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うつせみ

樋口一葉

『うつせみ』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。9,108文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
文字数
30分以内
9,108文字
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書出

家の間數は三疊敷の玄關までを入れて五間、手狹なれども北南吹とほしの風入りよく、庭は廣々(ひろ/″\)として植込の木立も茂ければ、夏の住居にうつてつけと見えて、場處も小石川の植物園にちかく物靜なれば、少しの不便を疵(きず)にして他には申す旨のなき貸家ありけり、門の柱に札をはりしより大凡三月ごしにもなりけれど、いまだに住人のさだまらで、主なき門の柳のいと、空しくなびくも淋(さび)しかりき。

初出「讀賣新聞」1895(明治28)年8月27~31日
底本樋口一葉全集第二卷
表記
旧字旧仮名
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