1時間〜で読める夢野久作の長編作品

［＃ページの左右中央］巻頭歌胎児よ胎児よ何故躍る母親の心がわかっておそろしいのか［＃改ページ］…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。

何んでも無い白鷹秀麿兄足下臼杵利平小生は先般、丸の内倶楽部の庚戌会で、短時間拝眉の栄を得ましたもので、貴兄と御同様に九州帝国大学、耳鼻科出身の後輩であります。

大きな手がかり村長さんの処の米倉から、白米を四俵盗んで行ったものがある。

……やッ……院長さんですか。

私は嬉しい。

はしがき「暗黒公使」なるものはどんな種類の人間でどんな仕事をするものかというような事実を、如実に説明した発表は、この秘録以外に余り聞かないようである。

不明の兇漢に探偵劇王刺殺さる孤児となった女優天川呉羽哭（な）いて復讐を誓う秘密を孕む怪悲劇市内大森区山王×××番地轟（とどろき）九蔵氏（四四）は帝都呉服橋電車通、目貫の十字路に聳立する分離派式五層モダン建築、呉服橋劇場の所有主、兼、日本最初の探偵恐怖劇興行者、兼、現代稀有の邪妖劇名女優、天川呉羽嬢の保護者として有名であったが、昨三日（昭和×年八月）諾威公使館に於ける同国皇帝誕辰の祝賀莚（えん）に個人の資格を以て列席後、...

看護婦さんの眠っております隙を見ましては、拙ない女文字を走らせるので御座いますから、さぞかしお読みづらい、おわかりにくい事ばかりと存じますが、取り急ぎますままに幾重にもおゆるし下さいませ。

二三年前の事、或る若いエスペランチストが私の処へ遊びに来ました序に、瑞西とかのエスペラントの雑誌へ「能」の事を投稿したいから、話してくれないかと頼みました。

法医学的な探偵味を含んだ、且つ、残忍性を帯びた事件の実話を書けという註文であるが、今ここに書く事件は、遺憾ながら左の三項について、その筋に残っている公式の記録、もしくは筆者のノートと相違している筈である。

前篇「草川の旦那さん。

――ホントウの悪魔というものはこの世界に居るものか居ないものか――――居るとすればその悪魔は、どのような姿をしてドンナ処に潜み隠れているものなのか――――その悪魔はソモソモ如何なる因縁によって胎生しつつ、どのような栄養物を摂って生長して行くものなのか――――その害悪と冷笑とを逞ましくし行く手段は如何――斯様な質問に対して躊躇（ちゅうちょ）せずに答え得る人間は、そう余計には居るまいと思う。

はしがきこの稿は昨年末まで書き続けた「街頭より見たる新東京の裏面」の別稿である。

市政の巻品川駅の蓄音機万世一系のミカドの居ます東京――。

昭和二年の二月中旬のこと……Ｓ岳の絶頂の岩山が二三日灰色の雲に覆われているうちに、麓の村々へ白いものがチラチラし始めたと思うと、近年珍らしい大雪になった。

山羊髯編輯長夢野久作女 箱 師「玄洋日報社」と筆太に書いた、真黒けな松板の看板を発見した吾輩はガッカリしてしまった。

――これは外国のお話――「ゲーッ。

材木の間から――１――飯田町附近の材木置場の中に板が一面に立て並べてあった。

吾輩のこと……何だ……吾輩の身上話を速記にして雑誌に掲載するから話せ……と云うのか。

ああ……すっかり酔っちゃったわ。

……ああ……酔うた酔うた。

はしがきこの一文は目下、埃及のカイロ市で外科病院を開業している芬蘭（ポーランド）［＃「芬蘭」はママ］生まれの独逸医学博士、仏蘭西文学博士オルクス・クラデル氏が筆者に送ってくれた論文？「戦争の裡面」中の、戦場描写の部分である。

……俺はどうしてコンナ処に立ち佇（ど）まっているのだろう……踏切線路の中央に突立って、自分の足下をボンヤリ見詰めているのだろう……汽車が来たら轢（ひ）き殺されるかも知れないのに……。

……聖書に曰（いわ）く「もし汝（なんじ）の右の眼、なんじを罪に陥さば、抉（えぐ）り出してこれを棄てよ……もし右の手、なんじを罪に陥さばこれを断り棄てよ。

昭和×年四月二十七日午後八時半……。

残怨白紅花盛余多人切支丹寺「ふうん読めんなあ。

まえがき筆者の記憶に残っている変った人物を挙げよ……という当代一流の尖端雑誌新青年子の註文である。

梅津只圓翁の生涯故梅津只圓翁の名前を記憶している人が現在、全国に何人居るであろうか。

はしがき「鼻の表現」なぞいう標題を掲げますと、人を馬鹿にしている――大方おしまいにお化粧品の効能書きでも出て来るのじゃないかと、初めから鼻であしらってしまわれる方が無いとも限りません。

「オ……オ……和尚様。