山本周五郎の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
初蕾山本周五郎60分以内17,771

一 「花はさかりまでという、知っているだろう」 「…………」 「美しいものは、美しいさかりを過ぎると忘れられてしまう、人間いつまで若くていられるものじゃない、おまえだってもう十八だろう、ふじむら小町などと云われるのも、もう半年か一年のことだ、惜しまれるうちに身の始末をするのが本当じゃあないか」 「それはわかってますけれど」  お民は客の盃に酌をしながら、ふと考えるような眼つきになった。

一 「花はさかりまでという、知っているだろう」 「…………」 「美しいものは、美しいさかりを過ぎると忘れられてしまう、人間いつまで若くていられるものじゃない、おまえだってもう十八だろう、ふじむら小町などと云われるのも、もう半年か一年のことだ、惜しまれるうちに身の始末をするのが本当じゃあないか」 「それはわかってますけれど」  お民は客の盃に酌をしながら、ふと考えるような眼つきになった。

柳橋物語山本周五郎1時間〜105,271

前篇 一  青みを帯びた皮の、まだ玉虫色に光っている、活きのいいみごとな秋鯵だった。

前篇 一  青みを帯びた皮の、まだ玉虫色に光っている、活きのいいみごとな秋鯵だった。

石ころ山本周五郎30分以内11,534

一  ああ高坂の権之丞さまがお通りなさる、また裏打の大口を召しておいでですね、あの方のは大紋うつしでいつも伊達にお拵えなさるけれど、お色が白くてお身細ですから華奢にみえますこと。

一  ああ高坂の権之丞さまがお通りなさる、また裏打の大口を召しておいでですね、あの方のは大紋うつしでいつも伊達にお拵えなさるけれど、お色が白くてお身細ですから華奢にみえますこと。

其角と山賊と殿様山本周五郎30分以内5,089

その頃榎本其角は、俳友小川破笠と共に江戸茅場町の裏店に棲んでいた。

その頃榎本其角は、俳友小川破笠と共に江戸茅場町の裏店に棲んでいた。

お美津簪山本周五郎60分以内13,432

一 「音をさせちゃ駄目、そおっと来るのよ」 「――大丈夫です」 「そら! 駄目じゃないの」  正吉の重みで梯子段が軋むと、お美津は悪戯らしく上眼で睨んだ。

一 「音をさせちゃ駄目、そおっと来るのよ」 「――大丈夫です」 「そら! 駄目じゃないの」  正吉の重みで梯子段が軋むと、お美津は悪戯らしく上眼で睨んだ。

雨の山吹山本周五郎60分以内16,680

一  母の病間をみまってから兄の部屋へゆくと、兄も寝床の上で医者と話していた。

一  母の病間をみまってから兄の部屋へゆくと、兄も寝床の上で医者と話していた。

荒法師山本周五郎60分以内17,333

一  昌平寺の俊恵が荒法師といわれるようになったのはそう古いことではない。

一  昌平寺の俊恵が荒法師といわれるようになったのはそう古いことではない。

葦は見ていた山本周五郎60分以内18,339

一  五月はじめの朝四時ごろ、――  熊井川は濃い霧に掩われていた。

一  五月はじめの朝四時ごろ、――  熊井川は濃い霧に掩われていた。

夜明けの辻山本周五郎1時間〜43,832

一の一  功刀伊兵衛がはいって行ったとき、そこではもう講演が始っていた。

一の一  功刀伊兵衛がはいって行ったとき、そこではもう講演が始っていた。

落葉の隣り山本周五郎1時間〜29,309

一  おひさは繁次を想っていた。

一  おひさは繁次を想っていた。

雪と泥山本周五郎60分以内20,319

一 「好い男っていうんじゃあないんだ、うん、おとなしくって気の弱そうな性分が、そのまま顔に出てるって感じさ、まだ若いんだ」 「もういいかげんにおよしよ、おまえさん、それは罪だよ」おつねが頸筋へ白粉をぬりながら云った、「それに世間にゃそうそう鴨ばかりいるもんじゃないからね、いまにひどいめにあうよ」 「黙っててよおつね姐さん」ちよのが舌ったるい口ぶりで云った、「それで、ねえそれでどうしたの、おしの姐

