5分以内で読める青空文庫の短編作品
青空文庫で公開されているすべての著者の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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青空文庫で公開されているすべての著者の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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畑 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
しよんぼり立つた麥畑、われのせつなさやるせなき、みぎむきや穗が光る、ひだりむきや穗が光る、しんじつわが身をどうせうぞ。 | |||
決闘 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
空と地とに緑はうまる、緑をふみてわが行くところ、靴は光る魚ともなり、よろこび樹蔭におよぎ、手に輕き薄刃はさげられたり。 | |||
感傷の塔 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
塔は額にきづかる、螢をもつて窓をあかるくし、塔はするどく青らみ空に立つ、ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、肉やぶれいたみふんすゐすれども、なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、いやさらに伸長し、その愁も青空にとがりたり。 | |||
光る風景 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
青ざめしわれの淫樂われの肉、感傷の指の銀のするどさよ、それ、ひるも偏狂の谷に涙をながし、よるは裸形に螢を點じ、しきりに哀しみいたみて、をみなをさいなみきずつくのわれ、ああ、われの肉われをして、かくもかくも炎天にいぢらしく泳がしむるの日。 | |||
純銀の賽 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
みよわが賽(さい)は空にあり、空は透青、白鳥はこてえぢのまどべに泳ぎ、卓は一列、同志の瞳は愛にもゆ。 | |||
鉱夫の歌 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
めざめよ、み空の金鑛、かなしくうたうたひ、なみだたれ、われのみ土地を掘らんとす、土地は黥青、なやましきしやべるぞ光る。 | |||
厩 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
高原の空に風光り、秋はやふかみて、鑛脈のしづくのごとく、ひねもす銀針の落つるをおぼえ、ゆびにとげいたみ、せちにひそかに、いまわれの瞳の閉づるを欲す。 | |||
感傷品 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ほつねんなれば魚にとへしんじつなれば耶蘇にとへ。 | |||
真如 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
金のみ佛金の足一列流涕なしたまふ光る白日のうなべりにとをのおゆびを血はながれいたみてほそき瀧ながれしたたるものは血のしづくわれの戀魚の血のしづく光る眞如のうなべりに金のみ佛金の足一列流涕なしたまふ。 | |||
和讃類纂 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
一詠ゆきはふるまなつまひるのやまみちに光るこなゆきさんらんたりやわが道心のたなごころうすら侘しきたなごころ二詠ひじりのみあしつめたきみあしおんかたへやるせなくかけまつるさうぞくのしののめのこゆむらさきいろのあさがほ三詠なみぢのうへをとほくよりあゆませたまふわが主いえすよふなべりになみだをながしいちねん祈願したてまつる... | |||
月蝕皆既 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
みなそこに魚の哀傷、われに涙のいちじるく、きみはきみとて、ましろき乳房をぬらさむとする。 | |||
情慾 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
手に釘うて、足に釘うて、十字にはりつけ、邪淫のいましめ、齒がみをなして我こたふ。 | |||
磨かれたる金属の手 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
手はえれき、手はぷらちな、手はらうまちずむのいたみ、手は樹心に光り、魚に光り、墓石に光り、手はあきらかに光る、ゆくところ、すでに肢體をはなれ、炎炎灼熱し狂氣し、指ひらき啓示さるるところの、手は宙宇にありて光る、光る金屬の我れの手くび、するどく磨かれ、われの瞳をめしひ、われの肉をやぶり、われの骨をきずつくにより、恐るべし恐るべし、手は白き疾患のらぢう... | |||
青いゆき | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
青いぞ、ゆきはまつさを、もも、さくらぎに花咲かず、青いこなゆき、光る山路に泣きくらす。 | |||
蒼天 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いつしんなれば、あふむけに屍體ともなる、つめたく合掌し、いんよくいちねん、きりぎりす青らみ、もはら、雀みそらに殺さる。 | |||
霊智 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ふるへる、微光のよるに、いつぱつ、ぴすとるを撃つ、遠方に、金の山脈、かすかな、黒曜石の發光。 | |||
秘仏 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
