大杉栄の全作品

自叙伝大杉栄自叙伝赤旗事件でやられて、東京監獄から千葉監獄へ連れて行かれた、二日目か三日目かの朝だった。

去年の夏、本間久雄君が早稲田文学で「民衆芸術の意義及び価値」を発表して以来、此の民衆芸術と云う問題が、僕の眼に触れただけでも、今日まで十余名の人々によって彼地此地で論ぜられている。

遺言大杉栄四五年前の二月頃だった。

斬り殺されるか、焼き殺されるか、あるいはまた食い殺されるか、いずれにしても必ずその身を失うべき筈の捕虜が、生命だけは助けられて苦役につかせられる。

夜なかに、ふと目をあけてみると、俺は妙なところにいた。

樗牛全集の中に、ブランデスの何かの本から抜いた、次の文がある。

「征服の事実」の中に、僕は「過去と現在とおよび近き将来との数万あるいは数千年間の人類社会の根本事実」たる征服のことを説いて、これが「明瞭に意識されない間は社会の出来事の何ものも正当に理解するを許されない」と断じた。

去年の十一月二十日だった。

市ヶ谷の巻前科割り東京監獄の未決監に「前科割り」というあだ名の老看守がいる。

畜生恋僕はいつも独房にばかりいて、雑房の方のことはよく知らない。

野枝さん。

市ヶ谷から＊宛名・日附不明僕は三畳の室を独占している。

僕はいわゆる新しい女に対して、半ば同感すると同時に、また半ば反感する。

本月もまた特に評論して見たいと思うほどの評論が見つからない。

僕は精神が好きだ。