5分以内で読める青空文庫の短編作品
青空文庫で公開されているすべての著者の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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青空文庫で公開されているすべての著者の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
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| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
|---|---|---|---|
| 詩壇への願ひ | 中原中也 | 5分以内 | |
詩壇は今や、一と通りの準備をすませた。 | |||
| 草野心平詩集『母岩』 | 中原中也 | 5分以内 | |
草野心平君の第三詩集『母岩』が出た。 | |||
| 感想 | 中原中也 | 5分以内 | |
地方の詩のグループも多いことだが、どういふものか、ずつと以前から大連と神戸にだけ面白いものが見られるのだつた。 | |||
| 宮沢賢治全集刊行に際して | 中原中也 | 5分以内 | |
宮沢賢治全集の、第一回配本が出ました。 | |||
| 近時詩壇寸感 | 中原中也 | 5分以内 | |
詩論か何かさういつた風のものを書けと云はれるたびに、書くことはいくらでもあるやうな気持と、書くことは何にもないやうな気持に襲はれます。 | |||
| 菊岡久利著「貧時交」 | 中原中也 | 5分以内 | |
私自身とは、詩に於けるたてまへも大分相違してゐるにも拘らず、私は此の詩集を、気持よく読んだことを告白しなければならない。 | |||
| 「白秋詩集」第二巻解題 | 北原白秋 | 5分以内 | |
一、本巻には処女詩集「邪宗門」、抒情小曲集「思ひ出」、及び少年期の長篇数種を収めた「朱泥の馬」、それに補遺の数篇とを輯める事にした。 | |||
| 残冬 | 今野大力 | 5分以内 | |
空はにごれる白亜の色 北国の――悩ましき擾乱 大地ははっちを閉じている ……… 地平の彼方――友等処女等 同じくなやめ同胞達 ……… 北極の襲い来れる、白鵞の万毛 風をよび、吹きなす、ひょうひょうの声 木をゆるぎ、屋根をはぐ ……… 狂暴の形態 天魔の降臨 | |||
| 信疑の魔女 | 今野大力 | 5分以内 | |
自分の室で 自分の演じていた舞台で 自分を取巻き 或は隙見し 或は踊っていた一人の魔女 「此世の一切は信疑の魔女の領分です 勿論人間は私の兵卒よ あなた 何を惑っているの? それより わたし自身のこの力を 讃美でもして下さいな で賢こい人間あなた」 | |||
| 新世紀への伴奏 | 今野大力 | 5分以内 | |
(1) 行け! 私達自然の教徒よ 高く高く燃え燃ゆる自然の精霊の上へ 人間の生命の魂を 燃えべくして燃えざりし炬火を 天日の情熱に投げこんで 紅蓮の焔を眺めつつ 歌え、歌え、輝かせよ (大地よ、ゆるぐべきものよ古哲の教授よ 何と皮相なよろこびなる 草ものびる、私も育つ ああ、生長への伴奏よ 葬送への奏楽ぞ) (2) 行け! 私達一切への戦士よ 異国のはるかにへだてし虹霓の先 | |||
| 人面凝視 | 今野大力 | 5分以内 | |
ふとして眺むれば 彼処に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である われは今その面を見つつ想う 唇…… おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である 鼻…… おおそはまろみあるエジプトのピラミットである 眼…… おおそはうるおい耀く黒曜石の玉を秘めし二つの湖水である 眉…… おおそは湖水をめぐりて小丘の上に繁れる林である おおなめらかに広き無毛の原を過ぎ行けば 彼方は千古の密林である。 | |||
| 星座 | 今野大力 | 5分以内 | |
