北大路魯山人の全作品

この料理は、東京に昔からあるものだが、大きいのでちょっと厄介である。

いろいろな事情で、ふつうの家庭では、鮎を美味く食うように料理はできない。

あゆがうまいという話は、味覚にあこがれを持ちながら、自由に食うことのできない貧乏書生などにとっては、絶えざる憧憬の的である。

あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。

これは美食倶楽部時代の創案になるもので、今では茶寮料理の名物の一つに数えられている。

獅子文六氏との対談で、熱海の福島慶子女史は「アメリカのパン、あんなもの問題じゃない。

鎌倉を生きて出でけん初鰹芭蕉（ばしょう）目には青葉山ほととぎすはつ鰹素堂初がつおが出だしたと聞いては、江戸っ子など、もう矢も楯（たて）もたまらずやりくり算段……、いや借金してまで、その生きのいいところをさっとおろして、なにはさておき、まず一杯という段取りに出ないではいられなかったらしく、未だに葉桜ごろの人の頭にピンと来るものがある。

私は京都に生まれ、京都で二十年育ったために、京、大阪に詳しい。

ある日……なんでもわたしの話はある日である。

美味い湯豆腐を食べようとするには、なんといっても豆腐のいいのを選ぶことが一番大切である。

四月上旬（注・昭和二十九年）には日本を発って、アメリカからヨーロッパを回ってくる予定で、いま準備中である。

近頃は以前のように、やれ播州の米がうまいとか、越後米にかぎるとかいうような話はあまり聞かない。

講演会なんかといいますと、学校の仕事みたいでなんだかけちくさくおもしろくありませんから、講演会なんかといわないで、膝つき合わせて皆様もわたしも語るという会にいたしましょう。

今春、思いがけない大雪が降って、都下全体交通ストップ、自動車などは一夜に皆エンコして一歩も前進できない因果な時、拙作陶の展示会を催すことになった。

京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。

今日では温室栽培の向上によって、くだもの、野菜など季節がなくなってしまった。

料理は食器なしでは存在しないようです。

えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。

毎年のことながら、春から夏、秋と昔からいう年魚の季節となる。

『陶』の紙上で、現代の茶道人として名のある松永耳庵さんは、作陶家に諭さんその心として、汝（なんじ）らはすべからく茶を知れ、そして茶家の指導を受けよ、しからざれば茶器は生まれないぞ……と垂教された。

これにもよい悪いがずいぶんあるからご注意願いたい。

ある晴れた日の午後であった。

展覧会のことはただいまお聞きのとおりでございますから繰り返して申し上げませぬが、私に喋（しゃべ）れといわれましたことは、古陶磁はなぜそんなに尊いかということをいってくれというお話でありましたので、それをうまく申すことは出来ないと思いますが、まあ簡単にそれをいえるだけ申し上げてみたいと思っております。

おいしいごちそうを作るにはどうしたらよいでしょうか？などという声をよく聞く。

星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。

どこの国、いずこの地方に行ってもお国自慢というものがある。

私の語るのは、ことわるまでもなく趣味の茶漬けで、安物の実用茶漬けではない。

山というほどの山ではないが、山中での朝夕起臥三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。

私は日頃の心がけとして、後悔になるようなことは決してせんつもりでいるが、事実は、どうしてどうして大いに後悔することが次から次へ湧いて出て当惑することが少なくない。

ある日、友人の紹介で人が来た。

「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。

季節にちなんで、お雑煮の話をしたいと思う。

かつおぶしはどういうふうに選択し、どういうふうにして削るか。

昔の料理は至極簡単なものであった。

冬、家庭で最も歓迎される料理は、なべ料理であろう。

東京における戦後の寿司屋の繁昌は大したもので、今ではひと頃の十倍もあるだろう。

私どもが旅行をしますと、汽車の弁当を食ったり、旅館の料理を食ったりしなければなりませんが、それらはいかにも不味くてまったく閉口します。

鱧茶漬けの中でも、もっとも美味いもののひとつに、はもの茶漬けがある。

どじょうなべ。

美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。

上京の頃僕が初めて東京に出て来た年少時に、京橋のビアホールになにか祝いごとがあってね。

ふぐを恐ろしがって食わぬ者は、「ふぐは食いたし命は惜しし」の古諺に引っかかって味覚上とんだ損失をしている。

ふぐの美味さというものは実に断然たるものだ――と、私はいい切る。

ある日、ある女人と、こんな話をした。

たい茶漬けは世間に流布され、その看板をかけている料理屋さえ出来てきた。

東京ほどまぐろを食うところはあるまい。

美味い不味いは栄養価を立証する。

元来、美味な料理ができないという理由は、料理する人が鋭敏な味覚の舌をもたないことと、今一つは風情というものの力が、どんなにうまく料理を工夫させるかを知らないからに基因する。

良寛は「好まぬものが三つある」とて、歌詠みの歌と書家の書と料理屋の料理とを挙げている。

近来、食べ物のことがいろいろの方面から注意され、食べ物に関する論議がさかんになってきた。