そめちがへ
森鴎外
『そめちがへ』は青空文庫で公開されている森鴎外の短編作品。6,696文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
文字数 | 30分以内 6,696文字 |
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書き出し書出 | 時節は五月雨のまだ思切悪く昨夕より小止なく降りて、※子(れんじ)の下に四足踏伸ばしたる猫懶(ものう)くして起たんともせず、夜更て酔はされし酒に、明近くからぐつすり眠り、朝飯と午餉とを一つに片付けたる兼吉が、浴衣脱捨てて引つ掛くる衣は紺にあめ入の明石、唐繻子の丸帯うるささうに締め畢(おわ)り、何処かけんのある顔の眉蹙(しか)めて、四分珠の金釵もて結髪の頭をやけに掻き、それもこれも私がいつもののんきで、気が付かずにゐたからの事、人を恨むには当りませぬと、長火鉢の前に煙草喫みゐるお上に暇乞して... |
初出 | 「新小説」1897(明治30)年8月5日 |
底本 | 舞姫・うたかたの記 他三篇 |
表記 | 新字旧仮名 |
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