作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|
青空文庫で公開されている中原中也の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。
作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
---|---|---|---|
我が生活 | 中原中也 | 10分以内 | |
明治座に吉右衛門の勧進帳が掛かつてゐる、連日満員である――と電車の中で隣り客の話してゐるのを聞いて、なんとなく観に行きたくなつたのであつた。 | |||
一度 | 中原中也 | 5分以内 | |
結果から結果を作る飜訳の悲哀――尊崇はたゞ道中にありました再び巡る道は「過去」と「現在」との沈黙の対坐です一度別れた恋人とまたあたらしく恋を始めたが思ひ出と未来での思ひ出がヲリと享楽との乱舞となりました一度といふことの嬉しさよ。 | |||
幼き恋の回顧 | 中原中也 | 5分以内 | |
幼き恋は寸燐の軸木燃えてしまへばあるまいものを寐覚めの囁きは燃えた燐だつたまた燃える時がありませうかアルコールのやうな夕暮に二人は再びあひました――圧搾酸素でもてゝゐる恋とはどんなものですかその実今は平凡ですがたつたこなひだ燃えた日の印象が二人を一緒に引きずつてます何の方へです――ソーセーヂが紫色に腐れました――多分「話の種」の方へでせう。 | |||
倦怠者の持つ意志 | 中原中也 | 5分以内 | |
タタミの目時計の音一切が地に落ちただが圧力はありません舌がアレましたヘソを凝視めます一切がニガミを帯びましただが反作用はありません此の時夏の日の海が現はれる!思想と体が一緒に前進する努力した意志ではないからです。 | |||
倦怠に握られた男 | 中原中也 | 5分以内 | |
俺は、俺の脚だけはなして脚だけ歩くのをみてゐよう――灰色の、セメント菓子を噛みながら風呂屋の多いみちをさまよへ――流しの上で、茶碗と皿は喜ぶに俺はかうまで三和土の土だ――。 | |||
恋の後悔 | 中原中也 | 5分以内 | |
正直過ぎては不可ません親切過ぎては不可ません女を御覧なさい正直過ぎ親切過ぎて男を何時も苦しめますだが女から正直にみえ親切にみえた男は最も偉いエゴイストでした思想と行為が弾劾し合ひ智情意の三分法がウソになりカンテラの灯と酒宴との間に人の心がさ迷ひますあゝ恋が形とならない前その時失恋をしとけばよかつたのです。 | |||
初夏 | 中原中也 | 5分以内 | |
扇子と香水――君、新聞紙を絹風呂敷には包みましたか夕の月が風に泳ぎますアメリカの国旗とソーダ水とが恋し始める頃ですね。 | |||
自滅 | 中原中也 | 5分以内 | |
親の手紙が泡吹いた恋は空みた肩揺つた俺は灰色のステッキを呑んだ足足足足足足足万年筆の徒歩旅行電信棒よ御辞儀しろお腹の皮がカシヤカシヤする胯の下から右手みた一切合切みんな下駄フイゴよフイゴよ口をきけ土橋の上で胸打つたヒネモノだからおまけ致します。 | |||
情慾 | 中原中也 | 5分以内 | |
何故取れない!何故取れない!電球よ暑くなれ!冬の野原を夏の風が行くに煙が去つた情熱の火が突進するブツカルものもなく――だから不可ない昔からあつたものだのに今新たに起つたものだそれを如何して呉れるい横から眺めてゐるな誰の罪でもない必要ぢやない欲しいだけだ。 | |||
想像力の悲歌 | 中原中也 | 5分以内 | |
恋を知らない街上の笑ひ者なる爺やんは赤ちやけた麦藁帽をアミダにかぶりハツハツハツ「夢魔」てえことがあるものかその日蝶々の落ちるのを夕の風がみてゐました思ひのほかでありました恋だけは――恋だけは。 | |||
旅 | 中原中也 | 5分以内 | |
夕刊売来てみれば此処も人の世散水車があるから汽車の煙が麦食べた実用を忘れて歯ブラッシを買つてみた青い紙ばかり欲しくてそれなのに唯物史観だつた砂袋スソがマクレますパラソルを倒に持つものがありますか浮袋が湿りました。 | |||
