野村胡堂の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,383

一 「八、花は散り際つて言ふが、人出の少くなつた向島を、花吹雪を浴びて歩くのも惡くねえな」  錢形平次は如何にも好い心持さうでした。

一 「八、花は散り際つて言ふが、人出の少くなつた向島を、花吹雪を浴びて歩くのも惡くねえな」  錢形平次は如何にも好い心持さうでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,595

一 「親分、小便組といふのを御存じですかえ」  八五郎は長んがい顎を撫でながら、錢形平次のところへノソリとやつて來ました。

一 「親分、小便組といふのを御存じですかえ」  八五郎は長んがい顎を撫でながら、錢形平次のところへノソリとやつて來ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,400

一 「親分、面白い話があるんだが――」  ガラッ八の八五郎は、木戸を開けて、長い顔をバアと出しました。

一 「親分、面白い話があるんだが――」  ガラッ八の八五郎は、木戸を開けて、長い顔をバアと出しました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,111

一 「八、目黒の兼吉親分が来ていなさるそうだ。ちょいと挨拶をして来るから、これで勘定を払っておいてくれ」  銭形の平次は、子分の八五郎に紙入を預けて、そのまま向うの離屋へ行ってしまいました。

一 「八、目黒の兼吉親分が来ていなさるそうだ。ちょいと挨拶をして来るから、これで勘定を払っておいてくれ」  銭形の平次は、子分の八五郎に紙入を預けて、そのまま向うの離屋へ行ってしまいました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内16,314

一  江戸開府以来といわれた、捕物の名人銭形平次の手柄のうちには、こんな不思議な事件もあったのです。

一  江戸開府以来といわれた、捕物の名人銭形平次の手柄のうちには、こんな不思議な事件もあったのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,491

一 「親分、子さらいが流行るんだってネ」 「聞いたよ、憎いじゃないか」  銭形平次は苦い顔をしました。

一 「親分、子さらいが流行るんだってネ」 「聞いたよ、憎いじゃないか」  銭形平次は苦い顔をしました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,310

一  相変らず捕物の名人の銭形平次が、大縮尻をやって笹野新三郎に褒められた話。

一  相変らず捕物の名人の銭形平次が、大縮尻をやって笹野新三郎に褒められた話。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,659

一 「親分、金儲けを好きですか」  ガラツ八の八五郎、また飛んでもないことを言ひ出すのです。

一 「親分、金儲けを好きですか」  ガラツ八の八五郎、また飛んでもないことを言ひ出すのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,550

一 「親分、變な奴が來ましたよ」  ガラツ八の八五郎は、長んがい顎を鳶口のやうに安唐紙へ引つ掛けて、二つ三つ瞬きをして見せました。

一 「親分、變な奴が來ましたよ」  ガラツ八の八五郎は、長んがい顎を鳶口のやうに安唐紙へ引つ掛けて、二つ三つ瞬きをして見せました。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,235

一 「八、厄介なことになったぜ」  銭形の平次は八丁堀の組屋敷から帰って来ると、鼻の下を長くして待っている八五郎に、いきなりこんなことを言うのです。

一 「八、厄介なことになったぜ」  銭形の平次は八丁堀の組屋敷から帰って来ると、鼻の下を長くして待っている八五郎に、いきなりこんなことを言うのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内16,702

一 「親分、長い間お世話になりましたが――」  八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのです。

一 「親分、長い間お世話になりましたが――」  八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,426

一 「八、大層ソワ/\してゐるぢやないか」  錢形平次は煙草盆を引寄せて、食後の一服を樂しみ乍ら、柱に凭れたまゝ、入口の障子を開けて、眞つ暗な路地ばかり眺めてゐる、八五郎に聲を掛けました。

一 「八、大層ソワ/\してゐるぢやないか」  錢形平次は煙草盆を引寄せて、食後の一服を樂しみ乍ら、柱に凭れたまゝ、入口の障子を開けて、眞つ暗な路地ばかり眺めてゐる、八五郎に聲を掛けました。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,010

プロローグ 「これは低俗な義理人情や、歪められた忠義を鼓吹した時代には発表の出来なかった話で、長い間私の材料袋に秘められて居りましたが、今となっては最早憚り恐るる節もなく、この物語を発表したからと言って、私を不忠者不義者扱いにする、頭の固い便乗者も無くなってしまったことでしょう。私は思い切ってこの秘話を発表いたしますが、たった一つ、殿様の本当の名前だけは隠さして頂きたいと思います。旧藩関係がうる

