5分以内で読める青空文庫の短編作品

隅田川の水はいよいよ濁りいよいよ悪臭をさえ放つようになってしまったので、その後わたくしは一度も河船には乗らないようになったが、思い返すとこの河水も明治大正の頃には奇麗であった。

このスケッチは元華北交通會社にゐられた加藤新吉さんの北京のお宅で描いたもので……加藤さんの隨筆「可園雜記」の口繪とかにするために描いたものです。

徳富猪一郎君は肥後熊本の人なり。

これまで書店と図書館は、あたかも商売仇のような感じをお互いにもっていたときもあった。

三年前、第一回の支部図書館準備会の会合に出席した人々の何人が、この三年目の今日、かかるかたちで三周年を迎えることができると想像しえたであろう。

ロマン・ロランは第一次大戦にあたって彼の「戦いを超えて」の中で次のようにいっている。

今度の大会を顧みて、私たちは図書館なるものの概念が、一九五〇年にふさわしく、新たなる意味を、日本においてもおのずから新たにつくられつつあることを、確然と見ずにいられない。

何の針をとって見てもヴィクターのソフトはヴィクターのソフトだ。

三年前のことであった。

夜の家庭の雑談の中で、十歳の女の子が、「神様はほんとにあるの、地球の外は宇宙でしょう。

一九二二年頃の事である。

窓の外で春の形見の鶯が頻りに啼いている。

二十年来の画債整理と、皇后陛下よりの御用命に依り、双幅藤原時代美人数名の揮亳完成を期するために、今度は是非に謹製致したいと思いながら、遂に三年許りの歳月が過ぎて了いました。

その頃の絵は今日のように濃彩のものがなくて、いずれもうすいものでした。

帝展の方も大分出品しなかったので今年は思い立って……それも近頃取りかかったばかりで明日辺りから墨を当てようかというところなのです。

昨年の夏だったか、京都の関係者が寄り合って友禅祭を催し、その所蔵品を持ち寄って一堂に陳列した事があった。

時代の移り変わりは妙なものである。

うちの松篁は、私の顔を三味線だと言う。

懐しまれるのは去年の六月信州北穂の天狗の湯へ旅をしたときの思い出である。

顔の時代変遷美人絵の顔も時代に依って変遷しますようで、昔の美人は何だか顔の道具が総体伸びやかで少し間の抜けたところもあるようです。

只今では帯といっておりますが、慶長時代では巻物と申しておったようでございます。

毅然たる中に、つつましやかさ、優しさ、女らしさを備えていることは、日本女性の持つ美徳でありこれあってはじめて、いざという場合真の強さが発揮される。

はやいもので、芥川比呂志との交友もそろそろ十五年になる。

詩と劇とは元來、本質的に切り離せぬ關係にあるが、「思想」が劇に不可缺のものであるとは特に言ひきれない。

戰後になつてから餘り見なくなつてしまつたが、學生時代には僕も隨分足繁く能樂堂に通つたものだ。

虎関の作と云い、玄慧の作とも言われる異制庭訓往来に、賊に大小あり、小罪既に大罪よりも軽し。

先づ最初に、「孔雀船」の詩人伊良子清白氏の自傳を再録して置かうと思ふ。

敗戦後一年ぐらいたってから書いたもので、この巻の三作品の中では最も古い。

ある人びとは、「オドラデク」という言葉はスラヴ語から出ている、といって、それを根拠にしてこの言葉の成立を証明しようとしている。

皇帝が――そう呼ばれているのだ――君という単独者、みすぼらしい臣下、皇帝という太陽から貧弱な姿で遠い遠いところへ逃がれていく影、そういう君に皇帝が臨終のベッドから伝言を送った。

今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。

去年の八月の末、谷川君に引っ張り出されて北軽井沢を訪れた。

東京の郊外で夏を送っていると、時々松風の音をなつかしく思い起こすことがある。

挨拶予告して申し上げるほどの言葉はまだないのです。

この料理は、東京に昔からあるものだが、大きいのでちょっと厄介である。

あゆがうまいという話は、味覚にあこがれを持ちながら、自由に食うことのできない貧乏書生などにとっては、絶えざる憧憬の的である。

あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。

これは美食倶楽部時代の創案になるもので、今では茶寮料理の名物の一つに数えられている。

獅子文六氏との対談で、熱海の福島慶子女史は「アメリカのパン、あんなもの問題じゃない。

鎌倉を生きて出でけん初鰹芭蕉（ばしょう）目には青葉山ほととぎすはつ鰹素堂初がつおが出だしたと聞いては、江戸っ子など、もう矢も楯（たて）もたまらずやりくり算段……、いや借金してまで、その生きのいいところをさっとおろして、なにはさておき、まず一杯という段取りに出ないではいられなかったらしく、未だに葉桜ごろの人の頭にピンと来るものがある。

四月上旬（注・昭和二十九年）には日本を発って、アメリカからヨーロッパを回ってくる予定で、いま準備中である。

近頃は以前のように、やれ播州の米がうまいとか、越後米にかぎるとかいうような話はあまり聞かない。

今春、思いがけない大雪が降って、都下全体交通ストップ、自動車などは一夜に皆エンコして一歩も前進できない因果な時、拙作陶の展示会を催すことになった。

京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。

今日では温室栽培の向上によって、くだもの、野菜など季節がなくなってしまった。

えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。

毎年のことながら、春から夏、秋と昔からいう年魚の季節となる。

これにもよい悪いがずいぶんあるからご注意願いたい。

おいしいごちそうを作るにはどうしたらよいでしょうか？などという声をよく聞く。

星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。