今宵夜はふけたり 闇夜の 天空高く 一陣の星座を見る こは天に懸かる我十字架なり この夜 魂は 単調なる鼓動に倦み 七重の塁壁を超えて至り そが前に静座し 礼讃し 祈祷す | |||
| 聖堂の近くを過ぐる | 今野大力 | 5分以内 | |
ポプラの梢の空高く大空を指さして 厳かな聖き自然の力を表わす 幹はだの荒くれた並木の下に ヘブライ文化の主流である キリスト教の教会堂が建っている 私は毎日その近くを過ぎる そして神秘な古典の物語りを思い出し、ありし昔の日の幾多重ねた争闘の人間に与えし歴史を憶う…… 人間と言う極まりない霊魂の所有者はかくして永遠に 血を浴びて闘わねばならないか 宇宙の覆滅 人類の滅亡 ああその日まで どんな歴史を | |||
| 静夜昇天 | 今野大力 | 5分以内 | |
柱時計のけだるきリズムに 眠たげなる洋燈の光りに 深々と沈みゆく我らが生 九時を聞き十時を聞き すべては眠りを欲りするの時 みな底の吐息は泡となり ほそぼそき昇天の心は 我生の魂と共にかいのぼりゆく | |||
| 高峯の頌 | 今野大力 | 5分以内 | |
荒蕪の平原に野を耕し 草を食み、木の実を喰える 人類生存の現象は 高峯の麓にありて あまりにはかなき生命…… 盛夏白熱頂点に達せんとするも 未だに消ゆるなき 雪原の輝きは 天地創造の第一年より 永遠なり 人類生命、億劫に至るも 一切は幻滅に帰り 無し――一切無し 成体もこれ大地の化身なれば 霊魂も又瞬間にして 遺る何物もあらざるべし されど 高峯は歴史を超え 時代を超えて永遠…… | |||
| 楽しい会合 | 今野大力 | 5分以内 | |
叔母に伯父 山の人々 尋ね来て 語り合う久方の話 さても又十年前の物語 内地のこと その山その川その家すべて 今ならば夢か知らね 柿の木も桑の木も 背戸の林も表の山も 美しい思い出の国 母もまた我を背負いて 渡り来し松前のなぞえの山を おぼろげに おもい出でしか 語り明す夜はうれしも | |||
| 土 | 今野大力 | 5分以内 | |
ギリシャ古典の趾せる物語りをも 空理としてさげすむ勿れ 吾等生命は土深く埋もれし精霊なりき 神によりてつくられし形態をこそ讃美せる 女人像の豊満なる肉体美をこそ讃美せよ 曲線美なだらかに走れるあたりを讃美せよ 而して土への感謝祭を 土 そは 生命偶像の聖母なりし | |||
| 闘士の恋の歌 | 今野大力 | 5分以内 | |
この腕で木刀をうけとめ この肋骨で拷問にこたえ この眼で奴らをねめかえし この歯で奴等に喰いつき この脚で敵の包囲を蹴破った この私のからだは お前のもの、そして一緒に階級のもの プロレタリアートの陣営のもの | |||
| 波濤よ | 今野大力 | 5分以内 | |
おお はるけき方より寄せ来る波濤よ 汝が最大の実力と自信を持って 岩礁を打て、万丈のしぶきを上げよ その時、海神は大空に懸る天日をおおいて。 | |||
| 光よあれ | 今野大力 | 5分以内 | |
常夜の世界に生命ありて うごめける時 光りは東方より、忍びやかに来りて 輝き初め 万物その己の存在を認め 歓喜の頂点に至れるは いかに至上の盛事なりしか 我等は光りの海に泳げる魚達なり 光りなくして 死を思う生命なり 光りよあれ、而して 永久に我等を愛でよ…… | |||
| 春の土へ | 今野大力 | 5分以内 | |
早く春になったら、どんなに楽しい事だろう、日向の小高い丘に軟く暖く香高い土があらわれて、蕗の薹が上衣を脱ぎ、水晶の様に澄んだ水が、小川を流れ、小魚がピチピチ泳いでいる。 | |||
| 豚 | 今野大力 | 5分以内 | |
もったいない事である 肺患者の残した 実に多量の食物は惜し気もなく捨てられる 鮭の照焼や筍やうどふきのうま煮なんか 多くの人々にとって 大した御馳走なんだのに 一椀の飯さえ思うように喰えぬ人々が見たら おおめまいしてしまいそうな 食物の山山 近所の豚がこの滅多に人間さえ食べないものを うんと腹一杯たべてコロコロに肥っている 豚が肥えて肉屋に並べられても それが何とか西洋料理支那料理になっても 豚 | |||
| 瘋癲病舎 | 今野大力 | 5分以内 | |
俺はお前の此の喜びはつまらぬと言う訳を知っている お前は現実には適しない お前はあの暗い瘋癲病舎で 白日の中もおもむろに 夢を食って楽しんで生きていればいい男だ | |||
