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三十二刻

山本周五郎

『三十二刻』は青空文庫で公開されている山本周五郎の中編作品。15,585文字で、おおよそ60分以内で読むことができます。
文字数
60分以内
15,585文字
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書出

一 「到頭はじめました」 「そうか」 「長門どのでも疋田でも互いに一族を集めております。大手の木戸を打ちましたし、両家の付近では町人共が立退きを始めています」 「ではわしはすぐ登城しよう」 「いやただ今お触令がございまして、何分の知らせをするまで家から出ぬようにとのことです。騒動が拡がってはならぬという思召でしょう。しかし用意だけはいたしておきます」  父と兄とが口早に話している隣の部屋から、娘

初出「国の華」1983(昭和15)年9~10月号
底本山本周五郎全集第十八巻 須磨寺附近・城中の霜
表記
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