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水のほとり

堀辰雄

『水のほとり』は青空文庫で公開されている堀辰雄の短編作品。2,376文字で、おおよそ10分以内で読むことができます。
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10分以内
2,376文字
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書出

私はいま、こんな胸の病氣で、部屋の中に閉ぢ籠つたきり、殆ど外出することなんかないと言つていい位であるが、――いまから數週間前、まだ私の病氣もこんなに重くならなかつた頃のことだ、晝間のうちはそれでも我慢して寢床の中にもぐり込んでゐたが、夕方になるとなんだか耐らない氣持になつて、私は無理に起き上り、出來るだけ氣輕な散歩者のやうな服裝をして、何のあてもなしに街の中へ出かけて行く習慣があつたものだ。

初出「時事新報」1931(昭和6)年3月21日~22日夕刊
底本堀辰雄作品集第四巻
表記
旧字旧仮名
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