野村胡堂の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
随筆銭形平次野村胡堂30分以内4,796

「銭形平次」で世界的多作家に  江戸川乱歩 ずいぶん書いたね。

「銭形平次」で世界的多作家に  江戸川乱歩 ずいぶん書いたね。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,312

プロローグ  何年目かで開かれた、それは本当に久し振りの「奇談クラブ」でした。

プロローグ  何年目かで開かれた、それは本当に久し振りの「奇談クラブ」でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,515

一 「永い間斯んな稼業をして居るが、變死人を見るのはつく/″\厭だな」  捕物の名人錢形の平次は、口癖のやうにかう言つて居りました。

一 「永い間斯んな稼業をして居るが、變死人を見るのはつく/″\厭だな」  捕物の名人錢形の平次は、口癖のやうにかう言つて居りました。

楽聖物語野村胡堂1時間〜196,487

序  私は、私の流儀に従って、日頃尊敬する大音楽家の列伝を書いた。

序  私は、私の流儀に従って、日頃尊敬する大音楽家の列伝を書いた。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂60分以内14,014

プロローグ 「この物語の不思議さは、常人の想像を絶しますが、決して出たらめな作り話ではありません。この広い世の中には、アラビアンナイトや剪灯新話にも劣らぬ怪奇な事件があり得るということを明らかにし、その中に潜む道徳を批判して頂くために、いろいろの差し障りを忍んでこの事件の真相を発表することになったのであります」  奇談クラブの席上、真珠色の間接光線のあふれる中で、ピアニストの平賀源一郎は、こんな

プロローグ 「この物語の不思議さは、常人の想像を絶しますが、決して出たらめな作り話ではありません。この広い世の中には、アラビアンナイトや剪灯新話にも劣らぬ怪奇な事件があり得るということを明らかにし、その中に潜む道徳を批判して頂くために、いろいろの差し障りを忍んでこの事件の真相を発表することになったのであります」  奇談クラブの席上、真珠色の間接光線のあふれる中で、ピアニストの平賀源一郎は、こんな

新奇談クラブ野村胡堂60分以内12,832

巨万の懸賞付で奇談の競技 「久し振りで此の会を開きました。さぞ皆様は奇談、怪談、珍談を山の如く用意して下すったことと思います」  奇談クラブの集会室、幽幻な感じのする真珠色の微光が、承塵の裏から室全体を海の底のように照して居る中に立って、幹事の今八郎は斯う口を開きました。

巨万の懸賞付で奇談の競技 「久し振りで此の会を開きました。さぞ皆様は奇談、怪談、珍談を山の如く用意して下すったことと思います」  奇談クラブの集会室、幽幻な感じのする真珠色の微光が、承塵の裏から室全体を海の底のように照して居る中に立って、幹事の今八郎は斯う口を開きました。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,679

プロローグ 「痴人夢を説くという言葉がありますが、人生に夢が無かったら、我々の生活は何と果敢なく侘しく、荒まじきものでしょう。夢あればこそ我々はあらゆる疾苦と不平と懊悩にも堪えて、兎にも角にも何万日という――考えただけでも身顫いを感ずるような、恐ろしい生活を続けて行くのです」  それは吉井明子夫人の美しさと聡明さに吸い寄せられた、限りなき猟奇探究者達の集りなる、「奇談クラブ」の席上でした。

プロローグ 「痴人夢を説くという言葉がありますが、人生に夢が無かったら、我々の生活は何と果敢なく侘しく、荒まじきものでしょう。夢あればこそ我々はあらゆる疾苦と不平と懊悩にも堪えて、兎にも角にも何万日という――考えただけでも身顫いを感ずるような、恐ろしい生活を続けて行くのです」  それは吉井明子夫人の美しさと聡明さに吸い寄せられた、限りなき猟奇探究者達の集りなる、「奇談クラブ」の席上でした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,908

これは銭形平次の最初の手柄話で、この事件が平次を有名にしたのです。

これは銭形平次の最初の手柄話で、この事件が平次を有名にしたのです。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,136

プロローグ  奇談クラブの席上、その晩の話し手天野久左衛門は、こんな調子で始めました。

プロローグ  奇談クラブの席上、その晩の話し手天野久左衛門は、こんな調子で始めました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,744

