山本周五郎の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
藪落し山本周五郎30分以内7,212

今でも藪落しへ近寄る者はない。

今でも藪落しへ近寄る者はない。

契りきぬ山本周五郎1時間〜33,211

一の一 「また酔っちまったのかい、しようのないこだねえ、お客さんはどうしたの」 「いま菊ちゃんが出てるわ、こうなっちゃだめよかあさん、このひとにはお侍はいけないって、あたしそ云ってあるじゃないの」 「お侍ばかりじゃないじゃないか、お客ってお客を振るんじゃないか、それあ今のうちはいいさ、稼ぐことは稼いで呉れるんだから、こっちはまあいいけどさ、こんなこっちゃおまえ、いまにお客が黙っちゃいないよ、さん

一の一 「また酔っちまったのかい、しようのないこだねえ、お客さんはどうしたの」 「いま菊ちゃんが出てるわ、こうなっちゃだめよかあさん、このひとにはお侍はいけないって、あたしそ云ってあるじゃないの」 「お侍ばかりじゃないじゃないか、お客ってお客を振るんじゃないか、それあ今のうちはいいさ、稼ぐことは稼いで呉れるんだから、こっちはまあいいけどさ、こんなこっちゃおまえ、いまにお客が黙っちゃいないよ、さん

源蔵ヶ原山本周五郎60分以内13,758

市三がはいってゆくと、その小座敷にはもう三人来ていた。

市三がはいってゆくと、その小座敷にはもう三人来ていた。

日本婦道記山本周五郎60分以内12,500

一  二年あまり病んでいた母がついに世を去ったのは弁之助が七歳の年の夏のことであった。

一  二年あまり病んでいた母がついに世を去ったのは弁之助が七歳の年の夏のことであった。

鵜山本周五郎60分以内19,111

一  布施半三郎はその淵をみつけるのに二十日あまりかかった。

一  布施半三郎はその淵をみつけるのに二十日あまりかかった。

城中の霜山本周五郎60分以内12,990

一  安政六年十月七日の朝、掃部頭井伊直弼は例になく早く登城をして、八時には既に御用部屋へ出ていた。

一  安政六年十月七日の朝、掃部頭井伊直弼は例になく早く登城をして、八時には既に御用部屋へ出ていた。

月の松山山本周五郎60分以内20,798

一  宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。

一  宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。

日本婦道記山本周五郎30分以内11,528

一  さかまき靱負之助は息をはずませていた、顔には血のけがなかった、おそらくは櫛をいれるいとまもなかったのであろう、乱れかかる鬢の白毛は燭台の光をうけて、銀色にきらきらとふるえていた。

一  さかまき靱負之助は息をはずませていた、顔には血のけがなかった、おそらくは櫛をいれるいとまもなかったのであろう、乱れかかる鬢の白毛は燭台の光をうけて、銀色にきらきらとふるえていた。

四日のあやめ山本周五郎60分以内19,495

一  二月下旬の寒い朝であった。

一  二月下旬の寒い朝であった。

四年間山本周五郎60分以内18,398

一 「ここはどうです、痛みますか」  医者はそう云いながら静かにゾンデを動かした、 「やっぱり痛まない、そう……ここはどうです」  信三は医者の顔を見ていた。

一 「ここはどうです、痛みますか」  医者はそう云いながら静かにゾンデを動かした、 「やっぱり痛まない、そう……ここはどうです」  信三は医者の顔を見ていた。

日本婦道記山本周五郎30分以内11,181

一 「今日は、そんなものを着てゆくのか」 「はい」小間使の八重は、熨斗目麻裃を取り出していた。

一 「今日は、そんなものを着てゆくのか」 「はい」小間使の八重は、熨斗目麻裃を取り出していた。

嫁取り二代記山本周五郎60分以内12,061

一 「伯父上お早うござる」  自慢の盆栽の手入れをしていた牧屋勘兵衛はそう声をかけられて振返った。

一 「伯父上お早うござる」  自慢の盆栽の手入れをしていた牧屋勘兵衛はそう声をかけられて振返った。

日本婦道記山本周五郎30分以内9,734

一  はたはたと舞いよって来たちいさな蛾が、しばらく燭台のまわりで飛び迷っていたと思うと、眼にみえぬ手ではたかれでもしたようにふいと硯海に湛えた墨の上へおち、白い粉をちらしながらむざんにくるくると身もだえをした。

