野村胡堂の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,676

一 「親分、良い陽気ですね」  フラリとやって来た八五郎は、襟の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、継穂もないお世辞を言うのでした。

一 「親分、良い陽気ですね」  フラリとやって来た八五郎は、襟の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、継穂もないお世辞を言うのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,802

一 「へッ、へッ、可笑しなことがありますよ、親分」 「何が可笑しいんだ。いきなり人の面を見て、馬鹿笑いなんかしやがって、顔へ墨でもついていると言うのかい」  銭形平次は、ツルリと顔を撫でました。

一 「へッ、へッ、可笑しなことがありますよ、親分」 「何が可笑しいんだ。いきなり人の面を見て、馬鹿笑いなんかしやがって、顔へ墨でもついていると言うのかい」  銭形平次は、ツルリと顔を撫でました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,226

一 「羨ましい野郎があるもんですね、親分」  夏の夜の縁先、危い縁臺を持ち出して、蚊を叩き乍ら、八五郎は斯んなことを言ふのです。

一 「羨ましい野郎があるもんですね、親分」  夏の夜の縁先、危い縁臺を持ち出して、蚊を叩き乍ら、八五郎は斯んなことを言ふのです。

大江戸黄金狂野村胡堂1時間〜27,465

第一の手紙  山浦丈太郎は、不思議な手紙を受取りました。

第一の手紙  山浦丈太郎は、不思議な手紙を受取りました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,477

一 「わツ驚いたの驚かねえの」  ガラツ八といふ安値な異名で通る八五郎は、五月の朝の陽を一パイに浴びた格子の中へ、張板を蹴飛ばして、一陣の疾風のやうに飛び込むのでした。

一 「わツ驚いたの驚かねえの」  ガラツ八といふ安値な異名で通る八五郎は、五月の朝の陽を一パイに浴びた格子の中へ、張板を蹴飛ばして、一陣の疾風のやうに飛び込むのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,289

一  かねやすまでを江戸のうちと言った時代、巣鴨や大塚はそれからまた一里も先の田舎で、田も畑も、武蔵野のままの木立も藪もあった頃のことです。

一  かねやすまでを江戸のうちと言った時代、巣鴨や大塚はそれからまた一里も先の田舎で、田も畑も、武蔵野のままの木立も藪もあった頃のことです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,643

一 「永い間こんな稼業をしているが、変死人を見るのはつくづく厭だな」  捕物の名人銭形の平次は、口癖のようにこう言っておりました。

一 「永い間こんな稼業をしているが、変死人を見るのはつくづく厭だな」  捕物の名人銭形の平次は、口癖のようにこう言っておりました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,598

一  紅葉はちょうど見ごろ、差迫った御用もない折を狙って、銭形平次は、函嶺まで湯治旅と洒落ました。

一  紅葉はちょうど見ごろ、差迫った御用もない折を狙って、銭形平次は、函嶺まで湯治旅と洒落ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,528

本篇もまた、平次の独身もの。

本篇もまた、平次の独身もの。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,277

一 「親分、梅はお嫌いかな」 「へえ?」  銭形平次も驚きました。

一 「親分、梅はお嫌いかな」 「へえ?」  銭形平次も驚きました。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,474

一 「親分、ちと出かけちゃどうです。花は盛りだし、天気はよし」 「その上、金がありゃ申分はないがね」  誘いに来たガラッ八の八五郎をからかいながら相変らず植木の新芽をいつくしむ銭形の平次だったのです。

一 「親分、ちと出かけちゃどうです。花は盛りだし、天気はよし」 「その上、金がありゃ申分はないがね」  誘いに来たガラッ八の八五郎をからかいながら相変らず植木の新芽をいつくしむ銭形の平次だったのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,683

一 「親分、変な野郎が来ましたぜ」  ガラッ八の八五郎は、モモンガアみたいな顔をして見せました。

一 「親分、変な野郎が来ましたぜ」  ガラッ八の八五郎は、モモンガアみたいな顔をして見せました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内16,821

