5分以内で読める宮本百合子の短編作品

「『マクベス』はシェークスピアの最も大きな、そしてそれと共に最も怪奇な作品の一つである。

満州事変以来今日までの十四年間に、旧日本の文学が崩壊しつくして行った過程は、日本文学史にとって未曾有のことであるばかりでなく、世界文学の眺望においても、駭（おどろ）くべき一事実ではないだろうか。

日本の文学と文学者とは、最近数年の間に極めて容赦のない過程で、政治というものについて、目をさまされて来た。

小林多喜二は、一九三三年二月二十日、築地警察で拷問された結果、内出血のために死んだ。

今日の日本において民主戦線統一は、単なる政治上のやりかたという以上に意味をもつと思います。

最近のソヴェト文学をよみたくて読めなかった日本の読者に、ゴルバートフの「降伏なき民」はうれしいおくりものであった。

文学の歴史をみわたすと、本当に新しい意味で婦人が文学の活動に誘い出されて来たのは、いつも、人民の権利がいくらか多くなって、すべての人が自分の考えや感じを表現してよいのだ、という確信を得た時代であった。

日本の社会の空気が、いくらかのびのびと各人の心持を表現させるようになってから、一年と少しの時が経った。

あるところで、トーマス・マンの研究をしている人にあった。

前号の『文化タイムズ』に、わたしの評論集『歌声よ、おこれ』について本多秋五氏の書評がのせられた。

帝劇で復活を観た。

菊池寛の文学が大衆文学として広く愛されたというならば、その理由は菊池寛の文学と生活の基本的な調子、もっとも日本の半封建的な社会生活におかれている生活の常識に固く立っていたからだと思う。

宮本顕治には、これまで四冊の文芸評論集がある。

これまでの日本はいつも天下りの戦争にならされていました。

ソヴェト同盟との間にとりかわされていた不可侵条約をやぶって、ナチス軍がポーランドからウクライナへ、モスクワへ、レニングラードへと侵略しはじめた一年後、一九四二年八月、ソヴェト同盟の新聞『イズヴェスチア』に「虹」という小説が連載された。

四十篇の原稿のなかから新日本文学会の書記局で予選された二十篇をよんだ。

小林多喜二全集第一回配本を手にしたすべての人々が、まず感じたことは何だったろう。

河上氏の私に対する反ばくは一種独特な説諭調でなかなか高びしゃである、が、論点が混乱していて、多くの点が主観的すぎる。

「現代日本小説大系」が刊行される意味は、ただ日本の近代文学をもう一遍よみかえし、検討し、将来の文学に寄与するという風な、すべてのこれまでの刊行会の挨拶の範囲では、使命が果されないと思う。

去る六月十一日、読売新聞の「世界への反逆」という文章で中島健蔵氏が、記録文学の名のもとにジャーナリズムにあらわれはじめた戦記ものの本質について注意をよびおこしたのは適切であった。

ロジェ・マルタン・デュ・ガールの「チボー家の人々」十一巻は、いまこそ、日本の読者のために、その翻訳を完結されなければならない。

さきごろは「鉛筆詩抄」を頂きまことにありがとうございました。

わたしは、もう久しい間、いつかはそのような仕事もしてみたいと思っている一つのたのしみがある。

去年の暮、福田恆存は、一九四九年を通観して、「知識人の敗北」の年と概括をした。

過日『仰日』ならびに『檜の影』会からお手紙を頂き重ねてあなたからのお手紙拝見いたしました。

是非を超えた最後の手段として離婚は認めなければなりません。

若し、今日の議会に、真実な価値と信頼とを認め得るとしたら、婦人の提出したい、第一の問題は、婦人参政権、法律的独立人格の承認に関してであると思います。

この事は、私によくわかりません。

法制会が、婦人参政権の問題を否決したのは、さまで意外なことではありません。

服装に就いての趣味と云っても、私は着物の通人ではないから、あれがいいとか、こんな色合は悪いとかは云えない。

町の本屋の店さきを見ると、ハデな表紙の婦人雑誌が山ほどつまれています。

文学新聞には現在二百六七十人ばかりの通信員がいます。

各地方支部婦人同盟員及び婦人サークル員諸君！いよいよもう数日でメーデーだ。

ブル新が支配階級の道具であって、彼らの利益を守るように記事に事実でないことを書くことは、今度の共産党エロ班などということに実によく現れていると思います。

銀座の通りを歩いていたらば、一つの飾窓の前に人だかりがしている。

現実を、その様々な相互関係、矛盾の内外につき入って具体的に理解する実力、そしてそれらの間に在る自身の居り場所とその意味を把握して生きる力を教養であるとして考えて見ると、今日の日本の新聞は、そういう意味では一般に女性の教養を高める役には大して立っていないのではないかと思う。

一般の婦人の勤労生活と毎月の生理的変化との関係が、新らしい注意で見られることは実によいと思う。

日本原理の上に樹つ新日本諸学を建設し、全国民に日本文化の神髄を深く自覚せしめるための日本文化中央連盟が、松本学氏などを中心として実業家、役人、学校経営者などによって結成された。

どんな育児の本も、必ずとり落しなく触れている一つのことがあります。

私の不幸というものについて書くように云われると、何となし当惑したような咄嗟（とっさ）の心持になるのは、私ひとりのことだろうか。

男にとっても女にとっても結婚がむずかしい時代になって来ている。

私たちのまわりでは、よく、自信があるとか、自信がないとかいう表現がされる。

どんなひとも、贅沢がいいことだと思っていないし、この数年間のように多数の人々が刻苦して暮しているのに、一部の人ばかりがますます金銭を湯水のようにつかう有様を目撃していれば、いい気持のしないのは自然だと思う。

この頃いったいに女のひとの身なりが地味になって来たということは、往来を歩いてみてもわかる。

今年はどんな一年として私たちに経験されてゆくだろう。

今日いろいろの職場に働いている若い婦人たちはただ自分たちがそうやって毎日勤めに出て働いているということにだけ誇りを感じているような単純な心で社会を見てはいない。

子供の本を買いに行って、いつも当惑する一つのことがある。

或る若い母さんのうちに小学四年になった男の子がいる。

義弟が、生れたばかりの赤坊と若い妻と母とをおいて再び出征するので、二十日ばかり瀬戸内海に沿った村へかえっていた。

我々の、未だ完全に世界化されない生活感情では、兎角外国で起った事は、まるで異った遊星に生じた現象ででもあるかのような、間接さを以て、一般に迎えられる。