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あるとき

長谷川時雨

『あるとき』は青空文庫で公開されている長谷川時雨の短編作品。3,608文字で、おおよそ10分以内で読むことができます。
文字数
10分以内
3,608文字
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書出

むさしのの草に生れし身なればや   くさの花にぞこころひかるる  と口ずさんだりしたが、 「わたしの前生はルンペンだつたのかしらん。遠い昔、野の草を宿としてゐて、冷こんで死んだのかもしれない。それでこんなに家のなかにばかりゐるのかしら?」  門を一足出て、外の風にあたると、一町も千里もおんなじだと氣が輕くなつてしまふのにと、いふと、出おつくうがる性なのを知つてゐるものは手を叩いて笑つた。

初出「早稻田文學 昭和九年九月號」1934(昭和9)年9月
底本
表記
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