つゆしものうれひはきえず、わづかなるつちをふむとて、あなうらをやぶらせたまふ。 | |||
永日和讃 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ひとのいのりはみなみをむき、むぎはいつしん、うをはいつしん、われはしんじつ、そらにうかびて、ゆびとゆびと哀しみつれ、たましひはねもごろにほとけをしたふ。 | |||
ぎたる弾くひと | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ぎたる彈く、ぎたる彈く、ひとりしおもへば、たそがれは音なくあゆみ、石造の都會、またその上を走る汽車、電車のたぐひ、それら音なくして過ぎゆくごとし、わが愛のごときも永遠の歩行をやめず、ゆくもかへるも、やさしくなみだにうるみ、ひとびとの瞳は街路にとぢらる。 | |||
巡礼紀行 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
きびしく凍りて、指ちぎれむとすれども、杖は絶頂にするどく光る、七重の氷雪、山路ふかみ、わがともがらは一列に、いためる心山峽たどる。 | |||
蛍狩 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
愛妹のえりくびから一疋、瘋癲病院の窓から一疋、血えんのつかあなから一疋、いえすの素足から一疋、魚の背筋から一疋、殺人者の心臟から一疋、おれの磨いた手から一疋、遠い夜の世界で螢を一疋。 | |||
孝子実伝 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ちちのみの父を負ふもの、ひとのみの肉と骨とを負ふもの、ああ、なんぢの精氣をもて、この師走中旬を超え、ゆくゆく靈魚を獲んとはするか、みよ水底にひそめるものら、その瞳はひらかれ、そのいろこは凍り、しきりに靈徳の孝子を待てるにより、きみはゆくゆく涙をながし、そのあつき氷を蹈み、そのあつき氷を喰み、そのあつき氷をやぶらんとして、いたみ切齒なし、ゆくゆくちちのみの骨を負へるもの、光... | |||
玩具箱 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
朝青い服をきた獵人が、釣竿のやうなてつぽうをかついで、わん、つう、わん、つう、このへんにそつくりかへつた主人のうしろから、木製のしなびきつた犬が、尻尾のさきをひよこつかせ、わん、つう、わん、つう。 | |||
冬を待つひと | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
こほれる利根のみなかみに、ひねもす銀の針を垂れ、しづかに水に針を垂れ、さしぐみきたる冬を待つ。 | |||
疾患光路 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
我れのゆく路、菊を捧げてあゆむ路、いつしん供養、にくしんに血をしたたらすの路、肉さかな、きやべつの路、邪淫の路、電車軌道のみちもせに、犬、畜生をして純銀たらしむる、疾患せんちめんたる夕ぐれの路、ああ、素つぱだかの聖者の路。 | |||
合唱 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
にくしん、にくしん、たれか肉身をおとろへしむ、既にうぐひす落ちてやぶれ、石やぶれ、地はするどき白金なるに、にくしん、にくしん、にくしんは蒼天にいぢらしき涙をながす、ああ、なんぢの肉身。 | |||
岩清水 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いろ青ざめて谷間をはしり、夕ぐれかけてただひとり、岩をよぢのぼれるの手は鋼鐵なり、ときすべて液體空氣の觸覺に、山山は茜(あかね)さし、遠樹に光る、わが偏狂の銀の魚、したたるいたみ、谷間を走りひたばしる、わが哀傷の岩清水、そのうすやみのつめたさに、やぶるるごとく齒をぬらす、やぶるるごとく齒をぬらす。 | |||
山頂 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
かなしければぞ、眺め一時にひらかれ、あがつまの山なみ青く、いただきは額に光る。 | |||
南の海へ行きます | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ながい疾患のいたみも消えさり、淺間の山の雪も消え、みんなお客さまたちは都におかへり、酒はせんすゐにふきあげ、ちらちら緋鯉もおよぎそめしが、私はひとりぽつちとなり、なにか知らねど泣きたくなり、せんちめんたるの夕ぐれとなり、しくしくとものをおもへば、仲よしの友だちうちつれきたり、卵のごときもの、菓子のごときもの、林檎のごときものを捧げてまくらべにもたらせり、ああ、けれども私はさびしく、... | |||
竹 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
竹は直角、人のくびより根が生え、根がうすくひろごり、ほのかにけぶる。 | |||
竹の根の先を掘るひと | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
病氣はげしくなりいよいよ哀しくなり三日月空にくもり病人の患部に竹が生え肩にも生え手にも生え腰からしたにもそれが生えゆびのさきから根がけぶり根には纖毛がもえいで血管の巣は身體いちめんなりああ巣がしめやかにかすみかけしぜんに哀しみふかくなりて憔悴れさせ絹糸のごとく毛が光りますます鋭どくして耐へられずつひにすつぱだかとなつてしまひ竹の根にすがりつき、すがりつきかなしみ心... | |||
夜景 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
高い家根の上で猫が寢てゐる猫の尻尾から月が顏を出し月が青白い眼鏡をかけて見てゐるだが泥棒はそれを知らないから近所の家根へひよつこりとび出しなにかまつくろの衣裝をきこんで煙突の窓から忍びこまうとするところ。 | |||