一 「好い男っていうんじゃあないんだ、うん、おとなしくって気の弱そうな性分が、そのまま顔に出てるって感じさ、まだ若いんだ」 「もういいかげんにおよしよ、おまえさん、それは罪だよ」おつねが頸筋へ白粉をぬりながら云った、「それに世間にゃそうそう鴨ばかりいるもんじゃないからね、いまにひどいめにあうよ」 「黙っててよおつね姐さん」ちよのが舌ったるい口ぶりで云った、「それで、ねえそれでどうしたの、おしの姐

若殿女難記山本周五郎60分以内22,900

一  東海道金谷の宿はずれに、なまめかしい一廓がある。

一  東海道金谷の宿はずれに、なまめかしい一廓がある。

似而非物語山本周五郎1時間〜32,408

一  加賀のくにの白山谷を、鶴来町のほうから手取川に沿って登って来たひとりの旅装の老人が、牛窪という村にかかる土橋のところで立停った。

一  加賀のくにの白山谷を、鶴来町のほうから手取川に沿って登って来たひとりの旅装の老人が、牛窪という村にかかる土橋のところで立停った。

艶書山本周五郎1時間〜25,437

一  岸島出三郎はその日をよく覚えている。

一  岸島出三郎はその日をよく覚えている。

扇野山本周五郎1時間〜34,269

一 「うんいいね、静かな趣きだ」  石川孝之介はそう云って、脇にいる角屋金右衛門に頷いた。

一 「うんいいね、静かな趣きだ」  石川孝之介はそう云って、脇にいる角屋金右衛門に頷いた。

ひやめし物語山本周五郎60分以内16,075

一  大四郎は一日のうち少なくとも二度は母の部屋へはいってゆく、「お母さんなにかありませんか」と、云うことは定っている。

一  大四郎は一日のうち少なくとも二度は母の部屋へはいってゆく、「お母さんなにかありませんか」と、云うことは定っている。

亡霊ホテル山本周五郎30分以内9,901

惨劇の部屋  伊藤豊治青年が洗面を済まして着換えをしているところへ、制服を着た給仕が朝の珈琲を運んで来た。

惨劇の部屋  伊藤豊治青年が洗面を済まして着換えをしているところへ、制服を着た給仕が朝の珈琲を運んで来た。

ひとごろし山本周五郎60分以内22,897

一  双子六兵衛は臆病者といわれていた。

一  双子六兵衛は臆病者といわれていた。

山椿山本周五郎60分以内16,115

一  梶井主馬と須藤きぬ女との結婚式は、十一月中旬の凍てのひどい宵に挙げられた。

一  梶井主馬と須藤きぬ女との結婚式は、十一月中旬の凍てのひどい宵に挙げられた。

備前名弓伝山本周五郎1時間〜24,854

一  備前の国岡山の藩士に、青地三之丞という弓の達人がいた。

一  備前の国岡山の藩士に、青地三之丞という弓の達人がいた。

おばな沢山本周五郎60分以内22,882

一  節子が戸田英之助と内祝言の盃をとり交したのは、四月中旬の雨の降る日であった。

一  節子が戸田英之助と内祝言の盃をとり交したのは、四月中旬の雨の降る日であった。

日本婦道記山本周五郎30分以内8,420

一 「どうかしたのか、顔色がすこしわるいように思うが」  直輝の気づかわしげなまなざしに加代はそっと頬をおさえながら微笑した。

一 「どうかしたのか、顔色がすこしわるいように思うが」  直輝の気づかわしげなまなざしに加代はそっと頬をおさえながら微笑した。

死処山本周五郎30分以内7,123

一  夏目吉信(次郎左衛門)が駈けつけたとき、大ひろ間ではすでにいくさ評定がはじまって、人びとのあいだに意見の応酬がはげしくとり交わされていた。

一  夏目吉信(次郎左衛門)が駈けつけたとき、大ひろ間ではすでにいくさ評定がはじまって、人びとのあいだに意見の応酬がはげしくとり交わされていた。

暗がりの乙松山本周五郎60分以内12,307

一  居合腰になってすーと障子を明ける、そのまましばらく屋内のようすを聞きすましてから、そっと廊下へ忍び出た。

一  居合腰になってすーと障子を明ける、そのまましばらく屋内のようすを聞きすましてから、そっと廊下へ忍び出た。

初夜山本周五郎60分以内17,560

