え入りさうなので、私はあたりの物音を怕れながら、聴心器のゴム管で耳をおさへ、自分で自分の鼓動に注意するのであつたが、やがては川の流れの無何有に病らひ... | |||
風媒結婚 | 牧野信一 | 30分以内 | |
或る理学士のノートから――この望遠鏡製作所に勤めて、もう半年あまり経ち、飽性である僕の性質を知つてゐる友人連は、あいつにしては珍らしい、あの朝寝坊がきちん/\と朝は七時に起き、夕方までの勤めを怠りなくはたして益々愉快さうである、加けに勤めを口実にして俺達飲仲間からはすつかり遠ざかつて、まるで孤独の生活を繰返してゐるが、好くもあんなに辛抱が出来たものだ――などゝ不思議がり、若しかすると、あいつ秘かに恋人でも出来て結婚の準備でもしてゐるのかも知れない――そんな噂も... | |||
風流旅行 | 牧野信一 | 30分以内 | |
一ヶ月あまりは、またそれで旅に暮しても十分とおもつてゐたのに、私は迂闊にも自分が再び相当の飲酒者に立ち戻つてゐたのを忘れてゐた為に、二三ヶ所をわたり歩いて未だ二週間も経たぬ間に、もう国元へ電報を打たなければならぬ状態だつた。 | |||
船の中の鼠 | 牧野信一 | 60分以内 | |
都を遠く離れた或る片田舎の森蔭で、その頃私は三人の友達と共にジヤガイモや唐もろこしを盗んで、憐れな命をつないで居りました。 | |||
変装綺譚 | 牧野信一 | 60分以内 | |
図書館を出て来たところであつた、たゞひとりの私は――。 | |||
街角 | 牧野信一 | 30分以内 | |
郊外に間借りをしてゐた森野が或る夕方ステツキをグル/\回しながら散歩してゐると、停車場のちかくで、ひとりの美しい婦人に呼びかけられた。 | |||
真夏の朝のひとゝき | 牧野信一 | 30分以内 | |
芝区で、二本榎の谷間に部屋を借りてゐた。 | |||
まぼろし | 牧野信一 | 60分以内 | |
和やかな初夏の海辺には微風の気合ひも感ぜられなかつた。 | |||
武者窓日記 | 牧野信一 | 60分以内 | |
たとへこの身は千里の山河を隔てようとも魂は離れはせぬぞよ。 | |||
山男と男装の美女 | 牧野信一 | 60分以内 | |
糧食庫に狐や鼬が現れるので、事務所の壁には空弾を込めた大型の短銃が三つばかり何時でも用意してあつたが、事務員の僕と、タイピストのミツキイは、狐や鼬に備へるためではなく、夫々一挺宛の短銃を腰帯の間に備へるのを忘れたことはなかつた。 | |||
夜見の巻 | 牧野信一 | 30分以内 | |
私は夏の中頃から、鬼涙村の宇土酒造所に客となつて膜翅類の採集に耽つてゐた。 | |||
夜の奇蹟 | 牧野信一 | 30分以内 | |
海辺の連中は雨が降ると皆な池部の家に集まるのが慣ひだつた。 | |||
裸虫抄 | 牧野信一 | 60分以内 | |
横須賀にゐる妹(彼の妻の)のところで、当分彼の息子をあづかりたいと云つて寄越したのである。 | |||
露路の友 | 牧野信一 | 60分以内 | |
おそく帰る時には兵野は玄関からでなしに、庭をまはつて椽側から入る習慣だつたが、その晩は余程烈しく泥酔してゐたと見へて、雨戸を閉めるのを忘れたと見へる。 | |||
R漁場と都の酒場で | 牧野信一 | 60分以内 | |
停車場へ小包を出しに行き、私は帰りを、裏山へ向ふ野良路をたどり、待ち構へてゐた者のやうにふところから「シノン物語」といふ作者不明の絵本をとり出すと、それらの壮烈な戦争絵を見て吾を忘れ、誰はゞかることも要らぬ大きな声を張りあげて朗読しながら歩いてゐた。 | |||
サクラの花びら | 牧野信一 | 1時間〜 | |
テオドル・ルーズベルトが、一九〇二年に大統領の覇権を獲得して、九年までの二期、その前後に於けるW・マツキンレイ及びW・H・タフト――彼等三者の数年間にわたる激しい争覇戦は、北米政戦史の花吹雪と謳はれて、今尚機会のあるごとに多くの人々に噂をのこしてゐるものであるが、――丁度その時代に恰もそれらの三代表の鼎立に伴れて、ワシントン、フイラデルヒア、ハーバードの三大学蹴球争覇戦が、中部地方の人気を弥が上にも湧き立てたといふはなしは、無論そんなお祭り騒ぎの出来事は、夢のやうに消え去つ... | |||
ゾイラス | 牧野信一 | 60分以内 | |
海の遠鳴りをきゝながら私は、手風琴を弾いてゐた。 | |||
タンタレスの春 | 牧野信一 | 30分以内 | |
その頃ナンシーは、土曜から日曜にかけて毎週きまつて私を横浜から訪れて、私に従つて日本語を習ふのだと称してゐた。 | |||
ダイアナの馬 | 牧野信一 | 60分以内 | |
二度つゞけて土曜日が雨だつた。 | |||
ダニューヴの花嫁 | 牧野信一 | 60分以内 | |
白雲は尽くる時無からん、白雲は尽くる時無からん……白雲は――。 | |||
ラガド大学参観記 | 牧野信一 | 30分以内 | |
往来で騒いでゐる声が何うも自分を呼んでゐるらしく思はれるので私は、ペンを擱いて、手の平を耳の後ろに翳した。 |
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