30分以内で読める青空文庫の短編作品

立国は私なり、公に非ざるなり。

一月一日の時事新報に瘠我慢の説を公にするや、同十三日の国民新聞にこれに対する評論を掲げたり。

左の一篇は木村芥舟翁の稿に係り、時事新報に掲載したるものなり。

人序曲を唄う者フィリポ・ポンポオニオ・ヴェチェリオ。

私の友達に高橋定次郎氏という人がありました。

哲學がむつかしいといふことは、いはゆる定評である。

自尊自大と云ふことは固より惡いことはない。

さて、みなさん。

富士を遠景に、霞のなかに浮ぶ峠の古風な掛茶屋。

葉絵子は父の書斎に呼ばれました。

女男甲男乙其の他［＃改ページ］舞台は、連絡なき三つの場所を同時に示し得るやう、その空間を利用して、それぞれ独立した装置を施す。

彼女隣の女多田彼小森阿部［＃改ページ］アパアトとは名ばかりの、粗末な貸室。

海岸の小さな貸別荘。

マルセル・プルウスト四十六アンリ・モルビエ三十四ジャック・グランジュ五十二看護婦二十五下男四十巴里――プルウストの病室［＃改ページ］プルウストは、寝台の上に半身を起し、看護婦に脈を取らせてゐる。

花茣蓙を敷きつめた八畳の日本間、寝台、鏡戸棚、テーブル、椅子等、すべて安物の西洋家具。

今日は愛國歌について一言を徴せられたが、大東亞戰爭の勃發して以來、國民が奮つて愛國歌を讀み、朗誦し、萬葉集に載つた、『海ゆかば水漬く屍山ゆかば草むす屍大皇の邊にこそ死なめ顧みは爲じ』や、『けふよりは顧みなくて大君の醜の御楯といでたつわれは』の如きは、全く人口に膾炙せられるに至つた。

大宮の内まで聞ゆ網引すと網子ととのふる海人の呼び聲長奧麻呂この歌は長忌寸奧麻呂（傳記未詳）が文武天皇三年正月、難波宮に行幸あそばした時に供奉して、詔を奉じて詠んだものである。

確かジムバリストの演奏会が在つた日の事だつたと思ふ。

東京の市街を、土曜日の午後あたり、明日は日曜だといふ安心で、と見かうみ、ぶらぶら歩るくほど楽しみなものはない。

彼女は非常に秀れた頭脳を持つてゐたのだと僕は思ふよ、これといふ理由はないのだけれど。

霧の夜黒ぐろとうちつづいた雑木林の間から流れ出る夜霧が、月光を浴びて乳色に白みながら見るまに濃度を加へて視野遠く広がつた農園の上を音もなく這ひ寄つて来る。

一歩一歩注意深く足を踏みしめて、野村は歩いた。

×月×日。

九月二十四日。

昨日ＭＴＬで「療養所文芸の発展策その他」について書いた諸氏のものも拝見し、また原田嘉悦氏の雑記をも読んでみた。

いつたいに慢性病はどの病気でも春先から梅雨期へかけて最も悪化する傾向がある。

心の中に色々な苦しいことや悩しいことが生じた場合、人は誰でもその苦しみや懊悩を他人に打明け、理解されたいといふ激しい慾望を覚えるのではないだらうか？そして内心の苦しみが激しければ激しいほど、深ければ深いほど、その慾望はひとしほ熾烈なものとなり、時としてはもはや自分の気持は絶対に他人に伝へることは不可能だと思はれ、そのために苛立ち焦燥し、遂には眼に見える樹木や草花やその他一切のものに向つてどなり泣き喚いてみたくすらなるのではあるまいか？少くとも私の経験ではさうであつた。

入院すると、子供を除いて他は誰でも一週間乃至二週間ぐらゐを収容病室で暮さなければならない。

時寛弘年間の或る秋処京の片ほとり人紫式部三十一二歳老侍女妙な美男西向く聖（舞台正面、質素な西の対屋の真向き、秋草の生い茂れる庭に臨んでいる。

独逸に在る唯一の仏教の寺だという仏陀寺へ私は伯林遊学中三度訪ねた。

「素焼の壺と素焼の壺とただ並んでるようなあっさりして嫌味のない男女の交際というものはないでしょうか」と青年は云った。

今年の夏の草花にカルセオラリヤが流行りそうだ。

ロンドンの北郊ハムステット丘の公園の中に小綺麗な別荘風の家が立ち並んで居る。

智子が、盲目の青年北田三木雄に嫁いだことは、親戚や友人たちを驚かした。

ロンドン市の北郊ハムステットの丘には春も秋もよく太陽が照り渡った。

スワンソン夫人は公園小路の自邸で目が覚めた。

神道集の諏訪本地。

折口といふ名字は、摂津国西成郡木津村の百姓の家の通り名とも、名字ともつかずのびて来た称へである。

今日伺ひまして、お話を聴かして頂かうと思ひました処が、かへつて私がお話をせなければならない事になりました。

延喜式の祝詞を、世間では、非常に古いものだと考へて居る。

木梨軽ノ太子の古い情史風のばらっどの外に、新しい時代に宣伝せられたと思はれる悲しい恋語りが、やはり巡遊伶人の口から世間へちらばり、其が輯録せられて万葉にある。

紀といふことばの意義今後、機会のある毎に、釈いて行つて見たいと思ふ、日本書紀と言ふ書物に絡んだ、いろんな疑念の中、第一にほぐしてかゝらねばならぬのは、名義とその用法とである。

古代の文章の特徴と云ふと、誰しも対句・畳句・枕詞・譬喩などを挙げる。

二つの問題日本の民俗芸術を観察するにあたつて、我々は二つの大きな問題に、注意を向けなければならぬ。

○くびだけ今は方言と言はれぬ語であるが、くびだけは首ばかりが水面に出てゐる様子で、沈湎・惑溺の甚しい事を言ふのだ、と思うてゐた処、大阪天満女夫池に、妻を追うて入つた夫の歌と言ふのに「水洩らぬ契りの末は首たけに思ひしづみし女夫池かな」極めて要領を得ぬ物であるが、首長とは着長に対した語で、頭をもこめた長の義であらう、と思ひあたつた。

まづ万葉集の歌が如何にしてあらはれて来たか、更に日本の歌がどういふ処から生れて来たか、といふこと即、万葉集に到る日本の歌の文学史を述べ、万葉集の書物の歴史を述べたいと思ふ。

奈良の宮の御代万葉集一部の、大体出来上つたのは何時か。

飛鳥の都以後奈良朝以前の、感情生活の記録が、万葉集である。

第一章霧の深い夜が毎晩のやうに続いた。

水の上あれからもう三年経つた。