プロローグ 「これは低俗な義理人情や、歪められた忠義を鼓吹した時代には発表の出来なかった話で、長い間私の材料袋に秘められて居りましたが、今となっては最早憚り恐るる節もなく、この物語を発表したからと言って、私を不忠者不義者扱いにする、頭の固い便乗者も無くなってしまったことでしょう。私は思い切ってこの秘話を発表いたしますが、たった一つ、殿様の本当の名前だけは隠さして頂きたいと思います。旧藩関係がうる

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,759

一 「親分、近頃は胸のすくような捕物はありませんね」  ガラッ八の八五郎は先刻から鼻を掘ったり欠伸をしたり、煙草を吸ったり全く自分の身体を持て余した姿でした。

一 「親分、近頃は胸のすくような捕物はありませんね」  ガラッ八の八五郎は先刻から鼻を掘ったり欠伸をしたり、煙草を吸ったり全く自分の身体を持て余した姿でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内17,185

一  銭形平次もこんな突拍子もない事件に出っくわしたことはありません。

一  銭形平次もこんな突拍子もない事件に出っくわしたことはありません。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,466

一  話はガラッ八の八五郎から始まります。

一  話はガラッ八の八五郎から始まります。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,976

一 「八、何んか良い事があるのかい、大層嬉しさうぢやないか」 「へツ、それほどでもありませんよ親分、今朝はほんの少しばかり寢起がいゝだけで――」  ガラツ八と異名で呼ばれる八五郎は、さういひ乍らも湧き上がつて來る滿悦を噛み殺すやうに、ニヤリニヤリと長んがい頤を撫で廻すのでした。

一 「八、何んか良い事があるのかい、大層嬉しさうぢやないか」 「へツ、それほどでもありませんよ親分、今朝はほんの少しばかり寢起がいゝだけで――」  ガラツ八と異名で呼ばれる八五郎は、さういひ乍らも湧き上がつて來る滿悦を噛み殺すやうに、ニヤリニヤリと長んがい頤を撫で廻すのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,416

一 「親分、何んかかう胸のすくやうなことはありませんかね」  ガラツ八の八五郎は薄寒さうに彌造を構へたまゝ、膝小僧で錢形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立つたのでした。

一 「親分、何んかかう胸のすくやうなことはありませんかね」  ガラツ八の八五郎は薄寒さうに彌造を構へたまゝ、膝小僧で錢形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立つたのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,517

一 「親分、金持になつて見たくはありませんか」  八五郎はまた途方もない話を持ち込んで來たのです。

一 「親分、金持になつて見たくはありませんか」  八五郎はまた途方もない話を持ち込んで來たのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,486

一 「親分、お願いがあるんだが」  ガラッ八の八五郎は言いにくそうに、長い顎を撫でております。

一 「親分、お願いがあるんだが」  ガラッ八の八五郎は言いにくそうに、長い顎を撫でております。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,325

一 「あれを聴いたでしょうね、親分」  ガラッ八の八五郎は、この薄寒い日に、鼻の頭に汗を掻いて飛込んで来たのです。

一 「あれを聴いたでしょうね、親分」  ガラッ八の八五郎は、この薄寒い日に、鼻の頭に汗を掻いて飛込んで来たのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,282

一 「おや、八五郎親分、もう御存じで?」 「知らなくってさ。隠したって駄目だよ、真っ直ぐに申し上げた方がいいぜ」  ガラッ八の八五郎が、浜町河岸で逢ったのは、廻船問屋浪花屋の奉公人、二三本釘の足りない江戸っ子で、雑用にコキ使われている釜吉でした。

一 「おや、八五郎親分、もう御存じで?」 「知らなくってさ。隠したって駄目だよ、真っ直ぐに申し上げた方がいいぜ」  ガラッ八の八五郎が、浜町河岸で逢ったのは、廻船問屋浪花屋の奉公人、二三本釘の足りない江戸っ子で、雑用にコキ使われている釜吉でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,863

一 「親分、良い陽氣ですね」  ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、枝折戸を足で開けて、ノツソリと日南に立ちはだかるのでした。

一 「親分、良い陽氣ですね」  ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、枝折戸を足で開けて、ノツソリと日南に立ちはだかるのでした。