一  はたはたと舞いよって来たちいさな蛾が、しばらく燭台のまわりで飛び迷っていたと思うと、眼にみえぬ手ではたかれでもしたようにふいと硯海に湛えた墨の上へおち、白い粉をちらしながらむざんにくるくると身もだえをした。

伝四郎兄妹山本周五郎30分以内11,130

一  若菜はせっせと矢竹をけずっていた。

一  若菜はせっせと矢竹をけずっていた。

日本婦道記山本周五郎60分以内15,298

一  お石が鈴木家へひきとられたのは正保三年の霜月のことであった。

一  お石が鈴木家へひきとられたのは正保三年の霜月のことであった。

蕗問答山本周五郎30分以内7,062

一  寒森新九郎は秋田藩士である。

一  寒森新九郎は秋田藩士である。

榎物語山本周五郎1時間〜33,836

一  さわが十三になった年、国吉が下男に来た。

一  さわが十三になった年、国吉が下男に来た。

日本婦道記山本周五郎60分以内12,977

一 「きょうここを出てゆけば、おまえにはもう安倍の家よりほかに家とよぶものはなくなるのだ、父も母もきょうだいも有ると思ってはならない」  父の図書にはそう云われた。

一 「きょうここを出てゆけば、おまえにはもう安倍の家よりほかに家とよぶものはなくなるのだ、父も母もきょうだいも有ると思ってはならない」  父の図書にはそう云われた。

骸骨島の大冒険山本周五郎60分以内16,229

招待状来る!  春田博士邸では、朝食で賑っていた。

招待状来る!  春田博士邸では、朝食で賑っていた。

日本婦道記山本周五郎30分以内10,898

一 「ちょうど豆腐をかためるようにです」  良人の声でそう云うのが聞えた。

一 「ちょうど豆腐をかためるようにです」  良人の声でそう云うのが聞えた。

日本婦道記山本周五郎60分以内14,027

一 「あたしの主人はこんど酒井さまのお馬脇に出世したそうですよ」  厚い大きな唇がすばらしく早く動いて、調子の狂った楽器のような、ひどく嗄れた声が止めどもなく迸しり出た。

一 「あたしの主人はこんど酒井さまのお馬脇に出世したそうですよ」  厚い大きな唇がすばらしく早く動いて、調子の狂った楽器のような、ひどく嗄れた声が止めどもなく迸しり出た。

春いくたび山本周五郎30分以内9,078

一  霧のふかい早春のある朝、旅支度をした一人の少年が、高原の道をいそぎ足で里の方へと下って来た。

一  霧のふかい早春のある朝、旅支度をした一人の少年が、高原の道をいそぎ足で里の方へと下って来た。

日本婦道記山本周五郎60分以内12,648

ゆうべ酉の刻さがりに長橋のおばあさまが亡くなられた。

ゆうべ酉の刻さがりに長橋のおばあさまが亡くなられた。

溜息の部屋山本周五郎30分以内7,389

今でもその室の壁には『溜息の部屋』と彫りつけた文字が遺っている。

今でもその室の壁には『溜息の部屋』と彫りつけた文字が遺っている。

めおと蝶山本周五郎1時間〜24,359

一 「ただいやだなんて、そんな子供のようなことを云ってどうなさるの、あなた来年はもう二十一になるのでしょう」 「幾つでもようございますわ、いやなものはいやなんですもの」  こう云って文代はすました顔で菓子を摘んだ。