一  明和九年(十一月改元「安永」となる)二月中旬の或る日、――殿町にある脇屋代二郎の屋敷へ、除村久良馬が訪ねて来た。

一  明和九年(十一月改元「安永」となる)二月中旬の或る日、――殿町にある脇屋代二郎の屋敷へ、除村久良馬が訪ねて来た。

入婿十万両山本周五郎30分以内10,943

一 「――浅二郎」 「はい」 「今日もまた家中の若い奴等が何か悪さをしたそうではないか」  矢走源兵衛は茶を啜りながら柔和な眼をあげて婿を見た。

一 「――浅二郎」 「はい」 「今日もまた家中の若い奴等が何か悪さをしたそうではないか」  矢走源兵衛は茶を啜りながら柔和な眼をあげて婿を見た。

おさん山本周五郎1時間〜33,513

一の一  これ本当のことなの、本当にこうなっていいの、とおさんが云った。

一の一  これ本当のことなの、本当にこうなっていいの、とおさんが云った。

失蝶記山本周五郎60分以内22,344

一  紺野かず子さま。

一  紺野かず子さま。

蘭山本周五郎30分以内10,363

一  秋の日はすでに落ちていた。

一  秋の日はすでに落ちていた。

留さんとその女山本周五郎30分以内6,918

留さんは通船会社の万年水夫である。

留さんは通船会社の万年水夫である。

殺生谷の鬼火山本周五郎30分以内9,686

凶報到る  東京理科大学生の椙原敦夫は、北海道の奥地に在る故郷の妹から、 (母死ス父危篤至急帰レ、至急ヲ要ス)  という意味の電報を受取った。

凶報到る  東京理科大学生の椙原敦夫は、北海道の奥地に在る故郷の妹から、 (母死ス父危篤至急帰レ、至急ヲ要ス)  という意味の電報を受取った。

野分山本周五郎60分以内21,612

一 「なにがそんなに可笑しいんだ」 「だってあんまりですもの」運んで来た燗徳利を手に持ったまま、お紋は顔を赤くして笑い続けた、「……板前さんがあんまりなんですもの」 「板前がどうあんまりなんだ」 「若さまが鯊のあらいって仰しゃったでしょう、ですからそう通したんですよ、本当にちゃんとそう通したのに、今いってみたらこうやって、爼板の上へ黒鯛をのせているんです」そこでまたさも堪らないというようにふきだ

一 「なにがそんなに可笑しいんだ」 「だってあんまりですもの」運んで来た燗徳利を手に持ったまま、お紋は顔を赤くして笑い続けた、「……板前さんがあんまりなんですもの」 「板前がどうあんまりなんだ」 「若さまが鯊のあらいって仰しゃったでしょう、ですからそう通したんですよ、本当にちゃんとそう通したのに、今いってみたらこうやって、爼板の上へ黒鯛をのせているんです」そこでまたさも堪らないというようにふきだ

年の瀬の音山本周五郎10分以内2,248

十二月になると一日一日に時を刻む音が聞えるようである。

十二月になると一日一日に時を刻む音が聞えるようである。

橋の下山本周五郎60分以内12,312

一  練り馬場と呼ばれるその広い草原は、城下から北へ二十町あまりいったところにある。

一  練り馬場と呼ばれるその広い草原は、城下から北へ二十町あまりいったところにある。

蜆谷山本周五郎60分以内14,093

一 「こんなに鴨の寄らないこともないもんだ、もう師走という月でまるっきり影もみせない」風邪でもひいているような、ぜいぜい声でこう云うのが聞こえた、「もう十年もむかしだったか、沖の島の杓子岩のくずれた年だかに鴨の寄らないことがあった」 「なむあみだ、なむあみだ」別の声がうたうような調子でそう云った、「ばかな凍てだ、これじゃあまた明日は寝て暮らすだ、出て来なけりゃあよかった」 「猟場が変わったのもた

一 「こんなに鴨の寄らないこともないもんだ、もう師走という月でまるっきり影もみせない」風邪でもひいているような、ぜいぜい声でこう云うのが聞こえた、「もう十年もむかしだったか、沖の島の杓子岩のくずれた年だかに鴨の寄らないことがあった」 「なむあみだ、なむあみだ」別の声がうたうような調子でそう云った、「ばかな凍てだ、これじゃあまた明日は寝て暮らすだ、出て来なけりゃあよかった」 「猟場が変わったのもた

