森鴎外の全作品

壱小倉の冬は冬という程の事はない。

細木香以は津藤である。

源氏物語を現代の口語に訳する必要がありましょうか。

わたくしは澀江抽齋の事蹟を書いた時、抽齋の父定所の友で、抽齋に劇神仙の號を讓つた壽阿彌陀佛（じゆあみだぶつ）の事に言ひ及んだ。

石田小介が少佐参謀になって小倉に着任したのは六月二十四日であった。

文化六年の春が暮れて行く頃であった。

徒然草に最初の仏はどうして出来たかと問われて困ったというような話があった。

某儀明日年来の宿望相達し候て、妙解院殿（松向寺殿）御墓前において首尾よく切腹いたし候事と相成り候。

それがしの宮の催したまひし星が岡茶寮の独逸会に、洋行がへりの将校次を逐うて身の上ばなしせし時のことなりしが、こよひはおん身が物語聞くべきはずなり、殿下も待兼ねておはすればと促されて、まだ大尉になりてほどもあらじと見ゆる小林といふ少年士官、口に啣（くわ）へし巻烟草取りて火鉢の中へ灰振り落して語りは始めぬ。

Auguste（オオギュスト） Rodin（ロダン） は為事場へ出て来た。

それがしの宮の催したまいし星が岡茶寮のドイツ会に、洋行がえりの将校次をおうて身の上ばなしせしときのことなりしが、こよいはおん身が物語聞くべきはずなり、殿下も待ちかねておわすればとうながされて、まだ大尉になりてほどもあらじと見ゆる小林という少年士官、口にくわえし巻煙草取りて火鉢の中へ灰ふり落して語りははじめぬ。

福岡日日新聞の主筆猪股為治君は予が親戚の郷人である。

現代の思想とか、新しい作者の発表している思想とか云うものについて話せというのですか。

小日向から音羽へ降りる鼠坂と云う坂がある。

時節は五月雨のまだ思切悪く昨夕より小止なく降りて、※子（れんじ）の下に四足踏伸ばしたる猫懶（ものう）くして起たんともせず、夜更て酔はされし酒に、明近くからぐつすり眠り、朝飯と午餉とを一つに片付けたる兼吉が、浴衣脱捨てて引つ掛くる衣は紺にあめ入の明石、唐繻子の丸帯うるささうに締め畢（おわ）り、何処かけんのある顔の眉蹙（しか）めて、四分珠の金釵もて結髪の頭をやけに掻き、それもこれも私がいつもののんきで、気が付かずにゐたからの事、人を恨むには当りませぬと、長火鉢の前に煙草喫みゐるお上に暇乞して...

京都の高瀬川は、五条から南は天正十五年に、二条から五条までは慶長十七年に、角倉了以が掘ったものだそうである。

弘化四年丁未、二月十六日能久親王京都伏見宮第に生れさせ給ひ、満宮と名のらせ給ふ。

○俳句と云ものを始て見たのは十五六歳の時であつたと思ふ。

某儀今年今月今日切腹して相果候事いかにも唐突の至にて、弥五右衛門奴老耄したるか、乱心したるかと申候者も可有之候えども、決して左様の事には無之候。

此言語起原の一篇は江村學人の草する所なり。

私は話をすることが非常に下手なので、話をしろと云はれると實に氣になつてならない。

鼎軒先生には一度もお目に掛かつたことがない、私は少壯の頃、暇があれば本ばかり讀んでゐたので名家の演説などをもわざ／＼聽きに往つたことが殆ど無い、そこで餘所ながら先生のお顏を見る機會をも得ないでしまつた、先生がアアリア人種に日本人も屬するといふことを論じた小册子を出された頃であつた、友人上田敏君が宅の二階に來て、話をしてゐられた、私はふいと思ひ出して、かう云つた、「僕は此頃田口卯吉と云ふ人の書いた本を見たが、日本人がアアリア人種だと云ふ論斷がしてある、そしてその理由として...

或る國民には或る詞が闕けてゐる。

逢ひたくて逢はずにしまふ人は澤山ある。

PlatonPlaton は何故に共産主義者とせられてゐるか。

ファウストを訳した時の苦心を話すことを、東亜之光の編者に勧められた。

私が訳したファウストについては、私はあの訳本をして自ら語らしめる積でいる。

六疊の間に、床を三つ並べて取つて、七つになる娘を眞中に寢かして、夫婦が寢てゐる。

人物主人客譯者場所主人の書齋。

明け易い夏の夜に、なんだってこんなそうぞうしい家に泊り合わせたことかと思って、己はうるさく頬（ほお）のあたりに飛んで来る蚊を逐いながら、二間の縁側から、せせこましく石を据えて、いろいろな木を植え込んである奥の小庭を、ぼんやり眺めている。

法科大学教授大川渉君は居間の真中へ革包を出して、そこら中に書物やシヤツなどを取り散らして、何か考へては革包の中へしまひ込んでゐる。

「御勉強。