仲村渠の全作品
青空文庫で公開されている仲村渠の全作品を、おすすめ人気順で表示しています。
1-35件 / 全35件
| 作品名 | 著者 | 読了時間 | 人気 |
|---|---|---|---|
| 気象台風景 | 仲村渠 | 5分以内 | |
科学の蜘蝶が張つた整然たるアンテナの巣よ 蝟集する空中消息は豊麗な蝶々だ 見上げる額に 気象台の鋭角は颯爽たる意欲よ ああ 空に向つて垂れる氷柱の先端 つき刺された空は円形の青地図をひろげ 見よ 殺到する電波は世界の沿線を描いてゐる | |||
| 明るすぎる月 | 仲村渠 | 5分以内 | |
――悪いことがなければよいが 電柱のとつさき、工夫が云ふ ふん 今夜は誰も苦情は云ふまいて。 | |||
| 果物屋の広告文 | 仲村渠 | 5分以内 | |
今晩は、みなさん。 | |||
| 月あかり | 仲村渠 | 5分以内 | |
青い おほきい船にのつてゆかう。 | |||
| 最後の手紙 | 仲村渠 | 5分以内 | |
氷になつて 午后一時 A広場のまんなかで消えてしまう。 | |||
| 睡眠 | 仲村渠 | 5分以内 | |
絵具は雄弁にねむつてゐる 一水夫は港を想ふ夜! 珊瑚は沈んでゐる 夜。 | |||
| 白い独楽 | 仲村渠 | 5分以内 | |
白昼だから 秋だから 原つぱは白かつた 白昼だから 秋だから 空も白かつた 原つぱのまんなかでひとり 戸山学校の生徒が喇叭を吹いてゐた 赤いズボンはいて喇叭を吹いてゐた 白昼だから 秋だから 原つぱは廻つてゐた 白昼だから 秋だから 空も廻つてゐた 赤い心が澄んで廻つてゐた 喇叭を吹いて廻つてゐた | |||
| 詩と詩集 | 仲村渠 | 5分以内 | |
何よりも僕はその表題が好きだ。 | |||
| 銭湯より帰る | 仲村渠 | 5分以内 | |
仔どもや金貸しや先生や役人や痩せたのも太いのもいつしよくたに 汗や膏や表皮を流す裸のとき 裸の楽しいときをへて さて ふたゝび湯水のなかを産れるとき 豹 縞馬の身のやうな美しい毛皮なし また候 おれの襯衣 衣裳のなか おれの型に頭髪をとゝのへ 髯 眼鏡を貼附なし 「光」などくちに銜へ 立派やかひとりまへに成りすました ゆくさきは苗字ところ番地のしるされた 祖先が穴居時代なしたやうに おれの住む家に | |||
| 伏兵 | 仲村渠 | 5分以内 | |
雨のなかに伏せつてゐた兵士らの群よ 青空へ五月へ 今 走りゆく兵士らの背に野は萌える | |||
| 沈め | 仲村渠 | 5分以内 | |
那覇港よ その海民よ 剽悍な気魄いまやなし ああ美しい贈りものを! 尾類が紅いどくを文身こむだらうよ 人魚の肌へ 鮫を、比目魚を、いらぶう、海豚を 市をめぐつて海の族が酔うて痴れて酔ひ痴れて おまへを誘ひにくるだらう 泡盛の匂ひを古酒を撒いて! 沈め沈め沈め海へ底へ おまへの市の石垣が魚城の砦に役立つ日が来た そこで午睡をするがよい! おまへの午睡に役立つ日が来た 海の中で黄いろ? 赤いろ? | |||
| 港に沈んだ鉄片の希望 | 仲村渠 | 5分以内 | |
浚渫船はいづこの海を浚つてゐるのだらう 鉄片は沈んで沈んで港の底 眇の眸を覗かせるよ ああ気なげな空想を抱いてゐるぞ ねそべつた比目魚が吐きだす泡にぶらさがり ゆらゆら海面に昇つてゆく鉄片の願望よ おをい! 海上遠く、青空映す友だちよ 針魚よりも鋭い腰の短剣め! あいつの主人はランチを飛ばして海軍大尉の美男子だ 浮標めの自由な展望よ あいつは海と空の骰子だ あいつは燈台の横腹にさしこむ朝日の第一線 | |||
| ねがひ | 仲村渠 | 5分以内 | |
あなたの白い手 冷くならんだ五指の甲でこの頬が打たれたい 落葉に敲かれるシルクハツトは悲しげである 凛乎と美しい反りで悲しげである 一座の花形 美少女の平手に敲かれる道化役の頬より悲しげである キヤフエの紳士 白皮の手套に敲かれる酔漢の頬より悲しげである ねがひは降りしきる落葉 素裸に立つ僕のからだは悲しげである | |||
| 月下市街図 | 仲村渠 | 5分以内 | |
月はひろげた市街地図をうすく青塗りにする 僕は白チオクのちいさい残粒 コロコロ市街双六の上を転つてゆく白い骰子 転し手もない上りもない悲しい骰子 月に 内臓の赤い花花をみんな食べられてしまうた 蜉蝣の悲しいからだに落魄れてしまうた 帽子かむつて 僕はころがつてゆく軽石の骰子 | |||
| 夜 | 仲村渠 | 5分以内 | |
いつたいどんな営みが始まつたのであらう 街 街は灯の暗号を残してかくれてしまふ いつたいどんな呼吸が始まつたのであらう 欅 欅は梢を伸ばして天空に身を捧げる | |||
| 贈物 | 仲村渠 | 5分以内 | |
幸ひに髪がふさふさと綺麗だから この頭蓋骨のなかに菫色の豆ランプをともし つれない恋人よ この美しい角燈を貴女の寝室へ贈らうと思ひます | |||
| 五月よ | 仲村渠 | 5分以内 | |
空の遠くに五月が真つ青く咲いて 指をさして 僕はその爪先に希望をともして 身は街裏に五月を待つ | |||
| 無機物地帯 | 仲村渠 | 5分以内 | |
鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。 | |||
