30分以内で読める正宗白鳥の短編作品

長谷川伝次郎氏の『ヒマラヤの旅』には、二万尺以上の霊峰を跋渉した時の壮快な印象が記されている。

封筒の中には長いお札が疊み込まれてあつた。

五月も末になつてゐるのに、火鉢の欲しいほどの時候外れの寒さで、雨さへ終日降りつゞいた。

大至急話したいことがあるから、都合のつき次第早く來て下さいといふ母方の祖母さんの手紙を見ると、お梅はどんな大事件かと、夕餐の仕度を下女に任せて、大急ぎで俥（くるま）に乘つて、牛込から芝の西久保まで驅け付けた。

町村の自治制が敷かれてから間もないころであつた。

こんな珍しい話がありますよ。

「日本の文壇は今全く不良少年の手に落ちました。

この土地には水が缺乏してゐる。

新婚旅行例年の如く、晩秋のこの頃は、黄ろい葉や紅い葉で色取られて、箱根の山は美しい。

今から二十年あまりも前の事である。

この頃は回顧談が流行してゐる。