青空文庫で公開されている金史良の作品の中で、おおよその読了目安時間が「1時間〜」の長編作品を、おすすめ人気順で表示しています。
私の語ろうとする山田春雄は実に不思議な子供であった。
ある重苦しい雲の垂れこめた日の朝、京城での有名な廓(くるわ)、新町裏小路のとある娼家から、みすぼらしい風采の小説家玄竜がごみごみした路地へ、投げ出されるように出て来た。
牛車や荷馬車、貨物自動車等のごったがえしている場末の鉄道踏切を渡ると、左の方へ小さな田圃路が折れている。