新奇談クラブ野村胡堂60分以内13,114

大名生活の一断面 「エロとかグロとか言ったところで、今の人の嗜好や経験は多寡が知れて居ますが、昔の専制的な大名には、随分飛び離れた生活をした人があったようですね。これは私の大伯父から聞いた話で、掛値の無い事実談ですが、荒淫な大名生活の一断面を知る為には、持って来いの恰好な物語でしょう。時は士気も綱紀も頽廃し切った天保の末、大名は小身乍ら、維新にかけて鳴らした人物ですが、旧藩関係で差し障りあるといけ

大名生活の一断面 「エロとかグロとか言ったところで、今の人の嗜好や経験は多寡が知れて居ますが、昔の専制的な大名には、随分飛び離れた生活をした人があったようですね。これは私の大伯父から聞いた話で、掛値の無い事実談ですが、荒淫な大名生活の一断面を知る為には、持って来いの恰好な物語でしょう。時は士気も綱紀も頽廃し切った天保の末、大名は小身乍ら、維新にかけて鳴らした人物ですが、旧藩関係で差し障りあるといけ

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,796

一 「ね、親分、こいつは珍しいでしょう」  ガラッ八の八五郎は、旋風のように飛込んで来ると、いきなり自分の鼻を撫で上げるのでした。

一 「ね、親分、こいつは珍しいでしょう」  ガラッ八の八五郎は、旋風のように飛込んで来ると、いきなり自分の鼻を撫で上げるのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,857

一  飯田町の地主、朝田屋勘兵衞が死んで間もなく、その豪勢な家が、自火を出して一ぺんに燒けてしまつたことがあります。

一  飯田町の地主、朝田屋勘兵衞が死んで間もなく、その豪勢な家が、自火を出して一ぺんに燒けてしまつたことがあります。

新奇談クラブ野村胡堂60分以内13,398

名人大六雲鼎 「人形の首を梟した、――という話、気味は悪いが、充分に面白い積りです」  第六番目に立った話の選手大滝左馬太は、奇談クラブの談話室で、斯う話し始めました。

名人大六雲鼎 「人形の首を梟した、――という話、気味は悪いが、充分に面白い積りです」  第六番目に立った話の選手大滝左馬太は、奇談クラブの談話室で、斯う話し始めました。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜26,227

【第一回】 一 「親分、世の中にこの綺麗なものを見ると痛めつけたくなるというのは、一番悪い量見じゃありませんか、ね」  八五郎が入って来ると、いきなりお先煙草を五、六服、さて、感に堪えたように、こんなことを言い出すのです。

【第一回】 一 「親分、世の中にこの綺麗なものを見ると痛めつけたくなるというのは、一番悪い量見じゃありませんか、ね」  八五郎が入って来ると、いきなりお先煙草を五、六服、さて、感に堪えたように、こんなことを言い出すのです。

踊る美人像野村胡堂60分以内15,796

不思議な手紙 「兄貴、こいつは一杯食わされたらしいぜ」 「叱ッ」  関東新報の社会部長で、名記者と言われた千種十次郎は、好んで斯んな伝法な口をきく、部下の早坂勇――一名足の勇――をたしなめるように、霞門の方から入って来る狭い道を指しました。

不思議な手紙 「兄貴、こいつは一杯食わされたらしいぜ」 「叱ッ」  関東新報の社会部長で、名記者と言われた千種十次郎は、好んで斯んな伝法な口をきく、部下の早坂勇――一名足の勇――をたしなめるように、霞門の方から入って来る狭い道を指しました。

平次と生きた二十七年野村胡堂30分以内6,827

愛情主義の平次 「銭形平次」を書き始めて、もう二十七年になる。

愛情主義の平次 「銭形平次」を書き始めて、もう二十七年になる。

随筆銭形平次野村胡堂5分以内909

捕物小説は、ただもう卑俗な、全く無価値な文学であるかの様に読まぬうちから、或いは一寸めくって見て、軽侮する傾向が強いが、これは如何? 捕物小説はも一度見なおされるべきではないか。

捕物小説は、ただもう卑俗な、全く無価値な文学であるかの様に読まぬうちから、或いは一寸めくって見て、軽侮する傾向が強いが、これは如何? 捕物小説はも一度見なおされるべきではないか。