一 「親分、お願いがあるんですが――」  お品はこう切り出します。

一 「親分、お願いがあるんですが――」  お品はこう切り出します。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,273

一 「親分、松が除れたばかりのところへ、こんな話を持込んぢや氣の毒だが、玉屋に取つては、此上もない大難、――聽いてやつちや下さるまいか」  町人乍ら諸大名の御用達を勤め、苗字帶刀まで許されてゐる玉屋金兵衞は、五十がらみの分別顏を心持翳らせて斯う切出しました。

一 「親分、松が除れたばかりのところへ、こんな話を持込んぢや氣の毒だが、玉屋に取つては、此上もない大難、――聽いてやつちや下さるまいか」  町人乍ら諸大名の御用達を勤め、苗字帶刀まで許されてゐる玉屋金兵衞は、五十がらみの分別顏を心持翳らせて斯う切出しました。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,488

一  金座、銀座、銭座、朱座と並んで、江戸幕府の大事な機構の一つに、秤座というのがありました。

一  金座、銀座、銭座、朱座と並んで、江戸幕府の大事な機構の一つに、秤座というのがありました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,282

一 「親分、向うの角を左へ曲りましたぜ」 「よしッ、手前はここで見張れ、俺は向うへ廻って、逆に引返して来る」  平次とガラッ八は、近頃江戸中を荒し廻る怪盗、――世間で「千里の虎」というのを、小石川金杉水道町の路地に追い込んだのです。

一 「親分、向うの角を左へ曲りましたぜ」 「よしッ、手前はここで見張れ、俺は向うへ廻って、逆に引返して来る」  平次とガラッ八は、近頃江戸中を荒し廻る怪盗、――世間で「千里の虎」というのを、小石川金杉水道町の路地に追い込んだのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,557

一 「親分、折角ここまで来たんだから、ちょいと門前町裏を覗いてみましょうか」  銭形平次と子分の八五郎は、深川の八幡様へお詣りした帰り、フト出来心で結改場(楊弓場)を覗いたのが、この難事件に足を踏込む発端でした。

一 「親分、折角ここまで来たんだから、ちょいと門前町裏を覗いてみましょうか」  銭形平次と子分の八五郎は、深川の八幡様へお詣りした帰り、フト出来心で結改場(楊弓場)を覗いたのが、この難事件に足を踏込む発端でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,952

一  ガラッ八の八五郎が、両国の水茶屋朝野屋の様子を、三日つづけて見張っておりました。

一  ガラッ八の八五郎が、両国の水茶屋朝野屋の様子を、三日つづけて見張っておりました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内17,040

一 「親分、手紙が参りました」 「どれどれ、これは良い手だ。が、余程急いだと見える」  銭形平次は封を切って読み下しました。

一 「親分、手紙が参りました」 「どれどれ、これは良い手だ。が、余程急いだと見える」  銭形平次は封を切って読み下しました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,945

一 「御免」  少し職業的に落着き払った声、銭形平次はそれを聞くと、脱いでいた肌を入れて、八五郎のガラッ八に目くばせしました。

一 「御免」  少し職業的に落着き払った声、銭形平次はそれを聞くと、脱いでいた肌を入れて、八五郎のガラッ八に目くばせしました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,680

一 「親分、美い新造が是非逢はしてくれつて、來ましたぜ」  とガラツ八の八五郎、薄寒い縁にしやがんで、柄にもなく、お月樣の出などを眺めてゐる錢形の平次に聲を掛けました。

一 「親分、美い新造が是非逢はしてくれつて、來ましたぜ」  とガラツ八の八五郎、薄寒い縁にしやがんで、柄にもなく、お月樣の出などを眺めてゐる錢形の平次に聲を掛けました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,293

一 「親分、面白い話があるんだが――」  八五郎のガラッ八が、長い顎を撫でながら入って来たのは、正月の十二日。

一 「親分、面白い話があるんだが――」  八五郎のガラッ八が、長い顎を撫でながら入って来たのは、正月の十二日。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,574