一 「親分、あつしの身體が匂やしませんか」  ガラツ八の八五郎が、入つて來ると、いきなり妙なことを言ふのです。

一 「親分、あつしの身體が匂やしませんか」  ガラツ八の八五郎が、入つて來ると、いきなり妙なことを言ふのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,618

一 「世の中には變つた野郎があるものですね、親分」  ガラツ八の八五郎は、又何やら變つた噂を持つて來た樣子です。

一 「世の中には變つた野郎があるものですね、親分」  ガラツ八の八五郎は、又何やら變つた噂を持つて來た樣子です。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜161,846

六人斑男 第一人目磔 「親分、良い心持じゃありませんか。腹は一ぺえだし、酔い心地も申し分なし、陽気が春で、女の子が大騒ぎをすると来ちゃ――」  ガラッ八の八五郎は、長んがい顔を撫でて、舌嘗ずりしながら、銭形平次の後に追いすがるのでした。

六人斑男 第一人目磔 「親分、良い心持じゃありませんか。腹は一ぺえだし、酔い心地も申し分なし、陽気が春で、女の子が大騒ぎをすると来ちゃ――」  ガラッ八の八五郎は、長んがい顔を撫でて、舌嘗ずりしながら、銭形平次の後に追いすがるのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内20,436

一 「親分、世間はたうとう五月の節句となりましたね」  八五郎が感慨無量の聲を出すのです。

一 「親分、世間はたうとう五月の節句となりましたね」  八五郎が感慨無量の聲を出すのです。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,897

プロローグ  吉井明子夫人を会長とする奇談クラブの席上で、話の選手に指名された近江愛之助は、斯んな調子で語り始めるのでした。

プロローグ  吉井明子夫人を会長とする奇談クラブの席上で、話の選手に指名された近江愛之助は、斯んな調子で語り始めるのでした。

江戸の昔を偲ぶ野村胡堂10分以内2,671

江戸という時代は、まことに悪い時代であったに違いない。

江戸という時代は、まことに悪い時代であったに違いない。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,794

一 「平次、少し骨の折れる仕事だが、引受けてはくれまいか」  若い与力の笹野新三郎は、岡っ引風情の銭形平次に、こんな調子で話しかけました。

一 「平次、少し骨の折れる仕事だが、引受けてはくれまいか」  若い与力の笹野新三郎は、岡っ引風情の銭形平次に、こんな調子で話しかけました。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,387

プロローグ 「皆さんのお話には、譬喩と諷刺が紛々として匂う癖に、どなたも口を揃えて、――私の話には譬喩も諷刺も無いと仰しゃる――それは一応賢いお言葉のようではありますが、甚だ卑怯なように思われてなりません。そこへ行くと、私のこれから申上げようと思う話は、譬喩と諷刺と当て込みと教訓で練り固めたようなもので、まことに早や恐縮千万ですが、よく噛みしめて、言外の意を味わって頂きたいと存じます」  話し手

プロローグ 「皆さんのお話には、譬喩と諷刺が紛々として匂う癖に、どなたも口を揃えて、――私の話には譬喩も諷刺も無いと仰しゃる――それは一応賢いお言葉のようではありますが、甚だ卑怯なように思われてなりません。そこへ行くと、私のこれから申上げようと思う話は、譬喩と諷刺と当て込みと教訓で練り固めたようなもので、まことに早や恐縮千万ですが、よく噛みしめて、言外の意を味わって頂きたいと存じます」  話し手

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,510

一  江戸開府以来の捕物の名人と言われた銭形平次も、この時ほど腹を立てたことはないと言っております。

一  江戸開府以来の捕物の名人と言われた銭形平次も、この時ほど腹を立てたことはないと言っております。

裸身の女仙野村胡堂60分以内14,753

綱渡りの源吉が不思議な使い 「姐御」 「シッ、そんな乱暴な口を利いてはいけない」 「成程、今じゃ三千石取のお旗本のお部屋様だっけ、昔の積りじゃ罰が当らア」  芸人風の若い男は、ツイと庭木戸を押し開けて植込の闇の中へ中腰に潜り込みました。

綱渡りの源吉が不思議な使い 「姐御」 「シッ、そんな乱暴な口を利いてはいけない」 「成程、今じゃ三千石取のお旗本のお部屋様だっけ、昔の積りじゃ罰が当らア」  芸人風の若い男は、ツイと庭木戸を押し開けて植込の闇の中へ中腰に潜り込みました。

