5分以内で読める岸田国士の短編作品

わたくしが子供の頃から身につけた習慣といえば、一般日本人なみの習慣以外になにもこれといつて取り立てて言うほどのことはない。

内村直也の名は、いまや天下の知るところで、私の序文はこの書物になにものも附け足すことにはならぬが、需められるまゝに、「えり子とともに」の作者について、私の観るところを少し語ることにしよう。

今期は該当作品なし、といふ決定をみた経過については、私から特に説明する必要はないと思ふ。

この作品について私はなんべんも解説めいたものを書いたが、自分で自分の作品に註釈をつける必要があるとは思はない。

戯曲界不振の声を聞くことすでに久しい。

現代の演劇が純粋に健全に伸び育つためには、まづ、文学芸術の広い領域とのもつと緊密な接触を計り、それぞれの分野の活溌な協力を求めることが必要があるといふ見地に立つて、われわれは、一応、近い周囲に呼びかけ、「雲の会」といふ団体を結成した。

田中千禾夫君について何か書けといふ座（俳優座）からの註文である。

亡くなつた林芙美子さんのことについて何か書けといふ注文である。

毎回おなじ疑問をくり返すことになるが、この芥川賞の性格を、もつとはつきりさせなければ、選そのものも徒らにむつかしくなるし、賞の意味もそのために、稀薄になりはせぬかと思ふ。

この本の著者と私は一面識があるといふだけで、それほど深い交渉はないのだけれども、かねがね地方における篤学篤行の士であることは聞き及んでいた。

私たちが文学座をはじめてから、なるほどもう十五年たつわけであるが、それだけの成長をしたかどうか、このへんで厳しい自己批判を加えてもよさそうである。

内科の医者である私の友人Ａは先日面白い話をきかせてくれた。

今度の銓衡では、出席者のほとんど全部が、この「広場の孤独」を第一に推し、私もやゝ意を強くすることができた。

本書を編むにあたって、私は、「まえがき」に述べたような精神と内容を盛るために、特にその題目と執筆者の人選に意をくばった。

時代や世相がどのやうに変つても、短歌といふ日本独特の詩の形式が、あらゆる分野の人々の生活の中で、つまり生活が生み出す自然な芸術のかたちとして、着実な根を張つてゐることをわれわれは考へてみなくてはならない。

「速水女塾」は昭和二十三年の作である。

候補作品として私の手許に送り届けられた十篇のうち、特に一篇だけ傑出したといふものはなかつた。

劇団文学座に籍はおいてゐるが、新劇女優の卵にすぎない次女今日子のことをなにか書けといふ註文である。

元来、戯曲は舞台で演ぜられるために書かれたものであるが、活字として読まれることも今日では考へなくてはならない。

一九二三年（大正十二年）九月一日、例の関東震災で東京の劇場はことごとく灰になつた。

文学座三月公演のゴーリキーの「どん底」を演出することになり、信濃町のアトリエ近くに宿をとって、みっちりけいこをするつもりである。

お手紙の趣旨は第一に、この苦難と不安に満ちた現実生活を、芝居の世界で、つまり、舞台の上で、どんな風に取扱つたらいいかといふこと、ですね。

またひとり、作家が自殺した、といふ感じ方でこのニュウスを受けとつた人々がずいぶんたくさんあつたと思ふ。

矢代静一君の城館をみて、私は非常に新鮮なものと、極めてゆたかな才能の開花のようなものを認めた。

候補作品九篇のうち、私が最も推賞に値すると思つたのは、庄野潤三の「流木」と小島信夫の「吃音学院」であつた。

近代劇の古典といわれるゴーリキイの「どん底」を文学座がそのレパートリーのなかに入れたことは、そんなに驚くには当らない。

文学座三月公演はゴーリキイの「どん底」ときまり、私が演出を引受けた。

矢代君の戯曲は以前二つほど読んでゐた。

文学座の三月公演がゴーリキイの「どん底」にきまり、私にその演出をやれといふ委員会からの命令で、私は「えいッ」と覚悟をきめて、それを引き受けた。

『どん底』の解説（作品）演出方針帝政ロシア時代のモスクワの貧民街。

戯曲を書きはじめてやつと二三年、小説といふものはたゞの一度も書いたことのない私に、いきなり新聞の連載小説を書けといふ注文なので、私は面喰つた。

芝居といふものを強ひて大勢に見せるものだと考へる必要はない。

此の一巻は、私が文筆生活を始めてから今日まで略二年間に亘つて、いろいろな機会に発表した断片的評論又は感想のうち、演劇に関する文章を一纏めにして出来たものである。

今日まで活字として発表した戯曲のうち、凡そ半数は大小の劇場で脚光を浴びた。

私は、嘗て雑誌に発表した作品を、更に単行本に纏める場合、大概、一度は躊躇するのである。

（此の一文は考ふるところあつて特に挟込となす）この翻訳は全く自分の道楽にやつた仕事だと云つていゝ。

これは随筆集といふよりも、寧ろ雑文集である。

演劇に関する評論、感想、ノオトの類を集めてみたが、それらを系統的に配列する困難は、私が甚だ「学問的に」ものを言つてゐないといふこと、殊に、筆を執つた動機が殆ど常に外部からの註文に依つたといふことに原因がある。

この一巻には、今までのどの作品集にもいれることのできなかつた、私としてはやゝ例外的な形式の短篇のみをあつめてみることにした。

「博物誌」といふ題は“Histoires Naturelles”の訳であるが、これはもうこれで世間に通つた訳語だと思ふから、そのまま使ふことにした。

しばらく戯曲の創作から遠ざかつてゐると、近頃はまた戯曲が書いてみたくなつた。

風俗といふ言葉をごく広い意味にとつて、私はこの書物に「現代風俗」といふ題をつけた。

「文化」といふ言葉に、私は少し食傷しはじめた。

演劇に関する評論、感想の類をあつめて書物にするのはこれで三度目である。

私はこゝでこの作品の解説をするつもりはない。

この四篇を特に撰んでくれたのは、私の若い友人内村直也君であるが、戦後ほかから出版された戯曲集と重複しないやうにといふ配慮のほかに、私の全作品を通じて、それぞれ異つた傾向を示すものを一つづゝ拾ひ出すつもりだつたやうである。

ふたゝび私のために開かれた演劇の門は、やはり私にとつてなつかしいふるさとである。

『古い玩具』は、一九二三年、パリの旅舎で書いた私の最初の戯曲である。

賑やかな春の芝居も一向に心を惹かない。

私はこれまで「ある俳優」にあてはめて脚本を書いたことはない。