新奇談クラブ野村胡堂60分以内15,604

鼻観外道 「この話の面白さに比べると、失礼だが今まで語られた奇談は物の数でもない、――と言うと、アラビアン・ナイトのお妃の極り文句のようですが、私は全くそう信じ切って居るのです」  奇談クラブの集合室で、話の競技の第五番目に選手として立った春藤薫は、十三人の会員達の好奇に燃ゆる顔を見渡し乍ら、斯う言った調子で始めました。

鼻観外道 「この話の面白さに比べると、失礼だが今まで語られた奇談は物の数でもない、――と言うと、アラビアン・ナイトのお妃の極り文句のようですが、私は全くそう信じ切って居るのです」  奇談クラブの集合室で、話の競技の第五番目に選手として立った春藤薫は、十三人の会員達の好奇に燃ゆる顔を見渡し乍ら、斯う言った調子で始めました。

新奇談クラブ野村胡堂60分以内13,715

朗らかなローマンス 「皆様のお話は、面白いには相違ありませんが、少し陰惨過ぎて、胃の腑の為には宜しくなかったように思います。其処へ行くと私の話は明るくて、朗らかで、お伽話のように浪曼的ですが、決して小説や作り話ではありません。悉く今八郎さんの仰しゃる、切れば血の出るような事実談です。私が経験したことを私が話すのですから、これほど確かなことはありません」  第七番目の話の選手水島三吾は斯う言った調子

朗らかなローマンス 「皆様のお話は、面白いには相違ありませんが、少し陰惨過ぎて、胃の腑の為には宜しくなかったように思います。其処へ行くと私の話は明るくて、朗らかで、お伽話のように浪曼的ですが、決して小説や作り話ではありません。悉く今八郎さんの仰しゃる、切れば血の出るような事実談です。私が経験したことを私が話すのですから、これほど確かなことはありません」  第七番目の話の選手水島三吾は斯う言った調子

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,309

一 「親分」 「なんだ、八。たいそうな意気込みじゃないか、喧嘩でもして来たのか」  銭形平次は気のない顔を、八五郎の方に振り向けました。

一 「親分」 「なんだ、八。たいそうな意気込みじゃないか、喧嘩でもして来たのか」  銭形平次は気のない顔を、八五郎の方に振り向けました。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜25,747

【第一回】 一 「世の中に何が臆病と言ったって、二本差の武家ほど気の小さいものはありませんね」  八五郎はまた、途方もない哲学を持ち込んで来るのです。

【第一回】 一 「世の中に何が臆病と言ったって、二本差の武家ほど気の小さいものはありませんね」  八五郎はまた、途方もない哲学を持ち込んで来るのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,312

一  浪人大澤彦四郎は、まことに評判の良い人でした。

一  浪人大澤彦四郎は、まことに評判の良い人でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,744

一  八五郎の顔の広さ、足まめに江戸中を駆け廻って、いたるところから、珍奇なニュースを仕入れて来るのでした。

一  八五郎の顔の広さ、足まめに江戸中を駆け廻って、いたるところから、珍奇なニュースを仕入れて来るのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜25,972

【第一回】 一 「親分、近頃は滅多に両国へも行きませんね」  八五郎は相変らず何んかネタを持って来た様子です。

【第一回】 一 「親分、近頃は滅多に両国へも行きませんね」  八五郎は相変らず何んかネタを持って来た様子です。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,254

一 「へツへツ、親分、今晩は」  ガラツ八の八五郎、箍のはじけた桶のやうに手のつけやうの無い笑ひを湛へ乍ら、明神下の平次の家の格子を顎で――平次に言はせると――開けて入るのでした。

一 「へツへツ、親分、今晩は」  ガラツ八の八五郎、箍のはじけた桶のやうに手のつけやうの無い笑ひを湛へ乍ら、明神下の平次の家の格子を顎で――平次に言はせると――開けて入るのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,482

一 「親分、何かこう胸のすくようなことはありませんかね」  ガラッ八の八五郎は薄寒そうに弥蔵を構えたまま、膝小僧で銭形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立ったのでした。

一 「親分、何かこう胸のすくようなことはありませんかね」  ガラッ八の八五郎は薄寒そうに弥蔵を構えたまま、膝小僧で銭形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立ったのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,612

一 「親分、あツしもいよ/\來年は三十ですね」  錢形平次の子分、愛稱ガラツ八こと八五郎は、つく/″\こんなことを言つて、深刻な顏をするのでした。

一 「親分、あツしもいよ/\來年は三十ですね」  錢形平次の子分、愛稱ガラツ八こと八五郎は、つく/″\こんなことを言つて、深刻な顏をするのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,257