江戸の火術野村胡堂60分以内18,337

二人の昼鳶 「あッ、泥棒ッ」  井上半十郎正景は、押っ取刀で飛出しました。

二人の昼鳶 「あッ、泥棒ッ」  井上半十郎正景は、押っ取刀で飛出しました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,171

一  かねやす迄を江戸のうちと言つた時代、巣鴨や大塚はそれから又一里も先の田舍で、田も畑も、武藏野の儘の木立も藪もあつた頃のことです。

一  かねやす迄を江戸のうちと言つた時代、巣鴨や大塚はそれから又一里も先の田舍で、田も畑も、武藏野の儘の木立も藪もあつた頃のことです。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内11,723

プロローグ  それは四回目の奇談クラブの席上でした。

プロローグ  それは四回目の奇談クラブの席上でした。

新奇談クラブ野村胡堂60分以内12,798

蔵園宗三郎の話 「途方もない話をすると思う人があるかも知れませんが、これは総て私の経験した事実で、寸毫のおまけも無い、癪にさわるほど露骨な物語であります」  第二話を引き受けた若い富豪蔵園宗三郎は、その秀麗な面を挙げて、少し極り悪そうに斯う話し始めました。

蔵園宗三郎の話 「途方もない話をすると思う人があるかも知れませんが、これは総て私の経験した事実で、寸毫のおまけも無い、癪にさわるほど露骨な物語であります」  第二話を引き受けた若い富豪蔵園宗三郎は、その秀麗な面を挙げて、少し極り悪そうに斯う話し始めました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,374

一  増田屋金兵衞、その晩は明るい内から庭に縁臺を持出させ、九月十三夜の後の月を、たつた一人で眺めることにきめました。

一  増田屋金兵衞、その晩は明るい内から庭に縁臺を持出させ、九月十三夜の後の月を、たつた一人で眺めることにきめました。

胡堂百話野村胡堂1時間〜126,167

石川啄木  やはり、平次誕生から、はじめなければ、ならないかも知れない。

石川啄木  やはり、平次誕生から、はじめなければ、ならないかも知れない。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,619

一 「親分、聞きなすったか」 「何だ、騒々しい」  銭形平次の家へ飛込んで来た子分のガラッ八は、芥子玉絞りの手拭を鷲掴みに月代から鼻の頭へかけて滴る汗を拭いております。

一 「親分、聞きなすったか」 「何だ、騒々しい」  銭形平次の家へ飛込んで来た子分のガラッ八は、芥子玉絞りの手拭を鷲掴みに月代から鼻の頭へかけて滴る汗を拭いております。

乱歩氏と私と野村胡堂5分以内758

江戸川乱歩氏と初めて逢ったのは、今から三十年ほど前の、報知新聞社の応接間であった。

江戸川乱歩氏と初めて逢ったのは、今から三十年ほど前の、報知新聞社の応接間であった。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,646

一 「親分、幽霊を見たことがありますかい」 「そんなものに近付きはねえよ。もっとも化物なら、この節は箱根の向うとは限らねえ、その辺にも大きな鼻の孔を掘っているぜ――」 「ちぇッ、親分の前だが、これでも町内の新造は大騒ぎだ。三日でもいいから、八さんと一緒になって苦労がしてみたいってネ」 「新造じゃあるめえ。そいつは、横町に居る手前のお袋だろう。この間もそう言っていたよ――いつまでも親分のところに厄

一 「親分、幽霊を見たことがありますかい」 「そんなものに近付きはねえよ。もっとも化物なら、この節は箱根の向うとは限らねえ、その辺にも大きな鼻の孔を掘っているぜ――」 「ちぇッ、親分の前だが、これでも町内の新造は大騒ぎだ。三日でもいいから、八さんと一緒になって苦労がしてみたいってネ」 「新造じゃあるめえ。そいつは、横町に居る手前のお袋だろう。この間もそう言っていたよ――いつまでも親分のところに厄

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,528

一  昼頃から降り続いた雪が、宵には小やみになりましたが、それでも三寸あまり積って、今戸の往来もハタと絶えてしまいました。

一  昼頃から降り続いた雪が、宵には小やみになりましたが、それでも三寸あまり積って、今戸の往来もハタと絶えてしまいました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,567