| 聖の行くべき道 | 今野大力 | 5分以内 | |
そこはねずみも歩かない 歩くべきではない ひじりの行くべき道である 空は明るく明るく まひるの如くに明るい 一しきり降っていった雪は 野に山に路に庭に 夢見る様に積もっている 雪は白い何よりも白い きよめられたる様に白い 天と地の合体の風景である 包む夜は厳に静かな しらべをひっている * ひじりの為めに撒いた敷物は けがれる事を恐れている如くである | |||
| 北海の夜 | 今野大力 | 5分以内 | |
1 旗がしきりにゆれている ハタハタと、又ハタハタと 時には風が吹いて来て ゴトンと音を立ててゆく 外はほんとに暗いのだ 自分よ、或る夜の事を思い出せ そしてぞうっと身ぶるえせ 今夜の雪は青白い すごい黒さが沁みている 2 海の妖婆が踊るよな 暗い恐ろしい夜となる 日本海と太平洋の沖の方に 何か変りはないだろうか。 | |||
| 街の子等 | 今野大力 | 5分以内 | |
街の子は今日も遊んでいた そしてふと子供の一人が大声で言った 「やあい キョウサントウ!」 いい声だそしていい言葉だ 空間は完全にこの声に貫かれた 「やあい キョウサントウ!」 鬼ごっこで仲間の一人が捕ったので思い出したこの言葉 だが、これはただの言葉でない、 街の子が言うほどの遊びながら呼ぶほどの 捕まったので思い出したほどの言葉なれど この時代にはこの言葉に総身の毛をよだてている人間がいるの | |||
| 猛炎 | 今野大力 | 5分以内 | |
魂と魂と放浪の数日の後 あるところを得たるは げによろこぶべき現象ぞよ 白馬天をゆく 碧瑠璃の空に われらが魂の猛炎は 赤きロマンチックの落日を偲ばしめ 舞楽を奏するなり 聞かずや 宇宙の人々達 分子を談ずる詩人達 広大無辺の渚なき海 われらは船を航し炬火を翳し はるかに行く……。 | |||
| 夕ぐれの明るさに憶う | 今野大力 | 5分以内 | |
夕ぐれのあかるさ パッと室一杯にあふれて 十六燭の電灯のあかるさなど 小さくすぼんでいるようなこころよい明るさ 忽ちに薄暗くなるこの時刻に これは又何といい明るさだ カーテンをすっかりとり払い 硝子窓を通してもかまわない あの明るい空を眺めよう あの空 あの色 何がこんなにうれしいのか もう三年越しの病人が こしらえたような感激を求めているのだろうか そうではない、たしかに、 空が広いのだ、 広 | |||
| 宵の星 | 今野大力 | 5分以内 | |
あついあつい 夕食後のあつさ のんびりと立って見た やっぱり暑い むっちり蒸される様だ ひたいには汗がこんなににじむ * 弟よ外へ行こう 庭の石に腰をかけて 鈴懸花の香をかいで 青く澄み渡った北国の宵空に 教えられたあの一つの星を探そう * 七月七日の夜も近づいた 牽牛織女の星がどこにあるか それも探そう 天の川流れるあたり 天上の花のさても美しき事よ | |||
| 老将軍と大学教授 | 今野大力 | 5分以内 | |
相当にぎやかな街の電柱の下のベンチに 素晴らしい将軍が休んでいる 私は写真を見てそう思った が、この老将軍は 前歴が何だかわからない ただぶくぶくした襟毛つきの厚っぽたい外套をきて 帽子はないが ない方がずっと素晴しい頭髪やヒゲを効果的に見せるし 眉毛でも普通の人間とは凡そ縁遠い 逞ましくゆかりあり気な一人の人物と見える だがこの老将軍は白系露字の新聞売である 日本人には驚くだけである 同じベ | |||
| 私の病室の報告 | 今野大力 | 5分以内 | |
私の病室は十三号の乙 寝台は三つ 満員 二人は施療で私は有料 一人は堅山と三十越えた男 三年全くこのベットにへばって暮し るいれきで首の周囲は膿の出た跡赤い肉が盛り上って 此頃も両脇の下から膿がしきりに流れている 肺の方も相当の進行している その咳こむ凄さは恐ろしい 俳句を毎日作っている も一人は鈴木二十二歳 堅山にこの小僧ッ子は生意気だと 泣きながら散々の悪口を言われた男 一月ばかり前に三千 | |||
| イシカリの川 | 今野大力 | 5分以内 | |
