長谷川時雨の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
平塚明子(らいてう)長谷川時雨30分以内6,543

一  らいてうさま、  このほどお体は如何で御座いますか。

一  らいてうさま、  このほどお体は如何で御座いますか。

芳川鎌子長谷川時雨60分以内17,598

一  大正六年三月九日朝の都下の新聞紙は筆を揃えて、芳川鎌子事件と呼ばれたことの真相を、いち早く報道し、精細をきわめた記事が各新聞の社会面を埋めつくした。

一  大正六年三月九日朝の都下の新聞紙は筆を揃えて、芳川鎌子事件と呼ばれたことの真相を、いち早く報道し、精細をきわめた記事が各新聞の社会面を埋めつくした。

糸繰沼長谷川時雨5分以内1,171

湖、青森あたりだとききました、越中から出る薬売りが、蓴菜が一ぱい浮いて、まっ蒼に水銹の深い湖のほとりで午寐をしていると、急に水の中へ沈んでゆくような心地がしだしたので、変だと思っていると、何処でか幽かに糸車を廻す音がきこえたともうします。

湖、青森あたりだとききました、越中から出る薬売りが、蓴菜が一ぱい浮いて、まっ蒼に水銹の深い湖のほとりで午寐をしていると、急に水の中へ沈んでゆくような心地がしだしたので、変だと思っていると、何処でか幽かに糸車を廻す音がきこえたともうします。

人魂火長谷川時雨5分以内907

これは私の父が、幼いころの気味の悪るかったことという、談話のおりにききましたことです。

これは私の父が、幼いころの気味の悪るかったことという、談話のおりにききましたことです。

「郭子儀」異変長谷川時雨30分以内5,757

柳里恭の「郭子儀」の對幅が、いつのころかわたくしの生家にあつた。

柳里恭の「郭子儀」の對幅が、いつのころかわたくしの生家にあつた。

尼たちへの消息長谷川時雨30分以内6,030

日蓮聖人の消息文の中から、尼御前たちに對へられた書簡を拾つてゆくと、安産の護符をおくられたり、生れた子に命名したりしてゐて、哲人日蓮、大詩人日蓮の風貌躍如として、六百六十餘年の世をへだてた今日、親しく語りかけられる心地がする。

日蓮聖人の消息文の中から、尼御前たちに對へられた書簡を拾つてゆくと、安産の護符をおくられたり、生れた子に命名したりしてゐて、哲人日蓮、大詩人日蓮の風貌躍如として、六百六十餘年の世をへだてた今日、親しく語りかけられる心地がする。

あるとき長谷川時雨10分以内3,608

むさしのの草に生れし身なればや   くさの花にぞこころひかるる  と口ずさんだりしたが、 「わたしの前生はルンペンだつたのかしらん。遠い昔、野の草を宿としてゐて、冷こんで死んだのかもしれない。それでこんなに家のなかにばかりゐるのかしら?」  門を一足出て、外の風にあたると、一町も千里もおんなじだと氣が輕くなつてしまふのにと、いふと、出おつくうがる性なのを知つてゐるものは手を叩いて笑つた。

むさしのの草に生れし身なればや   くさの花にぞこころひかるる  と口ずさんだりしたが、 「わたしの前生はルンペンだつたのかしらん。遠い昔、野の草を宿としてゐて、冷こんで死んだのかもしれない。それでこんなに家のなかにばかりゐるのかしら?」  門を一足出て、外の風にあたると、一町も千里もおんなじだと氣が輕くなつてしまふのにと、いふと、出おつくうがる性なのを知つてゐるものは手を叩いて笑つた。