たびよりかへれる巡礼のうた | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いすらへるよりかへりわれはゆきのうへにたちぬ。 | |||
祈祷 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください、あなたのふしぎをもて牢獄の窓をあけてください、あなたのおほみこころのみまへに、わたくしの懺悔をささげまつる。 | |||
小春 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
やはらかい、土壤の上に、じつと私が坐つて居る、涙ぐましい日だまりに、白い羽蟲のちらちらもえ、遠い春日のちらちらもえ。 | |||
芽 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
いたましき芽は伸びゆけり、春まだあさき土壤より、いとけなき草の芽生はうまれいで、そのこゑごゑはかしましく、はるる日中の、大空ふかくかがやけり。 | |||
三人目の患者 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
三人目の患者は、いかにもつかれきつた風をして、べろりと舌をたらした、お醫者が小鼻をとんがらして、『氣分はどうです』『よろしい』『食物は』『おいしい』『それから……』『それからすべてよろしい』そして患者は椅子からとびあがつた、みろ、歪んだ脊髓のへんから、ひものやうにぶらさがつた、なめくじの神經だの、くさつたくらげの手くびだの……。 | |||
敍情小曲 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
きみがやへばのうす情けほのかににほふたそがれに遠見の松を光らしめ遠見の櫻を光らしめ浪は浪浪きみがかたへと。 | |||
もみぢ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
霜つききたり木ぬれをそむるとおもひしものを庭にあづまやの遠見をそめうすべにさせる魚をそめわかるるきみのくちをそめ。 | |||
春日詠嘆調 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああいかなればこそ、きのふにかはるわが身の上とはなりもはてしぞ、けふしもさくら芽をつのぐみ、利根川のながれぼうぼうたれども、あすは逢はれず、あすのあすとてもいかであはれむ、あなあはれむかしの春の、みちゆきの夢もありやなし、おとろへすぎし白雀の、わがゆびさきにきてしみじみとついばむものを。 | |||
吹雪 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
わが故郷前橋の町は赤城山の麓にあり、その家竝は低くして甚だ暗し。 | |||
諷詩 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
友だちはひどく歪んだ顏をしながら、虱(しらみ)に向つて話をした。 | |||
絶望の足 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
魚のやうに空氣をもとめて、よつぱらつて町をあるいてゐる私の足です、東京市中の掘割から浮びあがるところの足です、さびしき足、さびしき足、よろよろと道に倒れる人足の足、それよりももつと甚だしくよごれた絶望の足、あらゆるものをうしなひ、あらゆる幸福のまぼろしをたづねて、東京市中を徘徊するよひどれの足、よごれはてたる病氣の足、さびしい人格の足、ひとりものの異性に飢ゑたる足、よつぱらつて堀ばたをあ... | |||
酒場にあつまる | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
酒をのんでゐるのはたのしいことだ、すべての善良な心をもつひとびとのために、酒場の卓はみがかれてゐる、酒場の女たちの愛らしく見えることは、どんなに君たちの心を正直にし、君たちの良心をはつきりさせるか、すでにさくらの咲くころとなり、わがよき心の友等は、多く街頭の酒場にあつまる。 | |||
よき祖母上に | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
かの家の庭にさく柘榴の花、あかるい日光の中にふるへる空氣のさびしみ、年老いたる祖母上よ。 | |||
紫色の感情にて | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
ああその燃えあがる熱を感じてゐるこの熱の皮膚をしばしば貴女にささげる憂鬱の情熱をただ可愛ゆきひとつの菫の花を貴女の白く柔らかな肌に押しあてたまへここにはまた物言はぬ憂愁の浪紫をもて染めぬいた夢の草原ああ耐へがたい病熱の戀びとよ戀びとよ今日の日もはや暮れるとき私は貴女の家を音づれその黒い扉の影に接吻しようしほしほと泣く心の奧深く貴女はその惠をたれ慈愛をもて久遠の道を聽かせ給ふか... | |||
我れ何所へ行かん | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
情緒よながい憂鬱のながれを視てゐるとあまりに私の眺望もさびしくなるこの日もすでにくれがた人生の影ながき厭生哲學の書物をひらけばああはやいみじくも芽ぐみきたる感情の昂進よさばかり情愁のみどりをふくめばさびしき思想の倉庫をひらき重たき黒の冥想の頭巾をとりて歩まんいざや歩み行かな。 | |||
眺望する | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
すべては黒く凍つてゐるさびしくかたまる岩の上にみじめに歪んだ松の幹に景色は凍え、飢ゑ、まづしく光つて叫ぶばかり。 | |||
別れ | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
友よ安らかに眠れ。 | |||
春昼 | 萩原朔太郎 | 5分以内 | |
うぐひすは金屬をもてつくられしそは畔の暗きに鳴き菫は病鬱の醫者のやうに野に遠く手に劇藥の鞄をさげて訪づれくる。 |