初恋 | 中原中也 | 5分以内 | |
最も弱いものは弱いもの――最も強いものは強いもの――タバコの灰は霧の不平――燈心は決闘――最も弱いものが最も強いものに――タバコの灰が燈心に――霧の不平が決闘に嘗てみえたことはありませんでしたか?――それは初恋です。 | |||
春の日の怒 | 中原中也 | 5分以内 | |
田の中にテニスコートがありますかい?春風ですよろこびやがれ凡俗!名詞の換言で日が暮れようアスファルトの上は凡人がゆく顔顔顔石版刷のポスターに木履の音は這ひ込まう。 | |||
春の夕暮 | 中原中也 | 5分以内 | |
塗板がセンベイ食べて春の日の夕暮は静かですアンダースロウされた灰が蒼ざめて春の日の夕暮は穏かですあゝ、案山子はなきか――あるまい馬嘶くか――嘶きもしまいたゞたゞ青色の月の光のノメランとするまゝに従順なのは春の日の夕暮かポトホトと臘涙に野の中の伽藍は赤く荷馬車の車、油を失ひ私が歴史的現在に物を言へば嘲る嘲る空と山とが瓦が一枚はぐれました春の日の夕暮はこれから無言ながら... | |||
不可入性 | 中原中也 | 5分以内 | |
自分の感情に自分で作用される奴はなんとまあ伽藍なんだ欲しくても取つてはならぬ気もあります好きと嫌ひで生きてゐる女には一番明白なものが一番漠然たるものでした空想は植物性です女は空想なんです女の一生は空想と現実との間隙の弁解で一杯です取れといふ時は植物的な萎縮をし取らなくても好いといへば煩悶し取るなといへば闘牛師の夫を夢みますそれから次の日の夕方に何といひました「あなたはあたしを理解して呉... | |||
迷つてゐます | 中原中也 | 5分以内 | |
筆が折れるそれ程足りた心があるかだつて折れない筆がありますか?聖書の綱が性慾のコマを廻す原始人の礼儀は外界物に目も呉れないで目前のものだけを見ることでしただがだが現代文明が筆を生みました筆は外界物です現代人は目前のものに対するにその筆を用ひました発明して出来たものが不可なかつたのですだが好いとも言へますから――僕は筆を折りませうか?その儘にしときませうか?。 | |||
タバコとマントの恋 | 中原中也 | 5分以内 | |
タバコとマントが恋をしたその筈だタバコとマントは同類でタバコが男でマントが女だ或時二人が身投心中したがマントは重いが風を含みタバコは細いが軽かつたので崖の上から海面に到着するまでの時間が同じだつた神様がそれをみて全く相対界のノーマル事件だといつて天国でビラマイタ二人がそれをみてお互の幸福であつたことを知つた時恋は永久に破れてしまつた。 | |||
(58号の電車で女郎買に行つた男が) | 中原中也 | 5分以内 | |
58号の電車で女郎買に行つた男が梅毒になつた彼は12の如き沈黙の男であつたに腕々々交通巡査には煩悶はないのか自殺せぬ自殺の体験者は障子に手を突込んで裏側からみてゐましたアカデミッシャンは予想の把持者なのに……今日天からウヅラ豆が畠の上に落ちてゐました。 | |||
(あなたが生れたその日に) | 中原中也 | 5分以内 | |
あなたが生れたその日にぼくはまだ生れてゐなかつた途中下車して無効になつた切符が古洋服のカクシから出て来た時恐らく僕は生れた日といふもの。 | |||
(女) | 中原中也 | 5分以内 | |
女吸取紙を早くかせ恵まれぬものが何処にある?マッチの軸を小さく折つた女自分は道草かしら女は摘草といふも勿体ないといつた俺は女の目的を知らないのださうだ原因なしの涙なんか出さないと自称する女から言はれた飛行機の分裂目的が山の端をとぶ縫物秘密がどんなに織り込まれたかしら女は鋏を畳の上に出したまゝ出て行つた自分に理窟をつけずに只管英雄崇拝女は男よ... | |||
(過程に興味が存するばかりです) | 中原中也 | 5分以内 | |