石狩の川の流れは 昔のアイヌ人種が毒木矢もて意気づく 古風な姿を写しつつ そは永遠に幻を画く平和なる村郷の中を 岩に激し砂辺に寄せて流れている | |||
| 路は果して何れ | 今野大力 | 5分以内 | |
生と死の路は今自分の行手にあり 自分はこの全き方向のちがった路の 何れを歩んでいるかを知らない 歩む路は一すじ ただこの一すじが 生命の歓喜へ向っているか また永遠の死へ辿っているか 自分にも解き得ざる謎 謎の日は今、日毎つづきつつある だが博士は言った 「半年か一年か保証は出来ないがね」 ここで自分の歩む路は死だと予断されている も一人の博士はただ眉をひそめて 「生死の問題よりも苦痛よりのがれ | |||
| 父母達の家 | 今野大力 | 5分以内 | |
住み古した父母達の家に 父母達の顔にきざんだ皺をかぞえることなく 老いたる父母達の苦難な生活の有様を覗い見ることなく 俺の健康な顔を見せ ガッシリとしてきた手を差のべることなく 街の中に 幾百万の人民の中の一人となり 父母達の家を 数々の家々とひとしく見過して 立去るおもい、 逢わねば心細くもあり 語らねば物がなしくもある わが子をはげまし わが子を階級戦の熾烈なさ中へ送る意気込みはなくとも、 | |||
| 羅漢寺 | 今野大力 | 5分以内 | |
羅漢寺の羅漢に盗癖ありて ともれるろうそくの涙を啜り 金財袋の紐をほどき 赤さびた銅貨を奪う。 | |||
| 夕べの曲 | 今野大力 | 5分以内 | |
街々にけむりさまよう 秋夕べここもかしこも 黄昏れて見分けもつかず 劇場のクラリネットの 高く低く或は長く短く 囃立てる巷の声に相和して 一つなる夕べの曲を 今日もまた ひとりし聞けばそのかみの日の なつかしまれつ涙ぐむ | |||
| 待っていた一つの風景 | 今野大力 | 5分以内 | |
痩たる土壌をかなしむなく 遠き遍土にあるをかこつなく 春となれば芽をだし 夏となれば緑を盛り花を飾る 貧しく小さくして尚たゆまず ただ一つ 秋、凡ての秋において ただ一つ 種を孕んだわが名知らぬ草 精一杯に伸びんとして努力空しく 夏のま中炎天のあまり枯死してしまったものもある 草にして一生は尊い生命の凡てである 一つの種は一つの種をはらんだ そして遍土の痩土に 初冬のころ 雪を戴き埋れ、静かに待っ | |||
| 有髪の僧 | 今野大力 | 5分以内 | |
私もいつかは有髪の僧となって 僧院の夕べ 極まりもない苦悩の魂を抱いて独り銀杏の下にいこう身となりました (何と言うかなしい事実でありましょう、人間の子の青春は、かくして奪い奪われ去るのです) | |||
| 義男さん | 今野大力 | 5分以内 | |
義男さんよ なぜそんなに考えてるの 一生懸命だね 何を読んでいるの…… ああそうか「死線を越えて」か おもしろいかね いえなあに借りて来て 読んでいるんですよ 此頃は歌はどうです 沢山書いているでしょう いえなあに駄目ですよ さっぱり此頃は 書けませんし出来ないし わたしももうよしているし ああそう言われた義男さんが 終に亡くなられた 私と同じ局にいても いつもおとなしく 少しも高ぶらない君が | |||
| ヌタプカムシペ山脈の畔り | 今野大力 | 5分以内 | |
色づく木々の丘の上の林へ 今日一日私は出かけた めずらしい晴天である 葡萄の葉と楡と、楢と栓とそれらみんな色づいて来た 最早すべて葉を落したものもある つたをたぐって丘に登る時 私は愉快である 登って見下せば又愉快である みごもった稲田を広い平野の端から端へ 見てゆくのも愉快である いろんな野菜の収穫の終った畑も 今は黍と芋蔓がしょんぼりと残っているのみで、 麓の清い澄んだ流れは紅い木の葉を浮べて | |||
| 三月の自然 | 今野大力 | 5分以内 | |
トッ―トッ―トッ―トッ ポチョ―ポチョ―ポチョ 解かれゆく雪の絶え間もなき 点滴……点滴…… 三月の空 灰色に消された空 うす青く曇れるはかの密林の峯々 高きに登りて見渡す街の 煙の重さよ 耀きなく 動かぬ自然 ゆらめくは流れる微風 ゆるく……ゆるく…… 打ちつけてはとけゆく風 はらめる風 | |||
| 埋れた幻想 | 今野大力 | 5分以内 | |
