30分以内で読める斎藤茂吉の短編作品

此方から見ると対岸の一ところに支流の水のそそいでゐるのが分かる。

強い双葉山が、四日目に安芸ノ海に負け、五日目に両国に負け、六日目に鹿島洋に負けたので、贔屓客が贔屓するあまり、実にいろいろの事をし、医者の診察をすすめたり、心理学の大家の説を訊いたり、いろいろの事をしてゐる。

人麿の妻は、万葉の歌から推しても、二人だといふ説があり、三人だといふ説があり、四人だといふ説があり、五人だといふ説がある。

短歌には形式上の約束があるために、新らしい言葉がなかなか入り難い。

瑞西の首都 Z※rich（チュリヒ） をば午後二時十分発の急行列車で立った。

故正岡子規先生の『仰臥漫録』は、私の精神生活にはなくてかなわぬ書物の一つであった。

維也納の G※rtel（ギユルテル） 街は、ドナウ運河の近くの、フランツ・ヨゼフ停車場の傍から起つて、南方に向つて帯のやうに通つてゐる大街である。

三年と云つても、この三年といふものは、三十年ぐらゐの気持であつた。

今日は愛國歌について一言を徴せられたが、大東亞戰爭の勃發して以來、國民が奮つて愛國歌を讀み、朗誦し、萬葉集に載つた、『海ゆかば水漬く屍山ゆかば草むす屍大皇の邊にこそ死なめ顧みは爲じ』や、『けふよりは顧みなくて大君の醜の御楯といでたつわれは』の如きは、全く人口に膾炙せられるに至つた。

大宮の内まで聞ゆ網引すと網子ととのふる海人の呼び聲長奧麻呂この歌は長忌寸奧麻呂（傳記未詳）が文武天皇三年正月、難波宮に行幸あそばした時に供奉して、詔を奉じて詠んだものである。

西暦一九二三年八月十三日、Rothmund（ロートムント） 街八番地に貸間があるといふので日本媼の息子が案内してくれた。

西暦一九二三年九月三日。

イーサル川は南の方のアルプス山中から出て、北へ向つて流れてゐる。

ポンペイの街をやうやく見物してしまつて、午過ぎて入口のところの食店で赤葡萄（ぶだう）酒を飲み、南伊太利むきの料理を食べて疲れた身心を休めてゐる。

大正十四年八月四日の朝奈良の宿を立って紀伊の国高野山に向った。