過程に興味が存するばかりですそれで不可ないと言ひますか生活の中の恋が原稿紙の中の芸術です有限の中の無限は最も有限なそれでした君の頭髪を一本一本数へてそれから人にお告げなさいテーマが先に立つといふ逆論はアルファベットの芸術です集積よりも流動が魂は集積ではありません。 | |||
(仮定はないぞよ!) | 中原中也 | 5分以内 | |
仮定はないぞよ!先天的観念もないぞよ!何にもない所から組立てゝ行つて先天的観念にも合致したがね理窟が面倒になつたさ屋根みたいなものさ意識した親切は持たないがね忠告する元気があれば象牙の塔の修繕にまはさうさカウモリ傘にもたれてみてゐりやあ人は真面目にくたびれずに事業つて奴をやつて呉れらあサンチマンタリズムに迎合しなきや趣味の本質に叛くかしらつてのがまあまあ俺の問題といへば問題さ。 | |||
(概念が明白となれば) | 中原中也 | 5分以内 | |
概念が明白となればそれの所産は観念でした観念の恋愛とは焼砂ですか紙で包んで棄てませう馬鹿な美人人間に倦きがなかつたら彼岸の見えない川があつたら反省は咏嘆を生むばかりです自分と過去とを忘れて他人と描ける自分との恋をみつめて進むんだ上手者なのに何故結果が下手者になるのでせう女よそれを追求して呉れ。 | |||
(汽車が聞える) | 中原中也 | 5分以内 | |
汽車が聞える蓮華の上を渡つてだらうか内的な刺戟で筆を取るダダイストは勿論サンチマンタルですよ。 | |||
(酒は誰でも酔はす) | 中原中也 | 5分以内 | |
酒は誰でも酔はすだがどんな傑れた詩も字の読めない人は酔はさない――だからといつて酒が詩の上だなんて考へる奴あ「生活第一芸術第二」なんて言つてろい自然が美しいといふことは自然がカンヴァスの上でも美しいといふことかい――そりや経験を否定したらインタレスチングな詩は出来まいがね――だが「それを以てそれを現すべからず」つて言葉を覚えとけえ科学が個々ばかりを考へて文学が関係ばかりを考へ過ぎ... | |||
(酒) | 中原中也 | 5分以内 | |
酒梅原因が分りません蜘蛛は五月雨に逃げ場を失ひましたキセルを折れキセルを折れ犬が骨を……ヘン、如何です?。 | |||
(題を附けるのが無理です) | 中原中也 | 5分以内 | |
トランプの占ひで日が暮れました――オランダ時計の罪悪です喩へ話の上に出来た喩へ話――誰です法律ばかり研究してるのは林檎の皮に灯が光るそればかりみてゐても金の時計が真鍮になりますぞ寺院の壁にトンボがとまつたそれは好いがあんまりいたづらは不可ません法則とともに歩く男君のステッキは何といふ緊張しすぎた物笑ひです。 | |||
(天才が一度恋をすると) | 中原中也 | 5分以内 | |
天才が一度恋をすると思惟の対象がみんな恋人になります。 | |||
(成程) | 中原中也 | 5分以内 | |
成程共に発見することが楽しみなのかさうか、それでは俺に恋は出来ないお前を知る前既にお前の今後発見することを発見しつくしてゐたから一つの菓子を二人とも好んではゐない一人は大好きで一人が嫌ひです菓子と二人との三角関係菓子は嫌ひな一人からヤカレて仕合せ者だ一番平凡なバランスの要求だのに何故そのバランスが来ないのか髪油の香が尚胸に残つてゐる煙草の香が胸に残つてゐるかしら蛙... | |||
(何と物酷いのです) | 中原中也 | 5分以内 | |
何と物酷いのです此の夜の海は――天才の眉毛――いくら原稿が売れなくとも燈台番にはなり給ふなあの白ッ、黒い空の空――卓の上がせめてもです読書くらゐ障げられても好いが書くだけは許して下さい実質ばかりの世の中は淋しからうがあまりにプロパガンダプロパガンダ……だから御覧なさいあんなに空は白黒くともあんなに海は黒くともそして――岩、岩、岩だが中間が空虚です。 | |||
(風船玉の衝突) | 中原中也 | 5分以内 | |