一 「ただいやだなんて、そんな子供のようなことを云ってどうなさるの、あなた来年はもう二十一になるのでしょう」 「幾つでもようございますわ、いやなものはいやなんですもの」  こう云って文代はすました顔で菓子を摘んだ。

流血船西へ行く山本周五郎30分以内9,152

人影なき血塗れ船 「船長、至急無電報が入りました」  太平洋沿海の救護船、太平丸の船長室へ、元気に無電係の伊藤次郎青年が入って来た。

人影なき血塗れ船 「船長、至急無電報が入りました」  太平洋沿海の救護船、太平丸の船長室へ、元気に無電係の伊藤次郎青年が入って来た。

廃灯台の怪鳥山本周五郎30分以内8,732

見よその頸には怪鳥の爪痕が! 「きゃーッ」  遠くの方から、幾つかの反響を呼び起しつつ、微かに長く人の叫び声が聞えて来た。

見よその頸には怪鳥の爪痕が! 「きゃーッ」  遠くの方から、幾つかの反響を呼び起しつつ、微かに長く人の叫び声が聞えて来た。

燕(つばくろ)山本周五郎1時間〜25,237

若い人たち(一)  佐藤正之助が手招きをした、「こっちだ、大丈夫だよ、祖父がいるだけだから」 「でも悪いわ」と阿部雪緒が囁いた、「お庭を通りぬけたりして、もしもみつかったらたいへんよ」 「こっちの松林をゆけば裏木戸があるんだ、木戸の外には栗の木が茂っているから、そこなら誰にもみつからずに話ができるんだよ」 「だめ、いやよ」雪緒はかぶりを振った、「そんなところで二人っきりで話すなんて、わたくしこわ

若い人たち(一)  佐藤正之助が手招きをした、「こっちだ、大丈夫だよ、祖父がいるだけだから」 「でも悪いわ」と阿部雪緒が囁いた、「お庭を通りぬけたりして、もしもみつかったらたいへんよ」 「こっちの松林をゆけば裏木戸があるんだ、木戸の外には栗の木が茂っているから、そこなら誰にもみつからずに話ができるんだよ」 「だめ、いやよ」雪緒はかぶりを振った、「そんなところで二人っきりで話すなんて、わたくしこわ

黒襟飾組の魔手山本周五郎60分以内13,014

黒い封筒の挑戦状  八月の午後の陽は府立第X×中学の野球グラウンドの上に照りつけていた。

黒い封筒の挑戦状  八月の午後の陽は府立第X×中学の野球グラウンドの上に照りつけていた。

水中の怪人山本周五郎30分以内9,137

人間か河童か? 海底を歩く怪物  いまどき河童がいるなどと云っても、おそらく本当と思う者はないだろう。

人間か河童か? 海底を歩く怪物  いまどき河童がいるなどと云っても、おそらく本当と思う者はないだろう。

改訂御定法山本周五郎1時間〜29,921

一 「だんだんお強くなるばかりね」 「そう思うだけさ」 「初めのころはいつも二本でしたわ」 「嫌われたくなかったんだろう」 「うまいこと仰しゃって」河本佳奈は上眼づかいに彼をにらんだ、「それならいまは嫌われてもいいんですか」 「それほどの自信もないね」と云って中所直衛は佳奈の膳を指さした、「肴がさめてしまうよ」 「お給仕をしたり喰べたり、そんなきような芸はできません、お酒が済んだらごいっしょにい

一 「だんだんお強くなるばかりね」 「そう思うだけさ」 「初めのころはいつも二本でしたわ」 「嫌われたくなかったんだろう」 「うまいこと仰しゃって」河本佳奈は上眼づかいに彼をにらんだ、「それならいまは嫌われてもいいんですか」 「それほどの自信もないね」と云って中所直衛は佳奈の膳を指さした、「肴がさめてしまうよ」 「お給仕をしたり喰べたり、そんなきような芸はできません、お酒が済んだらごいっしょにい

