坂口安吾の全作品

先月某新聞に競輪のことを書いたが、そのときはまだ競輪を見たことがなかった。

新聞の静岡版というところを見ると、熱海を中心にした伊豆一帯に、心中や厭世自殺が目立って多くなったようである。

わが経来りし人生を回想するという年でもないが、子供のころは類例稀れな暴れん坊で、親を泣かせ、先生を泣かせ、郷里の中学を追いだされて上京しても、入れてくれる学校を探すのに苦労した。

私が熱海の火事を知ったのが、午後六時。

大戦争のあとというものは何がとびだすか見当がつかない。

スポーツというものは自らたのしむ境地で、それ自体に好戦的な要素はないものだ。

私は先般イサム・ノグチ展というものに誘われたが、熱心に辞退して、難をのがれた。

巷談の十二は「京の夢、大阪の夢」京都大阪をひやかしてスゴロクの上りにしようという予定であった。

競輪というと八百長騒ぎが景物のようだが、終戦後急速に流行して、組織が完備していないからいろいろのトラブルが起るのは仕方のないことで現にそうだからといって、競輪の性格がそういうものだときまってるワケでもなかろう。

二十年ほど昔「アドルフ」を買ったら百六十何版とあったのを記憶する。

誰かの批評に、女房として不適格、とあったが、これはアベコベだ。

一匹のイワシ日曜の夜になると、梅村亮作の女房信子はさッさとフトンをかぶって、ねてしもう。

今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。

さわやかで、明るい、静かな物語をかこう。

深夜の宴「ア。

歌笑のような男、落語の伝統の型を破った人物は、私の短い半生でも、さきに金語楼、また同じころ、小三治（今、別の名であるが忘れた）などというのがいた。

「ヘタな小説が売れなくなって巷談師になったのか。

女房がニンシンしたが、子宮後屈ということで、生むことができなかった。

新聞小説は新聞以外では私の小説を読むはずのない人が読者の大部分であるから、神経がつかれて書きたくない。

人間ぎらい、という人は、いないとみた方が本当だろう。

下山事件が他殺か自殺か我々には分らない。

小生もついに別荘の七ツ八ツ風光明媚なるところにブッたてようという遠大千万なコンタンによって「捕物帳」をかくことゝなり、小説新潮の案内で、箱根の谷のドン底の温泉旅館へ行った。

この原稿を書こうという予定の日になって、久しく忘れていた胃ケイレンを起した。

私は「警視総監の笑ひ」も「芥川賞の殺人」も面白く読めなかった。

谷川岳で、又、人が死んだ。

この捕物帖はたいがい五段からできています。

氷川の海舟屋敷の黒板塀をくぐったのは神楽坂の剣術使い泉山虎之介。

秋ばれの好天気。

秋雨の降りしきる朝。

今日一日で月が変ると、明日からは十二月。

スギ子未亡人はシンは心のあたたかい人のようでもある。

明治十六年一月のことである。

「私は六段格で。

生れつき大そう間のわるい人間というものがいるものだ。

光子は一枝の言葉が頭にからみついて放れなかった。

「隣家に奉公中は御親切にしていただきましたが、本日限りヒマをいただいて明朝帰国いたしますので……」と、隣家の馬丁の倉三が大原草雪のところへ挨拶に上ると、物好きでヒマ人の草雪はかねてそれを待ちかねていたことだから、「この淋しい土地に住んでお前のような話相手に去られては先の退屈が思いやられるな。

雷ギライという人種がある。

近ごろは誰かが鉄道自殺をしたときくと、エ？生活反応はあったか？デンスケ君でも忽ちこう疑いを起すから、ウカツに鉄道自殺と見せかけても見破られる危険が多い。

「なア、ベク助。

一助はお加久に叩き起されてシブシブ目をさました。

年が改って一月の十三日。

「ねえ、旦那。

庭の片隅にオイナリ様があった。

妙子は自分の生れた時信家を軽蔑していた。

この事件をお話しするには、大きな石がなぜ動いたか、ということから語らなければなりません。

楠巡査はその日非番であった。

群馬県の上越国境にちかい山間地帯を利根郡という。

ぼくが阿久津に働いていたので、日野が出入りするようになりました。

新聞で読者の最も多いのは「人生案内」とか「身上相談」という欄だそうだ。

伊勢崎九太夫はある日二人の麗人から奇妙な依頼をうけた。