北条民雄の全作品

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作品名著者読了時間文字数人気書き出し
いのちの初夜北条民雄60分以内23,683

駅を出て二十分ほども雑木林の中を歩くともう病院の生垣が見え始めるが、それでもその間には谷のように低まった処や、小高い山のだらだら坂などがあって人家らしいものは一軒も見当たらなかった。

駅を出て二十分ほども雑木林の中を歩くともう病院の生垣が見え始めるが、それでもその間には谷のように低まった処や、小高い山のだらだら坂などがあって人家らしいものは一軒も見当たらなかった。

童貞記北条民雄5分以内1,386

部屋の中で  はかなくうら悲しい日が続く。

部屋の中で  はかなくうら悲しい日が続く。

重病室日誌北条民雄30分以内6,817

×月×日。

×月×日。

白痴北条民雄5分以内1,610

親父は大酒飲みで、ろくすつぽ仕事もせず毎日酔つぱらつては大道に寝転び、村長でも誰でも口から出まかせに悪口雑言を吐き散らすのが無上の趣味で、母親は毎日めそめそ泣いて、困るんでござります困るんでござりますと愚痴つてばかりゐる意気地なしなのである。

親父は大酒飲みで、ろくすつぽ仕事もせず毎日酔つぱらつては大道に寝転び、村長でも誰でも口から出まかせに悪口雑言を吐き散らすのが無上の趣味で、母親は毎日めそめそ泣いて、困るんでござります困るんでござりますと愚痴つてばかりゐる意気地なしなのである。

キリスト者の告白北条民雄10分以内2,642

何とて我は胎より死にて出でざりしや、 何とて胎より出でし時に気息たえざりしや、 如何なれば膝ありてわれをうけしや、 如何なれば乳房ありてわれを養ひしや、 ――ヨブ記――  詩話会は夜の六時から始まることになつてゐた。

何とて我は胎より死にて出でざりしや、 何とて胎より出でし時に気息たえざりしや、 如何なれば膝ありてわれをうけしや、 如何なれば乳房ありてわれを養ひしや、 ――ヨブ記――  詩話会は夜の六時から始まることになつてゐた。