一  深川熊井町の廻船問屋板倉屋万兵衛、土蔵の修復が出来上がったお祝い心に、出入りの棟梁佐太郎を呼んで、薄寒い後の月を眺めながら、大川を見晴らした、二階座敷で呑んでおりました。

一  深川熊井町の廻船問屋板倉屋万兵衛、土蔵の修復が出来上がったお祝い心に、出入りの棟梁佐太郎を呼んで、薄寒い後の月を眺めながら、大川を見晴らした、二階座敷で呑んでおりました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,132

一 「へツ、へツ、親分え」  ガラツ八の八五郎は、髷節で格子戸をあけて、――嘘をつきやがれ、髷節ぢや格子は開かねえ、俺のところは家賃がうんと溜つて居るから、表の格子だつて、建て付けが惡いんだからと――、錢形の平次は言やしません。

一 「へツ、へツ、親分え」  ガラツ八の八五郎は、髷節で格子戸をあけて、――嘘をつきやがれ、髷節ぢや格子は開かねえ、俺のところは家賃がうんと溜つて居るから、表の格子だつて、建て付けが惡いんだからと――、錢形の平次は言やしません。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,177

一 「八、今のはなんだい」 「ヘエ――」  銭形の平次は、後ろから跟いて来る、八五郎のガラッ八をふり返りました。

一 「八、今のはなんだい」 「ヘエ――」  銭形の平次は、後ろから跟いて来る、八五郎のガラッ八をふり返りました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,817

一 「親分、あっしはもう癪にさわってさわって」  ガラッ八の八五郎は、いきなり銭形平次の前に、長い顎を漂わせます。

一 「親分、あっしはもう癪にさわってさわって」  ガラッ八の八五郎は、いきなり銭形平次の前に、長い顎を漂わせます。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,285

一 「親分、良い陽気じゃありませんか。植木の世話も結構だが、たまには出かけてみちゃどうです」  ガラッ八の八五郎は、懐ろ手を襟から抜いて、虫歯が痛い――て恰好に頬を押えながら、裏木戸を膝で開けてノッソリと入って来ました。

一 「親分、良い陽気じゃありませんか。植木の世話も結構だが、たまには出かけてみちゃどうです」  ガラッ八の八五郎は、懐ろ手を襟から抜いて、虫歯が痛い――て恰好に頬を押えながら、裏木戸を膝で開けてノッソリと入って来ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,596

一 「親分。お早うございます」 「火事場の帰りかえ。八」 「ヘエ――」 「竈の中から飛出したようだせ」  銭形平次――江戸開府以来と言われた捕物の名人――と、子分の逸足、ガラッ八で通る八五郎が、鎌倉河岸でハタと顔を合せました。

一 「親分。お早うございます」 「火事場の帰りかえ。八」 「ヘエ――」 「竈の中から飛出したようだせ」  銭形平次――江戸開府以来と言われた捕物の名人――と、子分の逸足、ガラッ八で通る八五郎が、鎌倉河岸でハタと顔を合せました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,498

一 「平次、狸穴まで行ってみないか、竹光で武家が一人殺されたんだが――」  与力笹野新三郎は、ちょうど八丁堀組屋敷に来合せた、銭形平次を誘いました。

一 「平次、狸穴まで行ってみないか、竹光で武家が一人殺されたんだが――」  与力笹野新三郎は、ちょうど八丁堀組屋敷に来合せた、銭形平次を誘いました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内16,100

一 「親分、面白い話がありますぜ」  ガラッ八の八五郎、銭形平次親分の家へ呶鳴り込みました。

一 「親分、面白い話がありますぜ」  ガラッ八の八五郎、銭形平次親分の家へ呶鳴り込みました。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,989

一 「親分、小柳町の伊丹屋の若旦那が来ましたぜ、何か大変な事があるんですって」 「恐ろしく早いじゃないか、待たしておけ」 「ヘエ――」  平次は八五郎を追いやるように、ガブガブと嗽をしました。

一 「親分、小柳町の伊丹屋の若旦那が来ましたぜ、何か大変な事があるんですって」 「恐ろしく早いじゃないか、待たしておけ」 「ヘエ――」  平次は八五郎を追いやるように、ガブガブと嗽をしました。