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五重塔

幸田露伴

『五重塔』は青空文庫で公開されている幸田露伴の長編作品。57,079文字で、おおよそ1時間〜で読むことができます。
文字数
1時間〜
57,079文字
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書出

其木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて話し敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青※(みは)と、見る眼も覚むべき雨後の山の色をとゞめて翠(みどり)の※(みは)ひ一トしほ床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリヽと上り、洗ひ髪をぐる/\と酷く丸めて引裂紙をあしらひに一本簪でぐいと留めを刺した色気無の様はつくれど、憎いほど烏黒にて艶ある髪の毛の一ト綜(ふさ)二綜後れ乱れて、浅黒いながら...

初出「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
底本日本現代文學全集 6 幸田露伴集
表記
新字旧仮名
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