月日北条民雄10分以内3,880

一歩一歩注意深く足を踏みしめて、野村は歩いた。

一歩一歩注意深く足を踏みしめて、野村は歩いた。

朝北条民雄5分以内468

急に高まつて来た室内のざわめきに、さつきから、睡るでもなく睡らぬでもない状態でうつらうつらとしてゐた鶏三は、眼を開いた。

急に高まつて来た室内のざわめきに、さつきから、睡るでもなく睡らぬでもない状態でうつらうつらとしてゐた鶏三は、眼を開いた。

盂蘭盆北条民雄10分以内3,035

一号室ではまた盆踊りの練習が始まつた。

一号室ではまた盆踊りの練習が始まつた。

大阪の一夜北条民雄5分以内531

十日ほども降り続いた梅雨があけると、おそろしくむし暑い日が続いて、街は、腐敗したどぶ川の悪臭が染み込んでぶくぶくと泡立つてゐるやうに感ぜられた。

十日ほども降り続いた梅雨があけると、おそろしくむし暑い日が続いて、街は、腐敗したどぶ川の悪臭が染み込んでぶくぶくと泡立つてゐるやうに感ぜられた。

人間再建北条民雄5分以内619

私は彼の告白記を紹介する前に、一応私と彼との関係や、間柄を記して置きたいと思ふ。

私は彼の告白記を紹介する前に、一応私と彼との関係や、間柄を記して置きたいと思ふ。

間木老人北条民雄60分以内18,619

この病院に入院してから三ヶ月程過ぎたある日、宇津は、この病院が実験用に飼育してゐる動物達の番人になつてはくれまいかと頼まれた。

この病院に入院してから三ヶ月程過ぎたある日、宇津は、この病院が実験用に飼育してゐる動物達の番人になつてはくれまいかと頼まれた。

井の中の正月の感想北条民雄5分以内1,329

諸君は井戸の中の蛙だと、癩者に向つて断定した男が近頃現れた。

諸君は井戸の中の蛙だと、癩者に向つて断定した男が近頃現れた。

鬼神北条民雄30分以内6,417

一 水の上  あれからもう三年経つた。

一 水の上  あれからもう三年経つた。

無題Ⅰ北条民雄10分以内2,017

太陽はもう山の向うに落ちてしまつたが、まだあたりは明るかつた。

太陽はもう山の向うに落ちてしまつたが、まだあたりは明るかつた。

邂逅北条民雄5分以内1,080

高等科二年の多吉は、ある夕方、校門を出るとただ一人きりで家路に向つた。

高等科二年の多吉は、ある夕方、校門を出るとただ一人きりで家路に向つた。

癩者北条民雄5分以内413

それを見たとたん、秋津栄三はがつくりと膝を折つてそのまま地べたへつき坐つてしまひさうになつた。

それを見たとたん、秋津栄三はがつくりと膝を折つてそのまま地べたへつき坐つてしまひさうになつた。

癩を病む青年達北条民雄60分以内15,756

序章  他の慢性病もやはりさうであらうが、癩といへども、罹つたが最後全治不可能とはいへ、忽ちのうちに病み重るといふことはなく、波のやうに一進一退の長い月日を過しつつ、しかし満ちて来る潮のやうに、波の穂先は進んでは退き進んでは退きしつつやがて白い砂地を波の下にしてしまふ。

序章  他の慢性病もやはりさうであらうが、癩といへども、罹つたが最後全治不可能とはいへ、忽ちのうちに病み重るといふことはなく、波のやうに一進一退の長い月日を過しつつ、しかし満ちて来る潮のやうに、波の穂先は進んでは退き進んでは退きしつつやがて白い砂地を波の下にしてしまふ。

青い焔北条民雄30分以内5,111

第一章  霧の深い夜が毎晩のやうに続いた。

第一章  霧の深い夜が毎晩のやうに続いた。

青春の天刑病者達北条民雄30分以内10,144

霧の夜 一  黒ぐろとうちつづいた雑木林の間から流れ出る夜霧が、月光を浴びて乳色に白みながら見るまに濃度を加へて視野遠く広がつた農園の上を音もなく這ひ寄つて来る。

霧の夜 一  黒ぐろとうちつづいた雑木林の間から流れ出る夜霧が、月光を浴びて乳色に白みながら見るまに濃度を加へて視野遠く広がつた農園の上を音もなく這ひ寄つて来る。

道化芝居北条民雄1時間〜46,204

どんよりと曇つた夕暮である。

どんよりと曇つた夕暮である。

戯画北条民雄30分以内4,980

彼女は非常に秀れた頭脳を持つてゐたのだと僕は思ふよ、これといふ理由はないのだけれど。

彼女は非常に秀れた頭脳を持つてゐたのだと僕は思ふよ、これといふ理由はないのだけれど。

続重病室日誌北条民雄30分以内6,966

九月二十四日。

九月二十四日。

青年北条民雄30分以内7,084

第一章  朝のうちに神戸港を出帆した汽船浪花丸がひどくたどたどしい足どりで四国のこの小さな港町に着いたのは、もうその日の夕暮であつた。

第一章  朝のうちに神戸港を出帆した汽船浪花丸がひどくたどたどしい足どりで四国のこの小さな港町に着いたのは、もうその日の夕暮であつた。

無題Ⅱ北条民雄5分以内1,426

この部屋には東と北とに窓がある。

この部屋には東と北とに窓がある。

外に出た友北条民雄10分以内3,080

「二三年、娑婆の風にあたつて来るよ。」  退院するY――を見送つて行くと、門口のところで彼はさう言つて私の手を握つた。

「二三年、娑婆の風にあたつて来るよ。」  退院するY――を見送つて行くと、門口のところで彼はさう言つて私の手を握つた。

赤い斑紋北条民雄5分以内1,244

都美は、このごろ、夕暮になると、その少年に逢ひに行くのが、癖になつて、少年に逢はない日は、ホツケスに逢ふのも、嫌になつてしまつた。

都美は、このごろ、夕暮になると、その少年に逢ひに行くのが、癖になつて、少年に逢はない日は、ホツケスに逢ふのも、嫌になつてしまつた。

覚え書北条民雄5分以内1,652

癩文学といふものがあるかないか私は知らぬが、しかしよしんば癩文学といふものがあるものとしても、私はそのやうなものは書きたいとは思はない。

癩文学といふものがあるかないか私は知らぬが、しかしよしんば癩文学といふものがあるものとしても、私はそのやうなものは書きたいとは思はない。

書けない原稿北条民雄5分以内1,725

今日は二月の二十七日だ。

今日は二月の二十七日だ。

孤独のことなど北条民雄5分以内1,477

――美しいものは一番危つかしい。

――美しいものは一番危つかしい。

頃日雑記北条民雄10分以内3,289

朝、起き上るたびに私は一種不可解な気持をもつてあたりを見廻さずにはゐられない。

朝、起き上るたびに私は一種不可解な気持をもつてあたりを見廻さずにはゐられない。

精神のへど北条民雄10分以内2,734

「兄弟よ。汝は軽蔑といふ言葉を知つてゐるか? 汝を軽蔑する者に対しても公正であれといふ、公正さの苦悩を知つてゐるか?」  諸君よ、諸君にこのニイチェの苦悩が判るか?  過去幾千年の屈辱の歴史が、諸君の心臓を掻きむしりはしないか。

