30分以内で読める中井正一の短編作品

フンボルトは、言葉はエルゴン（創られたるもの）ではなくして、エネルゲイヤ（創るちから）であると云う。

西洋の近代文明の特徴の一つは、科学的・実証的精神である。

現在往々にして、知識層が政治に期待を失って、その行動の方向を失わんとしつつあると伝えられている。

終戦の混乱から広島県の東部地方がその身辺を整理しはじめたのは昨年の九月中旬頃からであった。

この議会で図書館法が通過したことは、全図書館人にとって、まことに感慨深いものがあるのである。

文壇、画壇、楽壇、歌壇、俳壇、乃至学壇、評壇等々、それはそれぞれ犯すべからざる神聖なるにわである。

引金を引くような心持ちで指でふれる時、フィルムはすでに回転している。

やや重い感じのする回転音、……フィルムは三フィート、五フィートと記録していく。

一つの神話日本の伝説の中で、光の美しさを描いているものでは、何といっても、手力男の命が、あの巌壁を開く時、さしはじめる光の、あの強烈な感じの右に出るものはあるまい。

ラテン語で書かれたすべての哲学書がいつでもイヴの犯した罪なしには書きはじめられなかったように、ドイツ語のあらゆる哲学書も歴史の末にあるという最後の審判なしにはその本を書き終ることができない。

『レ・ミゼラブル』の中に次のような一節がある。

個人主義文化が、封建主義文化を引きはなすために、戦った歴史の跡は決して容易なものではなかった。

ハイデッガーが存在に問いを発するにあたって、人間に優先性をあたえたのは、人間がすでに存在の会得をもち、彼のありかた existentia によって、それが何であるか essentia を把握することができるゆえである。

真に在るものは不安の上にある、というハイデッガーの考えかたには何ものか深いものがある。

スポーツが人々によって研究され始めたのは、それを遊戯の一部としてであった。

夢のような終戦、疎開先から帰る荷馬車のほこりっぽい街、内海の潮の香のただよう尾道市の図書館の暗い部屋で、私は、何となく「暗澹」という文字を胸に書いてみた。

何か急流のように流れている世の中である。