1時間〜で読める小栗虫太郎の長編作品

［＃ページの左右中央］序篇降矢木一族釈義［＃改ページ］聖アレキセイ寺院の殺人事件に法水が解決を公表しなかったので、そろそろ迷宮入りの噂（うわさ）が立ちはじめた十日目のこと、その日から捜査関係の主脳部は、ラザレフ殺害者の追求を放棄しなければならなくなった。

かようなことを、作者として、口にすべきではないであろうが、自分が書いた幾つかのなかでも、やはり好きなものと、嫌いなものとの別が、あるのは否まれぬと思う。

一、密室の孔雀明王――（前文略）違法とは存じましたけれども、貴方様がお越しになるまで、所轄署への報告を差控える事に致しました。

大魔境「悪魔の尿溜」フランスの自動車会社シトロエンの探検隊――。

聖アレキセイ寺院――。

一、合掌する屍体前捜査局長で目下一流の刑事弁護士である法水麟太郎は、招かれた精霊の去る日に、新しい精霊が何故去ったか――を突き究めねばならなかった。

序、さらば沙翁舞台よすでに国書の御印も済み幼友達なれど毒蛇とも思う二人の者が使節の役を承わり、予が行手の露払いまんまと道案内しようとの魂胆。

ベーリング黄金郷の所在を知ることならびに千島ラショワ島の海賊砦（とりで）のこと四月このかた、薬餌から離れられず、そうでなくてさえも、夏には人一倍弱いのであるが、この夏私は、暑気が募るにしたがって、折りふし奇怪な感覚に悩まされることが多くなった。

第一編海底の惨劇一、海―武人の墓それは、夜暁までに幾ばくもない頃であった。

一、紅い水母大都市は、海にむかって漏泄の道をひらいている。

消え失せた人魚今こそ、二三流の劇場を歩いているとはいえ、その昔、浅尾里虹の一座には、やはり小屋掛けの野天芝居時代があった。