10分以内で読める中井正一の短編作品

立ちあがりのときは、どうなることかと思っていたが、二年半もたってみれば、どうやら一つのコースに乗ってきたようである。

歴史変革の任務今年の冬の夜のことであった。

あの戦争のさ中、或る兵器を造っている人が次のような面白いことをいった。

ヘーゲルの弁証法が生れる周囲には、その頃の青年ドイツ派ロマン的皮肉があると考える人々がある。

私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。

これまで映画は、夏興行のものを、冬撮ることになり、ブルブル慄えながら裸かものを撮り、夏の真中に着物をいっぱい着込んで、塩をいっぱいまいて雪のつもりにしたものであった。

何年前であったか、親不知子不知のトンネルをでたころであった。

『詩経』は中国での万葉集ともいうべき、まことに可憐な詩句と自由な愛がうたわれている。

私はフィルムが色彩を駆使するにあたって、それを「天然色映画」と名づけているのに、反対である。

見るということは、光の物理作用と、眼の知覚作用の総合作用だと誰でも考えているし、またそれにちがいはない。

インドの王様が――たいていの物語はこれで始まる――二人の画家に壁画を描かしめた。

すべての民族の言語が、文法をそれぞれもっているのをみて、私はいつも考えさせられるのである。

群青のところどころ剥げて、木目の寂びてあらわなる上に、僅かに仏像が残っている。

私はこの半年間にこんな経験をした。

これまで、誰でも図書館とは、寂かな、がらんとした庫のようなシーンとした、け押されるような感じのところとなっていたのである。

戦後の春、こんなところにと思われる爆撃の跡に、一杯に青草が生えて来た。

バンジャマン・クレミュウは『不安と再建』の中で、一九三〇年は、すべての領域で決定的な年であったといっている。

「金沢文庫」「足利文庫」などといっていたものが、「図書館」となるには、なんといっても、時代の流れを感ぜずにいられない。

山口県の「光」に鉄道の講演会に行った帰途であった。

一九三九年、アーチボルド・マックリーシュ氏がアメリカ国会図書館長に任命されたときは、全米図書館人は、彼がこの道のズブの素人であるという理由をもって反対したものであった。

十万の労働者が月十銭の会費で、労働文化協会を組織しているんだというと、誰でもほんとか、といって驚く。

終戦後、アメリカが図書館界に示した関心はまことに深いものがあった。

日射しの暖かい南向きの窓に、開くともなしに、美しい装釘の本をひもどく、といった、読書のよろこび、「閑」というこころもちの深い厳しさ、こんな世界から、だんだん遠ざかりつつある。

ユネスコの国際的報告書を読むと、日本はイスラエルとパキスタンにはさまれて、日本は図書館に関して処女地 Virgin Soil であると書いてあるにすぎぬのである。