初午試合討ち山本周五郎30分以内9,277

一 「大変だあ大変だあ、頭いるか」  表からやみくもに跳込んできた安吉、お天気安という綽名のある若い者だ、――ちょうどいま上りっ端で、愛用の鳶口を磨いていたは組の火消し頭佐兵衛、 「ええ騒々しいや、頭アいるかって眼の前にいるおいらが見えねえのか」 「ほ、まったくそうだ」 「呆けてやがる、なにが大変だ」 「なにがって落着いてちゃあいけねえ、は組の若い者が全滅だ」 「この野郎、云うにこと欠いては組の

一 「大変だあ大変だあ、頭いるか」  表からやみくもに跳込んできた安吉、お天気安という綽名のある若い者だ、――ちょうどいま上りっ端で、愛用の鳶口を磨いていたは組の火消し頭佐兵衛、 「ええ騒々しいや、頭アいるかって眼の前にいるおいらが見えねえのか」 「ほ、まったくそうだ」 「呆けてやがる、なにが大変だ」 「なにがって落着いてちゃあいけねえ、は組の若い者が全滅だ」 「この野郎、云うにこと欠いては組の

日本婦道記山本周五郎30分以内11,239

一 「いやそうではない」新沼靱負はしずかに首を振った、「……おかやに過失があったとか、役に立たぬなどというわけでは決してない、事情さえ許せばいて貰いたいのだ。隠さずに云えばいま出てゆかれてはこちらで困るくらいなのだから」 「それでお暇が出るというのはどういうわけでございましょうか」律義に坐った膝をいっそう固くしながら多助はこう云った、「……あちらで今よく話してみたのですが妹はただ泣くばかりで、悪

一 「いやそうではない」新沼靱負はしずかに首を振った、「……おかやに過失があったとか、役に立たぬなどというわけでは決してない、事情さえ許せばいて貰いたいのだ。隠さずに云えばいま出てゆかれてはこちらで困るくらいなのだから」 「それでお暇が出るというのはどういうわけでございましょうか」律義に坐った膝をいっそう固くしながら多助はこう云った、「……あちらで今よく話してみたのですが妹はただ泣くばかりで、悪

謎の頸飾事件山本周五郎30分以内7,029

新年宴会  正月七日の宵。

新年宴会  正月七日の宵。

ばちあたり山本周五郎60分以内22,712

一  私をみつけるとすぐに、弟の啓三は例のとおり大きく手を振った。

一  私をみつけるとすぐに、弟の啓三は例のとおり大きく手を振った。

日本婦道記山本周五郎60分以内13,822

一  妹たちが来たとき弥生はちょうど独りだった。

一  妹たちが来たとき弥生はちょうど独りだった。

日本婦道記山本周五郎30分以内11,632

一  矢はまっすぐに飛んだ、晩秋のよく晴れた日の午後で、空気は結晶体のようにきびしく澄みとおっている、矢はそのなかを、まるで光の糸を張ったように飛び、※のあたりで小さな点になったとみると、こころよい音をたてて的につき立った。

一  矢はまっすぐに飛んだ、晩秋のよく晴れた日の午後で、空気は結晶体のようにきびしく澄みとおっている、矢はそのなかを、まるで光の糸を張ったように飛び、※のあたりで小さな点になったとみると、こころよい音をたてて的につき立った。

梟谷物語山本周五郎60分以内12,488

慶応四年二月(この年九月に明治となる)、勅命を捧じて奥羽征伐の軍を仙台に進めた九条道孝卿は、四月のはじめまず庄内藩酒井忠寛を討つため、副総督沢為量に命じて軍勢を進発させた。

慶応四年二月(この年九月に明治となる)、勅命を捧じて奥羽征伐の軍を仙台に進めた九条道孝卿は、四月のはじめまず庄内藩酒井忠寛を討つため、副総督沢為量に命じて軍勢を進発させた。

