5分以内で読める宮本百合子の短編作品

月そそぐいずの夜揺れ揺れて流れ行く光りの中に音もなく一人もだし立てば萌え出でし思いのかいわれ葉瑞木となりて空に冲る。

細い雨足で雨が降って居る。

私は絶えず本を読まなければならないと云う心持がして居る。

古代芸術の香高い所、そして美しい山水にかこまれた「奈良」という土地に対して、私はまあ、どれ位い憧憬の心を持っていた事でしょう。

現在の、特に日本の、不調和な社会状態のうちに生活しているわれわれ、殊に、外部的交渉をおおく持つ男性が、心的、物質的に疲労しているということは、否めない一つの事実でしょう。

具体的のことは実際出来て見なければわかりませんが、今年は少し仕事が出来そうなので悦んで居ります。

特に夏期の書斎としての注文も思い当りません。

空想のうちに描いている斯様ありたいと思う書斎の条件を並べます。

八月の十五日は、晴れた夜が多いのに、九月の十五夜は、いつも曇り勝だ。

作家の生活費は収入で決まるソヴェト露西亜の実生活については種々反動的なデマゴーグが拡まっているが、実際内部へ入って見れば、年々状態は好くなって来るし、一九二八年――まして一九三三年の生産拡張五ヵ年計画が着手されてから、個人商人の激減と工場及び凡ての官公署内の組織が社会主義的ラインに依って非常に多くのものを清算し改造したために、各個人の実際生活が一方から見れば窮屈みたいだけれど、一方から見れば非常に合理的に営まれている。

「女人芸術」という名をかえることには大いに賛成です。

ソヴェト・ロシアには、「労働者クラブ」と云うものがある。

上海事変も満洲事変も戦争という点で少しも違いがありません。

文章というものも生きているものだから、時代の空気といつも微妙なつながりをもって動いていると思う。

明治三十二年二月十三日東京市２東京市豊島区目白三ノ三五七〇３お茶の水４文学の仕事は好きではじめました。

かなしい昔の母たちが最愛の娘のためにととのえてやる生涯の仕度は、幾重ねかの嫁入衣装と一ふりの懐剣とであった。

┌細君、小枝│七歳の伸┌富井行雄┤四つの健吉││百姓与田初五郎│└酒井「五兵衛さん」│石田重吉┐直次つや子└ひろ子└進三〔欄外に〕坂上夫妻友人の家┌──┐九月│五日│八日└──┘PolicemanMilitary Police下駄の音電燈カバーの細工汽車の中┌母登代...

重吉ひろ子富井行雄伸健吉小枝永田弁護士村上さん（鈴）清瀬さん（近）┌───────┐│山代弁護士││上野駅│吉岡（佐）│事務所│└───────┘十三日十四日電報海よ早くしずまれ。

こういう質問が出ることはわたしたちに深く考えさせるものがあります。

予選をとおった十八篇の原稿が回されてきた。

今日の一般の人を心から考えさせた事件だと思います。

「デカブリストの妻」ネクラーソフ作谷耕平訳新星社最近深い感銘をもってよみました。

逃げて行く子供達と、そしてそれをとりまく環境と両方に問題があると思います。

日本女性の参政二年を記念して、去る十日にマッカーサー元帥が発したステートメントの言葉は大変に美しく、日本婦人の理想の姿を描き出していたと思います。

一般文化の問題として多くの人が注目している。

六十八歳になられた作家森田草平氏が入党されたということは、多くの人にいろいろと語りかけるいみを持っています。

芥川龍之介が自分の才能とか学識を越えて社会と文学そのものの大きい変化と発展を見通して、そこから来る漠然とした不安を感じて死んだのと、太宰氏の生涯の終り方とは、まったく別種のものです。

多喜二的みがまえということがいわれるとき、あの激しい弾圧の中で多喜二がひどくいびられ最後には殺されてしまったあのいさましい犠牲的な身がまえを要求されるように感じて、それを拒否しようとする動きがあるけれども、それには治安維持法という大きな恐しい影がつきまとっていて、その治安維持法への拒否が自分のあり方を歴史の上で生かそうとした多喜二的身がまえになっているので、この治安維持法へのびりびりした恐怖の根性を引出して日に干してよく殺菌しなければなにかおじおじしたものになってしまう。

第一私どもの目からみると議会内の大蔵委員会という重要な新給与予算の委員会席上で、あんなに酔うほど酒がでるということがそもそもひどいことだと思います。

再びパリへ九月十八日午后六年パリ十月二十四日パリを親たち去る〔欄外に〕青い手帖「フランス」九月二十九日夜三人モンマルトルの赤馬で食事してかえったら下に速達板倉鼎朝六時死板倉さんに泊る三十日夜ペル（ママ）ールにかえり入浴泊る十月一日葬式雨十月二日ひどい風十二時まで眠る夜八時すぎ板倉見まいモンパルナスの角でコーヒ...

「広場」は、一九三九年十二月にかかれた。

この往復書簡集三巻におさめられている宮本顕治・宮本百合子の手紙は、一九三四年十二月から一九四五年八月十五日、日本の無条件降伏後、治安維持法が撤廃されて、十月十日網走刑務所から顕治が解放されるまでにとりかわされた書簡、百合子凡そ千余通、顕治四百通ほどの手紙の中からえらび出されたものである。

二月号をひっくりかえして見ていて気になったことお耳にいれます。

１、文筆の仕事の上で、可能なかぎり、戦争反対と平和の確保、原子兵器禁止の態度を明かにして居ります。

「御隠居様よ、又お清が来ましたぞえ何なりと買ってやりなんしょ」と頬を赤くして火を吹いて居下女の正は台所から声をかけた。

静な町から来た私には駿河台と小川町の通はあんまりにぎやかすぎた。

私とじいやとは買物に家を出た。

「めんどくさい、死ぬんだ」胸をしっかりおさえて居た手を椅子のひじかけの上になげ出して男は叫んだ。

「どうもめっきりよわったもんだ」男は枯木の様に血の色もなく、力もなく、只かすかに、自分の足と云うだけの感じは有る二本の足をつめながら一人ごとを云う。

「お前は好い子だネエ」とあたまをなでられたあとでポカリとげんこつをもらう。

涙ぐみてうるむ瞳を足元になぐれば小石うち笑みてありかんしやくを起しゝあとの淋しさに澄む大空をツク／″＼と見るものたらぬ頬を舌にてふくらませ瓦ころがる抜け歯の音きくうすらさむき秋の暮方なげやりに氷をかめば悲の湧く角砂糖のくずるゝ音をそときけば若き心はうす笑する首人形遠き京なるおもちや屋の店より我にとつぎ出しかなはにかみてうす笑する我よめは孔雀の羽かげ髷のみを出す...

一面、かなり深い秋霧が降りて水を流した様なゆるい傾斜のトタン屋根に星がまたたく。

めっきり夜寒になった。

昨夜おそく帰ったので私は昼近くなるまで、何もしらずに赤坊の様によく寝込んで仕舞った。

冬の日の静けさは何となく一種異った感じを人に与える。

五時に近い日差しが、ガラス窓にうす黄色くまどろんで居る。

昨夜、ドッドと降って居た雨が朝になってすっかり上った。

非常に愛らしい妹を得ると同時に、危ぶんで居た母の健康も廻復期に向って来たので、私は今又とない歓びに身を横えて居る。

ねばねばした水気の多い風と、横ざまに降る居ぎたない雨がちゃんぽんに、荒れ廻って居る。

此頃、癖になって仕舞ったと見えて、どうしても私は九時前には起きられない。