「兄弟よ。汝は軽蔑といふ言葉を知つてゐるか? 汝を軽蔑する者に対しても公正であれといふ、公正さの苦悩を知つてゐるか?」  諸君よ、諸君にこのニイチェの苦悩が判るか?  過去幾千年の屈辱の歴史が、諸君の心臓を掻きむしりはしないか。

続癩院記録北条民雄30分以内11,490

十個の重病室があり、各室五名づつの附添夫が重病人の世話をしてゐることはさきに記したが、これらの附添夫も勿論病人であり、何時どのやうな病勢の変化があるか解らない。

十個の重病室があり、各室五名づつの附添夫が重病人の世話をしてゐることはさきに記したが、これらの附添夫も勿論病人であり、何時どのやうな病勢の変化があるか解らない。

断想北条民雄5分以内1,527

自殺を覚悟するとみな一種の狂人か、放心状態に陥る。

自殺を覚悟するとみな一種の狂人か、放心状態に陥る。

独語北条民雄30分以内4,740

昨日MTLで「療養所文芸の発展策その他」について書いた諸氏のものも拝見し、また原田嘉悦氏の雑記をも読んでみた。

昨日MTLで「療養所文芸の発展策その他」について書いた諸氏のものも拝見し、また原田嘉悦氏の雑記をも読んでみた。

年頭雑感北条民雄5分以内900

思へばここ数年来、年あらたまる毎に私の生活は苦痛を増すばかりであつた。

思へばここ数年来、年あらたまる毎に私の生活は苦痛を増すばかりであつた。

発病北条民雄30分以内4,833

いつたいに慢性病はどの病気でも春先から梅雨期へかけて最も悪化する傾向がある。

いつたいに慢性病はどの病気でも春先から梅雨期へかけて最も悪化する傾向がある。

発病した頃北条民雄5分以内1,205

胸までつかる深い湯の中で腕を組んで、私は長い間陶然としてゐた。

胸までつかる深い湯の中で腕を組んで、私は長い間陶然としてゐた。

柊の垣のうちから北条民雄30分以内10,534

序  心の中に色々な苦しいことや悩しいことが生じた場合、人は誰でもその苦しみや懊悩を他人に打明け、理解されたいといふ激しい慾望を覚えるのではないだらうか? そして内心の苦しみが激しければ激しいほど、深ければ深いほど、その慾望はひとしほ熾烈なものとなり、時としてはもはや自分の気持は絶対に他人に伝へることは不可能だと思はれ、そのために苛立ち焦燥し、遂には眼に見える樹木や草花やその他一切のものに向つて

序  心の中に色々な苦しいことや悩しいことが生じた場合、人は誰でもその苦しみや懊悩を他人に打明け、理解されたいといふ激しい慾望を覚えるのではないだらうか? そして内心の苦しみが激しければ激しいほど、深ければ深いほど、その慾望はひとしほ熾烈なものとなり、時としてはもはや自分の気持は絶対に他人に伝へることは不可能だと思はれ、そのために苛立ち焦燥し、遂には眼に見える樹木や草花やその他一切のものに向つて

牧場の音楽師北条民雄5分以内1,343

夕方になると、私はなんとなくじつとしてゐられないので、定つて散歩に出る。

夕方になると、私はなんとなくじつとしてゐられないので、定つて散歩に出る。

癩院記録北条民雄30分以内10,586

入院すると、子供を除いて他は誰でも一週間乃至二週間ぐらゐを収容病室で暮さなければならない。

入院すると、子供を除いて他は誰でも一週間乃至二週間ぐらゐを収容病室で暮さなければならない。

烙印をおされて北条民雄5分以内1,018

右腕の神経痛が始まつたので、私はここ数日床の中で朝夕を送り迎へてゐる。

右腕の神経痛が始まつたので、私はここ数日床の中で朝夕を送り迎へてゐる。

一九三六年回顧北条民雄5分以内1,177

ここ十日ばかりといふもの、何もせずにぼんやりと机の前に坐つて暮してゐる。

ここ十日ばかりといふもの、何もせずにぼんやりと机の前に坐つて暮してゐる。