一 「ところで親分はどう思ひます」 「ところで――と來たね、一體何をどう思はせようてんだ。藪から棒に、そんな事を言つたつて、わかりやしないぢやないか」  錢形平次と子分の八五郎は、秋日和の縁側に甲羅を並べて、一刻近くも無駄話を應酬して居たのです。

一 「ところで親分はどう思ひます」 「ところで――と來たね、一體何をどう思はせようてんだ。藪から棒に、そんな事を言つたつて、わかりやしないぢやないか」  錢形平次と子分の八五郎は、秋日和の縁側に甲羅を並べて、一刻近くも無駄話を應酬して居たのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,101

一  八五郎は斯う言つた具合に、江戸の町々から、あらゆる噂話を掻き集めるのでした。

一  八五郎は斯う言つた具合に、江戸の町々から、あらゆる噂話を掻き集めるのでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,299

一  芝三島町の學寮の角で、土地の遊び人疾風の綱吉といふのが殺されました。

一  芝三島町の學寮の角で、土地の遊び人疾風の綱吉といふのが殺されました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,961

一 「親分、ちよいと江戸をあけますがね」  八五郎はいきなりこんなことを言つて來たのです。

一 「親分、ちよいと江戸をあけますがね」  八五郎はいきなりこんなことを言つて來たのです。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,970

一 「八、お前近頃惡い料簡を起しやしないか。三輪の萬七親分が變なことを言つて居たやうだが――」  八五郎の顏を見ると、錢形平次はニヤリニヤリと笑ひ乍ら、こんな人の惡いことを言ふのです。

一 「八、お前近頃惡い料簡を起しやしないか。三輪の萬七親分が變なことを言つて居たやうだが――」  八五郎の顏を見ると、錢形平次はニヤリニヤリと笑ひ乍ら、こんな人の惡いことを言ふのです。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内11,872

一 「親分、たまらねえ事があるんで、これから日本橋まで出かけますよ、いっしょに行って見ちゃ何うです」  巳の刻近い、真昼の日を浴びて、八五郎はお座敷を覗いて顎を撫でるのです。

一 「親分、たまらねえ事があるんで、これから日本橋まで出かけますよ、いっしょに行って見ちゃ何うです」  巳の刻近い、真昼の日を浴びて、八五郎はお座敷を覗いて顎を撫でるのです。

名曲決定盤野村胡堂1時間〜350,820

巻頭言  この書の成るまで  音楽を愛するが故に、私はレコードを集めた。

巻頭言  この書の成るまで  音楽を愛するが故に、私はレコードを集めた。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内10,595

クラブ復活 「皆様、丁度十五年目でこの奇談クラブの会合を開きました。世の中も変りましたが御同様私共もすっかり年を取ってしまいました」  幹事の今八郎はそう言って見事に禿げた頭をツルリと撫で乍ら続けました。

クラブ復活 「皆様、丁度十五年目でこの奇談クラブの会合を開きました。世の中も変りましたが御同様私共もすっかり年を取ってしまいました」  幹事の今八郎はそう言って見事に禿げた頭をツルリと撫で乍ら続けました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,392

一 「人の心といふものは恐ろしいものですね、親分」  八五郎が顎を撫で乍ら、いきなりそんな事を言ふのです。

一 「人の心といふものは恐ろしいものですね、親分」  八五郎が顎を撫で乍ら、いきなりそんな事を言ふのです。

悪人の娘野村胡堂60分以内13,646

一 「お願いで御座いますが…………」  振り返って見ると、同じ欄干にもたれた、乞食体の中年の男、鳴海司郎の顔を下から見上げて、こう丁寧に申します。

一 「お願いで御座いますが…………」  振り返って見ると、同じ欄干にもたれた、乞食体の中年の男、鳴海司郎の顔を下から見上げて、こう丁寧に申します。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内15,273

一  ガラッ八の八五郎は、こんないい心持になったことはありません。

一  ガラッ八の八五郎は、こんないい心持になったことはありません。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内20,613

一 「親分、聽いたでせう?」  ガラツ八の八五郎は、鐵砲玉のやうに飛び込んで來ると、格子戸と鉢合せをして、二つ三つキリキリ舞ひをして、バアと狹い土間へ長んがい顎を突き出すのです。

一 「親分、聽いたでせう?」  ガラツ八の八五郎は、鐵砲玉のやうに飛び込んで來ると、格子戸と鉢合せをして、二つ三つキリキリ舞ひをして、バアと狹い土間へ長んがい顎を突き出すのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,418