風船玉の衝突立て膝立て膝スナアソビ心よ!幼き日を忘れよ!煉瓦塀に春を発見した福助人形の影法師孤児の下駄が置き忘れてありました公園の入口ペンキのはげた立札心よ!詩人は着物のスソを狂犬病にクヒチギられたが……!。 | |||
(不随意筋のケンクワ) | 中原中也 | 5分以内 | |
不随意筋のケンクワハイフェンの多い生活△が○を描いて――あゝスイミツトーが欲しい。 | |||
(古る摺れた) | 中原中也 | 5分以内 | |
古る摺れた外国の絵端書――唾液が余りに中性だ雨あがりの街道を歩いたが歩いたが飴屋がめつからない唯のセンチメントと思ひますか?――額をみ給へ――一度は神も客観してやりました――不合理にも存在価値はありませうよだが不合理は僕につらい――こんなに先端に速度のある自棄々々々々下駄の歯は僕の重力を何といつて土に訴へます「空は興味だが役に立たないことが淋しい――精... | |||
(ダダイストが大砲だのに) | 中原中也 | 5分以内 | |
ダダイストが大砲だのに女が電柱にもたれて泣いてゐましたリゾール石鹸を用意なさいそれでも遂に私は愛されません女はダダイストを普通の形式で愛し得ません私は如何せ恋なんかの上では概念の愛で結構だと思つてゐますに白状します――だけど余りに多面体のダダイストは言葉が一面的なのでだから女に警戒されます理解は悲哀です概念形式を齎しません。 | |||
(ダツク ドツク ダクン) | 中原中也 | 5分以内 | |
ダツクドツクダクンチエンダンデンピー……フー……ボドー……弁当箱がぬくもる工場の正午は鉄の尖端で光が眠る。 | |||
(名詞の扱ひに) | 中原中也 | 5分以内 | |
名詞の扱ひにロヂックを忘れた象徴さ俺の詩は宣言と作品との関係は有機的抽象と無機的具象との関係だ物質名詞と印象との関係だ。 | |||
(最も純粋に意地悪い奴) | 中原中也 | 5分以内 | |
最も純粋に意地悪い奴。 | |||
(ツツケンドンに) | 中原中也 | 5分以内 | |
ツツケンドンに女は言ひつぱなして出て行つた襖の上に灰がみえる眼窩の顛倒鳥の羽斜に空へ!……対象の知れぬ寂しみ神様はつまらぬものゝみをつくつた盥の底の残り水古いゴムマリ十能が棄てられました雀の声は何といふ生唾液だ!雨はまだ降るだらうかインキ壺をのぞいてニブリ加減をみよう。 | |||
(テンピにかけて) | 中原中也 | 5分以内 | |
テンピにかけて焼いたろかあんなヘナチヨコ詩人の詩百科辞典を引き廻し鳥の名や花の名やみたこともないそれなんかひつぱり出して書いたつて――だがそれ程想像力があればね――やい!いつたい何が表現出来ました?自棄のない詩は神の詩か凡人の詩かそのどつちかと僕が決めたげます。 | |||
(バルザック) | 中原中也 | 5分以内 | |
バルザックバルザック腹の皮が収縮する胃病は明治時代の病気らしいそんな退屈は嫌で嫌で悟つたつて昂奮するさ同時性が実在してたまるものか空をみて涙と仁丹雨がまた降つて来る。 | |||
(頁 頁 頁) | 中原中也 | 5分以内 | |
頁頁頁歴史と習慣と社界意識名誉欲をくさして名誉を得た男もありました認識以前の徹定土台は何時も性慾みたいなもの上に築れたものゝ価値十九世期は土台だけをみて物言ひました○×××○×××○×××飴に皮がありますかい女よダダイストを愛せよ。 | |||
夜汽車の食堂 | 中原中也 | 5分以内 | |
雪の野原の中に、一条のレールがあつて、そのレールのずつと地平線に見えなくなるあたりの空に、大きなお月様がポツカリと出てゐました。 | |||
夏 | 中原中也 | 5分以内 | |
私が貧乏で、旅行としいへば殆んど夏にしかしないからかも知れない、………夏と聞くと旅愁が湧いて来て、却々「夏は四季のうち、自然の最も旺んなる時なり」どころではない、なんだか哀れにも懐しいといつた風で、扨この夏はどうしようかなと思ふと、忽ちに嘗て旅した何処かの、暑い暑い風景が浮んで来て、おもへば遠く来つるかなと、そいつた気持に胸はふくらむで来るのである。 |