慰める様な ぬるい南風に衣を なびかせ なびかせ 大地の精が臥している 小高い丘の殺風景な(けれども希望に輝いた)処で 大地の精はつぶやいている ああ古風な幻想よ 大地は忍従の革命家 秋を送り冬を迎え 地上すべて荒廃に帰せしめ 殺した大地の世界から 生命を呼び ま夏の 新緑あふるる青さを生む (かくて神話の世紀から幾代の力を創った事か) 丘は今安らかな暁方の眠りを求める 朝早く営舎を出でて 美しい | |||
| 海の誘惑 | 今野大力 | 5分以内 | |
打ち返し泡立ち 再び寄せ 盛り上り 岩を打つ 波濤の歴史の永遠の力は 時としてあの不可解な死への誘惑を感ぜしめる 波に乗り 暴風雨を経て 大洋の航路にある旅客船は 絶えず地球の経緯を計っているが 世界を行く人々の心に あやしくも その感情の芽生えた時には 海は彼等が凡て目的の彼方であり 船長も水夫も多くの旅客も 惜し気もなく 悲しまず 永遠の歴史の海底へ沈むであろう | |||
| ある夜、ある宵 | 今野大力 | 5分以内 | |
ある夜は くらやみの中に 妻をよびよせて 話すことすべて狂人の如く * 来年の三月に死ぬと 自分のいのちを予言して 今日すいみん剤を多量にのんだと いい、胸の苦るしさを訴えて 妻を涙ぐませる うそのような真実に近いような ある日の宵 * しゃべるとつかれてくるに しゃべること 自分でよせと思いつつも たわごとの如くしゃべくる宵 | |||
| 天の海 | 今野大力 | 5分以内 | |
始皇よ 長城の如けん うねうねと連らなる山脈 駅路より駅路へ 人は人をたよりて 母を父を子を友を同胞を 旅するものの心つたえて 赤き逓送車のまわりゆくまで 極みなき地平の物語り出る物語り 丘に上り我は今日も 駅逓の旗を見ん (郷土は峡谷に馥郁たる香の花を秘めて 知られざる時代に埋もれゆくよ) 太古の儘なる森林に入りて もの思う男もあり 禿山の頂に立ちて 山脈の彼方なつかしの海にあらずやとふるさ | |||
| 故郷断想 | 今野大力 | 5分以内 | |
* 小川は濁っている ヤマメ、イワナのようなうまい小魚はもうそこへはのぼって来ない 淀みにはどぶ臭い雑魚が居り 廿年の昔の清冷な流れの面影がない * 連なる丘陵は ただ禿山であり 焼けたエゾ松の根株が淋しく黒く佇んで居り 昔そこに美しい針葉樹林があり 楡、タモ、栓、楢、紅葉、桜、胡桃、白椛の林があって 小鳥や兎達の楽しい場所であったことは きれいに忘れ去られている * 部落の人々は | |||
| 死んだ妹に寄せて | 今野大力 | 5分以内 | |
私の妹が死んだ、 妹は十四年この世に生きていて死んだ 私はそれを施療病院のベットの上できいた 涙も出なかった、そして 泣くよりも切ない気持で一人の幼き者の死を追慕した 死なせたくはなかった、 生かしておいてこの世の中の正しい希望に よろこばせてやりたかった 生れてきたからには そして肉親の兄である私が三十年の間に 学んできたことを 折ある毎に語りきかせ 苦難の道ではあるが 輝やかしいわれわれの未来 | |||
| 光箭 | 今野大力 | 5分以内 | |
視よ、暁と呼ぶ 東方の王子 我等が上に君臨まします 白日の御幸は今日もある由なり さてこそ王子は己れが光りの箭を数多なる郎党も召従えず 絶えず燦々と放たしむ 箭は放たれたり 地上は皆輝きたり 東方の王子は今日一日にて 中天をすぎさせ給える模様なり 而して明日も 再び参らせらるると承わる | |||
| 豌豆畑 | 今野大力 | 5分以内 | |
豆畑を越えて 聞えて来る睦ましそうな話を 私はねころんで聞いていた よくは聞きとれないけれども ほんとうに睦ましそうな話 すげ笠の蔭にかくれて 父も母も余念なく草を取りつつ 何をか物語る 子供はうね越えて遠く 向うの方に事もなき うれしさの微笑を見せて 母さんよ 母さんよと 呼び続けている | |||
| 自然教徒 | 今野大力 | 5分以内 | |
こんな静かな晩、外は全くの闇である 星はわずかに下界を雲間にのぞいている * ああ下界は午後十一時 俺は今夜も自然教徒なる故に 黒き衣を身に着けて 静かに彼方の小高い丘へ歩んでゆく * 小高い丘には 一本の白樺が、聖十字架の如くにそびいている | |||