蒲生鶴千代山本周五郎30分以内6,111

一  美濃の国岐阜の城下に瑞龍寺という寺がある。

一  美濃の国岐阜の城下に瑞龍寺という寺がある。

武道宵節句山本周五郎30分以内8,673

一  ――飢えて窮死するとも、金一両はかならず肌に着けおくべし。

一  ――飢えて窮死するとも、金一両はかならず肌に着けおくべし。

半化け又平山本周五郎30分以内10,683

一  がちゃん! 「おや、またやっちゃった」  下女のお松が恨めしそうに、洗い桶の中から縁の欠けた茶碗を取出した。

一  がちゃん! 「おや、またやっちゃった」  下女のお松が恨めしそうに、洗い桶の中から縁の欠けた茶碗を取出した。

御馬印拝借山本周五郎60分以内21,060

一  土田源七郎が来たという取次をきいて、三村勘兵衛はうんと頷きながら口をへの字なりにひき結んだ。

一  土田源七郎が来たという取次をきいて、三村勘兵衛はうんと頷きながら口をへの字なりにひき結んだ。

笠折半九郎山本周五郎60分以内13,279

失火 一  喧嘩は理窟ではない、多くはその時のはずみである、理窟のあるものならどうにか納りもつくが、無条理にはじまるものは手がつけられない、笠折半九郎と畔田小次郎との喧嘩がその例であった。

失火 一  喧嘩は理窟ではない、多くはその時のはずみである、理窟のあるものならどうにか納りもつくが、無条理にはじまるものは手がつけられない、笠折半九郎と畔田小次郎との喧嘩がその例であった。

おもかげ山本周五郎30分以内10,349

一  はやり病をやんで、母の亡くなったのは、正之助が七歳のとしの夏の末だった。

一  はやり病をやんで、母の亡くなったのは、正之助が七歳のとしの夏の末だった。

落武者日記山本周五郎30分以内11,781

一の一 「もういけない、祐八郎、下ろしてくれ」 「なにを云う」  大畑祐八郎は、叱りつけるように叫んだ。

一の一 「もういけない、祐八郎、下ろしてくれ」 「なにを云う」  大畑祐八郎は、叱りつけるように叫んだ。

菊月夜山本周五郎60分以内16,229

一 「珍しい到来物があったのでね。茶を淹れてきましたよ」  若いはしたに茶道具を持たせて、そういいながらはいって来た母親のようすを見たとき、信三郎はすぐになにかはなしが出るなと思った。

一 「珍しい到来物があったのでね。茶を淹れてきましたよ」  若いはしたに茶道具を持たせて、そういいながらはいって来た母親のようすを見たとき、信三郎はすぐになにかはなしが出るなと思った。

主計は忙しい山本周五郎60分以内18,603

一  持って生れた性分というやつは面白い。

一  持って生れた性分というやつは面白い。

おかよ山本周五郎30分以内9,201

一  ――ああこんどこそ。

一  ――ああこんどこそ。

紅梅月毛山本周五郎60分以内15,981

一  慶長十年二月はじめの或る日、伊勢のくに桑名城のあるじ本多中務大輔忠勝の家中で、馬術に堪能といわれる者ばかり十六人が城へ呼ばれた。

一  慶長十年二月はじめの或る日、伊勢のくに桑名城のあるじ本多中務大輔忠勝の家中で、馬術に堪能といわれる者ばかり十六人が城へ呼ばれた。

避けぬ三左山本周五郎30分以内10,985

一 「おい、むこうから来るのは三左だろう」「そうだ三左だ」「天気を訊いてみるから見ていろ」天正十七年十二月のある日、駿河国府中の城下街で、小具足をつけた三人の若者がひそひそささやいていた。

一 「おい、むこうから来るのは三左だろう」「そうだ三左だ」「天気を訊いてみるから見ていろ」天正十七年十二月のある日、駿河国府中の城下街で、小具足をつけた三人の若者がひそひそささやいていた。