風流化物屋敷山本周五郎60分以内20,266

一 柘榴屋敷に物怪の沙汰  住宅難のこんにち、こんなことを云うと殴られるかも知れないが、僅か十数年まえまでは東京市内などにもよく化物屋敷といわれる空家があった。

一 柘榴屋敷に物怪の沙汰  住宅難のこんにち、こんなことを云うと殴られるかも知れないが、僅か十数年まえまでは東京市内などにもよく化物屋敷といわれる空家があった。

へちまの木山本周五郎1時間〜29,592

一  房二郎が腰を掛けたとき、すぐ向うにいたその男は、鰺の塩焼を食べながら酒を飲んでいた。

一  房二郎が腰を掛けたとき、すぐ向うにいたその男は、鰺の塩焼を食べながら酒を飲んでいた。

あすなろう山本周五郎60分以内19,867

一  うすよごれた手拭で頬冠りをした、百姓ふうの男が一人、芝金杉のかっぱ河岸を、さっきから往ったり来たりしていた。

一  うすよごれた手拭で頬冠りをした、百姓ふうの男が一人、芝金杉のかっぱ河岸を、さっきから往ったり来たりしていた。

日日平安山本周五郎1時間〜28,630

一  井坂十郎太は怒っていた。

一  井坂十郎太は怒っていた。

暴風雨の中山本周五郎60分以内15,563

一  烈風と豪雨が荒れ狂っていた。

一  烈風と豪雨が荒れ狂っていた。

やぶからし山本周五郎60分以内22,723

一  祝言の夜は雪になった。

一  祝言の夜は雪になった。

薯粥山本周五郎60分以内12,099

一  承応二年五月はじめの或る日、三河のくに岡崎藩の老職をつとめる鈴木惣兵衛の屋敷へ、ひとりの浪人者が訪れて来て面会を求めた。

一  承応二年五月はじめの或る日、三河のくに岡崎藩の老職をつとめる鈴木惣兵衛の屋敷へ、ひとりの浪人者が訪れて来て面会を求めた。

ちくしょう谷山本周五郎1時間〜70,658

一  朝田隼人が江戸から帰るとすぐに、小池帯刀が訪ねて来た。

一  朝田隼人が江戸から帰るとすぐに、小池帯刀が訪ねて来た。

七日七夜山本周五郎60分以内18,161

一  本田昌平は、ものごとをがまんすることにかけては、自信があった。

一  本田昌平は、ものごとをがまんすることにかけては、自信があった。

つばくろ山本周五郎60分以内22,319

一  吉良の話しがあまりに突然であり、あまりに思いがけなかったので、紀平高雄にはそれがすぐには実感としてうけとれなかった。

一  吉良の話しがあまりに突然であり、あまりに思いがけなかったので、紀平高雄にはそれがすぐには実感としてうけとれなかった。

山彦乙女山本周五郎1時間〜128,667

序の章  安倍半之助が、ついに彼の生涯を縛りつけることになった「かんば沢」の名を、初めて耳にしたのは十歳の年のことであった。

序の章  安倍半之助が、ついに彼の生涯を縛りつけることになった「かんば沢」の名を、初めて耳にしたのは十歳の年のことであった。

柘榴山本周五郎60分以内12,411

一  真沙は初めから良人が嫌いだったのではない。

一  真沙は初めから良人が嫌いだったのではない。

葦山本周五郎60分以内12,530

一  その葦たちは一日じゅう巨きな椎の樹のうっとうしい陰で風に揺られていた。

一  その葦たちは一日じゅう巨きな椎の樹のうっとうしい陰で風に揺られていた。

日本婦道記山本周五郎60分以内12,947

一 「今夜は籾摺りをかたづけてしまおう、伊緒も手をかして呉れ」  夕食のあとだった、良人からなにげなくそう云われると、伊緒はなぜかしらにわかに胸騒ぎのするのを覚え、思わず良人の眼を見かえした。

一 「今夜は籾摺りをかたづけてしまおう、伊緒も手をかして呉れ」  夕食のあとだった、良人からなにげなくそう云われると、伊緒はなぜかしらにわかに胸騒ぎのするのを覚え、思わず良人の眼を見かえした。

長屋天一坊山本周五郎1時間〜29,875

第一席 天一坊は大逆犯人のこと 並びに諸説巷間を賑わすこと  徳川八代将軍吉宗の時代に、天一坊事件という騒動があった。

第一席 天一坊は大逆犯人のこと 並びに諸説巷間を賑わすこと  徳川八代将軍吉宗の時代に、天一坊事件という騒動があった。