一 「親分、変なことがありますよ」 「何が変なんだ。――まだ朝飯も済まないのに、いきなり飛び込んで来て」  五月のよく晴れた朝、差当って急ぎの御用もない銭形平次は、八五郎でも誘って、どこかへ遊びに行こうかといった、太平無事なことを考えている矢先、当の八五郎は少しめかし込んだ恰好で、飛び込んで来たのです。

一 「親分、変なことがありますよ」 「何が変なんだ。――まだ朝飯も済まないのに、いきなり飛び込んで来て」  五月のよく晴れた朝、差当って急ぎの御用もない銭形平次は、八五郎でも誘って、どこかへ遊びに行こうかといった、太平無事なことを考えている矢先、当の八五郎は少しめかし込んだ恰好で、飛び込んで来たのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,140

一 「親分」 「何だ八、また大変の売物でもあるのかい、鼻の孔が膨らんでいるようだが」  銭形の平次はいつでもこんな調子でした。

一 「親分」 「何だ八、また大変の売物でもあるのかい、鼻の孔が膨らんでいるようだが」  銭形の平次はいつでもこんな調子でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,613

一 「親分の前だが――」  ガラッ八の八五郎は、何やらニヤニヤとしております。

一 「親分の前だが――」  ガラッ八の八五郎は、何やらニヤニヤとしております。

流行作家の死野村胡堂60分以内14,176

「勇、電話だよ」  と社会部長の千種十次郎が怒鳴ると、 「おッ、今行くぞ、どうせ市内通報員だろう」 「いや、そんなものじゃ無い、早坂勇さんとはっきりお名差しだ」 「月賦の洋服屋にしては少し時刻が遅いね」  無駄を言い乍ら、ストーブの側を離れた早坂勇、部長の廻転椅子の肘掛に腰を下すように、新聞社の編輯局にだけ許されて居る不作法な様子で、千種十次郎の手から受話器をたぐり寄せました。

「勇、電話だよ」  と社会部長の千種十次郎が怒鳴ると、 「おッ、今行くぞ、どうせ市内通報員だろう」 「いや、そんなものじゃ無い、早坂勇さんとはっきりお名差しだ」 「月賦の洋服屋にしては少し時刻が遅いね」  無駄を言い乍ら、ストーブの側を離れた早坂勇、部長の廻転椅子の肘掛に腰を下すように、新聞社の編輯局にだけ許されて居る不作法な様子で、千種十次郎の手から受話器をたぐり寄せました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内17,450

一  深川の材木問屋春木屋の主人治兵衛が、死んだ女房の追善に、檀那寺なる谷中の清養寺の本堂を修理し、その費用三千両を釣台に載せて、木場から谷中まで送ることになりました。

一  深川の材木問屋春木屋の主人治兵衛が、死んだ女房の追善に、檀那寺なる谷中の清養寺の本堂を修理し、その費用三千両を釣台に載せて、木場から谷中まで送ることになりました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,420

一 「親分の前だが、この頃のように暇じゃやりきれないね、ア、ア、ア、ア」  ガラッ八の八五郎は思わず大きな欠伸をしましたが、親分の平次が睨んでいるのを見ると、あわてて欠伸の尻尾に節をつけたものです。

一 「親分の前だが、この頃のように暇じゃやりきれないね、ア、ア、ア、ア」  ガラッ八の八五郎は思わず大きな欠伸をしましたが、親分の平次が睨んでいるのを見ると、あわてて欠伸の尻尾に節をつけたものです。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,547

一 「親分は? お静さん」  久し振りに来たお品は、挨拶が済むと、こう狭い家の中を見廻すのでした。

一 「親分は? お静さん」  久し振りに来たお品は、挨拶が済むと、こう狭い家の中を見廻すのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,089

一  三田四國町の大地主、老木屋勝藏の養父で今年六十八になる八郎兵衞は、その朝隱居所の二階で、紅に染んだ死骸になつて發見されました。

一  三田四國町の大地主、老木屋勝藏の養父で今年六十八になる八郎兵衞は、その朝隱居所の二階で、紅に染んだ死骸になつて發見されました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,157