家長谷川時雨10分以内2,486

ある日、婦人ばかりといつてよい招待の席で、小林一三氏が、吉屋信子さんの新築の家を絶讃された。

ある日、婦人ばかりといつてよい招待の席で、小林一三氏が、吉屋信子さんの新築の家を絶讃された。

大川ばた長谷川時雨5分以内1,282

大川は、東京下町を兩斷して、まつすぐに流れてゐる。

大川は、東京下町を兩斷して、まつすぐに流れてゐる。

お灸長谷川時雨5分以内1,651

お灸ずきの祖母が日に二三度づつお灸をすゑる。

お灸ずきの祖母が日に二三度づつお灸をすゑる。

おとづれ長谷川時雨5分以内1,407

十五夜の宵だつた。

十五夜の宵だつた。

鏡二題長谷川時雨10分以内2,199

暗い鏡  鏡といふものをちやんと見るやうになつたのは、十八――九の年頃だつたと思ひます。

暗い鏡  鏡といふものをちやんと見るやうになつたのは、十八――九の年頃だつたと思ひます。

傘長谷川時雨5分以内1,694

秋雨のうすく降る夕方だつた。

秋雨のうすく降る夕方だつた。

河風長谷川時雨5分以内1,887

江東水の江村の、あのおびただしい蓮が、東京灣の潮がさして枯れさうだといふ、お米も枯れてしまつたといふ、葛飾の水郷もさうして、だん/″\と工場町になるのだらう。

江東水の江村の、あのおびただしい蓮が、東京灣の潮がさして枯れさうだといふ、お米も枯れてしまつたといふ、葛飾の水郷もさうして、だん/″\と工場町になるのだらう。

桑摘み長谷川時雨10分以内2,527

庭木の植込みの間に、桑の細い枝が見える。

庭木の植込みの間に、桑の細い枝が見える。

こんな二人長谷川時雨5分以内1,067

一人は太古からかれない泥沼の底の主、山椒の魚でありたいといひ、ひとりは、夕暮、または曉に、淡く、ほの白い、小さな水藻の花でありたいと言ふ、こんな二人。

一人は太古からかれない泥沼の底の主、山椒の魚でありたいといひ、ひとりは、夕暮、または曉に、淡く、ほの白い、小さな水藻の花でありたいと言ふ、こんな二人。

下町娘長谷川時雨10分以内3,234

江戸の女を語るには、その階級から語らなければならない。

江戸の女を語るには、その階級から語らなければならない。

春宵戯語長谷川時雨10分以内3,753

ふと、ある日、菜の花のお漬けものがございますかとAさんにお目にかかつたとき、關西の郊外の話から、お訊ねしたことがあつた。

ふと、ある日、菜の花のお漬けものがございますかとAさんにお目にかかつたとき、關西の郊外の話から、お訊ねしたことがあつた。

住居長谷川時雨5分以内1,085

松岡映丘畫伯の晩年の作によく見えた丘の段々畑。

松岡映丘畫伯の晩年の作によく見えた丘の段々畑。

煎薬長谷川時雨5分以内1,824

腸を拂ふと欝血散じ、手足も暖まり頭輕く、肩張りなんぞ飛んでゆくと、三上の友人が漢方醫を同道されて、藥効神のごとしといふ煎藥をすすめてゆかれたので、わたしはそれを一服、ちよつと失禮して見た。

腸を拂ふと欝血散じ、手足も暖まり頭輕く、肩張りなんぞ飛んでゆくと、三上の友人が漢方醫を同道されて、藥効神のごとしといふ煎藥をすすめてゆかれたので、わたしはそれを一服、ちよつと失禮して見た。

佃のわたし長谷川時雨5分以内1,941

暗の夜更にひとりかへる渡し船、殘月のあしたに渡る夏の朝、雪の日、暴風雨の日、風趣はあつてもはなしはない。

暗の夜更にひとりかへる渡し船、殘月のあしたに渡る夏の朝、雪の日、暴風雨の日、風趣はあつてもはなしはない。

東京に生れて長谷川時雨10分以内3,602

大東京の魅力に引かれ、すつかり心醉しながら、郷里の風光に思ひのおよぼすときになると、東京をみそくそにけなしつける人がある。

大東京の魅力に引かれ、すつかり心醉しながら、郷里の風光に思ひのおよぼすときになると、東京をみそくそにけなしつける人がある。

夏の女長谷川時雨10分以内3,235

一夏、そのころ在阪の秋江氏から、なるみの浴衣の江戸もよいが、上布を着た上方の女の夏姿をよりよしと思ふといふ葉書が來たことがある。

一夏、そのころ在阪の秋江氏から、なるみの浴衣の江戸もよいが、上布を着た上方の女の夏姿をよりよしと思ふといふ葉書が來たことがある。

夏の夜長谷川時雨30分以内4,788

暗い窓から  地球が吸ひよせる雨――そんなふうな降りだ。

暗い窓から  地球が吸ひよせる雨――そんなふうな降りだ。

菜の花長谷川時雨5分以内597

水油なくて寢る夜や窓の月(芭蕉)  の句は、現代のものには、ちよつとわかりにくいほど、その時代、またその前々代の、古い人間生活と、菜の花との緊密なつながりを語つてゐる。

水油なくて寢る夜や窓の月(芭蕉)  の句は、現代のものには、ちよつとわかりにくいほど、その時代、またその前々代の、古い人間生活と、菜の花との緊密なつながりを語つてゐる。

日本橋あたり長谷川時雨30分以内5,467

その時分、白米の價が、一等米圓に七升一合、三等米七升七合、五等米八升七合。

その時分、白米の價が、一等米圓に七升一合、三等米七升七合、五等米八升七合。

初かつお長谷川時雨10分以内2,400

鰹といふと鎌倉で漁れて、江戸で食べるといふふうになつて、賣るも買ふも、勇み肌の代表のやうになつてゐるが、鰹は東南の海邊では、どこでも隨分古くから食用になつてゐる上に、鰹節の製造されたのも古いと見えて、社の屋根の鰹木は、鰹節をかたどつたものだと、「舍屋の上に堅魚を」と古事記にあれば、水の江の浦島の子をよめる萬葉の長歌には 春の日の霞める時に住吉の、岸に出でゐて釣船の、とをらふ見れば古の事ぞ思ほゆ、

