30分以内で読める幸田露伴の短編作品

此処に赤ン坊が生れたと仮定します。

身には疾あり、胸には愁あり、悪因縁は逐えども去らず、未来に楽しき到着点の認めらるるなく、目前に痛き刺激物あり、慾（よく）あれども銭なく、望みあれども縁遠し、よし突貫してこの逆境を出でむと決したり。

今を距ること三十余年も前の事であった。

夜の雲夏より秋にかけての夜、美しさいふばかり無き雲を見ることあり。

私は慶応三年七月、父は二十七歳、母は二十五歳の時に神田の新屋敷というところに生まれたそうです。

侠客と一口に言つても徳川時代の初期に起つた侠客と其の以後に出た侠客とは、名は同じ侠客でも余程様子が違つて居るやうである。

鼠頭魚は即ちきすなり。

棊は支那に起る。

流鶯啼破す一簾の春。

見るさえまばゆかった雲の峰は風に吹き崩されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の傾くに連れてさすがに凌（しの）ぎよくなる。

その「アア詰らねえ、こう何もかもぐりはまになった日にゃあ、おれほどのものでもどうもならねえッ。

東京と西京とは、飲食住居より言語風俗に至るまで、今猶頗（すこぶ）る相異なるものあり。

当世の大博士にねじくり先生というがあり。

皆さん。

もしそれ真の意味に於（おい）て言を為せば、貧と富とは幸福と不幸福とに対して相即くところは無い。