一 「ガラッ八、俺をどこへ伴れて行くつもりなんだい」 「まア、黙って蹤いてお出でなせい。決して親分が後悔するようなものは、お目に掛けないから――」 「思し召は有難いが、お前の案内じゃ、不気味で仕様がねえ。また丹波篠山で生捕りましたる、八尺の大鼬なんかじゃあるまいネ」  捕物の名人銭形の平次と、その子分の八五郎、野暮用で亀井戸へ行った帰り、東両国の見世物小屋へ入ったのは、初夏の陽も、漸く蔭を作りか

一 「ガラッ八、俺をどこへ伴れて行くつもりなんだい」 「まア、黙って蹤いてお出でなせい。決して親分が後悔するようなものは、お目に掛けないから――」 「思し召は有難いが、お前の案内じゃ、不気味で仕様がねえ。また丹波篠山で生捕りましたる、八尺の大鼬なんかじゃあるまいネ」  捕物の名人銭形の平次と、その子分の八五郎、野暮用で亀井戸へ行った帰り、東両国の見世物小屋へ入ったのは、初夏の陽も、漸く蔭を作りか

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,993

一 「親分、変なことがあるんだが――」  ガラッ八の八五郎がキナ臭い顔を持ち込んだのは、まだ屠蘇機嫌のぬけ切らぬ、正月六日のことでした。

一 「親分、変なことがあるんだが――」  ガラッ八の八五郎がキナ臭い顔を持ち込んだのは、まだ屠蘇機嫌のぬけ切らぬ、正月六日のことでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,679

一  銭形平次が門口の雪をせっせと払っていると、犬っころのように雪を蹴上げて飛んで来たのはガラッ八の八五郎でした。

一  銭形平次が門口の雪をせっせと払っていると、犬っころのように雪を蹴上げて飛んで来たのはガラッ八の八五郎でした。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,998

一 「お早う」  ガラッ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、慎み深く入って来ると、お静のくんで出した温かい茶を、お薬湯のように押し戴いて、二た口三口啜りながら、上眼づかいに四辺を見廻すのでした。

一 「お早う」  ガラッ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、慎み深く入って来ると、お静のくんで出した温かい茶を、お薬湯のように押し戴いて、二た口三口啜りながら、上眼づかいに四辺を見廻すのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,186

一 「旦那よ――たしかに旦那よ」 「…………」  鬼になった年増芸妓のお勢は、板倉屋伴三郎の袖を掴んで、こう言うのでした。

一 「旦那よ――たしかに旦那よ」 「…………」  鬼になった年増芸妓のお勢は、板倉屋伴三郎の袖を掴んで、こう言うのでした。

判官三郎の正体野村胡堂60分以内12,929

一 「泥棒の肩を持つのは穏かではないな」  唐船男爵は、心持その上品な顔をひそめて、やや胡麻塩になりかけた髭に、葉巻の煙を這わせました。

一 「泥棒の肩を持つのは穏かではないな」  唐船男爵は、心持その上品な顔をひそめて、やや胡麻塩になりかけた髭に、葉巻の煙を這わせました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,236

一 「親分、何をしていなさるんで?」  ガラッ八の八五郎は、庭口からヌッと長い顎を出しました。

一 「親分、何をしていなさるんで?」  ガラッ八の八五郎は、庭口からヌッと長い顎を出しました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,348

一 「親分、面白くてたまらないという話を聞かせましょうか」  ガラッ八の八五郎は、膝っ小僧を気にしながら、真四角に坐りました。

一 「親分、面白くてたまらないという話を聞かせましょうか」  ガラッ八の八五郎は、膝っ小僧を気にしながら、真四角に坐りました。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜25,676