| あなたの顔 | 仲村渠 | 5分以内 | |
――琉球の墓を見たことがあるか。 | |||
| 頂上 | 仲村渠 | 5分以内 | |
植物はとほくけぶる外輪山の緑のいろ。 | |||
| 明るい顔 | 仲村渠 | 5分以内 | |
なぜあんなに明るい顔をしてるんだらう。 | |||
| 郷愁 | 仲村渠 | 5分以内 | |
友よ 肩をならべて街へゆかう 質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ 友よ 腕をくめ 街は霧だ 燈火の美しくなる十二月 何だらう 僕らを呼んでゐるものは? 友よ 新しい気流が渡つてるにすぎぬのだよ 街のうへを 何だらう 僕らの顔に匂つてくるものは? 気弱い友よ ナフタリンの玉がころがつてるにすぎぬのだよ かくしの底に 霧は僕らの肩におりるやうす 友よ 友よ 話してゆかう 声だかに燈火のあひだ霧のし | |||
| 氏 | 仲村渠 | 5分以内 | |
氏は書を能くし 発句や謡をたしなみ 就中 たいてい柔道二段ぐらゐの腕まへあり 氏は毎朝 東天遙拝 のちラヂオ体操 たのまれて話の屑籠なども執筆なさるのだ 氏は 氏の一挙手一投足は逸話となつて細大洩らさず新聞などに珍重され 氏の巾広い声量は氏の身代のやうに潤沢 たとへば除幕式などに周知の風采をあらはして一言もつて祝辞などを述べ 給ふ | |||
| 濡れる展望 | 仲村渠 | 5分以内 | |
北方に何ごとぞ 雲 雲を引具して空を急いだ 街 街は雨の喪服 街はとほい 街は沈む アンテナは潜望鏡をまねて雲を観た 北方に何ごとぞや? 欅は丘で街を観た 欅は終日 雲を迎へて雲を送つた 欅は終日 濡れる街を眺めてゐた | |||
| 日曜演奏後 | 仲村渠 | 5分以内 | |
音楽堂を繞つて 空椅子の環状配列がいつしんに聴いてゐる 落葉をはく園丁の箒の音を ああよりそふ僕らの囁きを | |||
| すらんらん集 | 仲村渠 | 10分以内 | |
晴天 煙突を眺めるのが好きなひとがゐた。 | |||
| 母はとほい | 仲村渠 | 5分以内 | |
障子はあけなくとも アンテナは光つてゐようぞ 母よ 三郎はおめざが欲しい 二十三にもなつたので自転車ものりたくない 朝は街のすみにも光つてゐますが 母よ 三郎はおめざが欲しい | |||
| 体操 | 仲村渠 | 5分以内 | |
煉瓦塀をおし破つて転びにゆく青い草地 肩にのぼる花やかな雲 雲をよんで刺しとめる新しい剣 口にとびこんでくる微細な飛行機 飛行機が逃げぐちを求める一枚の空 | |||
| 水浴び | 仲村渠 | 5分以内 | |
海水から金が採れるといふが地球全表面その三分の二の海から幾噸の金がにぎれるか 濡れ手に千金 それを湯水のやうに浪費せばたのしからん 水のやうに金をつかふ いや 躯いつぱい水を流せば水はぜいたくな幻想となりおれのてつぺんにぜにの音がはじけ散るよ ありあまり溢れる量のやはらかく 水道の口金はじけ怒るごとく水の放出になにか溜飲のさがるやうす 水の鋼鉄にうなじを敲かし恣なるしばしのとき…… | |||
| 冒険 | 仲村渠 | 5分以内 | |
騒しい仔猿たちいね こちらをむいて雌はしばしの憩ひ おれは些少の空地に椅子をだしておれのうへに満天の星座 おれが空気を呼吸すればかれらも天の青い層をとほして賑やかに息づくかに見えるのだが さて 雨ありてたちまちこの界隈 この露路の奥 雨はしづかに市にふる 雨の車軸よ おれを恣にこの界隈を敲くがよい おれは椅子に動かない おれにはできる濡れること! 滑稽ながらこれが首題の冒険だ めすよ 糊のきいたゆ | |||
| 服装 | 仲村渠 | 5分以内 | |
児どもは砂遊びや水遊びをするためにいたづら着をつけてべんりである 紳士は善いことを成就すべく勲章や羽織をまとふて立派である | |||
| 舳 | 仲村渠 | 5分以内 | |
帆柱は美しい雲をあげてゐた 帆は裂かれて。 | |||
| 晴天 | 仲村渠 | 5分以内 | |
僕はまどに凭つてひとを待つ 空は 青い空は晴れるばかり どこか 格納庫のよこで一等飛行士は眺めてゐる 空を空を 彼のうへに晴れる空を | |||
| 蹠 | 仲村渠 | 5分以内 | |
円錐形のさきで僕ひとり。 | |||
| 某 | 仲村渠 | 5分以内 | |
初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよ ちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ 名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く 八方に疎通してあますところは無いのである さつそく鄭重な御供物をおくり盛大な葬儀に列してゐるを見る 門札をうつて居を構へてゐる その収入の道その収入のほどは 否 税務署の吏員氏さへ難渋するのだから 今 これを窺ふべくもないのである 午後かれを訪問す | |||
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