10分以内で読める青空文庫の短編作品

そこで、これから師東雲先生の生い立ちを話します。

早速彫らされることになる――この話はしにくい。

一体世の中に、何故？ときかれて、何となればと答の出来る様なことは、ごくつまらない事に違ひない。

ほんとうのことは、あの世で言え、という言葉がある。

魯迅の随筆に、「以前、私は情熱を傾けて支那の社会を攻撃した文章を書いた事がありましたけれども、それも、実は、やっぱりつまらないものでした。

先日、竹村書房は、今官一君の第一創作集「海鴎の章」を出版した。

貧乏神物語田中貢太郎縁起でもない話だが、馬琴の随筆の中にあったのを、数年前から見つけてあったので、ここでそれを云ってみる。

怪僧田中貢太郎官軍の隊士飯田某は、五六人の部下を伴（つ）れ、勝沼在の村から村へかけて、潜伏している幕兵を捜索していた。

加茂の光長は瓦盃に残りすくなになった酒を嘗めるように飲んでいた。

一緒に歩く亡霊田中貢太郎「老媼茶話」には奇怪な話が数多（たくさん）載っている。

趙顔という少年が南陽の平原で麦の実を割っていると、一人の旅人がとおりかかった。

辛道度は漂泊の旅を続けていた。

徳化県の県令をしていた張という男は、任期が満ちたのでたくさんの奴隷を伴れ、悪いことをして蒐めた莫大な金銀財宝を小荷駄にして都の方へ帰っていた。

唐の代宗帝の広徳年間の事であった。

梁（りょう）の武帝の大同の末年、欧陽※（おうようこつ）という武人が、南方に出征して長楽という処に至り、その地方の匪乱か何かを平定して、山間嶮岨の地へ入った。

唐の開元年中、郭元振は晋（しん）の国を出て汾（ふん）の方へ往った。

崔（さい）は長安の永楽里という処に住んでいた。

長安に、方棟という男があった。

直隷に富豪があって家庭教師を傭おうとしていると、一人の秀才が来て、自分を傭うてくれと言った。

劉海石は蒲台の人であった。

鉄砲打ちと云ふものには、よく、秋の汽車の中で出会つた。

物理学は他の科学と同様に知の学であって同時にまた疑いの学である。

六、七、八、九の月は、農家は草と合戦である。

古くダンテがイタリア語の父であるとされ、又降ってルターがドイツ語の完成者と云われるように、ルネ・デカルトはフランス語の恩人とされている。

「天真正伝神道流」の流祖、飯篠長威斎家直が当時東国第一の兵法者とされているのに対して、富田勢源が西に対立して双び称されて居たものである。

凡そ書籍の事に注意する人にして、乾隆の四庫全書の名を知らざる者は少からん。

根津の大観音に近く、金田夫人の家や二弦琴の師匠や車宿や、ないし落雲館中学などと、いずれも『吾輩は描である』の編中でなじみ越しの家々の間に、名札もろくにはってない古べいの苦沙弥先生の居は、去年の暮れおしつまって西片町へ引き越された。

最近、偶然に文藝作品の映畫化されたものをつゞけて三つ見た。

青年の時は、だれでもつまらないことに熱情をもつものだ。

昔は多くの詩人たちが、月を題材にして詩を作つた。

東京に移つてから間もなくの頃である。

よく田舎にある、野つ原の真ん中に、灌木だの歯朶だのに、穴の縁を茂らせて、底には石や土が、埋めかけて匙を投げてある、あの古井戸の底になら、埃が溜つたつて、別に面白くも可笑しくもない。

文藝運動と勞働運動平林初之輔明治以來の文藝運動は流派と流派との爭いであつた。

前掲「文藝運動と勞働運動」の一文句に對して中西伊之助氏が「種蒔く人」八月號で猛烈に批難された。

人物の善悪を定めんには我に極美（アイデアル）なかるべからず。

厳格らしい母だつた。

城あとのおおばこの実は結び、赤つめ草の花は枯れて焦茶色になって、畑の粟（あわ）は刈りとられ、畑のすみから一寸顔を出した野鼠はびっくりしたように又急いで穴の中へひっこむ。

格子縞の毛布宮本百合子縮毛（ちぢれげ）のいほ［＃「いほ」に傍点］は、女中をやめた。

杏の若葉宮本百合子「おや、時計がとまっているでないか」母親の声に、ぬいは頭をあげ、古い柱時計を見上げた。

蠅宮本百合子梅雨にはひろいものの晴れ上った天気である。

或る夕方、雄鳩が先に小屋へ入った。

裏のくぬぎ林のあっちをゴーゴーと二番の上りが通った。

老いはようやく身に迫ってくる。

むなぐるまは古言である。

我日本の性研究の或者が唯一の虎の巻として居る『性の心理』の著者ハヴェロック・エリスは、性学の大家であり医学者であると同時に、極めて勝れた文人である。

「アヤカシの鼓」当選後の所感を書けとのことですが、只今のところ私のあたまは諸大家の御評を拝してすっかりたたきつけられていまして、いくらか残っていた自画自讃みたような気もちまでもパンクしてしまったばかりのところなので、所感なぞいう気もちにはとてもなれません。

私には「探偵趣味」という意味がハッキリとわからない。

探偵小説作家なぞと呼ばれて返事を差出すのは、如何にも烏滸（おこ）がましい気がして赤面します。

私は遠からず路傍の木乃伊になってしまいそうな気がする。

素晴らしい探偵小説が書きたい。