鰹といふと鎌倉で漁れて、江戸で食べるといふふうになつて、賣るも買ふも、勇み肌の代表のやうになつてゐるが、鰹は東南の海邊では、どこでも隨分古くから食用になつてゐる上に、鰹節の製造されたのも古いと見えて、社の屋根の鰹木は、鰹節をかたどつたものだと、「舍屋の上に堅魚を」と古事記にあれば、水の江の浦島の子をよめる萬葉の長歌には 春の日の霞める時に住吉の、岸に出でゐて釣船の、とをらふ見れば古の事ぞ思ほゆ、

花火と大川端長谷川時雨30分以内8,027

花火といふ遊びは、金を飛散させてしまふところに多分の快味があるのだから、經濟の豐なほど豪宕壯觀なわけだ。

花火といふ遊びは、金を飛散させてしまふところに多分の快味があるのだから、經濟の豐なほど豪宕壯觀なわけだ。

春長谷川時雨10分以内3,591

今朝  昨夜、空を通つた、足の早い風は、いま何處を吹いてゐるか! あの風は、殘つてゐたふゆを浚つて去つて、春の來た今朝は、誰もが陽氣だ。

今朝  昨夜、空を通つた、足の早い風は、いま何處を吹いてゐるか! あの風は、殘つてゐたふゆを浚つて去つて、春の來た今朝は、誰もが陽氣だ。

凡愚姐御考長谷川時雨30分以内5,942

義理人情の美風といふものも歌舞伎芝居の二番目ものなどで見る親分子分の關係などでは、歪んだ――撓めた窮屈なもので、無條件では好いものだといひかねる。

義理人情の美風といふものも歌舞伎芝居の二番目ものなどで見る親分子分の關係などでは、歪んだ――撓めた窮屈なもので、無條件では好いものだといひかねる。

水長谷川時雨5分以内1,296

趣味とは、眺めてゐるものと、觸はつて見るもの、觸れなければ堪能できないものと、心に養つてゐるものとがある。

趣味とは、眺めてゐるものと、觸はつて見るもの、觸れなければ堪能できないものと、心に養つてゐるものとがある。

むぐらの吐息長谷川時雨30分以内4,512

十二月廿五日夜、東京日日新聞主催の「大東京座談會」の席上で、復興の途上にある大東京は、最初の豫算三十億の時から十億に削られた時まで、一千萬圓の國立劇場建築費が保存されてあつたが、終に最後の七億になつて消滅してしまつたといふことを、復興局長官の堀切善次郎氏によつて語られた。

十二月廿五日夜、東京日日新聞主催の「大東京座談會」の席上で、復興の途上にある大東京は、最初の豫算三十億の時から十億に削られた時まで、一千萬圓の國立劇場建築費が保存されてあつたが、終に最後の七億になつて消滅してしまつたといふことを、復興局長官の堀切善次郎氏によつて語られた。

桃長谷川時雨5分以内1,121

桃。

桃。

四人の兵隊長谷川時雨10分以内2,522

出征文人の一員、林芙美子のリユツクサツクのなかへはいつて[#「はいつて」は底本では「はついて」]、わたしの心持も行くといふと奇矯にきこえるが、わたくしの兵隊さん慰問文が、おぶつていつてもらふことになつた。

出征文人の一員、林芙美子のリユツクサツクのなかへはいつて[#「はいつて」は底本では「はついて」]、わたしの心持も行くといふと奇矯にきこえるが、わたくしの兵隊さん慰問文が、おぶつていつてもらふことになつた。

吾が愛誦句長谷川時雨5分以内1,143

六歳のをり、寺小屋式の小學校へはいりまして、その年の暮か、または一二年たつてかのお席書きに、「南山壽」といふのを覺えました。

六歳のをり、寺小屋式の小學校へはいりまして、その年の暮か、または一二年たつてかのお席書きに、「南山壽」といふのを覺えました。

私の顔長谷川時雨5分以内1,042

寫眞を出して並べたわたくしの顏は、どれもこれも、みんな違つてゐる。

寫眞を出して並べたわたくしの顏は、どれもこれも、みんな違つてゐる。

古い暦長谷川時雨10分以内2,108

坪内先生は、御老齢ではあったけれど、先生の死などということを、考えもしなかったのは我ながら不覚だった。

坪内先生は、御老齢ではあったけれど、先生の死などということを、考えもしなかったのは我ながら不覚だった。