1時間〜で読める坂口安吾の長編作品

その家には人間と豚と犬と鶏と家鴨が住んでいたが、まったく、住む建物も各々の食物も殆（ほとん）ど変っていやしない。

匂いって何だろう？私は近頃人の話をきいていても、言葉を鼻で嗅ぐようになった。

オレの親方はヒダ随一の名人とうたわれたタクミであったが、夜長の長者に招かれたのは、老病で死期の近づいた時だった。

第一話小田原にて天正十八年、真夏のひざかりであつた。

終戦後二年目の八月十五日のことであるが、伊豆の伊東温泉に三浦按針祭というものが行われて、当日に限って伊東市は一切の禁令を解除し、旅館や飲食店はお酒をジャン／＼のませてもよいし、スシでもドンブリでも何を売ってもよろしい、という地区司令官の布告がでたという。

その正宗菊松先生就職発奮のこと戦乱破壊のあとゝいうものは、若い者の天下なのである。

金銭無情最上清人は哲学者だ。

その速球投手と女優の身売り新しい年も九日になるのに、うちつづく正月酒で頭が痛い。

わが青春今が自分の青春だというようなことを僕はまったく自覚した覚えがなくて過してしまった。

俗悪千万な人間関係昭和二十二年六月の終りであった。

私は人の顔をジロリと見る悪い癖があるのだそうだ。

石毛存八は刑務所をでると、鍋釜バケツからタオル歯ブラシに至るまで世帯道具一式を買ってナンキン袋につめこんだ。

左近の上京夏川左近は久方ぶりで上京のついで古本あさりに神田へでた。

その冷血漢温い心とは何物だらう？それからまごころといふことは？愛といふことは？私の父は悪者ではない。

一九三×年のことである。

登場人物倉田由之倉田家の当主。

五月九日のことだ。

わが経来りし人生を回想するという年でもないが、子供のころは類例稀れな暴れん坊で、親を泣かせ、先生を泣かせ、郷里の中学を追いだされて上京しても、入れてくれる学校を探すのに苦労した。

一匹のイワシ日曜の夜になると、梅村亮作の女房信子はさッさとフトンをかぶって、ねてしもう。

深夜の宴「ア。

氷川の海舟屋敷の黒板塀をくぐったのは神楽坂の剣術使い泉山虎之介。

秋ばれの好天気。

秋雨の降りしきる朝。

今日一日で月が変ると、明日からは十二月。

スギ子未亡人はシンは心のあたたかい人のようでもある。

明治十六年一月のことである。

「私は六段格で。

光子は一枝の言葉が頭にからみついて放れなかった。

「隣家に奉公中は御親切にしていただきましたが、本日限りヒマをいただいて明朝帰国いたしますので……」と、隣家の馬丁の倉三が大原草雪のところへ挨拶に上ると、物好きでヒマ人の草雪はかねてそれを待ちかねていたことだから、「この淋しい土地に住んでお前のような話相手に去られては先の退屈が思いやられるな。

雷ギライという人種がある。

近ごろは誰かが鉄道自殺をしたときくと、エ？生活反応はあったか？デンスケ君でも忽ちこう疑いを起すから、ウカツに鉄道自殺と見せかけても見破られる危険が多い。

一助はお加久に叩き起されてシブシブ目をさました。

年が改って一月の十三日。

庭の片隅にオイナリ様があった。

妙子は自分の生れた時信家を軽蔑していた。

この事件をお話しするには、大きな石がなぜ動いたか、ということから語らなければなりません。

楠巡査はその日非番であった。

ぼくが阿久津に働いていたので、日野が出入りするようになりました。

伊勢崎九太夫はある日二人の麗人から奇妙な依頼をうけた。

矢車凡太が黒谷村を訪れたのは、蜂谷龍然に特殊な友情や、また特別な興味を懐いてゐたためでは無論ない。

――首縊つて死んぢまへ！お前が、さう言つたんぢやないか。

「ごらんなさい。

修吉が北越山中の秋山家を訪ねたとき、恰（あたか）もそれを見るために遥々（はるばる）やつてきたやうに、まづ仏像のことを尋ねた。

あの人間は気違だから精神病院へぶちこめなんて、とんでもない。

前篇マルチル・マルチレスの数々一五四七年一月、一艘のポルトガル商船が九州の一角に坐礁して引卸しにかゝつてゐると、丘の上から騎馬で駈け降りてきた二人の日本人があつて、手拭を打ちふり、その船に乗せてくれないかと叫びたてゝゐる。

檀一雄君の直木賞「石川五右衛門」が連載されてから、「新大阪」という新聞が送られてくるが、本社から直接来るのじゃなくて、東京支社から送られてくる。

仙台は伊達政宗のひらいた城下町。

飛騨（実にメンドウな字だから以後カナで書かせてもらいますよ）は日本の古代史では重大きわまる土地であります。

今日では埼玉県入間郡高麗村ですが、昔は武蔵の国の高麗郡であり、高麗村でありました。

ゴルフをしなかった話私は二ヶ月前からゴルフをはじめた。