ブンゴウサーチ

〔私が貧乏で〕

中原中也

『夏』は青空文庫で公開されている中原中也の短編作品。1,997文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内
1,997文字
人気
0PV
書出

私が貧乏で、旅行としいへば殆んど夏にしかしないからかも知れない、………夏と聞くと旅愁が湧いて来て、却々「夏は四季のうち、自然の最も旺んなる時なり」どころではない、なんだか哀れにも懐しいといつた風で、扨この夏はどうしようかなと思ふと、忽ちに嘗て旅した何処かの、暑い暑い風景が浮んで来て、おもへば遠く来つるかなと、そいつた気持に胸はふくらむで来るのである。

初出「詩人時代」1935(昭和10)年8月号
底本新編中原中也全集 第四巻 評論・小説
表記
新字旧仮名
※「人気」は青空文庫の過去10年分のアクセスランキングを集計した累計アクセス数から算出しています。