一 「親分、良い天氣ですぜ。チラホラ梅は咲いてゐるし、お小遣はフンダンにあるし――」 「嘘をつきやがれ。梅の咲いたのは俺だつて知つてゐるが、八五郎の財布にお小遣がフンダンにあるわけはないぢやないか」  錢形平次と子分の八五郎は相變らずの調子で始めました。

一 「親分、良い天氣ですぜ。チラホラ梅は咲いてゐるし、お小遣はフンダンにあるし――」 「嘘をつきやがれ。梅の咲いたのは俺だつて知つてゐるが、八五郎の財布にお小遣がフンダンにあるわけはないぢやないか」  錢形平次と子分の八五郎は相變らずの調子で始めました。

銭形平次捕物控野村胡堂1時間〜32,303

發端篇 一 「お早う、親分」 「何んだ八か、今日あたりはお前の大變が舞ひ込みさうな陽氣だと思つたよ。斯う妙に生暖けえのは唯事ぢやねえ」  庭木戸の上から覗く八五郎の長い顎を見付けて、平次は坐つたまゝ聲を掛けました。

發端篇 一 「お早う、親分」 「何んだ八か、今日あたりはお前の大變が舞ひ込みさうな陽氣だと思つたよ。斯う妙に生暖けえのは唯事ぢやねえ」  庭木戸の上から覗く八五郎の長い顎を見付けて、平次は坐つたまゝ聲を掛けました。

銭形平次捕物控野村胡堂30分以内10,881

一 「親分」  ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗らかな或日の朝のことでした。

一 「親分」  ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗らかな或日の朝のことでした。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,002

一 「八、丁度宜いところだ。今お前を呼びにやらうと思つて居たが――」  平次はお勝手口から八五郎の迎へに飛び出さうとして居る女房のお靜を呼び留めて、改めてドブ板を高々と踏み鳴らして來る、八五郎の長い影法師を迎へ入れたのでした。

一 「八、丁度宜いところだ。今お前を呼びにやらうと思つて居たが――」  平次はお勝手口から八五郎の迎へに飛び出さうとして居る女房のお靜を呼び留めて、改めてドブ板を高々と踏み鳴らして來る、八五郎の長い影法師を迎へ入れたのでした。

奇談クラブ〔戦後版〕野村胡堂30分以内10,871

プロローグ 「徳川時代の大名生活のただれ切った馬鹿馬鹿しさは話しても話しても話し切れませんが、私にもその一つ、取って置きの面白い話があるのです」  話し手の宇佐美金太郎は、こんな調子で始めました。

プロローグ 「徳川時代の大名生活のただれ切った馬鹿馬鹿しさは話しても話しても話し切れませんが、私にもその一つ、取って置きの面白い話があるのです」  話し手の宇佐美金太郎は、こんな調子で始めました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内12,187

一 「親分、あつしはよく/\運が惡いんだね」  ガラツ八の八五郎は、なんがい顎を撫でながら、つく/″\斯んな事をいふのです。

一 「親分、あつしはよく/\運が惡いんだね」  ガラツ八の八五郎は、なんがい顎を撫でながら、つく/″\斯んな事をいふのです。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,112

一 「さあ大變だ、親分」  ガラツ八の八五郎は、髷先で春風を掻きわけるやうにすつ飛んで來ました。

一 「さあ大變だ、親分」  ガラツ八の八五郎は、髷先で春風を掻きわけるやうにすつ飛んで來ました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内14,754

一  二月のある日、歩いてゐると斯う、額口の汗ばむやうな晝下がり、巣鴨からの野暮用の歸り、白山あたりへ辿りついた頃は、連の八五郎はもう、何んとなく御機嫌が斜めになつて居りました。

一  二月のある日、歩いてゐると斯う、額口の汗ばむやうな晝下がり、巣鴨からの野暮用の歸り、白山あたりへ辿りついた頃は、連の八五郎はもう、何んとなく御機嫌が斜めになつて居りました。

銭形平次捕物控野村胡堂60分以内13,444

一  石原の利助が大怪我をしたという噂を聞いた銭形の平次、何を差措いても、その日のうちに見舞に行きました。

一  石原の利助が大怪我をしたという噂を聞いた銭形の平次、何を差措いても、その日のうちに見舞に行きました。