一 「親分は、戀の病ひといふのをやつたことがありますか」  ガラツ八の八五郎は、たいして極りを惡がりもせずに、人樣にこんなことを訊く人間だつたのです。

一 「親分は、戀の病ひといふのをやつたことがありますか」  ガラツ八の八五郎は、たいして極りを惡がりもせずに、人樣にこんなことを訊く人間だつたのです。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,048

一  小網町二丁目の袋物問屋丸屋六兵衛は、とうとう嫁のお絹を追い出した上、倅の染五郎を土蔵の二階に閉じ籠めてしまいました。

一  小網町二丁目の袋物問屋丸屋六兵衛は、とうとう嫁のお絹を追い出した上、倅の染五郎を土蔵の二階に閉じ籠めてしまいました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,087

一 「親分、近頃つくづく考えたんだが――」  ガラッ八の八五郎は柄にもない感慨無量な声を出すのでした。

一 「親分、近頃つくづく考えたんだが――」  ガラッ八の八五郎は柄にもない感慨無量な声を出すのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,706

一 「親分、折入つてお願ひがあるんですが」  ガラツ八の八五郎は、柄にもなく膝小僧を揃へて、斯う肩を下げ乍ら、小笠原流の貧乏搖ぎをやつて見せるのでした。

一 「親分、折入つてお願ひがあるんですが」  ガラツ八の八五郎は、柄にもなく膝小僧を揃へて、斯う肩を下げ乍ら、小笠原流の貧乏搖ぎをやつて見せるのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,819

一 「あ、八五郎親分じゃありませんか」  江の島へ行った帰り、遅くもないのに、土蔵相模で一と晩遊んだ町内の若い者が五六人、スッカラカンになって、高輪の大木戸を越すと、いきなり声を掛けたものがあります。

一 「あ、八五郎親分じゃありませんか」  江の島へ行った帰り、遅くもないのに、土蔵相模で一と晩遊んだ町内の若い者が五六人、スッカラカンになって、高輪の大木戸を越すと、いきなり声を掛けたものがあります。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,977

一 「親分、山崎屋の隠居が死んだそうですね」  ガラッ八の八五郎は、いつにない深刻な顔をして入って来ました。

一 「親分、山崎屋の隠居が死んだそうですね」  ガラッ八の八五郎は、いつにない深刻な顔をして入って来ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,571

一 「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」  銭形平次はいかにも好い心持そうでした。

一 「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」  銭形平次はいかにも好い心持そうでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,106

一  相模屋の若旦那新助は二十一、古い形容ですが、日本橋業平といわれる好い男のくせに、去年あたりからすっかり、大弓に凝ってしまって、大久保の寮に泊り込みのまま、庭の※で一日暮すことの方が多くなりました。

一  相模屋の若旦那新助は二十一、古い形容ですが、日本橋業平といわれる好い男のくせに、去年あたりからすっかり、大弓に凝ってしまって、大久保の寮に泊り込みのまま、庭の※で一日暮すことの方が多くなりました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,573

一 「親分、お願いだ。ちょいとお御輿を上げて下さい」  八五郎のガラッ八は額際に平掌を泳がせながら入って来ました。

一 「親分、お願いだ。ちょいとお御輿を上げて下さい」  八五郎のガラッ八は額際に平掌を泳がせながら入って来ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,162

一  その晩、代地のお秀の家で、月見がてら、お秀の師匠に当る、江戸小唄の名人十寸見露光の追善の催しがありました。

一  その晩、代地のお秀の家で、月見がてら、お秀の師匠に当る、江戸小唄の名人十寸見露光の追善の催しがありました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,139

一 「銭形の親分さん、お助けを願います」  柳原土手、子分の八五郎と二人、無駄を言いながら家路を急ぐ平次の袖へ、いきなり飛付いた者があります。

一 「銭形の親分さん、お助けを願います」  柳原土手、子分の八五郎と二人、無駄を言いながら家路を急ぐ平次の袖へ、いきなり飛付いた者があります。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,100

一  師走に入ると、寒くてよく晴れた天気がつづきました。

一  師走に入ると、寒くてよく晴れた天気がつづきました。